「残業代ゼロ法案」への連合の対応に批判、疑問~各紙社説が指摘

 一部の専門職を労働時間規制の対象から外す労働基準法改正案を巡って、連合執行部の対応が批判を浴びています。

 改正案は報道でも「残業代ゼロ法案」と呼ばれるように、「労働時間」による労務管理の概念がなく、残業代も発生しません。一般的には、残業代は企業にとっては人件費の増大であることから、社員の働き過ぎを抑止する効果もあるのですが、その効果が失われ、過労死を招きかねないとして、連合も改正案には反対してきました。しかし、ここにきて連合の執行部が事実上、条件闘争に転換して法改正を容認するような動きに出たことから、連合傘下の労組からも批判が出ていると報じられています。

 連合の神津里季生会長は7月13日に安倍晋三首相と会談し、健康確保措置を強化するよう修正を要請。19日には財界も加わって、政労使の3者で修正に合意する見通しとなっていましたが、連合内部に異論が強く、延期になりました。21日には産業別労働組合の幹部らによる連合の中央執行委員会で、執行部が政府に修正を要請したことや経緯を説明しましたが、了承には至りませんでした。

 神津会長らは、現在の「自民1強」の下では改正案の成立は避けられない、ならば少しでも修正させた方が良いとの判断に至ったと主張していると伝えられています。また、改正案に反対の方針に変わりはないと強調しているとも伝えられています。

 悪意はないのかもしれません。支援する民進党の党勢が振るわない中で、独自に安倍政権と渡り合う必要があると判断する事情もあるのでしょう。しかし、安倍政権や財界にとっては「労働者の代表である連合が了承した」ということにほかならず、まさに渡りに船です。「残業代ゼロ法」を実施に移す大義名分を与えることになります。それだけの重大な事柄を、組織内に諮ることなく執行部判断で進めようとする発想には、やはり批判は免れ得ないと感じます。

 この労働基準法改正案と連合の方針を巡っては、新聞各紙も社説で取り上げています。ネットで目に付いたものを書きとめておきます。全文が読める社説はリンク先も記しています。連合に対する批判が目立ちます。 

▼7月13日
 ・岩手日報「残業代ゼロ修正案 過酷労働の懸念拭えず」
  http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2017/m07/r0713.htm

▼7月15日
 ・毎日新聞「『成果型労働制』連合が容認 生活と健康を守れるのか」
  https://mainichi.jp/articles/20170715/ddm/005/070/027000c

 ・北海道新聞「『残業代ゼロ』 誰のための連合なのか」
  http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0116075.html 

 修正内容については、連合執行部の一部メンバーが政府や経団連と水面下で調整してきたとされ、傘下の労組には直前まで方針転換を伝えられなかった。
 残業規制を巡っても、今春、神津会長と、経団連の榊原定征会長とのトップ会談の結果、「月100時間未満」で決着した。
 これは厚生労働省の過労死ラインと同水準で、上限規制と呼ぶに値しない。
 春闘を見ても、近年は安倍政権が経済界に直接賃上げを要請する形が続いている。
 労働者の代表としての存在意義さえ疑われる状況だ。誰のため、何のために連合はあるのか、突き詰めて問い直すべきだ。

 

 ・信濃毎日新聞「連合の姿勢 原点を忘れてないか」
  http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170715/KT170714ETI090014000.php 

 民進党を支援するものの、最近は野党共闘や原発政策を巡って溝を深めている。逆に首相や自民党役員との会合を重ね、政権・与党との距離を縮めている。
 今回も連合は、水面下で安倍政権に制度の撤回を求めた。政府側は残業規制を引き合いに「全部パーにするか、清濁併せのむか」と容認を迫ったという。
 過労自殺も過労死も後を絶たない。働き方の改革は、不満と不安を募らせている労働者と家族の要請だ。「できるものならパーにしてみろ」と言い返せばいい。
 連合の幹部は「テーブルに着けば政権の思惑にのみ込まれ、着かなければ何も実現できない」と嘆く。労働者の意思を背景に主張を貫くことを忘れ、言葉通り政治にのまれている証しだろう。
 連合執行部への批判が強まっている。働く者・生活する者の集団として世の中の不条理に立ち向かい、克服する―。原点に返らねば求心力を失うことになる。 

 

 ・京都新聞「『残業代ゼロ』法  過労死防止に逆行する」
  http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20170715_3.html

 ・神戸新聞「残業代ゼロ法案/不可解な連合の方針転換」
  https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201707/0010371656.shtml 

 民進党は連合とともに法案に反対してきたが、今回の方針転換を明確に知らされず、はしごを外された格好だ。連合が政権との協調を重視したといえる。
 安倍政権は「政労使」の会談の場を設け、連合を取り込んできた。しかし労働組合は政権の諮問機関ではない。働く者を守る原点に立ち返り、労組としての一線を守るべきだ。 

 

 ・中国新聞「『残業代ゼロ法案』 制度の本質変わらない」
  http://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=357643&comment_sub_id=0&category_id=142

 ・高知新聞「【残業代ゼロ法案】働き方改革と整合しない」
  http://www.kochinews.co.jp/article/112257/

 ・南日本新聞「[残業代ゼロ法案] 修正で労働者守れるか」
  http://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=85720

▼7月16日
 ・朝日新聞「労基法の改正 懸念と疑問がつきない」
  http://www.asahi.com/articles/DA3S13039377.html?ref=editorial_backnumber 

 労働団体にとって極めて重要な意思決定であるにもかかわらず、連合は傘下の労働組合や関係者を巻き込んだ議論の積み上げを欠いたまま、幹部が主導して方針を転換した。労働組合の中央組織、労働者の代表として存在が問われかねない。 

 

▼7月17日
 ・熊本日日新聞「『残業代ゼロ』法案 疑問多い連合の方針転換」
  http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20170717001.xhtml

 ・沖縄タイムス「[『残業代ゼロ』容認]連合の存在意義揺らぐ」
  http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/113125

 ・琉球新報「残業代ゼロ法案 働く者の命守れるのか」
  https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-536256.html

▼7月19日
 ・愛媛新聞「連合『残業代ゼロ』容認 改悪に加担する背信許されない」

▼7月20日
 ・神奈川新聞「残業代ゼロ法案 働く人をどう守るのか」

 ・山陽新聞「『残業代ゼロ』法案 働き方改革には逆行する」
  http://www.sanyonews.jp/article/566687/1/?rct=shasetsu

 ・西日本新聞「『残業代ゼロ』 働く人の健康を最優先に」
  https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/344459/

▼7月22日
 ・北日本新聞「『残業代ゼロ』法案/長時間労働の助長懸念」

▼7月23日
 ・新潟日報「残業代ゼロ 『容認』への反発は当然だ」
  http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20170723336639.html

 ・山陰中央新報「労働時間規制緩和/働く人の生活を第一に」

 

 労働組合とは、人類が近現代の中で長い時間をかけて到達した労働者の「結社の自由」、その権利としての「団結権」を具現化したものです。この権利は世界中あまねく、労働者であれば手にできるものでなければならず、その権利を正しく行使し広げていくことで、権利は権利としていっそう輝くのだとわたしは考えています。

 そういう組織である労働組合は、経営者がすべてを決めることができる会社組織とはおのずと異なります。執行部には一定の判断をする裁量は認められるとしても、決定権は基本的にはありません。組織で決めた方針を実行するのが労働組合の執行部です。労働組合である以上は、連合のようなナショナルセンターであっても、組合員数人の単組(単位組合)であっても、その原理に変わりはありません。その原理原則を踏み外せば、労働者の団結権は危機にさらされることになります。

 報道を前提にしてのことですが、特に気になるのは、連合の神津会長と安倍首相とのトップ会談です。水面下でどのような経緯があったのでしょうか。万が一にも、交渉や争議の相手方との密会など、組合員に大っぴらに説明できないような行為があるとすれば、それは「結社の自由」「団結権」の価値をおとしめ、社会運動としての労働組合運動を危機にさらすものです。

 もう10年以上も前、ナショナルセンターの連合とはレベルも組織規模も異なりますが、わたしは産業別労組である新聞労連(日本新聞労働組合連合)の中央執行委員長を2年間務めました。当時、いつも念頭に置いていたのは、「中央執行委員長とは、中央執行委員会をただ代表するだけに過ぎない。そして中央執行委員会は新聞労連の全組合員に責任を負っている」ということでした。委員長は決定権者ではない、と考えていましたし、組合員に説明できないようなことはしてはいけないと自らを戒めていました。労働組合の在り方に対するこの考えは、労働組合員であることを離れて久しい今も変わりません。

 連合が「残業代ゼロ法案」を事実上容認しようとしていることもさることながら、その進め方が、労働組合のありようの観点からは、より重大な問題だと感じています。成り行きを注視しています。

稲田防衛相がPKO日報の組織的隠蔽を了承~本人否定、しかし各紙の取材結果はそろいつつある

 陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報が廃棄したとされながら、その後、陸自内で保管されていたことが明らかになる問題がありました。この問題を巡って、稲田朋美防衛相が2月に、保管の事実を非公表とする方針を防衛省幹部から伝えられ、了承していたと報じられています。

 初報は19日未明の共同通信でした。

 稲田氏、組織的隠蔽を了承 PKO日報、国会で虚偽答弁 - 共同通信 47NEWS 

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を廃棄したとしながら陸上自衛隊が保管していた問題で、稲田朋美防衛相が2月に行われた防衛省最高幹部による緊急会議で、保管の事実を非公表とするとの方針を幹部から伝えられ、了承していたことが分かった。複数の政府関係者が18日、明らかにした。防衛省・自衛隊の組織的隠蔽を容認した形になる。

 稲田氏はその後の国会で、一連の経緯の報告を受けていないとし「改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」と答弁。国会でも虚偽の説明をしたことになり、防衛相辞任を求める声が強まり、安倍晋三首相も任命責任を問われるのは確実だ。 

  地方紙を中心に、共同通信加盟社の19日付朝刊の新聞紙面には、さらに詳細な第1報が掲載されています。東京発行紙では毎日新聞、東京新聞が1面トップでした。ほかには朝日新聞が1面左肩に「日報 陸自に存在『非公表』/稲田氏出席会議で協議」との見出しの記事を掲載していますが、稲田氏に報告があったかどうかは明確には触れていません。

 当の稲田氏は19日、「報告があったとの認識はない」などとして、非公表を了承したとの報道内容を否定しました。また菅義偉官房長官も19日の記者会見では稲田氏の主張を追認しています。しかし、20日付の朝日新聞や読売新聞の朝刊は、稲田氏や政府が否定していることを伝えながらも、それぞれ独自の取材の結果として、稲田氏が日報の保管の報告を受けていたことや、そう証言する政府関係者が存在することを伝えています。

 複数のマスメディアがそれぞれに取材を展開する中で、稲田氏が否定しているにもかかわらず、それとは異なった結論に、各メディアの取材の結果が集約されつつある状況です。最終的にどう決着するのか、注視しています。

【写真】共同通信の初報を1面トップで報じた毎日新聞の19日付朝刊紙面と、稲田氏の了承には直接触れなかった朝日新聞の紙面

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安倍内閣支持率ついに「29・2%」も~下落要因は安倍氏自身の評価低下

 マスメディア各社の世論調査で、安倍晋三内閣の支持率が下がり続けています。6月15日に「共謀罪」法が採決強行で成立した直後、支持率は急落しました。7月に入ってからも、東京都議選での自民党の歴史的惨敗を経て、下落傾向は変わりません。目に止まった調査結果を書きとめておきます。 

・7月15~16日 ANN(テレビ朝日系列) 「支持」29・2%(8・7P減) 「不支持」54・5%(12・9P増)

・7月15~16日 共同通信 「支持」35・8%(9・1P減) 「不支持」53・1%(10・0P増) 

・7月7~10日 時事通信 「支持」29・9%(15・2P減) 「不支持」48・6%(14・7P増)※個別面接方式

・7月8~9日 朝日新聞 「支持」33%(5P減) 「不支持」47%(5P増)

・7月7~9日 NNN(日本テレビ系列) 「支持」31・9%(7・9P減) 「不支持」49・2%(7・4P増)

・7月7~9日 NHK 「支持」35%(13P減) 「不支持」48%(12P増)

・7月7~9日 読売新聞 「支持」36%(13P減) 「不支持」52%(11P増)

・7月1~2日 朝日新聞 「支持」38%(3P減) 「不支持」42%(5P増) 

※時事通信以外は電話調査

 特に個別面接方式による時事通信調査の「29・9%」が目を引きます。一般に、電話世論調査よりも個別面接方式は精度は高いとされているようです。そのほかの調査も、例えば共同通信では、今回の「35・8%」は2015年7月に安全保障関連法が衆院通過した直後の37・7%を下回って、第2次安倍政権では最低。不支持率もこれまでの最高は2015年7月の51・6%でした。

 内閣支持率の低下の要因としては、森友学園や加計学園の問題とその真相究明への消極対応ぶりのほか、「共謀罪」法成立への強硬姿勢、金田法相ら資質が問われる閣僚の存在などがあります。特に閣僚の資質の問題では、都議選の応援演説で「自衛隊としてもお願いする」と口にした稲田朋美防衛相は、本人の資質の問題もさることながら、更迭にすることもなく任に留め続けていることにも、世論は相当に厳しい見方をしているものと思います。

 個々の設問と回答の状況をみると、目立つのは安倍晋三首相への評価の低下です。この点が、安全保障関連法を成立させた当時の支持率低下と顕著に異なる点です。都議選最終盤の7月1日に東京・秋葉原で行った街頭応援演説で安倍氏は、一部の聴衆からの「帰れ」「辞めろ」コールに「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と、首相でありながら自らが社会を分断するようなことを言い放ちました。こうしたことも民意は厳しく評価しているのではないかと思います。

 安倍氏は政権浮揚策として8月上旬に内閣改造を実施すると報じられていますが、支持率低下の最大要因が安倍氏自身だとすると、内閣改造の効果も限定的なのではないかと思います。

  以下に各メディアの調査結果のうち、安倍氏の評価に関わる問いと回答状況の一例を書きとめておきます。

◆安倍晋三首相について

・朝日新聞

「最近の安倍首相の発言や振る舞いをみて、安倍首相のことをどの程度信用できると思いますか。」

 大いに信用できる 4%

 ある程度信用できる 32%

 あまり信用できない 40%

 まったく信用できない 21%

 ・読売新聞

「安倍内閣について、『長期政権のおごりが出ている』という意見がありますが、あなたは、その通りだと思いますか、そうは思いませんか。」

 その通りだ 68%

 そうは思わない 25%

 ・共同通信

「(安倍内閣を「支持しない」と答えた人に聞く)支持しない最も大きな理由をお答えください。」

 首相が信頼できない 51・6%(9・7P増)

 ※ことし1月以降の各メディアの世論調査による内閣支持率の推移は、以下にまとめています 

安倍晋三内閣の支持率の推移(2017年1月―)※随時更新 - ニュース・ワーカー2

 

黙らない、語り続けることができる社会のために~「共謀罪」施行の朝に

 犯罪の実行ではなく計画段階で処罰の対象とする「共謀罪」の趣旨を含んだ改正組織犯罪処罰法が7月11日午前零時、施行されました。とうとう「共謀罪」がわたしたちの社会に導入されました。

 振り返ってみると、「共謀罪」に対しては、マスメディア、中でも新聞の報道は賛成、反対に2極化し、論調だけではなく報道の量にも顕著な違いが生じたことは、このブログでも書いた通りです。 

 ※「朝日、毎日、東京と読売、産経の報道量に顕著な差~『共謀罪』法案 在京紙の報道の記録(5)5月30日~6月15日まとめ」=2017年7月3日

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/2017/07/03/082506

 「共謀罪」については、主として反対、批判的なマスメディアが多角的、多面的な視野で様々に報じてきましたが、それでも最後までとらえきれなかったと感じる論点があります。それは、安倍晋三政権や与党はなぜこうまで強硬的に、例えば参院で委員会採決を飛ばして本会議に持ち込む“禁じ手”まで使って「共謀罪」導入をがむしゃらに推し進めたのか、という点です。マスメディアはこの点について、はっきりとした答えを示せていません。

 この疑問はわたしの中にいまだにあるのですが、一方で「ああ、そういうことなのかもしれない」と感じる出来事もありました。

 自民党が歴史的惨敗を喫した東京都議選の最終盤の7月1日土曜日。報道によると、安倍晋三氏は東京・秋葉原で初めて街頭演説に立ちました。近年の選挙で自民党が遊説の打ち上げに選んでいる聖地と言ってもいい場所ですが、安倍氏の演説に対して一部の聴衆から「帰れ」「辞めろ」のコールが湧き起こりました。安倍氏は感情をむき出しに、コールが発せられる辺りを指さし「演説を邪魔する行為を自民党は絶対にしない」と述べ、さらに「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と口にしたと伝えられています。「大人げない」では済みません。自民党候補の応援とは言え、その場では「内閣総理大臣」と紹介を受けていました。街頭の民衆を「こんな人たち」呼ばわりするとは、一国の首相が自ら社会を分断するに等しい言動です。

 この出来事を伝える報道を目にして、「ああ、安倍氏は批判されることが大嫌い、批判を受けることを我慢できなのだろうな」と感じ、そして、正しいことをやっている自分を批判する人たちが一般人であるわけがない、というようなことを、もしかしたら安倍氏は思っているのかもしれない、というようなことも考えました。自分への批判封じのために「共謀罪」導入へ前のめりになった、とまでは言いませんが、もしも社会の中で、「共謀罪」を意識して、「おかしい」と感じたことを「おかしい」と口にするのをためらうような風潮が広がることになれば、政権への批判も減るでしょう。それはおそらく安倍氏が望む状況です。結果論であるにせよ、「共謀罪」導入によって、安倍氏にとって居心地のいい社会―それは権力者が批判を浴びない社会と言ってもいいかと思いますが―が到来するかもしれない、と漠然とながら感じました。

 だから、「共謀罪」の乱用を許さないためにも、まずは黙らない、語り続けることが大事なのだと思います。そして、マスメディアは黙らずに語り続けることができる社会を維持するために、語り続けようとする人たちを支えていく役割があるのだろうと考えています。
 戦前の治安維持法がそうでしたが、悪法は小さく生まれて大きく育つ場合があります。「共謀罪」は導入されてしまいましたが、これで決して終わりではありません。

物言えぬ恐怖の時代がやってくる 共謀罪とメディア

物言えぬ恐怖の時代がやってくる 共謀罪とメディア

 

  先日、「共謀罪」の危険性について、特にメディアとの関わりに重点を置いたブックレット「物言えぬ恐怖の時代がやってくる 共謀罪とメディア」(花伝社)が刊行されました。編著は上智大の田島康彦教授。わたしも少しお手伝いをさせていただきました。3月に開かれた集会「共謀罪と表現・メディアを考える」での議論をベースに出版作業が急ぎ進められましたが、結果的に発行日は6月15日になりました。まったくの偶然ですが、参院で法務委員会での採決が飛ばされ、本会議での採決強行によって「共謀罪」が生まれ落ちたその当日です。そういう運命的な一冊です。マスメディアに関わる方、マスメディアに関心のある方に手に取っていただきたいと思います。

 

 ことしの年明け、このブログで「よく見て、よく聞いて、よく話す」と書きました。あらためて意識して実践していこうと思います。

※ 「よく見て、よく聞いて、よく話す」=2017年1月1日

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/20170101/1483274423

【写真】埼玉県秩父市の秩父神社でいただいた「よく見て、よく聞いて、よく話す」の三猿のお守りは携帯電話に着けて持ち歩いています。「見ざる、聞かざる、言わざる」への戒めです。

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安倍晋三首相は何をどう「反省」するのか

 7月2日に投開票された東京都議選は、既に大きく報じられている通り、自民党が57議席から34議席減らして23議席にと、歴史的な惨敗を喫しました。小池百合子都知事が率いた「都民ファーストの会」は改選前6議席から49議席に躍進。公明党、共産党もそれぞれ1議席と2議席増やして23議席、19議席でした。都議選は地方選挙であるとはいえ、自民党は国会での「共謀罪」法の参院委での採決を飛ばした成立強行、「加計学園」「森友学園」問題、さらには稲田朋美防衛相の選挙応援での「自衛隊としてもお願い」発言などで有権者の不信を募らせたのだと思います。それは「自民一強」の中の「安倍一強」の現状への痛烈な批判でもあるのでしょう。

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【写真】都議選の結果を伝える東京発行新聞各紙の6月3日付朝刊1面

 一夜明けて3日、安倍晋三首相は「反省」を口にしたようです。しかし、何をどう「反省」するのかは、今後の具体的な行動をみてみないと分かりません。そして4日付の新聞各紙を読む限りでは、自民党内ではだれも選挙の敗北について責任を語ろうとしない様子がよく伝わってきます。安倍首相が本当に反省すべき点を自身で明確にとらえているかどうか、あまり期待できないのではないかと感じます。

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【写真】安倍晋三首相の「反省」を見出しに取った東京発行新聞各紙の3日付夕刊1面

 ジャーナリストの江川紹子さんが「『こんな人たち』発言にみる安倍自民の本当の敗因」という論考を書かれています。まったく同感です。

「こんな人たち」発言にみる安倍自民の本当の敗因(江川紹子) - 個人 - Yahoo!ニュース

 「こんな人たち」発言とは、安倍首相が都議選運動期間の最終日の7月1日、東京・秋葉原で都議選で初めての街頭演説をした際に、「帰れ」「辞めろ」のコールをした人たちの方を指さしながら「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかないんです」と言い放ったことを指しています。わたしも気になっていた発言です。この場面で、こういう言葉が口を突いて出るところに、政治家としての安倍晋三氏の本質がよく表れていると思います。この都議選の結果をもってしても、その本質は変わらず、したがって今後も安倍政権は変わらないのではないかとの予感を持っています。 

朝日、毎日、東京と読売、産経の報道量に顕著な差~「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(5)5月30日~6月15日まとめ

 6月15日の「共謀罪」法(改正組織犯罪処罰法)成立から少し時間がたってしまいましたが、法案の参院での審議が始まった翌日の5月30日付から6月15日付まで、東京発行の新聞各紙がどれくらいの報道をしたか、まとめてみました。対象は朝日、毎日、読売、日経、産経、東京の6紙。産経新聞は東京本社では夕刊を発行していないので、6社の条件をそろえるために朝刊のみでカウントしました。チェックしたのは記事のほか社説、国会での質疑の詳報の有無です。

 結果は以下の通りです。

▼朝日新聞 記事48本、社説2本、国会質疑詳報4回

▼毎日新聞 記事50本、社説1本、国会質疑詳報3回

▼東京新聞 記事69本、社説1本、国会質疑詳報5回

▼読売新聞 記事21本

▼産経新聞 記事20本

▼日経新聞 記事17本

 記事の本数は数え方の違いによって変わると思います。また、1本あたりの長短に関係なく、10数行の短信も1面トップの80行本文もすべて1本とカウントしました。ですので、ここでは大まかな傾向を読み取るのにとどめたいと思います。その上で明らかなのは、「共謀罪」に反対で、安倍晋三政権にも批判的な論調の朝日、毎日、東京3紙と、安倍政権を支持し、「共謀罪」法にも理解を示す読売、産経両紙では、顕著に報道量に違いが見られることです。

 この違いの要因の一つは、法案に対する反対意見や批判意見を取り上げるか否かです。以前、衆院での審議の期間に、朝日、毎日、読売の3紙に限って関連記事の掲載を調べました。その際のまとめと基本的には同じことが言えると思います。朝日、毎日、東京は法案への賛成意見も含めて、識者の多様な意見を断続的に紹介していますが、読売、産経は反対意見は主には国会での野党主張程度でした。

 第2次安倍晋三政権になって、新聞の論調が政権に批判的か、政権支持かで2極化したと感じていました。特定秘密保護法でも安全保障法制でもそうでした。この「2極化」が情報量という観点からはどうなっているか、検証の試みとして各紙の記事の掲載量を調べてきましたが、この「共謀罪」に関しては、かなり明確に相関関係があるといってよいと思います。

 

※参考過去記事

▽5月22日 「共謀罪」報道、朝日、毎日、読売各紙の記事量に開き

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/20170522/1495381089

▽6月3日 「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(1) 5月30日―6月3日

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/20170603/1496467657

▽6月7日 「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(2) 6月4―6日 

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/20170607/1496791248

▽6月11日 「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(3) 6月7―11日

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/20170611/1497188641

▽6月14日 「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(4) 6月12―14日

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/20170614/1497449253

▽6月16日 悪法は民主主義の基本を否定して誕生〜「共謀罪」法成立、在京紙の報道の記録

 http://news-worker.hatenablog.com/entry/20170616/1497538924

 

居座る稲田朋美防衛相~「誤解」34回、「緊張感」16回、理解も納得もできない釈明

 一つ前の稲田朋美防衛大臣の「自衛隊としてもお願い」発言に関する投稿「防衛相の資質問われる『自衛隊としてお願い』発言」の続きです。

 稲田氏が特定の都議候補の名を挙げて「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と述べたことに対しては、公務員の地位を利用した選挙運動を禁じた公職選挙法136条の2に明白に違反しており、発言を撤回したところで選挙違反の既遂であることに変わりはない、との指摘が法律の専門家からは挙がっています。そうであるなら罷免でも辞任でも、稲田氏は即刻、防衛相の任から離れて然るべきですが、どうやら安倍晋三首相はあくまでも稲田氏を防衛相にとどめておく意向のようです。稲田氏に続投を支持したと報じられています。

 稲田氏には公選法違反の事実のほか、防衛省と自衛隊の政治的中立を危機にさらした責任があり、安倍首相には内閣の責任者、閣僚の任命権者としての責任があるのですが、違法行為が内閣の判断で野放しにされかねない状況のようです。木村草太・首都大学東京教授(憲法学)は朝日新聞の取材に「稲田氏は発言当日に撤回したが、違法行為をした事実は消えない」と述べ「菅義偉官房長官は発言撤回を理由に稲田氏の職務を続行させる考えを示した。これは違法行為がすでになされたのに、官房長官自身が違法性がないと表明したことになる。発言が違法ではないとの判断は内閣の判断ということになり、稲田氏だけでなく菅氏、そして安倍内閣の責任問題につながってくるだろう」と指摘しています。

※朝日新聞デジタル「『撤回しても違法の既遂、内閣の責任問題』木村草太教授」=2017年6月28日

 http://www.asahi.com/articles/ASK6X55XPK6XUTFK00Y.html

 その稲田氏は6月30日、閣議後の定例の記者会見で、問題の発言と自らの進退についての見解を述べました。結論としては、発言のうち誤解を招きかねない部分を撤回して謝罪する、辞任はせずに緊張感を持って職務に邁進する、ということでした。しかし防衛省のホームページにアップされている記者会見での質疑の一問一答の詳報を読むと、その言いぶりと主張の内容は到底、理解も納得もしがたいものです。まさに「地位に恋々」という言葉が浮かんできます。

 詳報はかなり長いのですが、白熱した質疑が交わされた様子がよく分かります。

※「■防衛大臣記者会見概要 平成29年6月30日(11時15分~12時11分)」

 http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2017/06/30.html

 1時間近くに及んだ会見で、稲田氏は突き詰めると二つのことしか言っていません。「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」との発言のうち「防衛省・自衛隊、防衛相」は誤解を招く恐れがあるから撤回しておわびするということと、辞任はせずにしっかりと緊張感を持って職務に邁進する、ということです。

 前者については、公務員の地位を利用した選挙運動のつもりはなく、自民党員としてその場にいたつもりだったこと、「防衛省・自衛隊、防衛相」は自衛隊への協力に感謝していることを述べるのが真意だったこと、しかし誤解を招く恐れがあるので撤回する、ということを繰り返し言い張っています。しかし、発言はどう読んでも「誤解」の余地はなく、文字通り「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党として」特定候補への支援を呼び掛けているとしか受け取りようのないものです。会見では記者もそのことを繰り返し追及していますが、何を言われようとも「誤解を招きかねない」の一点張り。わたしが数えた限りですが「誤解」という言葉を34回も口にしています(報道では「35回」という数字もあるようです)。

 進退についても、何を言われても「緊張感を持ってしっかりと職務に邁進してまいりたい」「しっかりと緊張感を持って、防衛大臣としての職責を果たしていかなければならない」と繰り返すのみ。こちらも「緊張感を持って」というフレーズを16回繰り返しました。表現は異なりますが、同じニュアンスの物言いがほかにあります。

 記者たちも相当激しく突っ込んだ様子がうかがえますが、答えはまったくかみ合っていません。稲田氏の言葉遣いは記録を目で追っている限りでは丁寧ながらも、その答えの内容から言うならば、これほど閣僚の職責も、衆院議員としての責任もなめ切って、そして何よりも国民を愚弄する態度はないだろうと感じます。以下に備忘も兼ねて、やり取りの一部を書きとめておきます。

 Q:法曹資格をお持ちの大臣に対して大変失礼かと思うのですが、この発言については、公職選挙法136条の2に違反するものではありませんか。 

A:今、記者御指摘の公職選挙法についてでございます。公職選挙法を遵守すること、これは政治家として当然でございますが、そういった地位を利用した選挙運動を行うということは全く意図しておらず、しかしながら、誤解を招きかねない発言であり、撤回をしたということでございます。

 

Q:全く誤解を招く余地はなくて、それはもう誤解を全く招かないのですよ。この当時の発言で、法曹資格をお持ちの稲田大臣はこれを公職選挙法違反と判断されるかどうか、136条の2に違反すると考えられるかどうかということを聞きたいのですが。

A:防衛大臣としては、防衛省・自衛隊として感謝するという趣旨はございました。そして、誤解を招きかねない「防衛省・自衛隊、防衛大臣」のところは撤回をしているところでございます。あくまでも自民党員として、自民党の国会議員として、その場に伺っているということであり、そういった意図は全くございません。さらに、私としては、その公職選挙法、地位を利用した選挙活動を行うという意図は全くないということでございます。

 

Q:意図はなくても、発言は、公職選挙法136条の2に違反するというふうに法律の専門家、法曹の方は仰います。これは、撤回してもしなくても既遂であると、公職選挙法違反の既遂であるというふうに考えられる法律家の方が多いのですが、それについて法曹資格をお持ちの稲田大臣はどうお考えになりますか。

A:私といたしましては、発言の誤解を招く部分、この点については、撤回を申し上げているところでございますし、地位を利用した選挙運動を行うということは全く意図もしておりません。そして、私は自民党の国会議員として、応援演説に伺ったところでありますが、そういった誤解を招く点については撤回をし、お詫びを申し上げているところであって、地位を利用した選挙運動を行う意図というものは全くなかったということであります。

 

Q:地位を利用した選挙運動ではないですか。まさにこれが、公職選挙法の136条の2に違反するというふうに法律の専門家は仰るわけですよ。撤回したからといって、既遂は既遂ですから、撤回しても意味はないのですよ。それについて法曹資格を持つ稲田大臣はどうお考えですか。

A:そういう御指摘があるということは報道で承知しておりますが、私といたしましては、公職選挙法、政治家として基本的に遵守すべきものであって、その地位を利用した選挙運動を行うことなど全く企図、意図はしておりません。そして、誤解を招く発言については撤回し、そして、お詫びを申し上げているところでございます。

 

Q:誤解を招くことでは全くないと思うのですが、どういうふうに誤解を招くのですか。「防衛省・自衛隊、防衛大臣、自民党」と言っているじゃないですか。誤解を招くところは一切ないじゃないですか。何をどう誤解するのですか。我々を馬鹿だと言っているのですか。

A:そんなことは申し上げておりません。私は「防衛省・自衛隊、防衛大臣」としてお願いをするという意図はなく、あくまでも自民党としてお願いをしたいという趣旨でその場にいたわけでございます。しかしながら、御指摘のようにそれが真意について誤解を招きかねないものであることから、撤回し、お詫びを申し上げているところであり、御指摘の公職選挙法に関しては、しっかりと守っていくべきものであることは当然でございますし、そういった政治的地位を利用する意図は全くないということでございます。

 

Q:大臣が前言を撤回したり、軌道修正するケースというのは今回が初めてではないと思うのですけれども、御自分でこういうことを繰り返される原因がどこにあると考えるか聞かせてください。

A:今、記者の御指摘の件は、弁護士時代、すなわち13年前のことですけれども、訴訟に出廷していたということを記憶違いに基づいて事実の異なる答弁を行ってしまった件について、国会においてお詫びをして訂正をさせていただいたところでございます。私としては国会の場でも国会において、しっかりと誠実に今後は答弁をしてまいりたいと申し上げたと同時に、これからは一層緊張感をもって、誠実に防衛大臣としての職務を全うしてまいりたいと考えているところでございます。

 

Q:つまり、失言を何回か繰り返されているわけですけれども、原因は御自身でどうお考えですか。反省されていないんじゃないかと、だから繰り返すのではという気もするのですが、御自身はどのようにお考えですか。

A:今回のことも含めて、政治家の言葉というのは重いわけですから、しっかりと緊張感を持って職務に邁進してまいりたいと考えているところです。

 

Q:大臣が、昨年防衛大臣に就任した時というのは、報道もそうなのですけれども、総理は抜擢の意味を込めたと思います。将来を見据えたというところも報道でありますが、今、党内でも交代論は強まっていて、あと防衛省・自衛隊でも困惑が強く広がっているのですけども、結果的に、こういう状態に陥ったことについて、大臣は、一政治家としてどうお考えですか。

A:報道は承知をいたしておりますし、様々な御批判も指摘をいただいているところでございます。私としては、そういった御批判についてしっかり真摯に受け止めて、そして緊張感を持って誠実に職務に邁進してまいりたいと考えています。

 

Q:先程、政治家の言葉は重いと仰いましたけども、特に、23万人の実力組織の指揮官に服する防衛大臣の言葉は重いと思いますが、そこで、自衛隊の中立性に関わるような失言、暴言をされたわけですから、責任は極めて重いと思うのですが、それでも辞めるおつもりはありませんか。

A:はい。緊張感を持って職務に邁進したいと考えております。 

 

Q:大臣が野党時代は、かなり政権幹部の出処進退に厳しく当たられていたと思うのですが、当時の総理大臣に、内閣総辞職を迫ったりとか、出処進退ということに厳しい方だったと思うのですが、当の御自身の釈明がですね、それが整合性がきちんとつく政治姿勢だと言えるのか、その点、いかがお考えでしょうか。

A:御指摘のとおり、野党時代、大変厳しい質問を予算委員会、所属委員会でしたことも事実でございます。そういう意味において、私自身もしっかりと緊張感を持って、この厳しい安全保障環境の下で、防衛大臣としての職責を果たしていかなければならないということは、痛感をいたしております。

 

Q:相手に対しては責任を迫って、辞めろと言いながら、御自身はほとんど説明がつかないような状態で続投というのは、その整合性をどうやって付けるのでしょうか。

A:そういった御批判は真摯に受け止めますけれども、緊張感を持ってしっかりと職務に邁進してまいりたいと考えております。

 

 稲田氏が多用している「しっかり」という言葉遣いは、実は安倍首相もよく口にしています。おそらく「緊張感を持ってしっかりやれ」と、直接安倍首相に指示を受けたのではないかと想像します。そしてこれも想像ですが、稲田氏は仮に自ら辞任を申し出たいと思っても、安倍首相がそれを許さないのだろうと思います。そうだとすると、そこまでして稲田氏を続投させなければならない理由は何なのでしょうか、どんな事情があるのでしょうか。

 新聞の論調の「2極化」を感じる中で、安倍政権支持の論調が目立つ読売新聞も産経新聞も、今や社説やコラムで稲田氏を極めて厳しく批判しています。安倍首相にとっては、直ちに稲田氏を更迭した方が痛手は少なくて済むはずですし、防衛省と自衛隊の名誉を守るためにも、そうするほかないように思うのですが、そうしないのはなぜでしょうか。その事情を探るのもマスメディアの役割だろうと思います。

※読売新聞・6月30日付社説「稲田防衛相発言 政治的中立に疑念持たれるな」 

 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170630-OYT1T50016.html

※産経新聞「産経抄」6月30日:「防衛省の『お子様』大臣」

 http://www.sankei.com/column/news/170630/clm1706300003-n1.html

 

 今、わたしたちの社会は大きな曲がり角にあるのではないかという気がしています。「自民一強」の中の「安倍一強」の果てに、「共謀罪」法が参院で委員会採決を飛ばして本会議での採決が強行されるような事態になっています。平行して、安倍首相は憲法改正にどんどん前のめりになり、自らの考える9条改正案をいきなり外部で発表し、既成事実化させた上で自民党内の合意形成手続きを後追いさせるような、乱暴なやり方を通しています。そうしたことに自民党内からは反対の声が聞こえてこず、異論や疑問があったとしても大きな声になりません。そうしたことと、今回の稲田氏の発言が首相サイドの意向によって不問に付されようとしていることは無関係ではないでしょう。

 だからこそ今、おかしいことをおかしいと言う、言える空気を社会の中に維持しておくことが必要だと思います。「共謀罪」法は成立してしまいましたが、それでも「共謀罪」が悪法として猛威を振るうようなことがないようにするには、社会の誰であっても萎縮することなくモノを言うことを続けていくことしかないのだと思います。

 やはり、稲田氏の発言が不問に付されるのはおかしい。一体どんな事情があるのか、マスメディアは取材を深めていかなければならないと思います。 

【写真】稲田朋美防衛相の会見の様子を伝える朝日、毎日、読売3紙の6月30日付夕刊

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