自らのありようを客観化して確認する1冊〜日隅一雄弁護士「マスコミはなぜ 『マスゴミ』 と呼ばれるのか」補訂版

マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか(補訂版)? 権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する

マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか(補訂版)? 権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する

 もう4年近く前になりますが、以前、このブログで紹介した弁護士日隅一雄さんの著書「マスコミはなぜ『マスゴミ』 と呼ばれるのか」の補訂版が刊行されました。わたし自身は未読なのですが、日隅さんが編集長を務めるサイト「News for the People in Jpan(NPJ)」に、NPJ代表で弁護士の梓澤和幸さんが紹介の一文を書かれているので紹介します。

NPJブックレビュー
日隅一雄弁護士『マスコミはなぜ 「マスゴミ」 と呼ばれるのか』補訂版 現代人文社
梓澤和幸(NPJ代表)
 http://www.news-pj.net/books/020.html

 4年前に、刊行されたばかりのこの本を日隅さんにいただき、このブログにアップした読後記は以下にあります。
※「読書:「マスコミはなぜ『マスゴミ』と呼ばれるのか」(日隅一雄 現代人文社)」2008年5月7日 
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20080507/1262047414
 当時のエントリーの中でわたしは以下のように書きました。

 何よりも、新聞と放送の2大マスメディアで働く第一線の記者にぜひ読んでほしい1冊です。本書は「権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する」との副題の通り、日本の新聞ジャーナリズムと放送ジャーナリズムが実は「新聞社」や「放送局」の会社ジャーナリズムであること、「新聞社」と「放送局」の在り方を決めている要因が読者や視聴者ではなく、国家権力(総務省による直接の電波管理行政に代表される)とメディア企業の資本持ち合い(クロスオーナーシップ)と広告業界(1業種1社制の不採用)の“3点セット”であることを、具体的に指摘しています。
 新聞社の記者であれば、新聞販売が独禁法の適用除外となっている再販制度や特殊指定のことはある程度は知っているでしょう。しかし、免許制の放送行政で、戦後間もなくは独立行政委員会が存在していたことを知っている記者は、経済部や文化部の一部の記者を除けば、どれぐらいいるでしょうか。逆に、放送局の記者の中で、新聞の戸別配達(宅配)のことを正確に理解している記者はどれぐらいいるでしょうか。クロスオーナーシップにしても、新聞社と放送局の系列関係は知識としては知っていても、それが「表現の自由」や「知る権利」とどのような関係にあるか、常日頃から念頭においている記者はどれぐらいいるでしょうか。

 マスメディアで働く記者たちのこの状況は基本的には今も変わりがない、とわたしは認識しています。その後、この4年の間に政権交代があり、同時に「記者会見の開放」が新聞や放送メディアを直接の当事者として大きなテーマに浮上しました。関連記事が新聞にも載り、記者クラブのありようも含めて、マスメディアの側でも議論が深まり、具体的な行動につながる契機になりうるかに思えましたが、民主党マニフェストの破たんと歩調を合わせるかのように、記者会見の開放もマスメディアの内部での関心はすっかり薄れてしまったかに思えます。
 そして昨年3月11日に東日本大震災があり、東京電力福島第一原発事故が起きました。マスメディアにとっても経験したことがない事態であると同時に、とりわけ原発事故をめぐる安全情報(危険情報)の報道に対しては、厳しい不信が突きつけられていると感じます。しかしながら、やはりマスメディアの内側にいる記者たち、あるいは編集幹部、経営者のどれほどの人たちがその不信を自覚しているか。このタイミングで刊行された本書の補訂版には、日隅さん自身が足を運んだ東京電力の記者会見の模様と、マスメディアの報道の落差の考察が盛り込まれているとのことです。マスメディアの内側にいる者にとって、社会の中での自分たちのありようを客観化して確認するための最良の1冊だと思います。4年前の「何よりも、新聞と放送の2大マスメディアで働く第一線の記者にぜひ読んでほしい1冊」との記述は、今も同じです。
 日隅さんは、わたしが新聞労連委員長当時に面識をいただき、共謀罪をはじめ表現規制に反対する取り組みの中でさまざまなご教示をいただきました。職場に復帰した後も、メディア総研の学習会などで時折お目にかかり、その都度、刺激をいただいてきました。新聞記者から法律家に転身されたこともあってか、わたしたちマスメディアの人間に対するまなざしには厳しさと同時に連帯の意もあると、わたしは(自分勝手に、かもしれませんが)受け止めています。
 梓澤さんも触れ、NPJサイトにもコンテンツがありますが、日隅さんは軽くはない病と闘っている身です。その中での旺盛な社会活動に深く敬意を表します。

検証 福島原発事故・記者会見――東電・政府は何を隠したのか

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【追記】2012年1月22日5時20分
 日隅さん自身による補訂版の紹介が、日隅さんのブログ「情報流通促進計画byヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄」にあります。
 http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/e340899b5c8f5ac3393848481d9f8f46