ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

新社会人へ 「労働は商品ではない」

 4月になりました。あちこちの職場に、新しい顔ぶれが加わったことと思います。新社会人の皆さん、おめでとうございます。
 以下に引用するのは、わたしが新聞労連の委員長当時に運営していたブログ(旧ブログ「ニュース・ワーカー」)の2006年4月のエントリーです。4年がたち、わたし自身は現在は労働組合に所属していません。しかし、働き方、働かされ方が変わっても、わたしなりに考えている「働くことの意味」の根っこは、当時も今も変わりません。労働組合の大切さも、考えは変わっていません。
 「働くこと」は第一義的には生活の糧を得ることですが、自己実現の少なくない部分を占め、社会とつながる意味も持っています。働いて賃金を得ることは、雇用者や会社の下僕になることではありません。ILO(国際労働機関)のフィラデルフィア宣言が「労働は商品ではない」と強調している通りです。
 「働くことの意味」を考える際に何がしかの参考になればと思い、4年前のエントリーを引用します。
※ニュース・ワーカー「新入社員の皆さんへ〜労働組合に入ろう」=2006年4月6日
 http://newsworker.exblog.jp/3752870/

新入社員の皆さんへ〜労働組合に入ろう

労働組合は何のためにあるのか
 わたしたち一人ひとりは、会社の中や職場の中では弱い存在だ。会社から理不尽な命令を受けても逆らえない。残業しても残業手当が出ないかもしれないし、入社前に受けた説明と違って、意にそぐわない仕事を押し付けられたり、行きたくない職場に異動させられるかもしれない。そうなっても、文句も言えないし、逆らったら解雇されることだってある。だから、弱い立場のわたしたちは、団結することで会社と対等の立場に立ち、わたしたちの働き方を、わたしたち自身も加わった場で決めていく。それが労働組合だ。

労働組合は何によって守られるのか
 憲法28条はいわゆる労働三権を保障している。団結権労働組合をつくる権利)、団体交渉権(使用者と交渉する権利)、団体行動権ストライキなど)。その上で、労働組合法など、働く者の権利としての労働組合を保障する諸々の法律が定められている。

労働組合は何をするのか
 組合員の要求をくみ上げ、会社に提出して交渉し、要求を実現させる。賃上げによって組合員の生活を守り、労働条件の向上によって、組合員の健康を守る。そうすることで、わたしたちはわたしたちの仕事が社会に負っている責任を果たすことができる。だから、会社が法令違反や反社会的な行為をしているのなら、わたしたちはそれを見逃すわけにはいかない。

労働組合はなぜ戦争に反対し、平和を求めるのか
 戦争になれば、戦場に行って殺し殺され合いをさせられるのはわたしたち自身。たとえ、わたしたち自身が戦場に行かずに済んでも、わたしたちの仕事が戦争遂行を支えることになれば、わたしたちは殺人行為に手を貸すことになる。そうなれば、わたしたちは自分の仕事に誇りを持てない。社会に貧困がはびこり、貧富の差が広がって矛盾が増大すれば、戦争が引き起こされることは歴史が示している。そうならないために、働く者の生活と地位の向上が必要であり、労働組合が重要な役割を担う。

労働組合はだれのものか
 労働組合は、労働者であれば、だれもが等しく手にできるはずの権利。しかし、社会には、入りたくても入れる労働組合が身近にない人たちが大勢いる。身近に労働組合があるのなら、あなたは幸運だ。労働組合に入ったら、次は労働組合という権利を手にしていない人たちが、どうやったらその権利を手にできるのか、そのためにわたしたちが何をすることができるか、考えなければならない。それもまた団結であり、連帯だ。

 さあ、労働組合に入ろう。

※ILOの駐日事務所のホームページに、ILO憲章とフィラデルフィア宣言の日本語訳が掲載されています。
 http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/index.htm
 1919年に誕生したILOはもっとも古い国連機関のひとつです。憲章の前文には、なぜ貧困や貧困を招く劣悪な労働条件を放置してはいけないのかが書かれています。