不祥事続きの海自への新たな海外任務に疑問

 ここのところ、自衛隊をめぐって気になるニュースが続いています。
 ▽海賊対策に海上警備行動
 ソマリア沖の海賊対策として、3月14日(土)に海上自衛隊護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の2隻が広島県・呉基地を出港しました。
「海自護衛艦2隻が出港 海警行動で初の海外派遣」(47news)
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031401000031.html

 海上警備行動を規定している自衛隊法82条の条文は次の通りです。

 第82条 防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。

 条文上、海上警備行動を想定している海域については具体的な言及がありませんが、だからと言って日本の領海を遠く離れてソマリア沖でも可能、という解釈にはやはり違和感があります。また、自衛隊の海外派遣に伴う武器使用基準のハードルを下げるものとして、憲法9条に違反するとの指摘があり、さらに、そもそも論ということで言えば、海賊に対する警察活動ならばやはり海上保安庁が第一義的に対応するべきとの指摘もあります。海賊対策新法の成立が不透明な状況での護衛艦派遣には、「派遣ありき」の拙速感はぬぐえません。
 以上の諸点をめぐってはマスメディアも繰り返し取り上げています。加えてわたしは、現状の海上自衛隊に「海賊対策」という新たな海外任務を負わせること自体の適否がもっと論じられてもいいのではないかと考えています。
 海上自衛隊をめぐっては、昨年2月にイージス艦「あたご」が漁船と衝突し漁船の2人が不明になった事故をはじめとして不祥事が相次いでいます。海自は「抜本的改革委員会」を設置、昨年12月に「改革の指針」を公表しました。
「海自の不祥事『心の問題』が要因 改革委が対策の指針」(47news 2008年12月24日)
http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008122401000753.html

 指針は一連の不祥事の要因を、法令・規則の軽視、規律の緩み、組織への帰属意識の低下など隊員の「心の問題」と分析。冷戦後、工作船対処や弾道ミサイル監視、海外派遣など任務が増大、多様化する中で人員不足が浮かび上がったが解決されず、隊員の目的意識やプロ意識が希薄化したことなどが「不祥事の底流」にあると指摘した。

 海自自らが任務の増大と多様化が不祥事の続発と無縁ではないと認めているのに、改革の実効も定かではないまま、外交、つまり政治の思惑に基づいて既存法を拡大解釈し、新たな海外派遣任務を課すことに大きな疑問を感じます。現在の政治状況では海賊対策新法が国会で成立するかどうかも不透明感がぬぐえず、仮にいつまでも新法が成立しないとなると、派遣の護衛艦は危うい法的根拠のもとに「漂流」することになりかねません。自衛隊が政治の戯具にされているに等しい事態、シビリアンコントロールの危機とも言うべき事態ではないかと思います。

 ▽「空母型」護衛艦引渡し
 海上自衛隊のヘリ搭載護衛艦「ひゅうが」が完成し、18日に海自に引き渡されたことが報じられました。
「新護衛艦『ひゅうが』が完成 海自最大級の空母型」(47news)
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031801000324.html
 護衛艦自衛隊独特の呼び方で、英語表記ではdestroyerが当てられますが、他国の海軍でdestroyerと呼ばれている艦艇は一般的には「駆逐艦」と訳します。写真で分かるとおり、「ひゅうが」は外見上は空母そのもので、13950トンの排水量第2次大戦当時なら中型空母に匹敵する大きさです。この艦を「護衛艦=destroyer=駆逐艦」と呼ぶのはどう考えても不自然です。
 よく指摘されることですが、自衛隊では「歩兵連隊」を「普通化連隊」と呼び、「爆撃機」「攻撃機」を「支援戦闘機」と呼ぶように、自衛のための兵器であることを強調するための呼び替えが数多くあります。「ひゅうが」を空母と呼ばず護衛艦と言い張るのは、その呼び替えが行き着くところまで行った感があります。こうした問題ももっと論じられていいのではないかと思います。