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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「戦争放棄」「男女の平等」をともに掲げた先進性〜追悼 ベアテ・シロタ・ゴードンさん

 新しい年を迎えました。本年もよろしくお願いいたします。

 今年はこのブログでも、憲法と平和についての考察を深めていきたいと思っていたところで、残念なニュースを目にしました。男女の本質的平等が日本国憲法24条に盛り込まれるに至った経緯に深くかかわった米国のベアテ・シロタ・ゴードンさんが昨年12月30日に亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。

 ベアテ・ゴードンさん死去 日本国憲法の男女平等条項起草(47news=共同通信)2013年1月1日
 http://www.47news.jp/CN/201301/CN2013010101001215.html

ベアテ・ゴードンさん死去 日本国憲法の男女平等条項起草
 【ニューヨーク共同】第2次大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)民政局のスタッフとして日本国憲法の起草作業に携わり、男女平等に関する条項を書き上げた米国人女性ベアテ・シロタ・ゴードンさんが昨年12月30日、膵臓がんのためニューヨークの自宅で死去した。89歳だった。娘のニコルさんが31日、共同通信に明らかにした。
 ニコルさんは「母は生前、日本国憲法の平和、男女同権の条項を守る必要性を訴えていた。憲法改正に総じて反対だったが、この二つ(が変更や削除されること)を特に懸念していた」と語った。

 ※ウイキペディア「ベアテ・シロタ・ゴードン」
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%B3

 「男女の平等」の一つの側面として考えていることがあります。戦時性暴力の問題や米兵による性暴力等々が示唆しているのは、「戦争」と「男女の平等」は相いれないということです。日本国憲法が9条で戦争放棄、戦力不保持を定めるのと同時に、24条で男女の本質的な平等を踏まえていることに、この憲法の先進性があるとわたしは読み解いています。
 考えようによっては、GHQの要員だった米国人女性が起草していたということ自体、「米国による押し付け憲法」の主張の根拠の一部をなすかもしれません。しかし、憲法に男女の本質的平等が掲げられたからこそ、戦後の日本社会で得られたものの大きさもあるはずです。仮に「押し付け」であったとしても、その理念が社会に根付いているのであれば、それはわたしたちの社会が誇っていい価値だろうと思います。
 昨年12月の衆議院選挙では、改憲や自主憲法制定を掲げる自民党日本維新の会が比例でも第1党、第2党の得票を得ています。いずれ改憲が具体的な政治日程に上る可能性がある中で、憲法の在りようを考える際には、現行の憲法について「押し付け」の一言だけではなく、成立から今日に至るまでの経緯、9条とそれ以降の国民の諸権利のそれぞれの条項が持つ意味などがあらためて広く知られていいと思います。その上で、現憲法の理念を選び直す、という選択肢があってもいいのではないかと考えています。ベアテさんの業績は、現代の日本社会にも広く知られてほしいと思います。

 今年は、憲法の個別の条文に言及する際には、その条文を書き留めるようにします。わたし自身が一つひとつの条項の意味を再確認する作業です。

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。