この1年に読んだ本から

 この1年に読んだ本のうち、印象に残ったものはその都度、読後感をこのブログに書き残すようにしてきました。中には時間がなく、読みっぱなしに終わっているものもあります。1年の終わりに当たって、何冊か簡単に感想を書き留めておきます。

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

「2011年 新聞・テレビ消滅」(佐々木俊尚 文春新書)
 佐々木さんの著書の中で今までになく、既存のマスメディアに厳しい内容です。プロローグにある「2011年は、新聞とテレビという二つのマスメディアにとっては墓碑銘を打ち立てられる年となる」との予言は、たぶん当るのでしょう。「マス」の消滅は既に始まっていると思います。問題はその先です。「新しいメディアを作っていけばいい」という本書の結論を、マスメディアの中にいる者がどう受け止めるかは人それぞれだと思います。新聞社が破たんすれば新聞記者も失業します。失業した記者たちが担う新しいメディアが、ジャーナリズムと個人の生活とを両立させられるかどうか、そういうモデルが見出せるかどうか、ということになるのでしょう。

貧困化するホワイトカラー (ちくま新書)

貧困化するホワイトカラー (ちくま新書)

「貧困化するホワイトカラー」(森岡孝二 ちくま新書
 著者は関西大教授。株主オンブズマン代表も務め、企業の違法行為是正にも取り組んでいます。2005年に刊行された旧著「働きすぎの時代」(旧ブログに読後評http://newsworker.exblog.jp/3331116)の続編として読みました。非正規労働がこのまま増え続けていったら、正社員のホワイトカラーは長時間過密労働で大変なことになるだろうな、と思ったそのとおりのことが現に起きている、との内容です。幸いにホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入は回避され、その後に政権交代もあって、当面は導入論議もないだろうと思いますが、留意が必要だと感じたのはマスメディアが「残業代ゼロ」の側面を強調したことです。賃金面もさることながら、死ぬまで働く、働かされる制度だという側面にこそ注意が必要だと思います。

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)

「わかりやすく<伝える>技術」(池上彰 講談社現代新書
 スイッチオン・プロジェクトに参加したこともあって、文章の書き方、表現の仕方をどう体系化するか、他の人たちはどんな風にまとめているのかに関心を持っています。本書は著者が元NHK記者とあって、書くことよりは話すことに重点が置かれていますが、とても参考になりました。

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

「伝わる・揺さぶる!文章を書く」 (山田ズーニー PHP新書)
 新刊ではないのですが、文章の書き方、表現の仕方の体系化という点では非常に参考になりました。「論点」という概念は新聞記事で言えば「見出し」に通じていて、他の人に文章の書き方を分かりやすく説明できそうです。

皇軍兵士の日常生活 (講談社現代新書)

皇軍兵士の日常生活 (講談社現代新書)

皇軍兵士の日常生活」(一ノ瀬俊也 講談社現代新書
 たまたま書店で目にして購入し、一気に読みました。筆者は埼玉大准教授の歴史研究者。原資料を元に、実は旧日本軍は厳然とした格差社会であったことを分かりやすく解き明かしています。出身の階層による格差は、徴兵という一見平等な手続きを経ても、その後の進級や果ては食事の量(戦場では死活問題に直結します)に至るまで格差は付いてまわりました。赤木智弘さんの「丸山真男をひっぱたきたい」に代表されるような「戦争は既存秩序を壊し平等を実現する」とのロジックは、実際には成り立っていなかったことがよく分かります。