ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「水爆」を主見出しに入れる新聞、入れない新聞~北朝鮮核実験の報道

 北朝鮮が9月3日、核実験を実施しました。昨年9月9日以来6回目。朝鮮中央テレビは3日午後の「重大放送」で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する水爆の実験に完全に成功したと発表しました。このニュースを東京発行の新聞各紙は4日付の朝刊でそろって1面トップで扱いました。事実関係を伝える中心的な記事(本記)の見出しは次の通りです。

▼朝日新聞
「北朝鮮が核実験/水爆と主張 威力最大/『ICBM用 成功』/6回目」

▼毎日新聞
「北朝鮮6回目核実験/爆発規模過去最大/『ICBM用水爆成功』」

▼読売新聞
「北朝鮮 核実験/6回目 最大規模か/『ICBM用 水爆』主張/トランプ政権発足後初」

▼日経新聞
「北朝鮮 最大の核実験/ICBM用水爆と発表/制止無視、6回目強行/安保理、緊急会合へ」

▼産経新聞
「北『水爆成功』発表/爆発70キロトン 広島の4倍超/核実験6回目 ICBM搭載用/首相『警告無視し強行』」

▼東京新聞
「北朝鮮 最大核実験/『水爆 ICBM用』/成功声明 2年連続6回目」

 

f:id:news-worker:20170904233113j:plain

 各紙を比較して目に付くのは、主見出しに「水爆」を取ったのは産経新聞だけという点です。ただ、この日の朝刊用に共同通信が配信した記事も見出しは「北朝鮮、水爆成功と発表/核実験6回目、過去最大/70キロトン、『ICBM用』」と、主見出しに「水爆」を入れています。共同通信の配信記事を掲載した地方紙の中には、「水爆成功と発表」を主見出しにした紙面もあるようです。

 北朝鮮は昨年1月の核実験の際にも「水爆試験に成功した」と主張しましたが、疑問視する指摘もありました。主見出しに「水爆」を入れなかった新聞各紙の判断としては、そうした経緯も踏まえて、水爆であるか否かはなお解析が必要なこと、「水爆」との北朝鮮の主張をそのまま前面に出せば、危機をあおる北朝鮮の「瀬戸際外交」を結果的に利する恐れがあることなどを判断してのことなのだと思います。

 一方で、今回の核実験に対しては、観測された爆発の規模が過去最大だったことが指摘されており、菅義偉官房長官は会見で「水爆実験だった可能性も否定できない」と述べています。日本政府の公式見解としても、水爆実験だったことを否定していないわけです。「水爆」を主見出しに取る判断は、6回目の今回の実験の最大の特徴はその点にあるとみてのことなのだと思います。ただし、本当に水爆かどうかはなお解析が必要なのは変わりがなく、産経新聞も共同通信も、水爆と客観的に明らかにされているのではなく北朝鮮の主張であることが分かる形にしてあります。

 現在の状況でマスメディアに必要なのは、危機をあおることではなく、何が起きているかを事実として伝え、あわせてどうすればいいのか考え、議論するための材料を提供することです。一つのメディアが多様な考えやものの見方を伝えるのと同時に、複数のマスメディアによって、多様性が確保されていることも重要です。

マスメディアに「準有事」の自覚あるか~北朝鮮ミサイル報道巡るいくつかの懸念

 北朝鮮が8月29日早朝、弾道ミサイル1発を発射しました。

 備忘として書きとめておくと、午前5時58分に発射され、北海道・襟裳岬付近の上を高度約550キロで通過して、襟裳岬の東約1180キロの太平洋上に午前6時12分に落下したと伝えられています。飛行距離は約2700キロ。日本政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)で北海道、東北、北関東、新潟、長野の計12道県の住民に避難を呼びかけましたが、被害はありませんでした。1回目のJアラート伝達は6時2分で、ミサイルが発射された模様との内容。2回目は6時14分で、ミサイルが日本を通過した模様との内容でした。

 北朝鮮のミサイルが日本の上を通過したのは5回目。2012年12月と16年2月の最近2回は、南西諸島と先島諸島の上でした。今回、北朝鮮から事前の通告や注意喚起はありませんでした。安倍晋三首相は29日午前、記者団のぶら下がり取材で、事前通告なしの発射を「暴挙」として「これまでにない深刻かつ重大な脅威だ」と非難し「ミサイルの動きは発射直後から完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢を取った」と語ったと報じられています。

 東京発行の新聞各紙も29日夕刊、30日付け朝刊でそろって1面トップで大きく報じました。29日午前中には号外を発行した新聞もあります。これらの報道ぶりに対しては、個人的に思うところが多々あります。今回の弾道ミサイル発射と日本政府の対応、マスメディアの報道について現時点で思うことを書きとめておきます。

f:id:news-worker:20170831222906j:plain

【写真】東京発行新聞各紙の8月29日付夕刊1面

f:id:news-worker:20170831222340j:plain

【写真】東京発行新聞各紙の8月30日付朝刊1面

▼「有事体制」に組み込まれている放送メディア

 今回の北朝鮮ミサイルの「日本越え」を巡るマスメディアの報道は、社会の関心が高いテーマでもあり、大きな扱いになるのは仕方がないと思います。「騒ぎ過ぎ」との批判を受ける余地があるとすれば、政府発表や政府の意向を忖度するかのような情報のみを大量に報じる場合でしょう。その意味で私がもっとも気になるのは、今回のマスメディアの報道に「準有事」と呼んでもいいような側面があるのに、そのことをマスメディア自身がどこまで自覚しているのか、ということです。

 例えばテレビです。NHK、民放各局とも6時2分にJアラートが伝達されるや、画面が赤と黒のJアラート画面の「国民保護に関する情報」に切り替わりました。ここに、マスメディアが戦争を想定した「有事体制」に組み込まれていることの一端が表れているのですが、多少なりともそのことに記事で触れたのは、目についた限りでは毎日新聞のみです。毎日新聞の29日付夕刊社会面「Jアラート TVで一斉に」の記事は、NHKでは国民保護法施行を受けて2006年2月に「国民保護業務計画」を制定し、その中で「総務大臣から、警報またはその解除の通知を受けたときは、速やかに、その内容を、原則として全国向けに放送する」としていることを紹介しました。

 大規模災害時などには意味のある仕組みかもしれません。しかしこの仕組みは有事法制の整備の中で進みました。他国の武力攻撃を受けても、それ以前の国内法では戦車1台自由に走らせることができない、防御陣地も自由に作れない、それでは国民を守れない、といった議論から始まった立法作業でした。その中でテレビ局は指定公共機関の指定を受け、有事の際には国民保護のための放送を行う責務を負いました。この有事法制が整備される過程では、戦時中の「大本営発表報道」への反省から、有事法制が発動されると、政府が指定する内容しか伝えられなくなるのではないか、自由な報道ができなくなる恐れはないか、との問題意識がマスメディアの間にも濃厚にあったと記憶しています。

 この問題意識は折に触れ、マスメディアは確認し、その中で働く者の間で共有しておくべきだと思うのですが、北朝鮮がミサイル発射と核実験を繰り返し強行する中で、「危機」が強調され、それに慣らされ、感覚が鈍くなってはいないか、ということを感じています。

 北朝鮮のミサイル実験は「有事」なのかと言えば、攻撃を受けているわけではないので「有事」とは言い難いでしょう。しかし、有事法制に基づく「指定公共機関」の枠組みが発動している状況は「準有事」ととらえてもいいように思います。なのに、マスメディア自身がその自覚を欠いてしまえば、公権力による情報統制・操作はいともたやすく行われてしまうのではないか。そういう懸念を持っています。

▼政府の責任を見えにくくする「自己責任」

 北朝鮮のミサイル発射に対しては、政府の要請で各地で避難訓練が実施されています。また報道でも、Jアラートなどでミサイル発射の緊急速報が流れたらどんな行動をとるべきかをマニュアル風にまとめた記事もありました。例えば読売新聞は30日付朝刊の社会面に「ミサイル発射の警報が出された時に取るべき行動」の表と記事を掲載。内閣官房国民保護ポータルサイトの記載を基に「屋外にいる場合 頑丈な建物や地下街などに避難する」「建物がない場合 物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」「屋内にいる場合 窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」と紹介しています。

 確かに、仮にミサイルが落下してきた場合、こうした行動によって命が助かることもあるでしょうし、訓練もまったく無意味とまでは思いません。しかし気になるのは、「いざという時に備えて、日ごろが大事」との主張に「自己責任論」が見え隠れしていることです。例えば読売新聞は29日付夕刊2面に危機管理が専門の研究者のコメントを掲載しました。そこでは「肝心なのは、Jアラートで情報を得た住民が、どう自分の身を守るかだ。各地で避難訓練を実施しているが、万一の事態が起きたときに、本当にどうすれば命を守ることができるか、政府はもっと情報発信に努め、住民とともに実効性の高い訓練を行う必要がある」とされています。

 巨大地震や台風ならまさに「どう自分の身を守るか」が問われるのかもしれません。しかし、ミサイルの着弾は自然災害と同じような人智ではいかんともしがたい厄災でしょうか。そうではなくて、ミサイルが日本に着弾する事態とは、外交や安全保障の失敗、つまりは失政の結果です。本来は、政府が「国民の命を守る」と言うのなら、何よりもミサイルを撃たせないことが必要です。様々な要因があるにせよ、政治の評価は結果においてなされるものとすれば、北朝鮮がミサイルを撃ち続け、ついには日本政府が着弾に備えた警報まで出すに至った事態は、本来はそれ自体が政治の失策とみなされても仕方がないのではないかと思います。

 そうなのに、そこで「自己責任」がまぶされると、「撃たせない」という政治の責任が見えにくくなってしまうのではないか。本当に国民を守ると言うなら(守るべきは国民だけではなく、日本に暮らす、滞在するすべての人々なのですが)、北朝鮮にミサイルを撃たせないようにするしかないのに、その展望を見いだせていない現状では、政府は責務を果たしていません。しかしJアラートの精度を上げるとか、訓練をもっとやるとか、国民自身の意識が大事とか、そんな話ばかりしていると、政府の責任の問題がどんどんかすんでいきます。政府の無責任を容認してしまうことを危惧しています。

▼既に踏み出している軍拡競争の道

 国民を守るためには、根本的には北朝鮮にミサイルを撃たせないことが必要ですが、その方法論については、必ずしも外交的、政治的アプローチばかりではないようです。一部のマスメディアでも取り上げられることが増えてきた「敵基地先制攻撃」論です。北朝鮮がミサイルを日本に向けて撃つ前に、先制自衛権の行使として発射基地・拠点を軍事力でたたく、そのための装備を日本も持つべきだ、という考えで、日米同盟の共同作戦のほか、日米同盟を見直して日本単独で、というバリエーションもあるようです。しかし、撃ち漏らしがあった場合は全面戦争になる可能性があり、そうなると日本の側が仕掛けた戦争という評価は免れえないように思います。憲法9条との整合性は到底、取れないように思います。

 別の観点から思うのは、果てしない軍拡競争につながるのではないかということです。仮に日本が敵地攻撃力を持てば、北朝鮮に限らず仮想敵国は防御力を増したり、ミサイル発射拠点の分散化を図るでしょう。そうなると、またそれに合わせて日本は攻撃力を増強しなければなりません。

 実は現状でも、日本は果てしない軍拡競争に踏み出しているのではないかと考えています。しばらく前から自衛隊はイージス艦やPAC3など、米軍と相互に補完するミサイル防衛システムを整備してきました。しかし、北朝鮮が複数の弾道ミサイルを同時に発射する能力を誇示すると、現状では迎撃しきれないとして、地上配備のイージスシステムの整備を決めました。しかし、仮想敵国がさらに同時攻撃能力を高めればどうなるのでしょうか。「防衛」と言えば必要不可欠の最低限の軍備のように聞こえるかもしれませんが、そこには際限のない軍拡競争が待っているように思えてなりません。

 第2次世界大戦当時の英国首相チャーチルが、太平洋戦争開戦直後、2カ月余でマレー半島全域を日本軍に占領されシンガポールも陥落したことを巡って「あなたは『日本兵が10人来てもイギリス兵1人で十分だ』と言っていたではないか」と言われて「日本兵が11人で来たんだ」と答えたとの小話を耳にしたことがあります。出典を調べてもよく分からないので、あるいは作り話かもしれませんが、その内容自体は、軍事の根本原理を示しているように思います。

 「敵基地攻撃論」も「ミサイル防衛システム」の強化にしても、その果てに何があるのかとの観点からも議論は必要だと感じます。そもそも、日本全土を射程に収めた北朝鮮の弾道ミサイルは実戦配備に就いているとされます。ミサイルが日本越えで飛んで行ったのも初めてではありません。日本の国土と住民の安全の確保の観点からは、何も新しい段階に進んだわけではないように思います。「新たな脅威」をことさらに強調すればするほど、政府の責任がどんどん見えづらくなるように思います。

▼核廃絶の視点

 北朝鮮がミサイル開発に熱心なのは、核兵器の運搬手段だからです。その意味では、「核」の問題です。ことし7月、国連で核兵器禁止条約が採択されましたが、核兵器保有国は不参加。米国の核の傘に入っている日本も不参加でした。北朝鮮の核開発を擁護するつもりは全くありませんが、一方で「核」に依存する国々が 決して少なくなく、なおかつそうした国々が北朝鮮に核開発の放棄を迫る状況は、矛盾と言えば言えるのではないかと思います。そういった大きな視点からの社会的議論も必要ではないかと思います。

 核に関連してもう一つ思うのは原子力発電所です。Jアラートによって電車は止まりますが、原子力発電所は動いています。万が一の備えを言うのなら、停止させればそれだけ不安は減少するのではないでしょうか。

▼桐生悠々の「関東防空大演習を嗤う」

 一方で、9月1日までの報道を見て、当初の疑問が一定程度、解消したものもあります。例えばミサイルの動きを完全に把握と言いながら、Jアラートはミサイルの飛行コースと離れた長野県や北関東でも鳴らされたのはなぜか、疑問を感じていました。これについては、ミサイルの飛行コースの見極めには一定の時間がかかる上、飛行コースの直下だけでなく、隣接地域も警報の対象になる設定になっていること、今回はJアラートの発出時点で予想コースを「東北地方」としていたため、北海道や南は長野県まで含まれた、との共同通信の記事などがありました。

 しかし、やはり日ごろの訓練が大事、ということばかりが強調されるとしたら違和感があります。あらためて思い起こすのは戦前、「抵抗の新聞人」として知られた桐生悠々が残した論説「関東防空大演習を嗤う」のことです。このブログでも、以下の2009年4月3日の記事「ミサイル防衛を嗤う」を始め、何度か取り上げてきました。

news-worker.hatenablog.com

  「関東防空大演習を嗤う」は1933(昭和8)年8月11日、折から東京を中心とした関東一帯で行われた防空演習を批判して、当時主筆を務めていた長野県の信濃毎日新聞に掲載した社説です。現在は著作権が切れているため、ネット上でも無料の青空文庫で読むことができます

http://www.aozora.gr.jp/cards/000535/files/4621_15669.html

 戦前の文体で少し読みづらいのですが、要するに「東京に敵機が飛来するようでは戦争に負けるのは必至だ」と喝破していました。敵機が東京に接近する以前に撃墜しなければならないのだから、都市の防空訓練は意味がない、というわけです。決して反戦ではないかもしれません。しかし、後年の敗戦の惨状を言い当てていました。

 翻って今日、ミサイル防衛やJアラートを始めとした警報態勢、さらには訓練の奨励と、状況は当時と似ている面が決して少なくないように思います。ミサイルの撃墜は確実とは言い切れない、警報発出までに時間がかかる、安全性が高い避難場所は十分とは言えない―。万が一、ミサイルが日本に落下すれば、そして仮に核が搭載されていれば、どんな惨状になるかは、広島、長崎の被爆者の方々が語り伝えている通りです。

 今、マスメディアが努めるべきは、ひたすら危機を強調して軍事的対応の議論を高めるのではなく(その議論を完全否定はしませんが)、国際社会と連携した外交的、平和的解決のための議論に資する情報伝達や意見の紹介だろうと思います。

 桐生悠々が「関東防空大演習を嗤う」を世に問うたのは、満州事変から2年後のことでした。当時としては執筆に相当の覚悟が要る「反軍」の言説です。卓見もさることながら、この点にこそ悠々のすごさがあると、80余年後の今日、同じ新聞の仕事に就きながら思います。

地域に根差すジャーナリズムの平和の視座~8月15日のブロック紙・地方紙の社説

 日本の敗戦から72年がたちました。今年の8月15日は、北朝鮮が核武装化を公言してミサイル実験を繰り返し、それに米国のトランプ大統領が武力行使を示唆した威嚇で応じるという国際情勢の中で迎えました。いつの年にも増して、日本の平和主義が試されているのだと感じます。
 15日付の地方紙、ブロック紙の社説をネットで読みました。戦争を直接経験した方々が少なくなっている中で、戦争体験を社会でどう継承し、それを現憲法の平和主義の下で、平和の維持にどうつなげていくか―。ほとんどの社説にはそうした問題意識が共通していると感じます。
 いくつかの社説は、空襲などそれぞれの地域の戦争の記録や記憶を地域で伝え継いでいくことが、平和を維持することにつながる、との訴えが共通していました。例えば徳島新聞や熊本日日新聞、南日本新聞の社説、さらには神戸新聞の社説は、地域に根差すジャーナリズムの平和への視座として、強く印象に残ります。
 以下に、ネットで全文を読むことができた(15日現在です)地方紙、ブロック紙の社説の見出しと、一部の地方紙、ブロック紙についてはその一部を引用して紹介します。

▼北海道新聞「きょう終戦の日 平和守り抜く覚悟 次代に」憲法の理念見失うな/核放棄の橋渡しこそ/加害の歴史忘れない 

 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/125687?rct=c_editorial

 忘れてならないのは「加害の歴史」だ。アジア各国で2千万人が犠牲になったとも言われる。
 安倍氏と同じ改憲論者で99歳の中曽根康弘元首相は「中国に対しての軍事行動は侵略であったと言わざるを得ない」と自著で記す。
 戦後生まれが8割を超え、戦争体験を直接語れる人は減っている。でも映像や展示、記録を通じ、戦争の残虐性や悲劇を追体験することはできる。それが二度と同じ過ちを繰り返さない力になる。 

▼河北新報「終戦記念日/英知結集して平和築く力に」
 http://www.kahoku.co.jp/editorial/20170815_01.html 

▼デーリー東北「終戦記念日 平和な世界の構築を」
 http://www.daily-tohoku.co.jp/jihyo/jihyo.html 

▼秋田魁新報「終戦から72年 平和守れるか正念場だ」
 http://www.sakigake.jp/news/article/20170815AK0010/

▼岩手日報「終戦の日 『20年後』を現代が映す」
 http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2017/m08/r0815.htm 

 文民統制は、軍部の暴走を止められなかった過去の反省に基づく。暴走は日中戦争で噴出するが、その20年前に源があることは見逃せない。
 「シベリア出兵」の締めくくりで、麻田准教授はこう指摘した。
 「日中戦争では、シベリア出兵に参加した多くの将校たちが昇進して指揮をとっているが、その経験が生かされたようにも見えない」。教訓や反省が20年後に生きない。そこに悲劇があると見る。
 組織に巣くう問題を改めない限り、歴史は繰り返される。「20年後」の日本の姿は既に現代が映している。それを胸に刻まなければならない。 

▼福島民報「【終戦から72年】平和の尊さを次世代に」
 http://www.minpo.jp/news/detail/2017081544226

▼福島民友「終戦の日/平和のバトン確実に次代へ」
 http://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20170815-196051.php

▼信濃毎日新聞「憲法の岐路 自衛隊明記案 行き着く先を見据えねば」独り善がりな提案/衣の下のよろいは/「お試し」に乗らず
 http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170815/KT170814ETI090002000.php  

 ▼新潟日報「終戦の日に 『戦後』守る決意を持とう」9条をかみしめたい/重み増す一票の役割/戦争体験を知らねば
 http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20170815340688.html

▼中日新聞・東京新聞「誰が戦争を止めるのか 終戦の日に考える」武器商人カショギ氏/被爆者らの不屈の訴え/平和の世紀を求めよう
 http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2017081502000107.html

▼北國新聞「終戦記念日に 戦後の転換点に差し掛かる」 

 首相のいう2020年施行という改憲スケジュールは、政権の求心力低下で後退した印象であるが、憲法改正を具体的な政治日程に乗せた意味は大きい。
 (中略)
 ただ、9条をめぐる本質的な議論に踏み込まない改憲案には自民党内にも異論がある。現在の防衛省・自衛隊は行政機関の一つであり、自衛隊は「戦力」に該当しない武力を持つ「実力組織」とされる。が、対外的には軍隊と認識される、一種の詭弁の上にある中途半端な存在である。
 国と国民を守るために軍隊を持ち、志ある国民が軍人となって国を守るという、国際社会では普通の生き方を拒否することが戦後日本の平和国家としての歩みであった。今後ともそうした生き方に徹するのか、国のかたちを根本から問い直すのかという本質論に迫られている意味でも戦後の転換点にあると認識したい。 

 ▼福井新聞「終戦の日 平和の先頭に立たない国」
 http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/227017 

 核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮の危険な挑発に軍事報復も辞さないトランプ米政権の動き、軍事力を背景にした中国の一方的な海洋進出、また過激派組織「イスラム国」(IS)のテロと無縁な国はどこもない。国際社会を覆う内向きなエゴイズムと暴力主義が日本を「過去」に急旋回させつつある。
 国連が掲げる国際平和の理想がなぜ揺らぐのか、なぜ愚かな戦闘が絶えないのか。そのことを考える原点として、自国の「過ち」に真摯(しんし)に向き合いたい。
 先の大戦に対する歴史認識や戦勝国の東京裁判に異を唱える勢力は根強い。それも含め分かりあう力が必要だ。戦前生まれが人口の2割を切った今だからこそ至高の財産である平和の尊さを学び、未来へ誓いを新たにする8月であらねば。 

 ▼京都新聞「終戦の日  事実を踏まえ、繰り返さない」傲慢になる向きあり/目の前にあの陸軍が/根拠なき言動に困惑
 http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20170815_2.html

▼神戸新聞「終戦の日/国の『過ち』と向き合って」戦後も続いた苦悩/被害と加害の歴史
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201708/0010463400.shtml 

 一人の女性の話をしたい。
 こちまさこさん。姫路市で長く暮らした。亡くなったのは5年前。87年の生涯だった。
 その名が知られるようになったのは、主婦をしながら続けた執筆活動による。
 (中略)
 こちさんは2008年に2冊の本を出版した。「満州 七虎力の惨劇」と「はりま 相生事件を追う」。「満州」では終戦時の開拓団の悲劇を描き、「はりま」では終戦直後、相生の造船所で起きた中国人労働者3人の殺害事件を掘り起こした。
 大陸で徴用された中国人の殺害は国際問題に発展する恐れがあった。日本人2人が加害者とされたが、真相が曖昧なままにされていた。地元に埋もれていた「加害の歴史」といえる。
 まだ終わらない「戦争」がたくさんあるのだと伝えて、こちさんは逝った。今、取材資料を残そうとする動きがある。 

▼山陽新聞「終戦記念日 より重み増す記憶の継承」
 http://www.sanyonews.jp/article/580536/1/

▼中国新聞「米朝の威嚇応酬 不測の事態、招く危うさ」
 http://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=365616&comment_sub_id=0&category_id=142

▼愛媛新聞「終戦72年 『戦争を始めない努力』を重ねよ」
 https://www.ehime-np.co.jp/article/news201708152737

 ▼徳島新聞「終戦記念日  空襲の記憶を平和の礎に」
 http://www.topics.or.jp/editorial/news/2017/08/news_15027587011436.html 

 長い間、徳島県民の記憶の底に埋もれていた太平洋戦争の傷痕に、触れたような気がした。
 1945年7月4日の徳島大空襲では、米軍の爆撃機が投下した焼夷弾が徳島市の中心部を焼き払い、約千人の市民が犠牲になった。
 大規模な空襲であり、体験者も多いことから、さまざまな形で語り継がれてきた。
 ほかにも、県内では空襲によって少なくとも15カ所で人的被害が発生し、217人の死者が出ていたことが、県警察史や徳島新聞の取材などで分かった。
 終戦から72年を迎え、当時の状況を知る人が少なくなる中で、掘り起こされた事実である。今こそ、空襲についての証言を書き残し、後世に伝えていかなければならない。
 (中略)
 戦後、日本は平和主義をうたう憲法の下で、武力を排した外交解決に専念してきた。
 平和を築くためには膨大な労力を要するが、戦争で崩壊させるのは一瞬だ。その教訓を次の世代に伝えるのは私たちの責務である。
 古里に深い爪痕を残した空襲は、戦争の悲惨さを肌で学ぶための教材になる。
 お年寄りが子どもたちに空襲体験を語り、戦争の愚かさを共有することで、平和の礎を築きたい。 

▼高知新聞「【終戦の日】平和の『芯』を守り抜く」
 http://www.kochinews.co.jp/article/118614/ 

 民主主義社会が認めるのは、権力による国民監視ではない。国民の側が権力を監視し、暴走を正していくのみだ。それが立憲政治であり、不戦の安全装置である。
 なぜ、よさこいへの共感が全国へ世界へと広がるのか。自由と平等、寛容の精神が祭りの背骨を貫くからではないか。自由民権運動発祥の地の真骨頂であり、民主主義の本質と言えよう。胸を張りたい。
 「不戦の誓い」に立つ戦後民主主義こそが、日本の平和の「芯」を成す。憲法前文は国際平和への貢献も要請する。その普遍的原理を守り抜く決意を新たにしたい。

▼西日本新聞「終戦の日 『戦後』を永続させてこそ」105歳の「遺言」/“草の根”の広がり/憲法を生かす道へ
 https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/351003/ 

 平和憲法を持つ日本が主導すべきは本来、対話外交や人道面での国際協力です。現実は軍事的対応に傾斜し、近隣の中国、韓国との対話さえ滞りがちな状況です。
 東アジアでは、人の往来が拡大しています。昨年の訪日客は中韓を中心に2403万人に達し、今年はさらに増加する勢いです。
 そこでは国民同士の相互理解が徐々に進み、「知日」「親日」の機運が醸成されつつあります。訪日客誘致を経済効果の物差しだけで測るのではなく、紛争の抑止力として捉える視点が必要です。
 かつて日本は国際情勢を見誤りました。そこにメディアが追従した轍(てつ)も今こそ、想起しなければなりません。歴史の教訓を決して風化させず、政治を厳しく監視していく-。未曽有の犠牲の上に成り立つ「戦後」を永続させる責任と覚悟が私たちに求められていることを改めて肝に銘じます。 

▼佐賀新聞「終戦の日 平和への決意あらたに」
 http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/455105

▼熊本日日新聞「終戦記念日 過去に学ぶ意志の大切さ」空襲の阿鼻叫喚/語り継ぐべき記憶/勇ましさの無責任
 http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20170815001.xhtml 

 熊本市は終戦直前の8月10日にも、800機以上ともいわれる米機による大規模爆撃に襲われた。7月と合わせた被害は死者・行方不明者630人、重軽傷者1317人。被災戸数は1万1906戸に上り、面積では市街地の約3割が焼失したと記録されている。
 全体では300万人超とされる犠牲者を出した先の戦争から72年が経過するが、ここであえて生々しい手記に触れたのは戦争の記憶の風化を危惧[きぐ]するからにほかならない。終戦の前に生まれた世代は全人口の2割を切った。どうにもならないことだが、当事者の声は年々細っていくばかりだ。だからこそ過去のありのままを知り、次世代に語り継いでいく大切さを胸に刻む必要があるだろう。
 そしていずれは戦争体験者が存在しない時代を迎え、先の戦争は文字通り「史実」となる。そのとき、「歴史に学ぶ」ことがより重要になるべきだが、戦争の記憶や記録をきちんと残しておかなければ、歴史はゆがんだものにしかなるまい。正確な歴史を前にしたとしても、「学ぶ意志」がなければ学んだことになるまい。戦争の惨禍を二度と繰り返さないという自戒を込めた教訓を真正面から受け継ぎ、学ぼうとする社会になっているか。一人一人が常に留意する必要もあるのではないか。
 そうしたことが戦後72年間続く「平和国家日本」を100年、200年と維持していくことにつながると信じる。今夏、掘り出された不発弾「M76焼夷爆弾」は「戦争を忘れるな」と警告しているように思えてならない。 

▼南日本新聞「[終戦記念日] 不戦の誓いを未来へ引き継ぐために」安保法の実績づくり/庶民史を掘り起こす
 http://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=86373 

 戦争の記憶をどう受け継ぎ、歴史の教訓に学ぶかは待ったなしの課題である。
 鹿児島大学教育学部の教員・学生と、出水市の市民グループは連携して戦争体験者から聞き取り調査を行い、証言の分析に取り組んでいる。
 掘り起こした戦争の庶民史は証言記録として集積し、「地域の歴史資産」を目指すという。注目される試みである。
 地域から戦争を見つめ直す視点は重要だ。米軍は1945年11月に吹上浜、志布志湾などに上陸する本土侵攻作戦を立てていた。
 もし作戦が決行されていれば、南九州は沖縄同様の激戦地になった可能性がある。想像力を働かせれば、無関心ではいられない。
 県内では本土決戦に備え、特攻艇の出撃基地や砲台、トーチカなど多くの軍事施設が建造された。だが、その後は放置や取り壊しも多い。
 戦争遺跡やその記録を保全する意義を再確認したい。足元の歴史に向き合い、平和の尊さをかみしめる必要がある。 

▼沖縄タイムス「[終戦の日に]今こそ「不戦の誓い」を」
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/128080  

 戦後72年たって、戦争ができる社会への編成替えが急速に進み、戦争を起こさせない社会的な力が弱まっているのである。
 政府与党は、数の力に物を言わせ、特定秘密保護法、安全保障関連法、「共謀罪」法を強行的に成立させた。いずれも日本の社会の在り方を根本的に変える法制である。
 米朝が戦端を開いた場合には日本は集団的自衛権を行使するため自動的に戦争に巻き込まれる可能性が高い。
 国民意識も変わってきた。中国、北朝鮮を敵視する排外主義が横行し、ネットや雑誌では「反日」「売国奴」などの罵詈(ばり)雑言が飛び交う。国民の分断が進み、ささくれだった空気が漂っている。
 「平和」「民主主義」「人権」という言葉を聞いただけで、アレルギー反応を起こし、忌避するような動きが広がりつつあるのも気掛かりだ。
 国会は肥大化する行政権に対し、チェックする役割を果たしているとはいえない。三権分立が機能不全に陥ると、戦争を止める力が弱まる。 

▼琉球新報「終戦72年 平和国家の存在感示せ」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-555564.html 

 一方で弾道ミサイルの発射など挑発的行為を繰り返す北朝鮮や、それに武力での対抗を示唆するアメリカなど、わが国を取り巻く状況はかつてないほど緊張を増している。
 だがこうした緊張が増す今だからこそ、平和国家・日本が存在感を発揮しなければならない時期でもある。
 対米従属から脱し、東アジアの平和構築に日本は力を注ぐべきだ。有事になれば、真っ先に住民が犠牲になる。これは沖縄戦で得た教訓だ。東アジア諸国と国境を接する沖縄を軍事拠点でなく、平和拠点にしなければならない。
 今年6月に亡くなった元県知事の大田昌秀氏は沖縄の心を問われ「平和を愛する共生の心」と述べた。
 8・15を迎えるに当たり、先の大戦、そして沖縄戦から得た教訓、反省をいま一度心に刻みたい。 

 

【追記】2017年8月16日7時55分
 中国新聞の社説を追加しました。 

 

「あなたはどこの国の総理ですか」~被爆者が安倍首相に投げ掛けた言葉は広く知られていい

 日本の敗戦から72年の8月です。8月6日の広島、9日の長崎の原爆投下の日は、東京で静かに黙とうしました。
 7月に国連で核兵器禁止条約が採択されながら、唯一の被爆国である日本の政府は、条約に参加していません。米国の核の傘の下にいることの矛盾だと感じます。そうした中で迎えた広島、長崎の原爆の日で、強く印象に残ったのは、安倍晋三首相と面会した長崎の被爆者団体の代表が「あなたはどこの国の総理ですか」との言葉を投げ掛けたことです。
 毎日新聞の記事は以下のように伝えています。一部を引用します。 

 「あなたはどこの国の総理ですか」。長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長を務める川野浩一さん(77)は被爆者団体からの要望書を安倍首相に手渡した際に迫った。「ヒバクシャの願いがようやく実り、核兵器禁止条約ができた。私たちは心から喜んでいます。私たちをあなたは見捨てるのですか」
 面談は式典後に首相らが被爆者団体から援護策などの要望を聞く場として設けられている。通常は冒頭で静かに要望書を手渡すが、川野さんは「子や孫に悲惨な体験をさせてはならないというナガサキの72年間の訴えが裏切られたという思いがあった」と異例の行動に出た理由を話す。川野さんは安倍首相に「今こそ日本が世界の先頭に立つべきだ」とも訴えたが、明確な返答はなかった。 

 ※毎日新聞「『あなたはどこの国の総理ですか』 被爆者団体、安倍首相に 禁止条約に批准しない方針で」=2017年8月9日

https://mainichi.jp/articles/20170810/k00/00m/040/142000c

 この日、安倍首相は長崎市の平和祈念式典でのあいさつでは、核兵器禁止条約には触れないまま「真に『核兵器のない世界』を実現するためには、核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要です。我が国は、非核三原則を堅持し、双方に働きかけを行うことを通じて、国際社会を主導していく決意です」と述べました。午後の記者会見では、条約に対し「核兵器国と非核兵器国の隔たりを深め、核兵器のない世界の実現をかえって遠ざける結果となってはならない」「我が国のアプローチと異なり、署名、批准を行う考えはない」と述べたと報じられています。
 どこか他人ごとのような言い回しだと感じます。そうした安倍首相に向けられた「あなたはどこの国の総理ですか」との言葉は、被爆者の怒りや落胆を端的に込めたものと思います。中でも、高齢化に伴って被爆者が直接、体験を語り伝えていく時間が少なくなり、それとともに社会で被爆体験が忘れ去られていくのではないか、との思いは強いでしょう。そうなってしまうことによって、唯一の被爆国という立場への鈍感さというか、無関心というか、そうしたものが日本の社会でますます助長されてしまう、核兵器に関しての当事者意識がますます希薄になっていってしまうのかもしれないとの危惧は、私も抱いています。
 だからこそ、この「あなたはどこの国の総理ですか」との言葉が被爆者によって安倍首相に投げ掛けられたことは、広く知られていいことだと思いますし、被爆体験の風化を許さない意味でも、マスメディアが報じるべき出来事だろうと思います。
 わたしの手が届く東京発行の新聞各紙で、8月10日付朝刊でこの言葉を伝えたのは朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の3紙でした。

f:id:news-worker:20170810115812j:plain
【写真】「あなたはどこの国の総理ですか」との被爆者団体代表の言葉を伝える朝日新聞・社会面(右)、毎日新聞・社会面(左)、東京新聞・2面(下)の各紙面 

 ※追記 2017年8月10日22時40分
 長崎新聞が、安倍首相との面会後の被爆者団体代表らの反応などを詳しく報じています。一部を引用して紹介します。

http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kennaitopix/2017/08/10090847052128.shtml 

 県被爆者手帳友愛会の中島正徳会長(87)も「唯一の戦争被爆国の日本が先頭に立てば核廃絶の世論が高まる。政府は核保有国と非核保有国の『橋渡し』をすると言うが、本気でやろうとしているように感じない」と落胆。長崎原爆遺族会の本田魂会長(73)は「『核の傘』で守ってもらっている米国に気を使い、何も言えないのではないか」ともどかしそうに話した。
  県被爆者手帳友の会の井原東洋一会長(81)は「政府は隣国との緊張を緩和するのではなく、高める側に回っている」と指摘。終了後、首相とあいさつした際、「非核三原則の堅持や核廃絶への努力などこれまでの発言を実行してほしい」と求めたという。「やはり首相なのでわずかでも期待しなければならない。支持率も低下してきているので聞く耳は持っていてほしい」と述べた。

自民党総裁「続けてほしくない」52%(朝日新聞)、政権「すぐに辞めて」29%「来年9月まで」43%(ANN)~安倍晋三首相に厳しい調査結果(備忘)

 前回の投稿(安倍改造内閣に民意の視線は厳しい~世論調査、「続落」JNNの前回調査は1カ月余前)の続きです。先週末実施された世論調査の結果から、安倍晋三首相への信頼感や期待度を示すと思われる項目をいくつか、書きとめておきます。
 内閣支持率の急落の最大の要因は、安倍首相自身の信頼の失墜でしたが 、内閣改造を経ても、安倍首相に対しては厳しい結果となっています。


【朝日新聞調査】8月5~6日実施
▼あなたは、安倍首相の経済政策で、日本経済が成長することを期待できると思いますか。期待できないと思いますか。
「期待できる」30%
「期待できない」53%
▼安倍さんの自民党総裁としての任期は来年の秋までです。あなたは、来年の秋以降も、安倍さんに自民党の総裁を続けてほしいと思いますか。それとも、続けてほしくないと思いますか。
「続けてほしい」30%
「続けてほしくない」52%

【ANN調査】8月5~6日実施
▼あなたは、安倍総理に、あとどのくらい政権を担当して欲しいと思っていますか?次の3つの中から、1つ選んでお答え下さい。
「なるべく長く続けてほしい」22%
「来年9月の自民党総裁任期まで」43%
「すぐに辞めて欲しい」29%

 

※参考過去記事

安倍改造内閣に民意の視線は厳しい~世論調査、「続落」JNNの前回調査は1カ月余前

 安倍晋三政権の内閣改造を受けた世論調査の結果が週明け、5件報じられました。前回の記事で紹介した8月3~4日に実施の調査4件と合わせて、おおむね調査結果が出そろったようです。5件の内閣支持率は以下の通りです(丸かっこ内は前回との比較、「P」はポイントです)。目を引くのは、8月3~4日に実施の調査も含めて計9件の調査のうち、8件は程度の差はあれ前回調査より「支持」が増えているのですが、TBS系列のJNNの調査結果のみ、下がっていることです。

・NHK 8月4~6日実施 「支持」39%(4P増) 「不支持」43%(5P減)
・NNN 8月4~6日実施 「支持」35・6%(3・7P増) 「不支持」47・3%(1・9P減)
・ANN 8月5~6日実施 「支持」37・6%(8・4P増) 「不支持」47・2%(7・3P減)
・JNN 8月5~6日実施 「支持」39・7%(3・6P減) 「不支持」59・0%(3・5P増)
・朝日新聞 8月5~6日実施 「支持」35%(2P増) 「不支持」45%(2P減)

 前回の記事で紹介した8月3~4日実施の調査結果は以下の通りです。
【8月3~4日実施】
・共同通信 「支持」44・4%(8・6P増) 「不支持」43・2%(9・9P減)
・読売新聞 「支持」42%(6P増) 「不支持」48%(4P減)
・日経新聞・テレビ東京 「支持」42%(3P増) 「不支持」49%(3P減)
・毎日新聞 「支持」35%(9P増) 「不支持」47%(9P減) 「関心がない」17%(±0)

 試みに各社の前回調査がいつだったかを見てみました。以下の通りです。
 7月22~23日 ※土日 毎日新聞
 7月21~23日 ※金土日 日経新聞・テレビ東京
 7月15~16日 ※土日 共同通信、ANN(テレビ朝日系列)
 7月8~9日 ※土日 朝日新聞
 7月7~9日 ※金土日 読売新聞、NHK、NNN(日本テレビ系列)
 7月1~2日 ※土日 JNN

 改造直後の内閣支持率を調べる趣旨から、前回からそう間をおかずに実施した調査が目に付きます。そうした中で、JNN調査は前回から1カ月余り間を置いての実施でした。1件だけ「支持」が下降しているのは、この辺の事情と関係している可能性があるように思います。
 他の調査結果では、朝日新聞が、前回調査から2ポイントのアップだった自社調査について、「横ばい」と評価し、今回の内閣改造について「支持率上昇効果はほとんど見られなかった」との分析を示しています。
 一方で、9件のうち8件は「不支持」が「支持」を上回っています。その差もJNN調査では20ポイント近くもあり、ほかにも10ポイント以上の調査結果が4件あります。1件のみ「支持」が「不支持」を上回った共同通信の調査結果も、その差は1・2ポイントしかなく、支持と不支持がほぼ拮抗していると見た方がいいように思います。
 全体を通じて、民意は依然として安倍晋三政権に厳しい見方をしていると感じます。

安倍改造内閣、なお「不支持」が「支持」上回る傾向~殊勝な首相、いつまで

 安倍晋三首相が8月3日に自民党役員人事と内閣改造を行ったことを受けて、マスメディア各社が3日から4日にかけて実施した世論調査の結果が報じられています。内閣支持率は各調査とも前回に比べて最大で9ポイントのアップ。内閣改造が一定の評価を得たと言えそうですが、4件の調査結果のうち3件は不支持が支持を上回っています。残り1件も良くて拮抗といったところです。 

・毎日新聞 「支持」35%(9P増) 「不支持」47%(9P減) 「関心がない」17%(±0)

・読売新聞 「支持」42%(6P増) 「不支持」48%(4P減)

・日経新聞 「支持」42%(3P増) 「不支持」49%(3P減)

・共同通信 「支持」44・4%(8・6P増) 「不支持」43・2%(9・9P減)

※カッコ内は前回比、Pはポイント 

 7月の世論調査での内閣支持率の急落、続落は、安倍首相自身への評価の低下が最大要因でした。そのことは安倍氏自身が重々承知しているようで、最近は低姿勢で殊勝な受け答えが目立ちます。8月3日の内閣改造後の記者会見でも、冒頭、森友学園、加計学園を巡る問題や防衛省のPKO日報問題で国民の不信を招いたとして「改めて深く反省し、おわび申し上げたい」と、約10秒間にわたって頭を下げました。そうした安倍首相を世論はどう評価したか、各世論調査の個別の設問への回答状況を見ると、まだ厳しい評価は続いているようです。

 例えば、内閣を「支持しない」と答えた人にその理由を尋ねたところ、毎日新聞調査では「安倍さんが首相だから」と答えた人は、前回の22%から33%に上昇しています。読売新聞調査では「首相が信頼できない」が54%に上りました。共同通信の調査でも、「首相が信頼できない」が前回比4・4ポイント増の56・0%に上っています。

このほか以下に、各調査の回答状況で目に付いたいくつかを書きとめておきます。

【内閣改造への評価】

・毎日新聞

 「(内閣に)期待が高まった」19% 「変わらない」48% 「期待できない」27%

・共同通信

 「評価する」45・5% 「評価しない」39・6%

【安倍首相について】

・毎日新聞 安倍首相の後任の自民党総裁について

 「安倍首相のままでよい」20% 「石破茂氏がふさわしい」21% 「岸田文雄氏がふさわしい」11%

・日経新聞 次の政権の首相にふさわしい人は

 「石破茂氏」22% 「安倍晋三氏」17% 「小泉進次郎氏」11% 「小池百合子氏」9% 「岸田文雄氏」9%

・日経新聞 来年9月の自民党総裁選で安倍晋三氏が3選され首相を続投することには

 「賛成」36% 「反対54%」

・共同通信 安倍首相の下での憲法改正に

 「賛成」34・5 「反対」53・4%

 さて、3日の会見で安倍首相は「安倍内閣はこれからも経済最優先だ」と強調しましたが、それよりも重要だと思ったのは、憲法改正について「スケジュールありきではない」と明言したことです。これまでは今年秋の臨時国会に自民党の改憲案を提出し、2020年に新憲法を施行するとの目標を掲げていましたが、修正しました。東京発行の新聞各紙も4日付朝刊では「改憲日程 首相が軌道修正」(朝日新聞)、「改憲日程ありき 否定」(毎日新聞)などと、この発言を4紙が1面トップの見出しに取りました。中でも産経新聞は脇見出しに「秋の提示方針 先送り」と踏み込みました。産経の記事によると、安倍首相側近の萩生田光一・自民党幹事長代理は3日夜、安倍首相の発言について記者団に「軌道修正した」と明言したとのことです。共同通信の配信記事も「秋の改憲案提示先送り/首相、日程ありき否定」と産経と同様に踏み込んだ見出しを取っており、地方紙の紙面に掲載されています。ひとまず、自民党の改憲案提出は先送りになったと受け止めていいように思います。

 しかし、だからといって安倍首相が改憲を自分の手で行うことをあきらめたわけではないでしょう。改憲勢力が衆参両院で、改憲発議に必要な3分の2超の議席を占めている状況は今も変わりはありません。何としても、自民党総裁3選を果たし、改憲を成し遂げたいはずです。だから今は、内閣支持率を回復させ、「安倍1強」の求心力を回復させることを全てに優先させるつもりなのでしょう。手堅い政権運営に努め、殊勝さを最大限にアピールするつもりなのだろうと思います。会見で10秒間、頭を下げたのはその手始めでしょう。それもこれも、自民党総裁選で3選を果たし、憲法改正を自分の手で実現させるためだと思います。その殊勝さが一時的なものか、そうでないのか。問われているのは、以前の数をたのんだ傲慢な政治姿勢が本当に変わったのかどうかでしょう。 

 以下に東京発行各紙の4日付朝刊での1面の本記(事実関係を書いた、中心になる記事)と、各社の政治部長らの署名記事、および社説の見出しを書きとめておきます、各紙が今回の内閣改造をどう受け止めているかがうかがわれるのではないかと思います。(いずれも東京本社発行の最終版)

 ▼朝日新聞

1面トップ本記「改憲日程 首相が軌道修正/自民原案『秋提出こだわらず』」

1面「首相自身は変われるのか」佐古浩敏・政治部長

社説「内閣改造 強肩と隠蔽の体質正せ」

▼毎日新聞

1面トップ本記「改憲 日程ありき否定/首相 原点回帰を強調/第3次改造内閣発足/『不信招きおわび』」

1面「首相の心構え一つだ」佐藤千矢子・政治部長

社説「安倍首相が窮余の内閣改造 政治姿勢も手法も変えよ」許されない疑惑隠し/アベノミクスの検証を

 ▼読売新聞

1面トップ本記「経済再生を最優先/首相 改憲『日程ありき』否定/第3次改造内閣」

1面「拝啓 安倍晋三様/信無くんば立たず」橋本五郎・特別編集委員

社説「安倍内閣改造 『経済最優先』で原点回帰せよ/堅実な布陣で負の連鎖断てるか」政策テーマの整理を/防衛省再建を急ぎたい/異論聞く度量が大切だ

 ▼日経新聞 ※1面トップは「トヨタ、マツダに出資」

1面本記「首相『最優先は経済再生』/第3次改造内閣発足」

3面「アベノミクス最後の機会」内山清行・政治部長

社説「改造内閣への注文(上) 政権への信頼回復こそが急務だ」政権のおごりへ批判/北の脅威、待ったなし

 ▼産経新聞

1面トップ本記「改憲『日程ありきでない』/秋の提示方針 先送り/首相、防衛大綱見直し指示」

社説(「主張」)「内閣改造 憲法改正へ歩み止めるな/北の脅威から国民を守り抜け」政権基盤の再構築急げ/暮らしの安定に注力を

▼東京新聞

1面トップ本記「首相が改憲姿勢 修正/『スケジュールありきではない』/第3次安倍第3次改造内閣発足」

「変わるのか、変わらないのか」金井辰樹・政治部長

社説「改造内閣が始動 憲法守る政治、今度こそ」真相の解明が先決だ/民主的手続きを軽視/政治姿勢改める必要

 f:id:news-worker:20170806011729j:plain

稲田朋美氏をかばい続けた安倍晋三首相の責任を各紙そろって指摘~PKO日報隠隠蔽問題、あいまいな監察結果に疑問

 陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報が廃棄したとされながら、その後、陸自内で保管されていたことが明らかになった問題を巡って、防衛省の特別防衛監察の結果がまとまり、稲田朋美防衛相が7月28日に発表しました。その席上、稲田氏は防衛相の職を辞すことを表明しました。

 このブログでも触れていた通り、稲田氏は2月に、保管の事実を非公表とする方針を防衛省幹部から伝えられ、了承していたと報じられています。特別防衛監察はこの点については、防衛省幹部が集まり稲田氏も同席した会議の場で、陸自側から日報のデータ保管の報告もあった可能性は否定できないとした上で、データを非公表とする方針を稲田氏が了承した事実はないとしました。稲田氏自身は会見で「報告を受けた認識は今でもなく、監察の結果は率直に受け入れる」と強調しました。辞任は隠蔽に関与したからではなく、監督責任からということのようです。

※参考過去記事

news-worker.hatenablog.com

  稲田氏の去就を巡っては、この前日27日夜に、NHKが「稲田氏が辞意」と先行して伝え、マスメディア各社が追う展開となり、東京発行の新聞各紙も28日付朝刊で大きく報じました。特別防衛監察の結果も含めて、28日付夕刊、29日付朝刊と、大きな扱いの報道が続きました。

 東京発行の新聞各紙の報道で感じるのは、稲田氏の辞任を巡って責任は安倍晋三首相にあるとの点で、各紙の論調が一致していることです。稲田氏は防衛相が務まるだけの資質を欠いていることが明らかになった後、更迭する機会も何度もあったのに、安倍首相はかばい続けてきました。その挙句に、稲田氏の隠蔽への関与が取りざたされ、防衛省内は混乱に陥りました。その責任は安倍氏自身にあるということを、おおむね各紙とも指摘しています。第2次安倍政権発足後、安倍首相への評価や主要な政策を巡って、新聞各紙は支持と批判・慎重姿勢とに2極化する傾向が強まっています。その中で今回は、安倍氏自身に直接に関わることがらであるだけに、各紙の論調がそろったことには、権力に対するマスメディアのジャーナリズムの在り方の観点から、相応の意義があるように思います。

 もう一つ特徴的だと感じるのは、稲田氏が日報の保管の報告を受けていたか否かについて、各紙が程度に差はあれ、特別監察の結果に疑問を投げ掛けていることがおおむね共通していることです。新聞各紙やマスメディアは独自の取材で、稲田氏が報告を受けていたとの政府関係者らの証言を押さえていました。連日、そうした証言が報じられましたが、特別監察は当事者間の異なった主張をあえてそのままにし、稲田氏の報告については、可能性は否定できないという評価を示しつつ、稲田氏が了承したかどうかについては、明確に稲田氏の主張を採用しました。仮に、稲田氏が報告を聞きながら、その場は無言だったとすれば、報告した側はそれを暗黙の了解、すなわち了承と受け止めたのかもしれません。そうした点の究明にまでは特別監察は深入りを避けた印象があります。本来、特別監察の対象に大臣は入っていないことによるための、ある種の忖度なのかもしれませんが、すっきりしない結論です。各紙も「日報、疑惑残したまま」(朝日新聞・28日付夕刊社会面)、「全容解明ほど遠く」(読売新聞・28日付夕刊1面)などと、端的に特別監察結果への疑問を示しています。

 一方で、仮にマスメディアの独自取材と報道がなかったら、特別監察が稲田氏への報告の有無や、稲田氏の隠蔽への関与を調査の対象にすることもなく、従って報告ももっと内容の薄いものになっていた可能性が高かったでしょう。そういう意味では、特別監察の結果があいまいなものに終わったとはいえ、稲田氏の関わりについて新聞各紙、マスメディアが報じ続けてきたことには、相応の意義があったのだとひとまずは認めていいと思います。

 以下に備忘を兼ねて、稲田氏が特別防衛監察の結果を発表し、自らの防衛相辞任も表明したことを伝える7月28日付夕刊について、東京発行5紙(朝日、毎日、読売、日経、東京の各新聞。産経新聞は東京では夕刊発行なし)の主な記事の見出しを書きとめておきます。いずれも東京本社発行の最終版です。

f:id:news-worker:20170731074755j:plain 

【7月28日付夕刊】

▼朝日新聞

・1面トップ「稲田氏関与 認定せず/PKO日報問題 5人を懲戒処分/非公表・削除 幹部らが支持/特別防衛監察」

「稲田氏辞任『責任痛感』/後任は岸田外相兼務」

・2面・特別防衛監察の結果(要旨)

・社会面トップ「日報 疑惑残したまま/稲田氏『報告を受けた認識ない』」

「組織の『隠蔽体質』問うとき」解説・谷田邦一記者/「陸自幹部『心の距離 開く一方』」

 

▼毎日新聞

・1面トップ「稲田防衛相が辞任/日報非公表 了承は否定/特別監察結果 関与あいまい」

「次官・陸幕長ら処分」/「首相『任命責任ある』/岸田外相が防衛相兼務」

・10面(総合)「稲田氏辞任 首相周辺『やむなし』/野党、任命責任追及へ」/PKO日報特別防衛監察の結果 要旨

・社会面トップ「真相 ほど遠く/『報告 認識ない』/稲田氏、潔白を強調」

「人選ミス明らか」岩井奉信日本大教授(政治学)/「第三者の調査必要」危機管理に詳しい「リスク・ヘッジ」社長の田中辰巳さん/「日報は10年保存」/「『潔さがない』防衛省内部の声」

・第2社会面「隠蔽 省ぐるみ/日報『公文書でない』」/「制度信頼損なう」NPO法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長

 

▼読売新聞

・1面トップ「稲田防衛相 辞任/日報非公表 岸田外相が兼務/首相、任命責任認め陳謝」

「稲田氏関与 認定せず/『報告』は受けた可能性/次官ら5人懲戒/特別監察結果」/「全容解明 ほど遠く」社会部・大野潤三記者 ※解説

・3面「防衛相辞任 安倍政権に痛手/与党内、対応を批判」/特別防衛監察結果の要旨

社会面トップ「『日報』あいまい決着/稲田氏『報告 今も認識ない』」

・第2社会面「隠蔽 組織ぐるみ」不開示/削除/発覚/「防衛に明るい大臣を」岩渕美克・日大教授(政治学)/「情報公開に外部の目」太田肇・同志社大教授(組織論)

 

▼日経新聞

・1面トップ「日報 意図的に隠蔽/稲田氏関与あいまい/防衛監察結果/稲田防衛相が辞任 外相が兼務」/「問われる文民統制」

・3面「野党、首相の任命責任追及/稲田氏の国会答弁求める」

・社会面トップ「去る主役 残る疑念/稲田氏『責任を痛感』/反省の弁、表情硬く」

「『期待していたのに』/地元・福井の支持者失望」/「『辞任は当然』『納得できぬ』」※有権者

・第2社会面「失言・釈明 重ねた末/都議選『自衛隊としてお願い』 森友『顧問ない』一転」

 

▼東京新聞

・1面トップ「稲田氏関与の可能性/日報問題 特別防衛監察結果/陸自の隠蔽認定」

「『今でも報告認識ない』主張/防衛相を辞任」/「食い違い残り 深まる疑念」解説・新開浩記者

・2面特別防衛監察結果要旨/稲田氏会見要旨/「事務次官ら5人の懲戒処分を発表」/「『首相の任命責任厳しく問われる』民進・山井氏」

・社会面トップ「隠蔽の核心 疑問残し/『日報保管』報告の可能性/『非公表』了承 事実なし/防衛監察」

「稲田氏 表情変えず『責任痛感』」

・第2社会面「内部資料隠蔽 過去にも/防衛省幹部が廃棄支持」/「日報に否定の『戦闘』明記」/「1カ月報告なし 不自然」元防衛官僚で内閣官房副長官補を務めた柳沢協二さんの話 

  7月28日付朝刊では、産経新聞を含めて東京発行6紙は、稲田氏の辞意を大きく扱いました。この日は、民進党の蓮舫代表の辞任表明のニュースもありました。

f:id:news-worker:20170731075114j:plain

  7月29日付朝刊の各紙は社説でも取り上げています。主な記事の見出しを後日、アップします。

 

【追記】2017年8月1日9時

 以下に7月29日付朝刊の各紙の主な記事の見出しを書きとめておきます。 

【7月29日付朝刊】

▼朝日新聞

・1面トップ「稲田氏の責任踏み込まず/日報データ報告有無あいまい/『隠蔽』幹部ら主導と認定/特別監察」

「第三者の目なく 疑惑封じ」視点・相原亮記者/「閉会中審査 再来週に 稲田氏出席」

・2面:時時刻刻「稲田氏不問 遠い真相/『戦闘』実態データ削除 組織的/報告の有無 論点ずらし」/解説「PKO5原則 抵触懸念」土居貴輝記者

・3面「安倍政権 開けぬ展望/ミサイル対応 外相兼防衛相に懸念」/「首相へ不満 党内からも」

・4面「『一定のけじめ』/『落着にできぬ』/福田氏辞任」/稲田氏の会見(要旨)

・社会面トップ「『隠蔽ない』強気のまま/稲田氏 自身の疑惑 残し退場」

「『結局うやむや』自衛官の母親」/「組織間の報告『行政文書だ』/特別防衛監察の担当者」/「開示、文民統制の基本」全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士/「組織的背景 未解明」自衛隊のイラク復興支援活動などを担当した防衛省OBの柳沢協二・元内閣官房副長官補

・第3社会面:特別防衛監察の結果(要旨)

・社説「陸自PKO日報問題 隠蔽は政権全体の責任だ」あいまいな監察結果/安保法の実績のため/国会の役割が重要だ

 

▼毎日新聞

・1面 ※トップは「北朝鮮 ミサイル発射」

準トップ「『日報問題 責任を痛感』/稲田防衛相辞任/関与は未解明」

「次官ら非公表決定/特別防衛監察 『隠蔽体質』鮮明に」

・2面・ミニ論点 特別防衛監察:「実効性伴う改善策を」東洋大教授(行政法)早川和宏氏/「内部の意思疎通不足」元陸将、笹川平和財団参与 山口昇氏

・3面:クローズアップ「『お友達』首相重い腰/野党 幕引き許さず」/「危うい文民統制」/「特別防衛監察って何?/政務三役対象外/内部調査に限界も」質問なるほドリ

・5面「監察結果 受け入れる」「国民への隠蔽はない」稲田朋美防衛相会見 要旨/「任命責任 私にある」安倍晋三首相発言 全文

・9面:PKO日報問題 特別防衛監察の結果(要旨) ※1ページ

・社会面トップ:アクセス「稲田氏 資質問われ続け/首相が登用『サプライズ』の連続」

・社説「陸自日報問題で稲田氏辞任 文民統制に疑念を招いた」浮き彫りになった隠蔽/首相人事への責任は重い

 

▼読売新聞

・1面 ※トップは「北、深夜にミサイル発射」

準トップ「防衛省、組織的に隠蔽/稲田氏への報告 曖昧なまま/日報 特別監察」

「野党、閉会中審査求める/首相『批判 真摯に受け止める』/稲田氏辞任」

・3面:スキャナー「『日報』核心は闇/『制度の限界』指摘も」解明不十分/後手の聴取/「防衛省 情報公開に消極的」

・4面「首相 抜てき裏目/防衛相辞任 『秘蔵っ子』かばい続け」/首相の発言要旨/稲田氏の発言要旨

・10面:1ページ特集「PKO日報問題 特別監察の結果」/「文書存在『もみ消し』」/「『個人資料』開示対象外に」/「稲田氏『報告受けた認識 今もない』」/特別防衛監察結果の要旨

・11面・論点スペシャル「稲田氏辞任 揺れる防衛省」/「防衛相『卓越した資質』必要」外交評論家 岡本行夫氏/「省内の意思疎通が不足」元陸上幕僚長 火箱芳文氏/「『公文書』の重要性 理解せず」国際ジャーナリスト 春名幹男氏

・社説「稲田防衛相辞任 体制刷新で混乱に終止符打て」

 

▼日経新聞

・1面 ※トップは「北朝鮮、弾道ミサイル発射」

準トップ「統治欠く日本の守り/隠蔽体質に危うさ/特別防衛監察公表」

・3面「稲田氏関与 闇の中/防衛監察 陸自隠蔽は明記」日報各紙 組織が主導/次官が対応を追認/防衛相への報告 不透明/「根底に防衛相への不信」柳沢協二・元官房副長官補/「『反乱軍』批判は不本意」火箱芳文・元陸上幕僚長

・4面「稲田氏、防戦の1年/『ポスト安倍』傷深く」/「安倍政権、続く悪循環/改造と党役員人事 反転攻勢は未知数/加計・都議選・稲田氏…」

・社会面トップ「『組織変わらないと』/隠蔽『真摯に反省』/省・自衛隊、自己改革の声も/『いまさら…』都議も恨み節」/「情報公開・保存制度見直し必要」ジャーナリスト春木幹男さん/「ひとごとの答弁 国民の反感買う」佐藤綾子ハリウッド大学院大教授(パフォーマンス心理学)

・社説「自衛隊の隠蔽体質ただせぬ政治の無力」

 

▼産経新聞

・1面トップ「稲田防衛相辞任 岸田外相兼務/日報非公表『了承ない』/特別監察結果」/「首相の情け 将来の目も摘む」

・3面「稲田氏『隠蔽』謎のまま/報告有無は証言割れる・次官らが非公表を判断・部隊の安全危惧が発端」/「トップ交代に最悪の時期、人事で火種も/北ミサイル・新機動団創設」

・4面(1ページ)日報問題 特別防衛監察の結果について(詳報)

・5面「四半世紀遅れのPKO議論/国連基準についていけぬ民進」/政論「逆境から逃げるか 崖を這い上がるか」/「改造後に衆参で閉会中審査」/稲田氏 会見要旨/安倍首相 発言全文/「黒江次官 200人見送り」

・社会面トップ「稲田氏辞任『責任痛感、かねがね考えていた』/トップ去り 組織に溝/自衛隊員から怒りの声」/「自民落選候補から恨み節/『遅すぎる』」/「『部下に高圧的、腹割って話せる関係築けず』元航空自衛官で評論家の潮匡人」

・社説(「主張」)「稲田防衛相の辞任 国の守りは大丈夫なのか」

 

▼東京新聞

・1面トップ「日報隠蔽 閉会中審査へ/稲田氏関与 可能性残る/特別防衛監察」/「報告有無 食い違い」/「辞任…『空です』」

・2面「揺らぐ文民統制/稲田氏 欠けた統率力/PKO日報問題」報告有なら/報告なければ/「首相重用 ツケ回り」/「『以前から首相に辞任の意向相談』/日報問題説明は否定」/「岸田外相が防衛相兼務/危機管理に疑問」/「日報10年保存を新防衛次官表明」

・3面「陸自 隠蔽の連鎖/『戦闘』報告 廃棄や不存在扱い」発端/拡大/増殖

・6面「隠蔽 民主主義を瓦解」纐纈厚・山口大名誉教授/「私自身、報告を受けたという認識 今でもなく」稲田氏会見要旨/特別防衛監察結果(詳報)

・26、27面(特報面)「政治家の辞めどきとは/稲田、蓮舫両氏は『遅すぎ』『不可解』/『今さら感』しらける有権者」/「第一次安倍・野田内閣は『最悪』/『放り出し』『逆ギレ』も/潔かった石橋湛山/『男が仕切る社会』象徴」

・社会面「『辞めても説明責任ある』/「渦巻く怒り『首相にも責任』」/「『新任務付与の判断材料 隠蔽されたのが問題点』/情報公開請求した布施さん指摘」/「内紛の印象 陸自に危機感/『任務遂行で信頼回復』」/「文書廃棄は違法行為」情報公開制度に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長

・社説「日報隠し特別監察 隠蔽の闇は晴れない」/「戦闘」「銃撃戦」明記/派遣継続望んだ政権/信頼回復への一歩を 

 各紙の総合面の記事の象徴的な見出しを拾ってみると「稲田氏不問 遠い真相」(朝日)、「『日報』核心は闇」(読売)、「稲田氏関与 闇の中」(日経)、「稲田氏『隠蔽』謎のまま」(産経)などとなります。特別監察と言いながら、「政治」へのある種への忖度が働いたのではないか、という気がしています。

「残業代ゼロ」容認を連合が撤回しても危惧は残る

 一部の専門職を労働時間規制の対象から外す新制度、いわゆる「残業代ゼロ」法案を含んだ労働基準法改正案を巡って連合は27日、中央執行委員会で、政府、財界との3者による修正合意を見送ることを決めました。連合の神津里季生会長は7月13日に安倍晋三首相と会談し、健康確保措置を強化するよう修正を要請。事実上、反対から容認に転じたとして、組織内から批判が出ていました。27日の中執委で、組織としても改正案に反対との原点回帰を確認したことになります。

※47news=共同通信「連合、『残業代ゼロ』容認撤回 政労使合意見送り」2017年7月27日

 https://this.kiji.is/263117756393457143 

 高収入の一部専門職を残業代支払いなど労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」を含む労働基準法改正案の修正を巡り、連合は27日、札幌市内で臨時の中央執行委員会を開催。政労使での修正合意を見送り、新制度への事実上の容認姿勢を撤回すると決めた。

 神津里季生会長は同日午後に記者会見し「合意できる内容に至らなかった。理にかなった判断で政府との関係がおかしくなるとは思っていない」と述べ、見送りを正式表明した。

 委員会の出席者によると、神津会長は、執行部が政府に改正案修正を要請したことで組織内に混乱を招いたとして謝罪した。 

 しかし、いったんは政労のトップ会談で事実上の容認を公に打ち出してしまったことで、無視できない深刻な影響が出てくるのではないかと思います。菅義偉官房長官は27日の記者会見で「連合の修正要請を重く受け止める。責任を持って検討するスタンスに変わりはない」と表明したと報じられています。政労使の3者合意がなくても、安倍晋三政権は改正案を国会に出す構えです。その中に神津会長が安倍首相に要請した健康確保措置の強化が相当程度盛り込まれるとなれば、安倍政権にとっては改正案提出に「労働側の懸念にも配慮した内容になっている」とのある種の大義名分が加わります。 

 つまり、連合が「残業代ゼロ」法案反対の原点に戻ったとしても、言葉は悪いですが、政権によって体よくダシに使われたも同然です。神津会長が安倍首相に要請した事項が盛り込まれた場合、その当事者の下で本当に連合は反対を貫けるのでしょうか。連合がいったんはトップ会談に応じたことは、「残業代ゼロ」法案反対の観点から見れば、既に取り返しのつかない事態である可能性があるように思います。

 このブログの以前の記事(http://news-worker.hatenablog.com/entry/2017/07/24/002757)に書いた通り、わたしはとりわけ労働組合の組織運営の観点から、この問題を注視していました。報道によると、中執委の冒頭で神津会長と逢見直人事務局長が謝罪したとのことです。

※朝日デジタル「『残業代ゼロ』容認撤回、連合が決定 中執委で会長陳謝」=2017年7月27日

 http://www.asahi.com/articles/ASK7W35RMK7WULFA005.html 

 中執委の出席者によると、会議の冒頭、神津氏と逢見(おうみ)直人事務局長が「組織的混乱を招いた。みなさんに迷惑をかけて申し訳なかった」とそれぞれ陳謝した。執行部の責任を問う声は出なかったという。 

 しかし、問題は連合の組織内にとどまりません。連合が「残業代ゼロ法案」の事実上の容認に傾いたことに対し、7月19日には東京・神田駿河台の連合本部前で、100人ほどが集まって抗議集会が開かれました。朝日新聞は「連合傘下でない労組の関係者や市民らがツイッターなどで呼びかけたメッセージは『連合は勝手に労働者を代表するな』などのキーワードとともに拡散。参加者の多くはツイッターでデモの開催を知り、仕事帰りに集まったとみられる」と報じ、参加者の「労働者に囲まれ、デモまでされる労働組合とは一体何なのか。恥だと思ってほしい」「連合の一部の幹部だけが勝手に政府と交渉し、話を進めているように見える。一般の組合員は納得していないのではないか」との声を紹介しています。 

 連合へ働き手が異例のデモ 「残業代ゼロ、勝手に交渉」:朝日新聞デジタル

 神津会長と安倍首相の会談がどのような経緯で進められたのか、中執委で説明があったかどうかは定かではありません。トップ会談と言えば聞こえはいいですが、組織の討議と合意のないまま密室での「ボス交渉」があったとすれば、連合は信頼回復のためには、今回の一件についての責任の所在を自ら明確にするなど、よほどの覚悟が必要だろうと思います。以前の記事に書いた通り、万が一にも、交渉や争議の相手方との密会など、組合員に大っぴらに説明できないような行為があれば、それは労働組合の「結社の自由」「団結権」の価値をおとしめ、社会運動としての労働組合運動を危機にさらすからです。外部からは、今回の一件の経緯と責任があいまいなままのように思えます。

 このブログの以前の記事では、新聞各紙の関連の社説を紹介しました。今回は27日付京都新聞のコラム「凡語」を紹介します。「労働組合の組織原理は民主主義である。時間がかかってもみんなで議論して決める。トップダウンはありえない。なのに、連合は役員が『ボス交渉』に手を染めていた。組合員らが怒るのも無理はない」との指摘は同感です。

※京都新聞 「凡語」連合の迷走=2017年7月27日

 http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20170727_2.html

 一部を引用します。 

労働組合の中央組織「連合」が迷走している。「残業代ゼロ」法案に対する突然の方針転換がきっかけだ。事務局長らが政府高官とひそかに会って法案の一部修正で合意していた▼労働組合の組織原理は民主主義である。時間がかかってもみんなで議論して決める。トップダウンはありえない。なのに、連合は役員が「ボス交渉」に手を染めていた。組合員らが怒るのも無理はない▼過労死や残業代不払い、不安定雇用の増加など、働き方を巡る問題は深刻さを増している。「私は人間だ」という叫びは、現代日本にも共通する訴えではないか。連合幹部は政府高官と密談する前に、こうした声に耳を傾け一緒にデモ行進すべきだろう 

 

安倍晋三内閣の支持率続落、「26%」も

 先週末に行われた世論調査の結果がいくつか報じられています。安倍晋三内閣の支持率は続落です。以下の通りです(カッコ内は前回比、Pはポイント)。

▼毎日新聞 ※7月22~23日
「支持」26%(10P減)
「不支持」56%(12P増)...
「関心がない」17%(±0)

▼産経新聞・FNN ※7月22~23日
「支持」34・7%(12・9P減)
「不支持」56・1%(13・2P増)

▼日経新聞・テレビ東京 ※7月21~23日
「支持」39%(10P減)
「不支持」52%(10P増)

 毎日新聞の調査では「支持」は26%と、3割を割り込みました。毎日新聞の調査は回答項目に「関心がない」があり、他社の調査と比べると、支持率、不支持率とも低めに出る可能性があります。それでも各調査とも、前回調査と比べて支持が10ポイント程度減り、不支持が10ポイント程度増え、支持と不支持が逆転している点は共通しています。

 個別の質問では、毎日新聞の調査が、安倍首相は引き続き、自民党総裁も3期目を務めた方がよいかどうかを聞いたのに対し、「総裁を続けた方がよい」23%に対し「代わった方がよい」62%でした。産経新聞・FNNの調査では、安倍首相を信頼しているか否かを聞いたのに対し、「信頼している」29・6%に対し「信頼していない」63・8%でした。やはり、首相自身の信頼の失墜により、内閣支持率が続落しているとみてよさそうです。

 興味深かったのは、毎日新聞が朝刊総合面に載せた表です。支持率が20%台になった最近の主な内閣を四つ並べ、20%台になってから退陣するまでの期間を紹介しています。それによると、第1次安倍内閣は1カ月、福田内閣5カ月、麻生内閣9カ月、鳩山内閣1カ月でした。

 ※参考

安倍晋三内閣の支持率の推移(2017年1月~)※随時更新 - ニュース・ワーカー2