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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

井上ひさしさんのご冥福をお祈りいたします

 作家の井上ひさしさんが9日、死去されました。ご冥福をお祈りいたします。
 幼いころ、NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」はなじみのテレビ番組でした。「みなさ〜んっ!」と語りかけるドンガバチョ(大統領だったと思います)が特に気に入っていました。放映は1964年だったと訃報記事にあります。1960年生まれのわたしにとっては、まさにもの心がついて以来、井上さんは活躍を続ける同時代の表現者でした。
 「吉里吉里人」が刊行されたのは大学生のときでした。分厚い大作でしたが、一気に読んだ記憶があります。ユーモラスな表現にしばしば笑いを誘われながら、普段は意識することのなかった「国境」について考えさせられました。人間は本来みな等しく平らな存在であっていいはずなのに、生れ落ちた瞬間、自らが選び取ることのできない国境と国家によって個人が規定されます。そこから戦争も差別も生まれてきます。
 井上さんの最近の活動では、2004年に結成された「九条の会」が強く印象に残ります。わたしは勤務を休職して新聞労連委員長に就いた年のことでした。労組の専従活動家として過ごしながら、「個の尊重」とは何か、運動として具現化したいとわたしなりに追求し続けた日々でした。井上さんをはじめ、「九条の会」に集まった方々の言葉に励まされました。
 享年75歳。もっともっと、同時代を衝く言葉を発してほしかったと思います。残念です。