ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

元山仁士郎さんのハンストが事態を動かした~沖縄県民投票、全県実施へ

 沖縄県の米軍普天間飛行場を県内の名護市辺野古に移設することへの是非を問う沖縄県民投票が、県内全自治体で実施される見通しになりました。宜野湾、沖縄など5市長が不参加を表明していましたが、県議会と玉城デニー知事が動き、2択から3択に変更することで各党が合意して決着。5市長も受け入れざるを得ないようです。
 5市が不参加では、県民の約3割が投票権を奪われることになるところでした。辺野古移設推進の立場からは「そのような県民投票に意味があるのか」との言説も出ていた一方で、県条例で定めた投票事務を市長が拒否できる法律上の根拠はなく、不参加は憲法違反との指摘もありました。5市長は安倍晋三政権寄りとの指摘があり、また5人の中で辺野古移設反対を表明している首長はいません。
 事態を動かす原動力になったのは、27歳の青年、「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さんが105時間にわたって行ったハンガーストライキだったことに間違いないでしょう。県民投票の完全実施を求める訴えでした。辺野古移設に反対でも賛成でも、皆が意思表示として投票できるようにと。自分に意見はあっても、他者の意見を「間違っている」と攻撃するのではなく、その意見を聞き自分も意見を述べる、そうやって話し合い、みんなで決めていくことが大事だと、そのことをわたし(58歳)もあらためて元山さんに教えられた気がします。

 沖縄タイムスと琉球新報の25日朝アップの記事をまとめて紹介します。
■沖縄タイムス

・「県民投票『3択』で全県実施へ 沖縄県議会の与野党、条例改正で合意」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/376984

www.okinawatimes.co.jp

・社説「[県民投票 全県実施へ]与野党の歩み寄り評価」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/376982

www.okinawatimes.co.jp

■琉球新報

・「県民投票全県実施へ 与野党、3択合意 5市長参加の意向 29日に条例改正」
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-866055.html

ryukyushimpo.jp

 以下は、25日午後アップの記事です。

■沖縄タイムス「元山さん『よかった』沖縄県民投票、全県実施へ 辺野古ようやく議論できる」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/376990

www.okinawatimes.co.jp

■琉球新報「玉城知事『積極的に投票に参加してほしい』 県民投票全県実施を受け期待」
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-866436.html

ryukyushimpo.jp

 以前の記事にも書きましたが、県民投票で示される民意は安倍政権だけにではなく、日本本土に住む日本の主権者すべてにも向けられるのだと、わたしは受け止めています。今度は本土で、意見の違いを認め合いながら、沖縄の人たちの民意に応える結論を見いだしていく番だと思います。

※参考過去記事 元山さんの言葉に接してみてください

news-worker.hatenablog.com

 

※追記 2019年1月26日9時30分
 琉球新報の26日付の社説です。
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-866630.html

 この間、党利党略の思惑で動いているように見えた政治家たちが、ぎりぎりのところで分別を働かせ、落ち着くべきところに落ち着いたということだろう。「全有権者に等しく投票権を保障すべきだ」という県民世論が後押ししたのは間違いない。 

ryukyushimpo.jp

「宮古新報」の新経営者は何を語るのか~事業譲渡が決定

 社長の一方的な廃業、解雇の通告に対抗して、労組が新聞の自主発行を続ける沖縄県・宮古島の地域紙「宮古新報」を巡る状況の続報です。
 前回の記事でも書いたように、焦点になっているのは事業譲渡です。新聞労連のフェイスブックページによると、その事業譲渡が決まったようです。
 沖縄の地元紙(県紙)、琉球新報の報道によると、譲渡先は宮古新報社の顧問税理士を務めてきた松川吉雄氏の関連する会社とのことです。
 記事の一部を引用します。

 ※琉球新報「宮古新報が事業譲渡 社の税理士関連会社と契約」2019年1月25日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-866050.html

 会社側代理人によると、事業譲渡の契約手続きは23日までに終わっており、宮古新報の社名、新聞業務と輪転機などの設備を譲渡する。土地建物は譲渡に含まれず賃貸契約になる。今後、社員は新たに雇用契約を結ぶ形になり、2月1日にも新会社として新聞発刊を継続していく。
 松川氏は「従業員が頑張って新聞を発行している姿に感動した。雇用維持と新聞の発行継続が一番大事だ」とコメントした。

 もう一つの県紙、沖縄タイムスも報じています。松川氏の名前は出していません。
 ※沖縄タイムス「社員11人の宮古新報に支援続々 『読者のために発行する』」2019年1月25日
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/376970

 新しい経営者が労組とどんな話をするのか、公にどんな経営方針を示し、何を語るのか。注目しています。

 【カンパと激励メッセージ】
 宮古新報労組へのカンパや、激励、連帯のメッセージの届け先をあらためて紹介します。世話役の方によれば、組合とは関係なく、管理職もOBも、マスコミ以外で働く人も含めてだれでも参加できる幅広いカンパと激励メッセージの受け皿としているそうです。
 ■カンパ振込先
 ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ) 店番:018 (普)8761741 恵友会(ケイユウカイ)
 ■メッセージ送信先
 keijinsanwaido@gmail.com

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「ゆいまーる」 わたしも あなたも一人ではない~労組の自主発行続く「宮古新報」、焦点は事業譲渡

 社長の一方的な廃業、解雇の通告に対抗して、労組が新聞の自主発行を続ける沖縄県・宮古島の地域紙「宮古新報」を巡る状況の続報です。
 宮古新報労組は自主発行が始まった1月12日付の紙面から、社内の様子をコラム「社窓風景」で伝えています。9回目となった23日付は、「ゆいまーる」という沖縄の言葉の紹介がありました。
 本文は宮古新報社のサイトで読めます。
 ※「車窓風景⑨ 差し入れ感謝パワー充電」2019年1月23日
  http://miyakoshinpo.com/news.cgi?no=20795&continue=on

 一部を引用します。

 現在私たちの組合は大変な状況に置かれているが、全国の新聞やマスメディアに携わる組合などから支援、激励のメッセージが届いている。
 またカンパを集める呼びかけや購読支援、ビラ配りへの協力など地元の組合から「出来ることはないか」との問い合わせもある。きょうは浦添市の職員組合から「栄養ドリンク」、沖縄タイムス元宮古支局長の稲嶺幸弘編集局次長からは「カップ麺」の差し入れが届いた。 東京新聞「こちら特報部」の取材で同社を訪れた片山夏子記者からはお菓子の差し入れがあった。組合員一同感謝している。
 沖縄には「ゆいまーる」という言葉がある。ゆいは「結い、共同、協働」、まーるは「周る」でともに助け合うという相互扶助の考えだ。同組合には全国のゆいまーるの心が届けられている。私たちも何か自分たちが協力できることを考え、行動に移せる1日となった。

 紙面には「“ゆいまーる”私もあなたも 差し入れ感謝パワー充電」の見出しがついています。

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 ※写真は紙面の一部

 わたし自身、職場を休職しての計3年間の専従を含めて、労働組合の活動で様々なことを学びました。その中で今でも大切にしていることの一つは「わたしは一人ではない」との思いです。それはそのまま、ほかのだれかと向き合ったときに「あなたは一人ではない」と声を掛け、手をつなぐことにつながります。働く者の第一の権利である団結権、そして連帯とは、そういうことだということを実地に学びました。「ゆいは『結い、 共同、 協働』、まーるは『周る』でともに助け合うという相互扶助の考え」とのこと。まさに「わたしも、あなたも一人ではない」ということだと、このコラムを読んで感じ入りました。

 22日には、宮古新報社に新聞用のロール紙が届いたそうです。紙とインクは新聞発行の生命線。労組が自主発行に乗り出した当初は用紙切れも危ぶまれたようですが、これで発行継続の態勢は資材の面では万全のようです。用紙を会社が追加購入、新聞発行も続いている―。ということは、座喜味弘二社長がいったんは従業員に行った廃業の表明は事実上、効力を失っている状態。事業が継続されているので、従業員の解雇も理由がないということになるのではないでしょうか。いよいよ焦点は、きちんとした経営者への事業の譲渡だと思います。

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※写真は、宮古新報社に到着した新聞用紙のロール。新聞労連東京地連の琴岡康二さんのフェイスブックページから転載させていただきました

【カンパと激励メッセージ】

 宮古新報労組へのカンパや、激励、連帯のメッセージの届け先をあらためて紹介します。世話役の方によれば、組合とは関係なく、管理職もOBも、マスコミ以外で働く人も含めてだれでも参加できる幅広いカンパと激励メッセージの受け皿としているそうです。
■カンパ振込先
ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ) 店番:018 (普)8761741 恵友会(ケイユウカイ)
■メッセージ送信先
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沖縄・宮古島の新聞労組のアララガマ精神~続く「宮古新報」の自主発行

 社長の一方的な廃業、解雇の通告に対抗して、労組が新聞の自主発行を続ける沖縄県・宮古島の地域紙「宮古新報」を巡る状況の続報です。
 週末の19日(土)、20日(日)の2日間、宮古島を訪ねて宮古新報労組に法律面の支援を行った東京の弁護士、加部歩人さんが、事務所のブログにリポートをアップしています。タイトル「『あららがま』、宮古新報労組!!」の「あららがま」は宮古島では「アララガマ精神」=「不屈の精神」として使われると、かつて聞きました。今は宮古新報労組を支援している宮古毎日新聞労組も、自分たちの争議をこのアララガマ精神でたたかいました。
 加部さんはブログで、宮古新報労組の組合員の話を紹介しています。社内では長年に渡り座喜味弘二社長(87歳)のパワハラ、セクハラが横行し、昨年10月、編集長が社長と対立して辞職したのをきっかけに、社員が続々と労組に加入したとのこと。11月には初めて社長退任要求を掲げて、今日に至っています。
 労組結成当初からの組合員は、「昨年10月以降、怒涛の日々だったが、こんなことが今出来ていることに自分でも驚いている。初めて『組合活動をしている!』という感じ。組合だけの力ではなく、支援の皆さんがあってこそ、できていることだ」と話し、昨年10月に加入した組合員は「社長の被害にあっている仲間を助けたかったが、一人で社長に対峙すると個人に報復が来るのが怖い。だから労組に入って、団結した。みんなも同じ思いで加入したと思う」と話したとのことです。
※東京法律事務所ブログ「『あららがま』、宮古新報労組!!」

http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1073577175.html

blog.livedoor.jp

 一方、宮古新報労組が加盟する新聞労連によると、「1名でも欠ければ新聞発行が止まる」という状況は徐々に脱しつつあるとのこと。これまで自粛を要請していた宮古新報労組メンバーへの取材の受け付けを再開するとのことです(取材を希望する報道機関は東京の新聞労連本部へ連絡)。
 先週末の19日夜のTBS「ニュースキャスター」で宮古新報社が取り上げられたことは、このブログでも紹介しました。

news-worker.hatenablog.com

 ネット上で受け止めを少し見てみました。
 ※例えば http://blog.livedoor.jp/kinisoku/archives/5017341.html
 座喜味弘二社長に注目が集まる一方で、労組が新聞発行を続けていることの意義は、あまり話題になっていないようです。新聞と雇用、そして働く者の人権と尊厳を守ろうとする宮古新報労組の取り組みの意義は、広く知られていいと思います。

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 宮古新報労組へのカンパや、激励、連帯のメッセージの届け先をあらためて紹介します。世話役の方によれば、組合とは関係なく、管理職もOBも、マスコミ以外で働く人も含めてだれでも参加できる幅広いカンパと激励メッセージの受け皿としているそうです。
■カンパ振込先
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■メッセージ送信先
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沖縄県民投票と日本本土~元山仁士郎さんの105時間ハンストに思うこと

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場を、沖縄県内の名護市辺野古に新基地を建設して移設することへの賛否を問う沖縄県民投票が2月24日に予定されています。国政選挙や知事選のたびに、「県内移設反対」の沖縄の人々の民意は示されているにもかかわらず、安倍晋三政権が辺野古沿岸部の埋め立て工事を強行している中で、県民投票が実施されれば、辺野古移設への賛否に絞っての民意が明確に示されることになります。仮に日米同盟を是とするなら、米軍基地の存在によって安全保障上の利益を享受するのは沖縄だけではなく日本全体です。その意味でも、沖縄の基地集中の問題は沖縄県外の日本本土に住む一人一人が当事者です。沖縄の県民投票の結果は、安倍政権だけでなく、日本本土の一人一人にも向けられるものと、わたしは受け止めています。
 そのような意義を持つ県民投票に、沖縄県内では宜野湾市や沖縄市、宮古島市、石垣市、うるま市の5市長が不参加を表明しており、このままでは県民の約3割が投票に参加できないと伝えられています。そのことに対して、県民投票実施の条例制定を求める署名運動を進めた「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さん(27歳)が1月15日朝、自身が住民登録している宜野湾市の市役所前で、5市長に県民投票への参加を求めるハンガーストライキに入りました。5日目の19日夕、ドクターストップで終了。ハンストは約105時間に及びました。
 沖縄の地元紙の沖縄タイムスは、「5市長が参加表明しない悔しさはすごくある」との元山さんの言葉を伝えています。
 ※沖縄タイムス「『県民投票の会』元山氏のハンスト、ドクターストップ 105時間で終了」=2019年1月19日
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/374469

 元山さんは記者団に「5市長が参加表明しない悔しさはすごくある。一方で県議会の水面下の動きがあるとのことで期待して、自分のハンガーストライキという抗議は終えたいと思う」と発表した。その後、メンバーに肩を担がれて車に乗り、病院へ向かった。

 5市長は参加表明に至ってはいませんが、ハンストの開始後、全県実施を求める支持者からの突き上げが一層強まり、公明党が県政与党側に歩み寄りを働き掛けるなど、解決を探る動きが急転直下で浮上したと、琉球新報は伝えています。例えわずかだとしても、現実の政治を動かしたようです。
 ※琉球新報「県民投票 高まる県民の不満 瀬戸際で妥協案急浮上」=2019年1月20日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-863656.html

 新里米吉県議会議長は県民投票の全県実施に向け、全会一致による県民投票条例の改正について与野党調整に入ることを表明した。有権者の3割が投票できなくなる事態が想定される中で、投票事務を拒む5市長への批判とともに、事態打開に向けた動きのない県議会にも県内世論の不満は高まっていた。特に「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表が宜野湾市役所前でハンガーストライキを始めてからは、全県実施を求める支持者からの突き上げは一層強まり、公明党県本が与党側に歩み寄りを働き掛けるなど政治的解決を探る動きが急転直下で浮上した。

 元山さんはハンスト中、ツイッターで情報発信していました。
 https://twitter.com/Jin46o?lang=ja

twitter.com

 また、15日から18日までの各日分、その日ハンスト中に出会った人たちとの会話や、自身が考えたこと、感じたことをブログに書き残しています。通読すると、あらためて県民投票の重み、ハンストの意義についての元山さんの思いが伝わってきます。そこにはわたしを含めて日本本土に住む人たちに向けられたメッセージも含んでいるように感じました。
 ここでは各日分の一部を引用して紹介します。

※「ハンスト1日目」
https://note.mu/jinshiro/n/n725ab0062e3f

note.mu

 暑い日差しの中、スーパーの入り口に立って集めた署名。
 目が不自由な方の代筆をしていただいた署名。
 18歳になったばかりの高校生が行なった初めての署名。
 少し考えが違うと言う学生と話しながらもらった署名。
 お腹に赤ちゃんがいるお母さんが駆けつけて書いてくれた署名。
 沖縄戦を体験したおじぃ、おばぁから、「がんばってよ」と声をかけられてもらった署名。
 彼らの手、声、表情が頭の中に焼き付いている。
 私以外にもたくさんの市民、県民が駆け回って集めた10万筆の署名。一人ひとりの県民投票実現の思いを決して無駄にしたくはなかった。
 だからこそ、県民投票を沖縄県民みんなで行いたい。
 私もいち宜野湾市民として2月24日に行われる県民投票で一票を投じたい。
  (中略)
 どうしたら市長に考え直してもらえるか。
 市民、県民、日本の人たちにこの不条理を伝えられるか。
 沖縄の先人たちもハンガーストライキという方法で世論に訴え、暮らしや権利を守り、勝ち取ってきた。
 私がいまそれをやることは何もおかしなことではないのではないかという思いに至った。
  (中略)
 今日、特に印象的だったのは、辺野古の基地ができる前の大浦崎収容所にいた方が来てくれたことだ。
 「あの海が埋め立てられ基地が作られるのは許せないし、投票できない市民がいるのはおかしい」ということを話してくれた。
 また、23時頃に小中学校の同級生・後輩の母親や高校の同級生が「久しぶり。がんばってるね」と来てくれたのも嬉しかった。 

 ※「ハンスト2日目」
https://note.mu/jinshiro/n/n30a13aa2871d

note.mu

 夕方に学校帰りの高校生6人が激励にきてくれたのは嬉しかった。ローラがアメリカ・ホワイトハウスに届ける署名をインスタに載せてたのがきっかけで、基地について考えるようになったと話していた。
 その高校生は新聞記事を読んで「沖縄の現状がおかしいと思ってる」と話してくれた。
 こういう行動していることをもっと周りの人に広めたいとも言ってくれて、本当に頭が下がる思いだった。
 高校生には、その時々での決断はあるが、すぐに賛成だとか反対だとかどっちかに決めきってしまう必要はなくて、ずっと悩んで考え続けるべきだと思うということを伝えた。自分もそういう風にしていると伝えた。
 そういえば、自分が高校2年生の頃(16~17歳)は基地や権利のことについて考えたこともなかったと思う。
 また、1996年に行われた「日米地位協定の改定の見直しと基地の整理縮小に関する県民投票」の時は、高校生は投票権がなかった。
 その時、投票権がなかった高校生が自主投票をやる動きがあった。今日来てくれた高校生には、先生方とも相談して、もし今回の県民投票でもそういう動きがあればものすごく応援したいと伝えた。

※「ハンスト3日目」
https://note.mu/jinshiro/n/n2102b7e3545f

note.mu

 今日は初めて右翼の街宣車の妨害があって16時から17時までの約1時間はだいぶ騒がしかった。署名に来てくださった方々が不安がらないように、毅然とした態度で外に立って見つめていた。
 警察の方も来られていて、直接の危害は加えられなかったので安心した。
 でも、精神的にはすごい疲れたなあ…。
 右翼の街宣車に乗っているおじさんたちがどこの市町村に住んでいるかわからないけど、2月24日に行われる県民投票でこの人達の意思表示もしっかりできるように、ハンガーストライキを頑張ろうと思った。
 (中略)
 昨日話しに来てくれた高校生がもう一度、友達を連れて応援に来てくれたのも嬉しかった。それ以外にも何人か制服を着た高校生が署名をしにきてくれて、沖縄の未来に希望を感じた。

※「ハンスト4日目」

https://note.mu/jinshiro/n/n15c611d53c47

note.mu

 少しダルさが増してきたように感じたので、朝の支度をした後は、1時間くらい仮眠をとろうと寝袋に入った。
 その矢先、ひっきりなしに飛び回るオスプレイの重低音が疲れた身体に堪える…。
 市役所や学校など公共施設の真上を飛ぶこの現状も踏まえ、改めて今回の県民投票のテーマ「辺野古米軍基地建設のための埋め立て」について考えたい。
 遠方からここに来てくださる方々もこれを感じ、考えてもらえたらと思った。
 (中略)
 朝から夜まで足を運んでくださる人が絶えず、励まされる。
 仕事終わりに、部活終わりに、家族連れで、カップルで…。
 特に私より歳下の人や赤ちゃんを連れた親御さんを見るのは微笑ましい。
 あるお母さんは、「この子がなんでご飯食べないのー?」って聞いてくるんです、と話してくれた。その子は不思議そうな目で私を見つめていた。
 いつか、「あの時あんな人がいたな~」って思い出して、自分はどうするのかを考えてくれるといいな。
 そんなことを思いながら、目を閉じて体を休める。届けてくれた湯たんぽが、体を芯まで温まる。
 5市長に県民投票への参加を求めるハンガーストライキを始めて4日が終わる。ハンストを行なっているこの場所でいろんな出会い、対話が生まれていることが何よりも嬉しい。

 安全保障や日米同盟、在日米軍基地などを巡っては、社会にいろいろな意見、考え方があって当然です。それは沖縄も沖縄県外の日本本土であっても変わりはないはずです。だから、普天間飛行場の移設、辺野古への新基地建設については、沖縄の人々が示す民意を受け止めて、日本の社会全体で考え、議論し、決めていくことが重要なのだろうと、元山さんの手記に触れて思いました。本土の側が無関心、あるいは見て見ぬふりのままは、あってはならないと思います。

 元山さんのハンスト終了は、20日付けの東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)では、朝日新聞が社会面に見出し1段で11行の記事を掲載し、東京新聞は琉球新報の提供記事を、第2社会面に写真付きの3段の囲み記事で載せました。ネット上の各紙のサイトを見たところでは、毎日新聞は記事がありました。

 なお、沖縄県内の5市長が県民投票への不参加を表明していることに対しては、憲法学者の木村草太・首都大学東京教授が、県民投票の条例は、住民投票を実施するか否かの選択権、裁量を各町村に与えておらず、また5市長はいずれも県民投票が違憲・違法であることを説明できていないとして、「不参加方針の市の主張は、いずれも法的な事務遂行義務を否定する法律論になっていない。各市は、一刻も早く、投票事務の執行に取り掛かるべきだ」とする論考を沖縄タイムスに寄せています。
 ※沖縄タイムス:木村草太の憲法の新手(96)「県民投票への不参加問題 市の主張、法律論にならず」2019年1月20日
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/374571 

www.okinawatimes.co.jp

 木村氏は以前にも、市町村の県民投票への参加拒否は憲法違反に当たる、との論考を沖縄タイムに寄稿しています。特に「県条例は棄権の自由を認めているから、県民投票反対の県民は、市長や市議会議員に代表してもらわなくても、棄権という形で抗議の意思を表明できる。市民全員に棄権を強制することは不合理だ」との指摘は極めて分かりやすいと感じました。
 ※沖縄タイムス「木村草太氏が緊急寄稿 『県民投票不参加は憲法違反』」2019年1月10日
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/368131 

www.okinawatimes.co.jp

セクハラ問われ「おばあ ばっかり」と口にする宮古新報社長~TBS「ニュースキャスター」が放映

 労働組合がパワハラ、セクハラを理由に社長に退陣を求め、社長が廃業と社員全員の解雇を通告すると、労組が新聞の自主発行で対抗している沖縄県・宮古島の宮古新報を巡る続報です。昨19日夜のTBS「ニュースキャスター」が取り上げました。横綱稀勢の里引退、大阪のあおり運転・殺人罪公判に続いて3番手の扱いでした。以下は、番組を見ての個人的な感想です。
 構成は「社長VS社員の騒動」の切り口にとどまっていました。新聞労連やライバル紙労組「宮古毎日新聞労組」の支援を含めて、労働者による新聞と雇用、そして労働者の尊厳を守り、ひいては地域の民主主義を守る意義を持っている取り組みであることがどこまで伝わるか、という点では残念な感じが残りました。また、ハラスメント被害の紹介も通りいっぺんで、宮古新報労組を支援する立場からは、満足のいく内容とは言い難かったかもしれません。
 ただ、労組の記者会見と社長への直接取材をきちんと対比させていました。ハラスメントについての労組の主張は、社員の胸ぐらをつかむ、突き飛ばすといった暴力的な行為から、女性社員に靴下を脱がせてもらい足の爪を切らせる、社長室の中で大きな音を出していかがわしいビデオを見る、女性社員にアダルトビデオの整理をさせる、ひわいな裸の写真などを女性社員に見えるところでわざと広げる、との証言を伝えました。
 座喜味弘二社長(87歳)に対しては「済んでいることじゃないかよ」「何を言うんだバカ」などと罵倒されながら直撃取材。セクハラを問う質問に社長が「全くのウソ」と繰り返しながら「おばあばっかりだよ」と言って笑う様子も流れました。この一言や、取材に対する社長のキレぶりを視聴者が見れば、それだけでも宮古新報労組の組合員がなぜこの社長を告発するために立ち上がったのか、分かるのではないかと感じました。

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 今の時点で、地上波の全国放送で、こうした社長の言動がそのまま放映されたことの意義は小さくなく、労組への支援の拡大につながる可能性があるように思います。

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 さて、宮古毎日新聞労組のリポートなどによると、19日には弁護士2人が宮古島入りし、法律面での支援も始まりました。全面広告を申し出てきた支援者もおり、20日付紙面は8ページに戻りました。

www.facebook.com

 宮古新報労組へのカンパや、激励、連帯のメッセージの届け先をあらためて紹介します。世話役の方によれば、組合とは関係なく、管理職もOBも、マスコミ以外で働く人も含めてだれでも参加できる幅広いカンパと激励メッセージの受け皿としているそうです。
■カンパ振込先
ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ) 店番:018 (普)8761741 恵友会(ケイユウカイ)
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※写真は、宮古新報社の玄関横に張り出された横断幕。新聞労連東京地連の琴岡康二さんのフェイスブックページから転載させていただきました

「絶対、止めない」~続く「宮古新報」の労組自主発行

 沖縄県・宮古島の地域紙「宮古新報」と宮古新報労働組合の自主発行の続報です。
 宮古新報労組は昨年11月、宮古新報社の座喜味弘二社長によるパワハラやセクハラ行為があったとして、社長の退陣を要求。社長はパワハラ・セクハラを否定した上で、体調不良などを理由に社長退任と事業譲渡の意向を示したものの、その後、廃業を表明して1月10日に全社員に解雇を通知しました。これに対し宮古新報労組は同日、廃業の社告を11日付紙面に掲載する作業を拒否。加盟する新聞労連(日本新聞労働組合連合)や沖縄マスコミ労協(沖縄県マスコミ労働組合協議会)の支援を受けて、11日以降、組合員だけでの新聞発行に乗り出しました。12日付紙面からは労組の自主発行が続いており、10日からの労組の闘争は17日で1週間を超えました。
 宮古新報労組は、自主発行初日となった12日付紙面から、コラム「社窓風景」の掲載を開始。一部は宮古新報社のサイトでも読めます。その5回目では、新聞労連が参加する日本マスコミ文化情報労組会議J(MIC)から 「地域と共に歩む宮古新報の発行継続に支援を」 と書かれた横断幕が届き、組合員一同勇気づけられたことがつづられています。また、取材依頼が続いており、島の中だけでなく全国的な関心の高さがうかがえるようです。
・「社窓風景」1:「全国から頑張れ、激励に応えたい」
 http://miyakoshinpo.com/news.cgi?no=20747&continue=on
・「社窓風景」4:「全国の仲間から連帯、激励」
 http://miyakoshinpo.com/news.cgi?no=20768&continue=on
・「社窓風景」5:「横断幕に勇気もらう」
 http://miyakoshinpo.com/news.cgi?no=20773&continue=on

※写真は、宮古新報社の玄関横に張り出された横断幕。新聞労連東京地連の琴岡康二さんのフェイスブックページから転載させていただきました

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 新聞発行に集中する宮古新報労組の組合員に代わって、新聞労連や同じ宮古島で発行されているもう一つの地域紙「宮古毎日新聞」の一部従業員でつくる「宮古毎日新聞労働組合」が、SNSで活発に情報発信を行っています。
 それによると、編集の記者や制作オペレーターで戻って来られた方がいるほか、新聞制作の経験者が宮古島に来て手伝っているとのこと。マンパワーの面でも、支援は広がっています。宮古毎日労組はフェイスブックページへの17日夜の投稿で、以下のように書き込んでいます。

 皆さん、新報は止まりません。読者にも、市民にも、労働組合にも、フェイスブックの友達の皆さんにも支えられています。当該労組の組合員の言葉です。「絶対、止めない」――。
 引き続き、応援よろしくお願いします。

※宮古毎日労組のフェイスブックページ

www.facebook.com

 宮古毎日新聞労組の結成は2006年5月。当時、新聞労連委員長としてわたしもお手伝いをさせていただきました。正社員であろうと非正規雇用であろうと、雇用形態の違いを問わず組合員として迎え入れるという先進性は、今も色あせません。その後、会社の切り崩しに遭い、組合員は結成当初からは大きく減りましたが、引くことなく幾度も争議を闘い抜いてきました。団結権を具現化した労働組合の存在意義をもっともよく体現している労組の一つです。宮古毎日労組の組合員にとっては、宮古新報は、新聞発行という仕事の上ではライバルです。しかし、地域に複数の新聞があることで、地域社会に多様な意見や考え方が存在する状況を一層担保することができます。支援は、地域社会の民主主義を守るための取り組みでもあるのだと思います。

 以前、争議をたたかう宮古毎日労組の組合員を支援するために、有志がつくった「恵友会」というネットワークがあります。このネットワークを活用して、自主発行に取り組む宮古新報労組の皆さんへのカンパや、激励、連帯のメッセージを届ける支援活動が始まっています。
 世話役の方によれば、組合とは関係なく、管理職もOBも、マスコミ以外で働く人も含めてだれでも参加できる幅広いカンパと激励メッセージの受け皿としているそうです。カンパの振込先や、メッセージの送り先をあらためて紹介します(連絡の際、このブログで知った旨、告げていただいて構いません)。カンパもメッセージも、宮古新報労組に届けられます。
■カンパ振込先
ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ) 店番:018 (普)8761741 恵友会(ケイユウカイ)
■メッセージ送信先
keijinsanwaido@gmail.com

 宮古新報労組の組合員は自主発行に乗り出して以降は、賃金の保証がない状態です。新聞も通常の8ページから4ページに減っています。焦点は宮古新報の発行事業がきちんとした事業者に譲渡されるかどうかです。
 宮古新報労組の皆さんや、新聞労連を始めとして支援に取り組む皆さんへの敬意を込め、このブログでも引き続きフォローしていこうと思います。

 

【参考】宮古毎日新聞労組については、このブログでも以前に触れています。

news-worker.hatenablog.com

news-worker.hatenablog.com

news-worker.hatenablog.com

 

【追記】2019年1月19日17時20分
 このブログのカテゴリーに「沖縄・宮古島の新聞と労組」を新設しました。
 宮古新報労組の自主発行の取り組みを巡るこのブログの続報や、以前の記事を検索できます。
 宮古毎日新聞労組について書いた過去記事も、一部を含めています。 

「宮古新報」発行続ける労組に支援、激励広がる

 一つ前の記事、沖縄県・宮古島の「宮古新報」存続に向けた労組の取り組みの続報です。

news-worker.hatenablog.com

 宮古新報社の座喜味弘二社長が廃業と全従業員の解雇を表明したことに対し、「宮古新報労働組合」の組合員による新聞発行が続いています。同労組が加盟する新聞労連(日本新聞労働組合連合)や沖縄県マスコミ労働組合協議会が全面支援を続けています。同じ宮古島でもう一つの地域紙「宮古毎日新聞」を発行する宮古毎日新聞社の一部従業員でつくる「宮古毎日新聞労働組合」も支援していることは、紙面発行の上ではライバルであっても、新聞を仕事とする者同士として、地域の新聞を守るという一点では同じ立場で連帯しているという点で、特筆されていいのではないかと思います。
 新聞労連、宮古毎日新聞労組は、それぞれフェイスブックで情報発信しています。リポートによると、宮古新報の発行を続けているのは、わずか10人の組合員。1人でも欠ければ、発行が止まってしまいかねない状況とのことです。
※新聞労連のフェイスブックページ

www.facebook.com

※宮古毎日新聞労組のフェイスブックページ

www.facebook.com

 賃金の保証もない組合員による発行継続には限界があり、しっかりした事業者への事業譲渡が実現するかどうかが焦点です。

 一方で、労組の組織的な動き以外にも、宮古新報の発行継続への支援、応援や、宮古新報労組に対する激励などの動きが広がっています。宮古新報本社には、定期購読の申し込みも寄せられているとのことです。

※宮古新報社のサイト

miyakoshinpo.com

 ここでは、わたしの3代後に新聞労連委員長を務められた東海林智さん(毎日新聞労組)の呼び掛けを、インパクト十分なコラージュとともに紹介します。東海林さんのフェイスブックから、ご了承をいただいての転載です。組合員でなくても、個人でもOBでもカンパは可能です。

【宮古新報存続へ、みんなの応援を!】
 元新聞労連委員長(毎日労組)・東海林 智
 沖縄県・宮古島で創刊51年を迎える「宮古新報」が廃刊の危機にあります。ワンマン社長のセクハラ・パワハラなど数知れぬ横暴に耐えかねて従業員が一致団結、社長の退陣を求めて立ち上がったのは昨年の11月。社長は今年1月10日全従業員に解雇を通知し、会社をたたもうとしています。
「一方的な解雇は認められない。読者も認めないと思う」社長の横暴に抗う宮古新報労組の伊佐次郎委員長は言います。
 同じ島内の「宮古毎日新聞」で、会社のパワハラと闘った洲鎌恵仁さん、砂川智江さんと宮古に心を寄せる全国の友人たちが、組合と関係なく、管理職もOBも個人でつながって「恵友会」という2人の応援団を作っていました。今回、恵友会の友人の輪をテコに、宮古新報の仲間たちを支え、連帯を広げたいと思います。働く者の誇り、言論を担う者の誇りを掲げ闘う仲間を、全国の働く仲間の力を寄せ合い支援しようではありませんか。寄ってたかって支えよう。少額でもかまいません、個人カンパを呼びかけます。
 【ゆうちょ銀行 店名〇一八(ゼロイチハチ)店番018 普通 8761741恵友会】

 「ここでカンパを受け付けているよ」と、友人にSNSや口コミで広めて下さい。激励メッセージはkeijinsanwaido@gmail.com

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【追記】2019年1月19日17時15分
 このブログのカテゴリーに「沖縄・宮古島の新聞と労組」を新設しました。
 宮古新報労組の自主発行の取り組みを巡るこのブログの続報や以前の記事を検索できます。
 宮古毎日新聞労組について書いた過去記事も、一部を含めています。

 

沖縄県宮古島の「宮古新報」発行を労組が継続 ※追記:「地域に根ざし、地域とともに歩む新聞」

 沖縄県・宮古島に「宮古新報」という地域紙があります。発行する宮古新報社では、社長が突然、廃刊を言い出し、社員へ全員解雇を通告しました。これに対し社員でつくる「宮古新報労働組合」が紙面発行の継続に乗り出しています。同労組が加盟する新聞労連(日本新聞労働組合連合)が全面的に支援しています。
 新聞労連の説明などによると、宮古新報労組は昨年11月、同社の座喜味弘二社長によるパワハラやセクハラ行為があったとして、社長の退陣を要求しました。社長はパワハラ・セクハラを否定した上で、体調不良などを理由に社長退任と事業譲渡の意向を示し、代理人を立てて会社の売却を検討したものの、1月9日に会社側代理人から解雇通知の予告があり、10日に全社員に対し文書で解雇通知が出されました。理由については、業績不振による赤字経営で事業存続が困難なことを挙げているとのことです。新聞労連は、紙面発行の継続と、しっかりした事業者への新聞発行事業の譲渡に向けて、支援を呼び掛けています。

 座喜味社長が10日、翌11日付の紙面に廃業の社告を出すよう指示したのに対し労組は拒否。12日付の紙面は社員だけで発行しました。その顛末を記したコラムを、同社のサイト上でも読むことができます。
※宮古新報「『社窓風景』① 全国から頑張れ、激励に応えたい」=2019年1月12日
 http://miyakoshinpo.com/news.cgi?no=20747&continue=on

 私たち宮古新報社の社員は座喜味弘二社長から9日に 「10日付での解雇」 を急に通告された。 同社では昨年10月に社長から半ば辞めさせられる形でベテランの編集者が退職したことをきっかけに一致団結した宮古新報労働組合が座喜味社長の退陣を要求し団体交渉を重ねてきたが、 11日の紙面に廃業の社告を出すように言われ断固拒否した。

 東京で開かれた日本新聞労働組合連合の記者会見で、 広く同社の状況を公表。 夜には組合事務所で今後の対応について東京、 沖縄本島、 宮古島をスカイプで繋ぎながら午前0時半まで話し合い、 「宮古新報社の社員が自らの声で愛読してくださる市民の皆さんに現状を伝えることが大切。 記者会見に挑もう」 と決意した。  
 翌11日、 出勤時から社内はまさに緊迫した状況のなかで、 社員らは不安な気持ちを奮い立たせ、 ひっきりなしに鳴り続ける電話の応対をしながら午後2時の記者会見、 並行して編集2人、 制作2人、 印刷2人、 営業2人、 事務1人で12日付の新聞作成にとりかかった。 社員一同、 12日の新聞が発行できたことが何よりの喜び。 「頑張れ」 という励ましの電話やメッセージが大勢の市民や全国の仲間から届き感謝の気持ちでいっぱい。 同組合の伊佐次郎委員長は 「新聞の発行をこれからも続けていけるよう社員一同力を合わせていきたい。 見守ってほしい」 と述べた。

 日本には数多くの新聞があります。全国紙は文字通り全国で発行し、ブロック紙は複数の県にまたがるなど、広い地域で発行しています。一つの県を発行エリアとする地方紙は県紙とも呼ばれます。さらにエリアを限って発行する新聞が地域紙です。それだけ地域に密着したメディアです。そうした様々なメディアが存在していること自体に、絶対的な価値があります。社会に自由な情報流通があり、さまざまな意見や考え方が存在することを担保するためです。離島県のさらに離島の地域社会で、新聞発行を守っていこうとしている宮古新報労働組合の皆さんに、敬意と共感の意を表します。

▼新聞労連のフェイスブックページ
「【#宮古新報、コラム「社窓風景」開始】」「【宮古新報、続けています!】」など

www.facebook.com

https://www.facebook.com/%E6%96%B0%E8%81%9E%E5%8A%B4%E9%80%A3Japan-Federation-of-Newspaper-Workers-Unions-2286242578319544/

▼宮古島にはもう1紙、宮古毎日新聞があります。新聞発行では宮古新報とライバル関係ですが、宮古毎日新聞労組は宮古新報労組を支援しています。以下は宮古毎日新聞労組のフェイスブックページより

www.facebook.com

www.facebook.com

▼琉球新報の報道です
・「社長が清算意向、パワハラ・セクハラ訴えも 宮古新報、全社員に解雇通告 労組は退陣要求」=2019年1月11日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-859733.html
・「宮古新報 読者不在の清算通告 パワハラ、セクハラ訴えも」=2019年1月11日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-859825.html
・「『労使信頼関係ない』 宮古新報 座喜味社長、廃刊を強調」=2019年1月12日
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-860413.html

 

【追記】2019年1月14日8時
 新聞労連によると、新聞労連と沖縄県マスコミ労働組合協議会、宮古新報労組は13日(日)、宮古島市内で「新聞続けます」「宮古の新聞を残そう」と題したビラを配り、市民の理解を求めたとのことです。
 ※写真は新聞労連のフェイスブックページから
 宮古島では毎週日曜日の新聞製作がお休みとのこと。宮古新報労組の組合員は現在、賃金の支払いがない状態で自主的に新聞づくりを続けている状態です。週が明けて、会社の経営権や従業員の地位を巡る様々な動きも出てきそうです。このブログでも可能な限りフォローして、ささやかながらも、「宮古新報」の存続に取り組む方々への支援に代えたいと思います。

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 【追記】2019年1月19日17時15分
 このブログのカテゴリーに「沖縄・宮古島の新聞と労組」を新設しました。
 宮古新報労組の自主発行の取り組みを巡るこのブログの続報を検索できます。
 宮古毎日新聞労組について書いた過去記事も、一部を含めています。 

組織ジャーナリズムの希望のために~新しい年のはじめのごあいさつ

 2019年、新しい年になりました。
 本年も、よろしくお願いいたします。
 
 ことしは天皇が代替わりし、元号が「平成」から変わります。わたし自身は秋に59歳となります。現在の所属企業で現役でいられる時間はあとわずかです。
 22歳で記者の仕事に就いたときは「昭和」でした。以降、組織内のポジションは様々に変わりましたが、振り返ってみれば、随分と長い時間を、新聞というマスメディアの組織ジャーナリズムの中で過ごしてきたと感じます。労働組合専従で計3年間、職場を離れ、違った角度から自分の仕事を見つめることができた経験もありました。

 このブログでは、所属企業の業務のことは原則として書かないことにしているのですが、少しだけ触れると昨年7月、わたしは記事審査の担当から調査・資料部門に異動しました。記事審査とは、新聞社では紙面審査とも呼び、ベテラン記者、編集者が担当します。日々の紙面について、ニュースの選択に過不足はなかったか、扱いの大きさは妥当だったか、記事は分かりやすかったか、極端に偏ったりしていなかったか、など様々な角度から点検します。他紙とも読み比べます。通信社の場合は配信記事や写真を点検します。
 この記事審査の仕事を3年余り担当していて、いつも考えていたのは、わたしたちの組織ジャーナリズムは社会にどこまでリーチできているのか、わたしたちの情報発信は人々にどこまで届いているのだろうか、ということでした。紙の新聞が特に若い世代に読まれなくなって久しく、日本の新聞は部数減が続いています。日々の報道を見れば、1人でも多くの人に読んでほしいと思う出稿も少なくありません。しかし、そうした組織ジャーナリズムのすぐれた成果が社会でどこまで共有してもらえているか、という焦りにも似た気持ちがあります。

 新聞界でさらなる部数減は必至だろうと思います。そうした中で、組織ジャーナリズムにとってある意味、もっとも重要なのはジャーナリズム倫理の維持ではないかと考えています。「貧すれば鈍す」に陥らないように、ということです。先人たちから受け継いできた組織ジャーナリズムにこの先も希望を残し、先行世代として組織ジャーナリズムの仕事(それはもう紙の「新聞」ではなくなってしまうかもしれませんが)のやりがいを後続世代に残すために必要だろうと思います。そのために、わたしはわたしの最善を尽くしていこうと思います。

 このブログはこの記事が1001本目になります。仕事を休職して新聞労連委員長の職にあった当時の2005年に前ブログ「ニュース・ワーカー」を運営しました。復職後、いったんは休止しましたが、再び「書きたい」との気持ちの高まりを感じて2008年4月、「2」として始めて間もなく11年です。これからも細く長く、コツコツと続けていこうと思います。引き続き、お読みいただければうれしいです。