民主党のメディア政策と「表現の自由」の視点

 少し時間が経ってしまいましたが、「TOKYOメディフェス2009」最終日(22日)の分科会「コミュニケーションとメディア政策を考える」には、総務副大臣に就任した民主党内藤正光参院議員が参加し、民主党が政策集に明記している通信・放送担当の独立行政機関「通信・放送委員会(日本版FCC)」など、新政権の「メディア政策」について突っ込んで発言したようです。
 都合がつかず分科会を傍聴できませんでしたが、メディフェスの実行委員でもある弁護士ヤメ蚊さんが自身のブログに、ポイントをまとめたリポートをアップしています。

 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)
 「内藤副大臣、市民メディアに理解+クロスオーナーシップ対策の必要性認識示す〜他方、内容規制にも積極的…」
 http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/31c08e1eb80f3fc819582fb6a425ba82

 市民メディアについての発言の報告に続いて、マスメディアをめぐる発言が紹介されています。一部を引用します。

 さらに、市民メディアとは直接関係ないが(間接的には重大な影響あり)、クロスオーナーシップ(系列化)の弊害を明確に述べ、これを改善する方向で検討することを明言した。これは非常に画期的な発言で、おそらく、マスメディアは報道することがないと思われるが、テレビが免許制度の下で規制される一方、新聞は規制されていないにもかかわらず、テレビと新聞が系列化することで、結局、新聞も規制されていること(=政権寄りの報道とならざるを得ないこと)の弊害は大きい。この点について、新副大臣が触れたことは、画期的なことだ。マスメディアにとっては、利権を失うわけだから、報道するはずもなく(記者クラブ解禁問題を伝えないことと同じ)、ここは、ひとつ、ブログなどで広く伝えていくしかない。逆にいえば、この問題をブログなどを通じて、いかに多くの人に知ってもらえるかが、市民メディアの試金石ともなる。

 新聞社と放送局が資本的に系列化するクロスオーナーシップに対する批判については、新聞も放送もその当事者であるために報道として伝えることがなく、一般的にも、あるいはマスメディアの内部ですらも批判があること自体が広く知られているとは言い難い状況です。また、新聞が本気では放送をたたかないし、放送もまた新聞を批判しないのもクロスオーナーシップが一因になっていると指摘されています。最近では、新聞社と放送局が関係を強化し、その上で多メディア展開に乗り出しているように、クロスオーナーシップを土台に企業グループとして生き残り策を強化していく傾向も顕著に見られるようになっています。
 クロスオーナーシップのありようを見直すとすれば、直接的には免許制度の下にある放送の株式保有の制限などによるのでしょうが、仮に新政権がイニシアチブを取って進めるとなれば、政治権力の主導によるメディア改革の色彩を帯びることになります。
 記者会見の開放問題も、鳩山首相の就任会見は雑誌や外国メディアにとどまったものの、岡田外相が自らの会見をインターネットメディアやフリーランスのジャーナリストにも開放することを表明したり、従来は「懇談」の位置付けだった警察庁長官の定例会見が、国家公安委員会の会見に長官が陪席する形に変わりカメラ・マイクもOKとなるなど、変化が始まっています。批判され続けてきた記者クラブの閉鎖性が、記者会見の開放と言う形で改善されること自体には異存がありませんが、それが記者クラブ側の自主的取り組みではなく政権の意向によって進んでいることには、マスメディアのありようとして危ぐも覚えます。 
 また、内藤副大臣は放送の内容規制にも踏み込んだようです。

 他方で、問題と思われる発言もあった。内容規制について踏み込んだのだ。現在、民放とNHKでつくる自律機関の放送倫理・番組向上機構BPO)が、番組内容に問題があれば、調査や勧告を行っている。同時に総務省が行政指導をしているが、これには法的根拠はない。内藤副大臣の発言からは、総務省の行政指導に法的根拠を与える法改正を考えているように思われた。
(中略)
 これは非常に重要な問題で、内容規制を通じてマスメディアが委縮して、与党である民主党批判ができなくなる恐れがある。記者会見の市民メディアへの開放という公約がいまのところ、守られていないことと併せて考えると、このままでは、また、自民党と同じ利権党となるだけだ。そうなれば、当然、利権とは程遠い、市民メディアは邪魔な存在となってしまい、市民メディアを促進するような政策など実現されなくなってしまう。

 内容規制をめぐる発言については、マスメディアの一部も報道で取り上げています。
 「テレビの人権侵害など対応権限を 日本版FCCで内藤副大臣」(47news=共同通信
 http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009092201000284.html

 マスメディアにとっての問題は、新政権のメディア改革の是非以前に「新聞や放送の自浄能力に期待できない以上は、政治主導のメディア改革も仕方がない」という声にどう答えるのか、答えることができるのか、だと思います。表現規制には断固闘う「対政治権力」という意味と、既存のマスメディアに限らず多様な表現活動・情報発信を担保する「対社会」という意味の双方で、マスメディアが表現の自由をどう考えるのかが問われていると言ってもいいのだと思います。
 そもそも、記者会見の開放であれクロスオーナーシップであれ、新聞や放送が報じない情報もネット上にはいくらでもあります。そうした情報をネットで知っている読者や視聴者が、新聞やテレビが報じないことをどう考えるか。わたし自身、真剣に考えていきたいと思います。