ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

中山国交相の日教組攻撃発言は憲法問題

※エキサイト版「ニュース・ワーカー2」から転記です。http://newswork2.exblog.jp/8681080/
 麻生内閣が発足してわずか5日、中山成彬国土交通相が28日、辞任しました。「成田空港反対派は『ごね得』」「日本は単一民族」「日教組の強いところは学力が低い」の発言3点セットに始まり、27日は日教組攻撃発言をエスカレートさせ「日本の教育のがん」「解体しなきゃいかん」「ぶっ壊せ」とまで。28日の辞任後の記者会見では、日教組に関する一連の発言だけは撤回しなかったと伝えられています。
 わたしは、中山氏の一連の発言をひとくくりに「失言」ととらえることに違和感があります。少なくとも日教組攻撃は、中山氏自身が意図的に、確信を持って表現を強めていきました。その内容たるや、失言どころではなく「問題発言」「暴言」などの表現でも収まらないくらい、多々問題を含んでいると思います。
 日教組日本教職員組合)とは何なのかと言えば、合法的に組織されている教職員の労働組合です。労働組合は直接的に憲法28条の労働3権の規定で、国民の権利として明記されています。また21条には結社の自由も明記されています。
 仮に特定の結社、団体、労組の活動に自分の考えと相反する内容があったとして、それを批判するのは基本的に自由だと思います。それもまた表現の自由ですし、批判には反論で答え、そうやって言論の自由が社会に担保されることになります。しかし、自分の考えと相容れないからといって、相手の存在を認めないことは許されるはずもないことです。それでは民主主義は成り立ちません。
 中山氏の「日教組は解体が必要」「ぶっ壊す」などの数々の発言は、閣僚としてはもちろんのこと、国会議員として明らかに憲法遵守義務の一線を越えています。「失言」で済むレベルではなく、憲法、立憲政治に直接かかわる問題だと思います。深刻なのは、中山氏自身に、憲法をないがしろにし、民主主義を危うくする内容であることの自覚が全くうかがえないことです。自分で自分が何を言っているのか、その意味がよく分かっていないとしか思えません。

*追記(9月28日17時55分)
 時事通信が辞任後の中山氏の記者会見の一問一答をアップしました。記録の意味で、日教組攻撃発言にかかわる部分を一部引用します。

 −日教組発言を撤回しないと言ったが。
 政治家中山成彬としては撤回したという考えはない。
 −日教組に対する認識は。
 問題はごく一部の過激な分子。日教組の中にもまじめに授業に取り組んでいる先生もいるが、政治的に子どもたちを駄目にして日本を駄目にしようという闘争方針で活動している方々がいる。それが日本を駄目にしている。
(中略)
 −なぜそこまでこだわったのか。
 それほど重要な問題。なぜこんなゆがんだ教育が行われているかについて関心を引きたかった。(報道各社インタビューで)国交相の仕事は何かと質問を受け、安心安全に暮らせる日本をバトンタッチするんだと答えているうちに、そこに住む日本人をちゃんと育てないといけないという気持ちがますます強くなった。
 −日教組の問題を言って良かったか。
 もちろん良かったと思う。
 −大分の人たちはどう感じたと思うか。
 大分県を名指しで言ったのは申し訳ない。
 −昨日、宮崎でなぜああいう(日教組批判の)発言を。
 確信的にあえて申し上げた。

 「問題はごく一部の過激な分子」と言いながら、なぜ「まじめに授業に取り組んでいる先生もいる」組合を組織丸ごと解体し、ぶっ壊さなければならないのでしょうか。