橋下徹氏「きちんと説明すれば辺野古移設で大丈夫」とは何を根拠に

 11日は3月の東日本大震災東京電力福島第1発電所の事故から1年9カ月の日でした。12日付の朝刊各紙を見ると、衆院選の争点として「復興」を取り上げた記事も目につきます。16日の投開票日まであとわずか。選挙戦も最終盤に入り、新聞各紙が選挙報道に割く紙幅も増えたように感じます。公示からこれまでこのブログでは、各紙の1面と社会面を中心に主な記事と見出しを書き留めていましたが、今回からは少しやり方を変えて、各紙が多岐にわたる争点をどのように報じたかに比重を置いてみようと思います。憲法や沖縄の基地、戦争と平和の問題を各紙それぞれどう報じていたかはもちろんのこと、それ以外にも、各紙がそれぞれ争点として何が重要と考えていたか、一定の記録になると思います。


 さて、12日付朝刊の中で目に留まった記事の一つは、「右傾化への歯止め必要」の見出しを取った朝日新聞河野洋平・元衆院議長へのインタビューでした。なぜ右傾化が進んでいるのかについて河野氏は「東西冷戦が終わり、共産党社民党など左派の主張の根拠が弱くなり、保守が左派を気にせずに自由に発言する傾向が強まった。民主党政権でも武器輸出三原則を緩和し、集団的自衛権の行使検討を主張する人もいる。政権与党と野党第1党が同じ方向を向き、右傾化まで先陣争い。昔の社会党と違い、チェック機能が働かなくなっている」と指摘。自民党の変容や小選挙区制によってハト派が減ったことを挙げ「このまま右へ右へと行けばリベラル勢力が絶滅しかねない。崖から落ちれば有権者も気づくかもしれないが、その時は引き返せなくなるという危惧があり、右傾化への歯止めが必要だ」と述べています。


 もう一つ、気になったのは、日本維新の会の代表代行の橋下徹大阪市長が11日に沖縄を訪ねたことです。日本維新の会は沖縄でも小選挙区に公認候補を擁立していますが、橋下氏に候補者は同行せず、選挙応援とは少し趣が異なったようです。以下に神戸新聞の掲載記事(共同通信配信)の一部を引用します。

 日本維新の会代表代行の橋下徹大阪市長は11日、那覇市で街頭演説し、米軍普天間飛行場宜野湾市)移設に関し「日本維新として名護市辺野古移設以外の代替案を持っていない」と述べ、日米両政府の現行案を容認する姿勢を重ねて示した。また「沖縄県民が全て米軍基地を嫌がっているわけではない。きちんと説明すれば辺野古移設で大丈夫だ」と名護市で記者団に述べた。
 橋下氏は名護市内で開いた住民との対話集会でも「辺野古案しか持ち合わせていないと正直に説明に来た」と発言。その上で「さらなる負担軽減の計画をつくりたい。沖縄を世界一級のリゾートにする」と述べ、カジノ誘致や旅行者の消費税免除などを提案した。
 集会会場は約300人収容可能だったが、参加者は最大約70人にとどまった。住民との質疑応答は非公開だった。

 「沖縄県民が全て米軍基地を嫌がっているわけではない。きちんと説明すれば辺野古移設で大丈夫だ」とは何を根拠にそう判断しているのか。このブログでも触れてきましたが、欠陥機との指摘がある米軍の輸送機オスプレイ配備強行で、沖縄では保守政界の側からさえも、日米両政府との信頼関係は失われているとの指摘が上がっています。また「沖縄を世界一級のリゾートにする」とは、これまでも日本政府が行ってきた地域振興予算と基地押し付けのセットとどう違うのか、違わないのか。特に日本維新の会が掲げる「自立した個人」「自立した地域」とへだたりはないのか、二重基準ではないのか。もう少し詳しく知りたいところです。
 ※参考過去エントリー
 「沖縄の決意と覚悟は本土の日本人に伝わっているか〜知事・首相対談の本土紙報道」2012年10月14日
  http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20121014/1350165233


 12日夕刊の紙面は、北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイルの打ち上げ実験のほか、兵庫県尼崎市の連続変死事件の容疑者自殺、京都府舞鶴市の少女殺害事件の被告に対する逆転無罪判決と、大きなニュースがひしめき合い、選挙関連記事はほとんど目につかない状況でした。

 尼崎の事件の容疑者自殺と舞鶴の事件の逆転無罪判決は、マスメディアの事件事故報道のありようとも少なからずかかわるのですが、この論点については、機会をあらためてわたしの考えをまとめてみたいと思います。


※以下は各紙の主な衆院選の関連記事の記録です。全国紙は大阪本社発行の最終版です。
▼12月12日付朝刊
【朝日】
1面「安倍カラー重なる維新」「改憲や経済競争重視」(朝日・東大共同調査)
2面「競う『復興』上滑り」「迷う被災者 実行力注視」「公共事業に論戦シフト」
3面「かすむ『身を切る覚悟』」「自民は沈黙 公明は後退」「第三極、声高に脱官僚」(公約を問う 8政治改革)
4面(政治)「右傾化への歯止め必要」元衆院議長 河野洋平さん
4面「橋下氏、普天間を視察」「住民と対話」
6面「生活保護 削るだけでは」(政策点検くらし2)
19面(文化)「対立軸になる気配見えず」「小さな政府vs大きな政府
25面(生活)「命を守らず、何が収束か」(10代 私の声聞いて 2エネルギー政策)
社会面トップ「原発の街 重い現実 悩む一票」(福井3区、福島5区)
第2社会面「武力の先 平和はあるか」(あした、どこへ 課題の現場で6 戦後67年の憲法

【毎日】
1面「民自、対中外交で差」「『強硬』安倍氏に首相懸念」(選択の手引、3面へ)
1面「復興の将来像描く時」大坪信剛・東京本社地方部長(私の視点5)
3面「世論うかがい日中強硬」「環境が変化 乏しい改善策」「集団的自衛権行使 争点に」(選択の手引 外交・安保)
4面「老朽化対策は急務」「自公『公共事業拡大』」「『バラマキ』財政悪化が加速」
5面「橋下氏 辺野古移設を容認」「地元候補と食い違い『反対なら出ていって』」
8面(経済)「民間努力、政治崩す」「関係悪化、関西打撃」(緊急点検 中 日中問題
社会面トップ(投票率の話題)

【読売】
1面「TPP語らぬ党首たち」(現場から5、4面へ)
2面「インフレ目標に温度差」(政策点検 金融政策)
2面「沖縄問題 議論深まらず」(投票まで4日 衆院選ドキュメント)
4面「反TPP 農業票に配慮」北海道10区、大分1区(現場から)
4面「大型補正 各党訴え」「財務省 国債増発懸念」
第2社会面「働くママ 支援充実に1票」「『子どもの預け先 増やして』」

【日経】
1面(選挙記事なし)
3面「ねじれ国会 対策急務」「議員定数削減も焦点」(衆院選争点 7)
4面(政治)「公約に翻弄され」「基地・TPP…曖昧に」」(沖縄3区、山形1区)
5面(経済)「脱デフレ 金融政策は有効か 衆院選争点」「潜在成長率上げ先決」=東京大学大学院教授・岩本康志氏「非伝統的政策に効果」=日本経済研究センター理事長・岩田一政氏
社会面「街守る指導力 住民期待」「高知1区、大震災に備え」

【産経】
1面「次期首相 26日に指名」「特別国会 予算編成は越年」
2面「ツイッター曖昧基準逆手」
3面「解けぬ鳩山元首相の呪縛」「語られない辺野古移設」=沖縄3区(注目選挙区を行く)
5面(政治)「民主 外交批判に反撃」「安倍総裁発言で焦り露呈」
11面(経済)「目標政策か 構造改革か」(経済政策の焦点1 デフレ脱却)
社会面トップ「意地と確執 遺恨深く」「“電撃世襲”で因縁/元官房長官vs知事」大阪13区、愛媛1区(乱戦のゆくえ1)
第2社会面「橋下氏『辺野古しか』」「県民『正直』『何が分かる』」「沖縄で演説・集会」

【京都】
1面トップ「次期首相26日選出」
1面準トップ「混戦8人終盤奔走」=京都4区
3面「形勢逆転焦る首相」「安倍氏は安全運転」「最終盤 激しい論戦」
3面「争点を斬る4:消費税増税」「地域の自営業者打撃」=仏教大教授・芳野俊郎氏「社会保障充実に必要」=同志社大教授・橘木俊詔
5面(政治)「国際環境変化 漂流恐れ」(選択の意義4 外交・安全保障)
12面・12党の公約(1ページ)
26面「『空白』福島5区」「住民ら分散避難」
第2社会面「高齢者 居場所を求めて」(託す ここから1 ゲームコーナー)

【神戸】
1面トップ「26日に次期首相選出」
1面準トップ「民主出遅れ 揺らぐ土壌」=兵庫5区、9区(激流ひょうご師走決戦5)
2面「首相は挑発/安倍氏は安全運転」「衆院選最終盤」
2面「橋下氏『代替案ない』」「沖縄で演説 辺野古案を容認」
5面「『自助』『公助』違い鮮明」「衆院選公約『社会保障』立ち位置は」
第3社会面「『未来』の言葉使いづらくなりまして」(選管の話題)
第2社会面「参加是非 議論進まず」「農業、医療…幅広く影響」(一票力 TPP交渉)

▼社説
【朝日】「総選挙 税制改革 豊かな人への課税を」
【毎日】「衆院選こう考える 尖閣諸島 自民公約は対立あおる」
【読売】「衆院選 年金制度 甘い公約では改革が進まない」
【日経】(選挙関連の社説なし)
【産経】(選挙関連の社説なし)
【京都】「衆院選 教育政策 子の現状からの議論を」
【神戸】(選挙関連の社説なし)

▼12日夕刊
【朝日】第2社会面「戦争の怖さ よく考えて」=脚本家・小山内美江子さん(教育と国)
【毎日】2面・特集ワイド「ひと味違う!?投票先の見つけ方」
    社会面「『政争やめ復興を』」「がれき撤去の現場監督」
【読売】(選挙記事なし)
【日経】(選挙記事なし)
【産経】2面「公平性確保 TV局苦労」「多党乱立で政見放送増加」