- 作者: 大沢仁,石渡嶺司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/11/14
- メディア: 新書
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教え子の学生たちを通じて、シューカツはまず就職情報会社が運営しているサイトに登録し、ここから企業にエントリーシートを送る、くらいの知識は漠然と持っていました。加えて、この学生と企業双方の蓄積された情報こそが就職情報会社のパワーの源泉、本書の指摘を借りれば就職戦線での「マッチポンプ」であることがよく理解できました。と言っても本書の刊行は昨年秋。その後の世界的な不況の深刻化で、内定切り、さらには内定切りが批判を浴びた企業の破たんがニュースになっています。ことしの就職戦線はすっかり様変わりで、本書も昨年までの参考事項として読んだ方がいいのかもしれません。
いつの時代も就職は人生の一大事です。わたしが大学を卒業して就職した4半世紀前を思い起こすと、大学4年生の10月1日が会社訪問解禁。この日にまず手書きの履歴書を志望企業に持参し、場合によっては面接を受け、入社試験の解禁は11月でした。当時から就職情報会社はあり、法学部や経済学部の友人の元にはどっさりと企業案内がダイレクトメールで送られてきていましたが、あれは彼らが自分で就職情報会社に登録していたのでしょうか。文学部に在籍し、志望を新聞記者1本に絞っていたわたしの元には何もありませんでした。学校の先輩から唯一、「関心があれば遊びに来ないか」と声を掛けてもらった(実際には辞退しましたが)生命保険会社はその後、バブル経済の崩壊とともに経営破たんし今はありません。
これもまたいつの時代も同じだと思いますが、今は人気の産業、企業も未来永劫、成長が続くわけではありません。わたしは学生たちに作文を指導しながら、新聞の仕事が産業としては先行きが極めて厳しいこと、記者の働き方も伝統的に長時間労働であり、近年は過密労働にもなってきていることなどを包み隠さず説明してきました。その上で、新聞の仕事への興味を失わず、実際にわたしたちの仲間に加わってくれた若い世代が何人も出てきてくれたことは大きな喜びでした。同時に、現状は厳しくても彼らが将来に希望をつないで働き続けることができるような環境を何とかして残すのが、わたしたちの世代の責任だろうと思います。新聞の仕事とは違う道に進んだ人たちにも、新聞というメディアの一端を知ったことを、何がしか今後の人生で役に立ててほしいと願っています。
様変わりと言えば、4半世紀前には「就職」と言えば正社員が当たり前でした。今はそうではありません。細切れで不安定、労働対価も低くスキルアップも厳しい非正規労働が増えています。同時に、正社員も1人当たりの労働負荷は高まっています。こうなるまでには社会的にも色々な経緯があったわけですが、やはり若い世代が将来に期待を持てるように、わたしたちの世代が何がしか変革を求めて行動していかなければならないと思います。