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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「生きるための最後の砦」王城ユニオン自主営業の意義

 この年末年始は、昨年の「年越し派遣村」に代わって、東京都が国の費用負担のもとで渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターに失業者らを集め、食事や宿泊場所を提供しました。この様子はマスメディアも「公設派遣村」として連日、紹介しました。4日以降もなお、自力で住居を確保できない人が約800人いると伝えられており、生活の基盤足りうる雇用の再建が、何よりも必要だと感じます。
 マスメディアではほとんど取り上げられていませんが、雇用の維持の意味では注目すべき取り組みが、やはり東京で続いています。上野駅に近いサウナ「王城」の、労組による自主営業です。ブログ「王城ユニオンの日記」に、この年末年始のもようも写真入りでアップされています。
※「王城ユニオンの日記」トップ
 http://d.hatena.ne.jp/oujyou_uion/
 「自主営業年越し感謝祭」
 http://d.hatena.ne.jp/oujyou_uion/20100104/1262577346

 労組による自主営業では、経営者側の申し立てを受けて東京地裁が昨年1月に強制執行に入った東京・品川駅前の京品ホテルの例もありました。
 今日の社会状況の中では、労組による自主営業は「雇用の維持」という特別な重みを持ち始めているのかもしれないと思います。ことし元日付の東京新聞朝刊の特報面で、王城ユニオンの親組合に当たる派遣ユニオン書記長の関根秀一郎さんが「本音のコラム」に「仕事がない」と題して、次のように書いています。

 生きていくためには失業するわけにはいかない。雇用を守るためには今の職場を守るしかない。事業所閉鎖や倒産に対抗して職場を守るためには自主営業しか道は残されていない。
 京品ホテルもサウナ王城も、今の職場を守らなかったら生存権が脅かされるからこそ自主営業を選択した。こんな時代にあって自主営業は、特別な選択肢ではなく、生きるための最後の砦となっている。

 王城ユニオンの取り組みを、マスメディアが広く社会に伝えていくことを期待しています。

※参考過去エントリー
 京品ホテルはだれのものか?(2009年1月16日)
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090116/1232064213

 京品ホテル強制執行(2009年1月25日)
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090125/1232846643

 京品ホテル強制執行で裁判官の人権感覚が問われている(2009年1月30日)
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090130/1233248699