ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

個人加盟の産別組合が持つ可能性〜全日本海員組合のセミナーで講師

※エキサイト版「ニュース・ワーカー2」から転記です。http://newswork2.exblog.jp/8601151/

 12日は午後から休暇を取り、船員の労働組合である全日本海員組合(海員組合)の通信員セミナーに講師として参加しました。依頼を受けたテーマは「新聞、雑誌の記事の書き方」。新聞記事の書き方のノウハウのうち、労働組合の機関紙の記事でも参考になりそうなことや、実体験に基づくわたしなりの機関紙論を約3時間にわたって話しました。終了後はセミナー参加者の交流会にも同席させてもらい、わたしにとっても有意義な話を何人もの方から聞かせてもらいました。
 海員組合には、労働組合として際立った特徴があります。日本の既存の労働組合が企業の社員ごとに組織される「企業内組合」であるのに対して、船員一人ひとりの個人加盟を原則としていることです。所属している船会社が異なっていても、「船員」「船乗り」という共通の職能で一つの組合にまとまっています。企業内組合が企業内の労使関係であるのに対して、海員組合は組合員が所属する船会社と個々に団体交渉をし、個々に労働協約を結ぶことになります。それぞれの会社と共通の労働協約を結べば、結果として海員組合に所属する船員は、どこの船に乗っていても一律の労働条件が担保されることになります。形式的にはいわゆる「単位組合(単組)」ということになりますが、実体としては、「船員」という職能の「産業別組合(産別組合)」です。
 これを新聞産業にあてはめて考えると、例えば「新聞記者」を職能と想定すれば、個人加盟の?新聞記者組合?がそれぞれの新聞社と共通の労働協約を結ぶことによって、どこの新聞社で働こうが、新聞記者組合の組合員である限り、一定の労働条件が担保されるということになります。セミナー終了後の交流会で「実は、わたしたちのような個人加盟の?産別?がもう一つあります。どこだか分かりますか」と聞かれました。答えはプロ野球選手会です。
 産業を問わず、日本の企業で契約社員や派遣社員などの非正規雇用が増大している中、伝統的に正社員で組織されてきた企業内組合による企業内の労使交渉には限界が目立つようになっていると、わたしは考えています。正社員であると、非正規雇用であるとを問わず、同じ産業で働く同じ職能の労働者ならだれでも加盟できる個人加盟の産別組合であれば、今の企業内組合ではできないような幅の広い取り組みも可能になるのではないか、と思います。

 新聞労連委員長だった当時に海員組合とはお付き合いがあり、今回と同じように記事の書き方の研修の講師を務めたこともありました。当時の縁で今回、声を掛けてもらいました。ありがとうございました。

 海員組合のホームページはこちらです。