ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

朝日新聞が「沈黙」の自己検証を第三者の意見とともに公表~教訓を明確にし組織内に徹底させるために

旧ジャニーズ事務所元社長の性加害と「マスメディアの沈黙」を巡って、朝日新聞が12月25日付の朝刊紙面に、社内の聞き取り調査の結果と第三者機関「メディアと倫理委員会」の意見や指摘を掲載しました。 記事によると、調査の対象は週刊文春が連載でジャ…

「相互理解に向けて対話を重ね、抜本的解決が図られること」こそ結論ではないのか~辺野古設計変更、信を失った政権の下で代執行へ ※追記・地方自治法の規定

地域の住民の総意と言いうる民意を「公益」と認めず、国策の強行にお墨付きを与える司法判断が示されました。沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を玉城デニー沖縄県知事が承認しないことを不服として国が争い、代執行に…

パーティー券裏金の疑惑を掘り起こしたのは特捜検察ではない~在京メディアの端緒の報じ方に危惧すること

自民党のパーティー券裏金事件の捜査に大きな動きがありました。東京地検特捜部は12月19日、政治資金規正法違反容疑で、自民党の安倍派と二階派の事務所を家宅捜索しました。裁判所から令状(捜索差押許可状)を取っての強制捜査です。引き続き、国会議…

軍事最優先の下で人命は軽視される~オスプレイ墜落と82年前の日本の戦争の底流に共通すること

昨年の春から2年間の予定で、東京近郊の大学で「文章作法」の講座の非常勤講師を務めています。いい文章を書くには、日ごろから社会とのかかわりを意識しておくことが大事だとアドバイスしており、その一助として授業では毎回、時々のニュースを1件取り上…

「検察礼賛」に陥ることなく権力監視を~なぜ元首相存命中に挑まなかったのか、その検証も組織ジャーナリズムの役割

自民党の安倍派(清和会)の所属国会議員を中心に、パーティー券の売り上げの一部が裏金化していた問題の報道が連日続いています。12月13日に臨時国会が閉会したことから、いくつかの新聞では14日付の朝刊1面に「本格捜査へ」の大きな見出しとともに…

飛行停止、日本政府は明確に要求したのか~オスプレイ墜落から1週間余、ようやく米軍が決定  ※追記 “あいまい要請”官房長官も

一つ前の記事の続きです。米軍は12月6日、輸送機V22オスプレイ全機の飛行を停止することを発表しました。日本では翌7日午前中に報じられました。鹿児島県・屋久島沖に11月29日、東京・横田基地所属の米空軍CV22が墜落してから1週間以上も経…

危険は沖縄も東京も変わらない~オスプレイ墜落、焦点は配備撤回と日本の主権

開発段階からトラブル続きで安全性に疑念がある軍用機が、運用段階に入っても各地で墜落事故を起こし、とうとう日本国内でも墜落して死者が出た。日本中いつ、どこで市街地に墜落するか分からない。そんな事態ではないのか―。 11月29日午後、鹿児島県・…

「自己検証」が問われているのはテレビだけではない~「沈黙」を重ねることへの危惧 追記:TBSが特別委の調査結果公表

旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害と「マスメディアの沈黙」に対して、テレビ朝日が11月12日に1時間の自己検証の番組を放送しました。9月11日にNHKが「クローズアップ現代」で、自局を含めてテレビが報じてこなかった経緯を…

海員組合有志が、6億円未申告の前組合長を横領と脱税容疑で告発~自浄能力を欠く現執行部、当事者意識なぜ持てないのか

船員ら海事関係の労働者で組織する個人加盟の産業別労働組合「全日本海員組合」の森田保己・前組合長が、6年間で約6億円もの所得を申告していなかったことを東京国税局に指摘され、追徴課税の処分を受けていたことが今年6月、明らかになりました。海員組…

「自分」を表現する文章を書くために、社会とどう向き合うかを考える~付記:性別変更をめぐる最高裁決定の報道の記録

東京近郊の大学で、非常勤講師として受け持っている「文章作法」の授業は、2023年度後期分が先月から始まっています。文章のムダを削る、すっきりとした分かりやすい表現で書くというスキルは、前期からの履修生はおおむね身に付けたようです。後期から…

細田衆院議長の不見識の報じ方~記者会見の可視化とマスメディアのありよう ※追記・表差し替え

細田博之衆院議長が10月13日、議長公邸で記者会見を開き、健康上の理由で議長を辞任することを表明しました。当日、中継を見ていなかったので後刻、テレビ局がネット上にアップロードした録画を視聴しました。出席者や時間を制限し、最後は質問を続けよ…

「日本本土の国民に伝えたい」(琉球新報) 安全保障の負担は日本全体の問題~辺野古埋め立て・代執行と本土メディアの報道

米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐって先週来、重要な動きが続いています。 埋め立て予定地にマヨネーズ状とも指摘される軟弱地盤があるために、防衛省は当初の設計を変更せざるをえなくなりました。その変更の申請を沖縄県の玉城デニー知事が承認しな…

組織の責任を明示した日本テレビの自己検証~マスメディアは等しく「不作為の当事者」

ジャニーズ事務所元社長の性加害と「マスメディアの沈黙」に対して、日本テレビが10月4日午後、ニュース番組「news every.」で、自己検証の結果を公表しました。その内容の約30分の動画がユーチューブの同局のチャンネルにアップされています。遅ればせ…

ジャニーズ事務所の「NGリスト」コメントに疑問~「前半ではなく後半で」がなぜ消えた?

ジャニーズ事務所元社長の性加害をめぐる同社の10月2日の記者会見の際、同社サイドの関係者が「NGリスト」を持ち込んでいたと、NHKが4日夜に報じました。見事な報道でした。 「ジャニーズ事務所会見 会場に質問指名の『NGリスト』」 https://www3.n…

井ノ原快彦社長に感じる「仲間意識」とマスメディアの自己検証の必要性~ジャニーズ事務所の2回目記者会見で見えたこと

ジャニーズ事務所が10月2日、元社長の性加害をめぐり2回目の記者会見を開き、①社名を10月17日付で「株式会社SMILE-UP.」に変更する②被害者の補償に専念し終了後に廃業する③タレントのマネジメントを行う新会社を設立する。名称はファンクラブを通じ公…

続・沖縄県知事はなぜ国連で訴えざるを得ないのか~「ゆがみ際立つ政府の反論」(信濃毎日)「日本の知事の資格疑う」(産経)

一つ前の記事の続きです。 沖縄県の玉城デニー知事が、国連欧州本部で開かれた人権理事会に出席し、基地負担の現状などを訴えたことに対し、日本本土の新聞では信濃毎日新聞と産経新聞が社説で取り上げているのが目に止まりました。 信濃毎日新聞の社説は9…

沖縄県知事はなぜ国連で訴えざるを得ないのか

沖縄県の玉城デニー知事が9月18日(日本時間19日未明)、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権理事会に出席し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設への反対などを訴えました。人権理事会で都道府県知事として初めて演説したのは同じ沖縄県…

「不作為の当事者」の自己検証を怠れば、その先に何が来るか~ジャニーズ元社長の性加害とマスメディア

9月13日の岸田改造内閣について、新聞各社の世論調査結果が報じられています。改造は世論にさほど評価されていない、との結果がおおむね共通しているようです。目を引いたのは、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信の4件の調査で、ジャニーズ事務所…

「メディア各社に答える義務」(琉球新報)「各メディアは自ら検証し、再出発しなければ」(信濃毎日新聞)~性加害と「不作為の当事者性」 地方紙の社説、論説の記録

一つ前の記事の続きです。 ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害に対しては、地方紙も社説、論説を掲載しています。マスメディアは性加害を認識していた、あるいはジャニーズ事務所が文芸春秋を提訴した訴訟などを通じて、性加害に気付き、取…

テレビも新聞も「不作為の当事者」 経緯の自己検証と公表が必要~ジャニーズ元社長の性加害と「マスメディアの沈黙」

ジャニーズ事務所の創業者のジャニー喜多川元社長による性加害に対し、同社は9月7日に開いた記者会見で、事実として認め、謝罪しました。元社長のめいの藤島ジュリー景子社長は社長を退き、後任には所属タレントの東山紀之氏が就任。被害者への補償などを…

10年前の1枚の写真に思う~東京五輪と福島第1原発事故と処理汚染水放出

10年前の2013年9月、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、2020年夏の五輪大会の開催地に東京が決定しました。発表は現地時間の7日午後5時20分、日本時間の8日午前5時20分でした。8…

沖縄の不条理から目をそらす最高裁~辺野古移設の根源的な疑問は解消していない

沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設をめぐり、沖縄県が日本政府を相手に、名護市辺野古沿岸部の埋め立て工法変更の手続きの適否を争った訴訟の上告審判決で、最高裁は9月4日、沖縄県の上告を棄却しました。辺野古移設で県と政府が争った13件の訴訟…

「壁」を突破したストライキの意義~そごう・西武売却と権利としての労働組合

「そごう」「西武」の二つの百貨店を運営する株式会社「そごう・西武」の米投資ファンドへの売却を巡り、従業員の雇用継続に危惧を持つ「そごう・西武労働組合」が8月31日、基幹店の東京・西武池袋本店でストライキを決行しました。会社側は急きょ、同店…

「問われているのは民主主義の在り方」(琉球新報)~処理汚染水放出 地方紙の社説、論説の記録

一つ前の記事の続きです。 東京電力福島第1原発で生じた汚染水を処理した水の海洋放出に対し、多くの地方紙も社説、論説で取り上げています。全国紙各紙と同様に、23日付に掲載した新聞が多いようです。放出の開始日が決まったのが8月22日だったことか…

実現されるべきは地域の「自己決定権」~処理水放出 「将来に禍根残す」(共同通信配信の論説)

東京電力は8月24日、福島第1原発の処理水の海洋への放出を始めました。破損した原子炉を冷却するために注入した水や、原子炉に流れ込んだ地下水、雨水は放射性物質に汚染されています。放射性物質を取り除く処理をし、除去できずに残っているトリチウム…

敗戦から78年に感じる節目と危惧~新聞は戦争の教訓の当事者 ※8・15社説・論説の記録

1945年8月の日本の敗戦から78年がたちました。70年、80年、あるいは100年といった切りの良さという意味では、節目ではありません。しかし、時間の比較の軸を少しずらして眺めてみると、日本の現代史の中で極めて大きな節目の時期を過ごしてい…

軍需工場やインフラへのすさまじい攻撃~旧日立航空機変電所とJR高尾駅の銃撃痕

78年前の1945年8月、アジア全域でおびただしい犠牲を出した果てに、日本の敗戦で第二次世界大戦は終結しました。戦争の末期は日本国内で生活の場が戦場と化しました。米軍のB29爆撃機による主要都市への無差別爆撃、沖縄の地上戦、広島と長崎への…

「核抑止」を否定する新聞、肯定する新聞~G7後の広島原爆の日 「被爆国の新聞」の報道の記録

1945年8月6日に広島に原爆が投下されてから78年。広島市のことしの平和記念式典では、「核抑止論」が焦点になりました。松井一実市長は「平和宣言」で、核抑止論が破綻していることを直視するよう各国の指導者に対し求め、為政者に核抑止論から脱却…

この夏 「現場」のススメ~関東大震災100年、敗戦から78年、 私家版 史跡ガイド

東京近郊の大学で昨年春から週に1回、非常勤講師として「文章作法」の講座を受け持っています。本年度前期の授業が先日、無事に終了しました。履修生たちの文章力はそれぞれに上がっており、講師としてうれしい限りです。 前期は作文の指導が中心でした。自…

旧統一教会と自民党 関係解明を求める地方紙~安倍元首相銃撃から1年の社説、論説

安倍晋三元首相が奈良市で参院選の応援演説中に撃たれ、死亡してから7月8日で1年がたちました。8日前後に東京発行の新聞各紙がどのような報道を展開したかを、このブログの以前の記事に書きとめました。続いて、地方紙が1年の節目をどのようにとらえて…