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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

読書:「明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法」(佐藤尚之 アスキー新書)

 広告関係者の間で、ことし非常に話題になった一冊と聞いています。「広告は消費者へのラブレター」という例えに代表されるように、広告は門外漢のわたしでも、理解できた気になる分かりやすい表現が一貫しています。消費者の方が既に変わっていることがポイントであり、その上でこれからの広告のあり方を考えることが重要なのだろうと理解しています。
 広告は新聞や放送のマスメディアにとっても死活を左右する重要な要因ですが、ジャーナリズムにとっても本書の指摘は多くの示唆に富んでいると思います。本書についてブログ「ガ島通信」で藤代裕之さんが書かれている「ラブレターは受け取ってくれていても、読まれずそのまま捨てられているかもしれない。でも、ラブレターを出した側は読んだと思う。新聞のようなプッシュ型メディアはそんな「勘違い」をしがちです」「ジャーナリズムは死なないし、明日は楽しい。だけれどこれまでマスメディアで通用してきたジャーナリズムは通用しなくなるということです」との指摘は、まさにその通りと感じます。
 実は本書はこの秋から初冬にかけて、湯川鶴章さんの「次世代マーケティングプラットホーム」に続いて読み、次いで「情報革命バブルの崩壊」に進む、という順番で読みました。その間には、刺激的なタイトルの特集を組んだ雑誌が発売され、こちらは新聞社の編集職場でも多くの人が読んでいたようです。
 新聞や放送の苦境はもはや歴然としており、出版もことしは老舗の雑誌の休刊が相次ぐなど、既存のマスメディアは産業としては大きく揺らいでいます。そこに身を置く一人としては元気を出していくのもなかなか大変だと感じていますが、それでもまだマスメディアにやれること、やらなければいけないことを自覚し、「明日」を楽しく過ごしていきたいと思っています。