憲法は「白紙委任」にそぐわない〜自民優勢の序盤情勢報道に思うこと

 新聞各紙の6日付朝刊の1面トップは、衆院選の序盤情勢で揃いました。朝日新聞毎日新聞、読売新聞、日経新聞産経新聞京都新聞神戸新聞のうち、朝日、読売、日経の3紙は4〜5日の2日間、全国で10万人超の電話調査を実施。毎日、京都、神戸は共同通信の出稿記事で、共同も同じ2日間に12万人超の電話調査を実施しています。各紙の1面トップ記事の見出しを以下に並べてみます(全国紙は大阪本社発行の最終版)。
▼12月6日付朝刊1面トップ
【朝日】「自民、単独過半数の勢い」「民主、100議席割れか」「維新は50前後」
【毎日】「自民 単独過半数の勢い」「民主 激減70前後も」「第三極伸び悩み」(共同通信出稿記事)
【読売】「自民 過半数超す勢い」「民主苦戦」「維新、第3党うかがう」
【日経】「自民 過半数の勢い」「民主は半分以下も」「第三極、浸透に遅れ」
【産経】「自公、政権奪取の公算」「民主は100議席割れも」「第三極 伸び悩み」(情勢取材)
【京都】「自公300議席視野」「民主激減70議席か」「第三極、伸び悩み」(共同)
【神戸】「自民 単独過半数の勢い」「300議席近く 民主70、第三極低迷」(共同)

※調査方法
朝日:4〜5日に全300選挙区で電話調査、11万5604件、回答率66%
読売:4〜5日に全国の有権者約10万1000人に電話世論調査、回答率64%
日経:4〜5日に電話世論調査福島県の一部を除く全国の有権者10万1167人から回答、回答率64・0%
共同:4〜5日に全国の有権者約12万3700人に電話世論調査


 自民党に支持が集中した要因は、民主党中心の政権への失望や、第三極の勢力の中での合従連衡劇が結果として存在感を低下させたことなどさまざまあると思います。橋下徹氏の日本維新の会石原慎太郎氏と旧立ち上がれ日本が合流して、自主憲法制定を掲げるなど自民党以上の右派勢力が形成されたことも一因かもしれません。中国のことを「シナ」と連呼してはばからず、核武装のシミュレーションまで口にする石原氏の前では、ほかのどの政党も穏健に見えると感じます。
 その自民党安倍晋三総裁は、憲法改変に並みならぬ意欲を示しています。同党の公約では、集団的自衛権の行使の解禁も明記しています。仮に今のままの情勢で投開票日を迎えた場合、極めて近い将来に改憲が、戦力の保持とその行使を容認するという形で具体的に政治日程に上る可能性が出てきます。このテーマは今回の選挙では争点になっているとは言い難く、論戦らしい論戦になっていません。仮にこのまま投票日を迎えてしまえば、争点として十分な論議を経ないまま、言葉を換えれば有権者が自ら選び取ったとの意識を持たないまま、自民党が公約に掲げていたことをもってその後の手続きが進んでいく、いわば「白紙委任」のような形で物事が決められていきかねません。そんな展開はそぐわない、余りに大きなテーマです。戦争をしない国から、戦争に参加し得る国に変わるのです。
 振り返れば今回の選挙についてマスメディアは、民主、自民の既成大政党と日本維新の会みんなの党日本未来の党などの第三極勢力の対決構図でとらえ、報じてきました。しかし民主党ももともとは改憲志向であり、この対決構図の中では憲法改憲論や自主憲法制定論ばかりが目立つことにしかなりません。集団的自衛権の行使も同様ですし、ひいては日米安保と沖縄の基地の問題も同様です。6日付朝刊の各紙の社説の中では、改憲が社論の産経新聞が、まさに「改正論」が高まっていることを歓迎するとしています。しかし、改憲論がある一方では護憲論もありますし、改憲論の中にもいろいろな意見があります。事の重大さにかんがみれば、多様な意見、ものの見方が有権者の前に提示され、論議が尽くされることが必要だと思います。
 新聞各社の情勢報道からうかがえることの一つは、公示直後とあってまだ投票先を決めていない有権者も少なくないことです。改憲集団的自衛権、沖縄の基地負担問題などを争点として深化させていくために、マスメディアの報道ができることも少なくないと思います。投票日までにまだ時間があります。


 以下に6日付朝刊各紙の社説やそのほかの記事、6日夕刊の目についた記事を書き留めておきます(全国紙は大阪本社発行の最終版)。
▼社説
【朝日】「総選挙 ネット利用 即解禁が『いいね!』」
【毎日】「衆院選こう考える 経済政策 インフレ頼みは危うい」
【読売】「衆院選 財政再建 借金大国からの脱却示せ」
【日経】(選挙関連はなし)
【産経】「衆院選憲法 改正論の高まり歓迎する」
【京都】「政治とカネ 改革の原点お忘れなく」
【神戸】「経済対策 内需掘り起こす政策競え」
沖縄タイムスは6日付朝刊の社説で憲法を取り上げています。
 社説[憲法改正]重視したい沖縄の視点 http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-12-06_42417
▼社会面など
【朝日】社会面トップ「使い捨て 俺は奴隷か」「タダ残業100時間」「『指詰めろ』暴力も」(あした、どこへ 課題の現場で 1ブラック企業
【毎日】第2社会面「風吹く町 問われる離党組」(大阪10区=高槻市島本町
【読売】社会面トップ「『影の総理』どぶ板」「反民主の風『お力を貸して』」(徳島1区)
【日経】(社会面に選挙関連記事はなし)
【産経】社会面トップ「揺れる『砂糖の島』」「『仕事なくなる』」「『自由化チャンス』」(鹿児島県徳之島、「争点」をゆく1 TPP)
【京都】第2社会面「暮らし直結 増税で対立」(単答直入 京都候補者アンケート1消費税)
【神戸】社会面トップ「大事なところ見えない」「社会保障 議論は先送り」「商売は?雇用は?膨らむ不安」(消費税増税
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▼12月6日夕刊
【朝日】
社会面トップ「『常勝』復活へ公明背水」「維新とも連携 自民『二股』」
社会面「地方の中に中央を」第2の首都=心理学者 小倉千加子さん
※1面に選挙記事なし
【毎日】
1面「女性・若者の政策を」「投票率低調 20代どうみる」
第2社会面「津波の街 いらだち」「届かぬ復興予算」(1票の底流 変わる有権者たち)
【読売】
1面トップ「『優勢』自民引き締め」「民主、巻き返し必死」
第2社会面「政治家 有権者が育てて」=元スターバックスCEO岩田松雄さん
【日経】
1面「市場を包む緊張感」=自民党・安倍総裁(師走の決戦2)
社会面トップ「候補者 冬将軍も敵」「タイツや暖房で武装」
【産経】
1面囲み「売り出し中」(写真・兵庫県明石市の商店街で支持を訴える候補者)
第2社会面「選挙CM真面目すぎ?」「党首前面に政策訴え」「不景気反映の分析も」
第2社会面「『消費税』公約 見極めたい」=落語家月亭八方さん
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▼5日夕刊
【京都】
1面トップ「原発どうなる」「『ゼロ』の時期は・工程表示して・もっと議論を」「生活直結 有権者ら注視」
第2社会面「地域実情にあった形に」=「在宅ケアセンター新大宮」管理者の男性(私の争点)
【神戸】
第2社会面「ルミナリエ『混乱心配』」「規制区域に“演説スポット”」「主催者や県警 陣営に配慮呼び掛け」
第2社会面「『党首の調整不足』」「未来・嘉田氏 比例名簿遅れ謝罪」