「原発ゼロ」と関西のマスメディア・新聞

 少し日がたってしまいましたが、備忘も兼ねて書き留めておきます。
 昨年3月11日の東日本大震災と、東京電力福島第一原発事故の後、全国各地で定期点検入りした原発がそのまま再稼働していない中で、最後の1基になっていた北海道電力泊原発3号機が5月5日、定期検査入りし、午後11時3分に発電を停止しました。翌6日午前4時には、原子炉の運転を完全に停止。日本の商業用原発がすべて運転を停止する状況となりました。商業用原発が2基だけだった1970年以来、42年ぶりのことです。これから日本の原発をどうするのかについては、即時廃止、段階的廃止、一定数維持など、選択肢がいくつかありますが、この時点で「原発ゼロ」が現出したことは、社会的な関心がきわめて高い、大きなニュースだと思います。
 わたしが住む大阪でも、大手紙の6日付朝刊(大阪本社発行の最終版)は、朝日、毎日、読売、産経が1面トップ、日経が1面準トップでした。関西では、福井県にある関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させるかどうかをめぐり、隣接する京都府滋賀県の両知事のほか、橋下徹大阪市長や橋下氏が代表の「大阪維新の会」幹事長の松井一郎大阪府知事は一様に慎重姿勢を見せています。とくに橋下氏と大阪維新の会は、次期衆院選で国政に進出する方針を表明しており、政府の原発再稼働方針に激しく反発し、総選挙での争点化も企図しているようにうかがえます。しかし一方では、橋下氏は大飯原発が再稼働せずに今夏の電力需要ピークを乗り切るには、企業支援のための新たな増税が関西の住民に必要と発言(4月26日の共同通信の関連記事)。高い支持を誇る橋下氏の「増税発言」がどのように受け止められるのか、新たな要因も出ています。大飯原発の再稼働問題では、福井県が電力消費地である関西の理解を得るよう政府に要望しており、仮に福井県が政府方針を了承したとしても、直ちに再稼働するのかどうかは不透明だと、わたしは受け止めています。
 いずれにせよ「原発ゼロ」が終わることがあるとすれば、現状では大飯原発3、4号機の再稼働しか考えられず、そこに関西地域の意向が無関係ではないとすれば、関西のマスメディアがこの問題をどう報じるのかを考察することも、今後、わたしたちの社会が原発問題と向き合う上で何がしか意味があるのではないかと思います。「関西地域の意向」も、それが自治体首長の意向なのか、それともほかの何らかの形で表れる民意なのか、といった問題もあるでしょう。
 実は今月下旬、ある勉強会の場で、大飯原発の再稼働問題をめぐって地元の意向と在阪のマスメディア、中でも新聞各紙の報道について報告をすることになりました。その準備も兼ねて当分の間、上記の問題意識のもとに、在阪各紙や京都新聞神戸新聞などの報道の中で、目に留まったものを随時、書き留めていきたいと思います。

 今回は「原発ゼロ」を伝える各紙5月6日付朝刊の主な記事と見出しの記録です。全国紙はいずれも大阪本社発行の最終版です。

朝日新聞
▽1面
トップ「原発ゼロ 節電列島」「再稼働なき夏 現実味」
竹内敬二編集委員「電力選択 国民の手で」
「企業、連休中に『作りだめ』」(3面に続く)
▽2面
原発 決別か依存か」「政府 方向定まらず」「世論の反発、想像以上」
▽3面(1面から続き)
「夏の電力 自ら守る」「企業備え急ピッチ」
「需給予測さまざま 『16%超不足』『足りる』」
「『家庭向け、12%減を』関電管内 シンクタンク案」
「関西自治体知恵で勝負 節電税で奨励金・昼間の休暇・宝くじ」
▽8面
社説「『原発ゼロ』社会(下) 市民の熟議で信頼構築を」
ザ・コラム「ふたつの『レベル7』 福島は違う道をたどれるか」(渥美好司福島総局長)
▽34面(第2社会)
原発止めたままに」「福島→福井400キロ避難の女性」
「『ここから再び一歩』各地でデモ」


毎日新聞
▽1面
トップ「国内原発 稼働ゼロ」「全50基 42年ぶり」「大飯見通し立たず」
倉重篤郎論説委員長「ゼロから考える好機」
▽2面
「頼みの火力は老朽化」「急停止 停電の恐れ」
「国に安全確保要求 立地首長」
▽3面
「再稼働 政府誤算続き」「手続き批判 伊方頓挫」「規制庁未発足 体制整わず」(原発ゼロ 下)
「質問なるほドリ 原発事故の心配はなくなったの?」
▽5面
社説「国のかたちを考える 8エネルギー 原発『出口戦略』を練ろう」
▽6面(経済・総合)
「『脱依存』見えぬ将来像」「電源構成巡り紛糾」
▽31面(第1社会)
「生き方 再考の日」「各地で市民集会」
「労技術者 ジレンマ」「大阪万博に供給の自負」
▽30面(第2社会)
「節電8割前向き」「『周辺も同意必要』62人」(100人アンケート)
「政府の対応に不安=山形・自主避難の主婦」(「原発ゼロに思う」)


【読売新聞】
▽1面
トップ「原発50基 全停止」「42年ぶり 泊3号機検査」
▽2面
「規制庁メド立たず」「敦賀市長『判断の土壌乗れない』」「大飯『地元同意』溝深く」
丸山淳一経済部長(東京)「再稼働は拙速か」
▽3面
「節電の夏 綱渡り」(スキャナー)
「対策費『数億円』の企業も」「火力、無理やりフル稼働」
▽6面(国際)
ベトナム原発継続』期待」「角国、日本の廃炉注視」(バンコク、ウィーン)
▽30面(第2社会)
「停電 おびえる命」「人工呼吸器 電源確保に苦心」
「涼グッズに熱視線」
「『再稼働反対』500人デモ行進 御堂筋」


産経新聞
▽1面
トップ「電力不足 リスク連鎖」「原発稼働ゼロ 42年ぶり」
「経済停滞/熱中症増加/途絶える技術」
▽2面
主張「異常事態から即時脱却を 安全技術の継承は生命線だ」
▽3面
「節電20%超 企業悲鳴」「『いつまで協力』『業績回復に水』」
計画停電 観光・医療も影響」(関西電力管内サイド)
「活気戻れ 再稼働期待」(泊村)
▽26面(第2社会)
「『大飯再稼働を』『安全大丈夫?』」(大飯町表情)
「『地元同意』連休明けヤマ場」


日経新聞
▽1面 ※トップは「米マイクロンが買収へ(エルピーダ)」
準トップ「国内原発 稼働ゼロ」「42年ぶり、泊3号機が停止」
「『エネルギーを問う』第5部原発ゼロの試練・下 再稼働へ条件整備急務 手探り続く安全対策」
▽3面
「再稼働 月内決着は微妙」
「電力確保、見通せず 周辺自治体 政府に不信感」
「企業、自衛策急ぐ 生産分散や自家発電」
「脱石油戦略岐路に 原発、事故・不祥事相次ぐ」
▽30面(第2社会)
「『泊』停止に地元複雑」「村の経済痛手/再稼働は慎重に」

 社会面に見開きで関連記事を展開したのは毎日だけでした。毎日の第2社会面の「100人アンケート」は、大阪本社と管内の総支局が、大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山、福井、石川、広島、岡山、島根、香川、愛媛の各府県で取材したものです。
 以下に、京都新聞神戸新聞の主な掲載記事と見出しも記録しておきます。

京都新聞
▽1面準トップ「国内全原発が停止」「42年ぶり 泊3号、定検入り」 ※トップは北アルプス遭難8人死亡
▽2面:社説「『生き方』考え直す契機に」
▽3面:表層深層「夏の関西 計画停電も」「『大きな無理お願い』」「経産相言及 企業の自衛限界」
    識者談話「『エネルギー危機』象徴」=吉川栄和・京都大名誉教授
    識者談話「『全廃炉』の出発点に」=小林圭二・元京都大講師
▽第2社会面「節電成功し全廃炉実現を 関電京都支店前で集会」
      「動かさないのが現実的 被災地」「仕事激減、早期再開を 立地県」

神戸新聞
▽1面準トップ「国内の全原発停止」「42年ぶり 電力政策、転機に」 ※トップは北アルプス遭難8人死亡
▽3面「原発ゼロの夏 現実味」「計画停電 実施含み」「関電管内 企業、自衛策に奔走」
   大型識者談話「地域間格差 解決策示せ」=社会学開沼博
   識者談話「再稼働、極めて困難」=危機管理コンサルタント田中辰巳さん
   識者談話「現実見据え、冷静判断を」=奈良林直・北海道大教授
▽第2社会面「稼働ゼロ 兵庫の問い」「未来へ記念すべき日・地域経済に打撃深刻」(「原発考」)
      「国策に揺れる旧炭鉱村 泊」