あらためて自衛隊のありようが問われる〜海自・集団格闘死で遺族が提訴

 このブログでも何度も触れてきましたが、2008年9月に広島県江田島市にある海上自衛隊特殊部隊の養成過程で、他の部隊へ転出して養成過程を辞めることが決まっていた当時25歳の3等海曹が、15人を相手にした格闘訓練中に倒れ、16日後に死亡する事件がありました。亡くなった自衛官の遺族が国や当時の教官に8千万円の損害賠償を求めて松山地裁に提訴していたことが昨16日、マスメディアで報じられました。共同通信によると「遺族側は『海上自衛隊の調査報告書には責任の所在が明示されておらず(教官らの)処分にも納得がいかない』と主張。『養成課程を辞めることに対し、体罰をしたとしか思えない』と話している」とのことです。
※「『海自格闘死』で遺族が提訴 国や教官に8千万円求める」(47news=共同通信
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031601000430.html

 刑事事件としては昨年8月31日、担当教官でレフェリー役を務めていた2等海曹が業務上過失致死罪で略式起訴され、簡裁の略式命令に従い罰金50万円を納付。ほかに書類送検されていた幹部自衛官ら3人は嫌疑不十分で不起訴処分となって決着しています。広島地検の捜査は、訓練の際の安全配慮が十分だったかどうかに主眼が置かれ、訓練の必要性を含めた組織的な問題点についての判断を示すことなく終わっています。
 防衛省は昨年9月8日、レフェリー役の2等海曹を停職20日、特警隊隊長だった1等海佐を停職15日とするなど21人の処分を発表し、同時に海自は調査委員会の最終報告書を公表しました。当時のエントリーに書きましたが、防衛省自衛隊による内部調査は「現場の責任」を前面に出して強調しつつ、組織的な管理責任は形式的に問うただけとの印象を強く持ちました。
 既に転出が決まっていた隊員に、いったい何の必要があって過酷な連続格闘をさせたのか。25歳の前途有為の青年が、なぜこんな死を迎えなければならなかったのか。遺族が自衛隊の調査や処分に納得できないのも当然だと思います。過去エントリーで繰り返し書いてきたことですが、わたしはこの事件で本質的に問われるべきは、近年、任務の拡大が続いてきた自衛隊の組織のありようだと考えています。教官の個人的な資質の問題ではありません。新しい部隊や組織、新しい任務が次々に出来てきた中で、個々の隊員の命が軽視されかねないことになっていないか。訴訟で何が明らかになるのか、あるいは何も明らかにならないのか、今後を注視していきたいと思います。

※参考過去エントリー
「やはり『現場の責任』が前面に出た処分と最終報告〜海自・集団格闘死事件」(2009年9月10日)
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090910/1252534041

「教官の資質の問題ではない集団格闘死事件〜自衛隊の拡大基調は続くのか」(2009年9月6日)
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090906/1252171741

「組織の問題として考えるべき海自・集団格闘死事件」(2009年6月12日)
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090906/1252171741

自衛隊に何をどこまでさせるのか〜集団格闘死事件が問うもの」(2009年5月10日)
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090510/1241887234

防衛省のサイトには処分の概要と一覧、調査委員会の最終報告書のPDFファイルなどがアップされています。

 http://www.mod.go.jp/j/news/2009/09/08b.html

 http://www.mod.go.jp/j/sankou/report/index.html