【憲法メモ】6月10日〜16日:東本願寺「『日本国憲法第九十六条「改正」反対決議』を参議会において全会一致で可決」ほか

 憲法に関連した論考やニュースで目に留まったものをまとめた【憲法メモ】です。


▽HUNTER「『改憲』煽る読売新聞 お粗末検証と橋下徹の共通性」(2013年6月10日)
 http://hunter-investigate.jp/news/2013/06/96-96.html
 HUNTERがどのようなサイトかは、以下に紹介があります。福岡県が拠点とのことで、九州をテーマにした記事が多いのですが、新聞・テレビのマスメディアとは異なった切り口、書きっぷりで参考になることも少なくなく、時折目を通しています。
 http://hunter-investigate.jp/group.html
 6月10日の記事は、読売新聞が6月7日に掲載した憲法96条改変へ向けたキャンペーン記事への批判です。相当に激しい筆致です。中でも96条改変への批判に対し、読売が5点にわたって、他紙の記事やコラムを取り上げて批判していることについて、妥当性を一つ一つ検証。読売の批判が的を得ていないさまが、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長に通じていると指摘しています。特に、毎日新聞のコラムが「私も、私たちメディアも、そして国民も往々にして判断を間違えるのである。批判を受けるのを覚悟して言えば、国民を信じ過ぎてもいけないのだと私は思う」と書いたことについて、読売が「検証5」として、橋下氏の「手続きを極端に厳格化させて無理やり変えさせないようにするというのは、あまりにも国民をばかにした、国民を信用していないやり方だと思います」との言葉を引用して批判していることに対し、毎日のコラムの原文を紹介しながら厳しく批判しています。
 HUNTERの筆者は橋下氏の人物評も相当に厳しく書いています。その点まで同意するかはともかくとして、96条改変をめぐって安倍晋三首相が口にしているような、発議要件のハードルを下げることで「憲法を国民の手に取り戻す」というような考え方や、橋下氏が言うように、改憲発議のハードルを高く設定することが「国民をばかにした、信用していないやり方」ととらえる発想に対しては、わたしは違和感があります。この点に関連しては、このブログでも敗戦直後に伊丹万作が書き残した「だまされる罪」のことを紹介しました。
 また、橋下氏の従軍慰安婦・風俗業発言問題では、読売新聞(大阪本社版)が紙面では一貫して1面に掲載せず、朝日や毎日とは際立って異なった報道姿勢を見せていたことも、このブログで報告しました。「改憲」「読売新聞」「橋下徹氏」の3つのキーワードの関連性に留意していたところでもあったので、今回のHUNTERの記事は興味深く読みました。
※参考過去記事
▼「伊丹万作『戦争責任者の問題』と憲法96条〜『だまされる罪』と立憲主義」2013年5月7日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20130507/1367881891
▼「橋下氏『従軍慰安婦』『風俗』発言の報じ方と96条改憲へのスタンス」2013年5月20日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20130520/1369004833


毎日新聞「特集ワイド:育休3年、女性手帳…評判イマイチ 安倍さん、女心分かってるの」(2013年6月10日夕刊掲載=大阪本社版)
 http://mainichi.jp/feature/news/20130604dde012010008000c.html

 「女心が分からない」は男性が最も言われたくない批判の一つだろう。いわんや“人気稼業”の政治家、しかも一国のトップにおいてをや。安倍晋三首相が打ち出す女性政策の評判が今一つだ。アベノミクスにおける成長戦略の柱に掲げた「育休3年」は育児の押しつけ、妊娠・出産に関する情報を盛り込んだ政府の「女性手帳」は余計なお世話、と。この「つまずき」の背後にちらつく首相の女性観を探った。【瀬尾忠義】
 「普通の家庭のだんらんはありませんでした」。政治ジャーナリストの野上忠興さんの取材に安倍首相がそう語ったのは9年前、安倍氏自民党幹事長の時だった。
 元共同通信政治部記者で安倍家を30年にわたり取材してきた野上さんはまた、安倍首相の小学生時代の恩師から見せられた作文に強い印象を受けたことを覚えている。「拾ってきた雌犬の話なのですが、コロと名付けたその犬が我が子に示す愛情や、子犬がもらわれていった後に我が子を捜すコロの姿が克明に描かれていました」。そこに野上さんは家族、とりわけ母親との触れ合いに飢えていた晋三少年の心象を読み取る。「父親の晋太郎さん(元外相)は晋三さんの幼少期に落選し選挙区に入り浸りの日々を送ったこともあり、ほとんど家にいなかった。母親の洋子さんも夫の活動を支えるために留守がちで、晋三さんは知人の家に預けられたりもしました。久保ウメさんという住み込みの女性が母親代わりなどを務めたのですが、久保さんは『晋三さんは中学生になっても、寒い冬の日には私の布団に潜り込むことがあった』と話していましたね」

 一国の首相の世界観、歴史観、社会観、人生観等々は広く社会に知られていい情報です。人格や思考、志向の形成に出自や生い立ちが深くかかわっているのだとしたら、それらもまた社会にとって有益な情報だと思います。そんなことを考えながら、とても興味深く読んだリポートです。


▽半田滋さん:「『国防軍』をつくる」の愚かさ(法学館憲法研究所「今週の一言」=2013年6月10日)
 半田滋さんは東京新聞記者として長らく防衛問題を取材してきた方です。

 振り返れば、丸腰の派遣にあたる国際緊急援助隊を含め、22回で延べ4万人の自衛官が海外へ派遣された。1発の銃弾を撃つことなく、1人の地元民を殺傷することもなかったのは憲法の制約があったからだ。PKOでは道路・橋の補修、宿舎の建設、輸送といった後方支援活動に徹し、国連や派遣先国から「礼儀正しい」「技術力が高い」と評価されている。
 国会議員の中には、PKOでもより危険度の高い「平和維持軍(PKF)に参加すべきだ」との声があり、政府は凍結されていたPKFの参加を2001年に解除した。それでもPKF参加が1度もないのは、どの活動に参加するか決めているのが事実上、制服組だからだ。彼らが危険な活動を慎重に避けている。日本の「シビリアンコントロール」とは、制服組の意向に政治家が従うことであり、実体は「逆シビリアンコントロール」となっている。
 PKFに参加しているのは、バングラデシュ、パキスタンなど発展途上国ばかりで、国連から支払われる兵士への日当を外貨獲得の手段にしている国々である。その列に割り込めというのだから、日本の政治家はどうかしている。
 勇ましいことを主張する政治家ほど自衛隊の実態を知ろうとしない。5月にあったイベントで迷彩服を着て戦車に乗り、ポーズをとった安倍首相も例外ではない。
 「国防軍」をつくると主張する前に自分の立ち位置を確認したほうがいい。2月の訪米で、勇んで「集団的自衛権の行使容認の検討を始めた」と伝えたものの、オバマ大統領からそっけなく扱われたのはなぜか考えた方がいい。歴史認識を見直し、「国防軍」つくるでは戦前への回帰そのものだ。そんな日本は危険極まりないと警戒されるのは自明である。

 軍の暴走を防ぐために、政治を軍の上位に置くのがシビリアンコントロールのはずですが、日本の場合は政治家に任せておくと、自衛隊がどんどん海外に派遣され、より危険な任務につかされかねません。暴走するのは自衛隊ではなくて政治の方です。この小論考だけでなく、現場の具体的なファクトを踏まえた半田さんの記事や著作からはそのことがよく分かります。
 私自身はこの数年来、政治に翻弄される自衛隊を考えつつ、「自衛官」という職業を働き方の問題としてとらえ直してみることも必要ではないかと考えています。個々の自衛官の人権が守られているか、という憲法上の問題もまた存在していると思います。
※参考過去エントリー 読書:「『戦地』派遣 変わる自衛隊」(半田滋 岩波新書)=2009年5月6日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20090506/1241596087


水島朝穂さん「国防軍でなかったからこそ―イラクで死者ゼロの理由 」(今週の直言=2013年6月10日)
 憲法9条の歯止めがあったからこそ、イラク自衛隊員に犠牲者を出さなかった、との指摘は、先の半田滋さんの論考とも通じるものがあると感じました。
 それとは別に、以下の指摘も重要だと思います。特に、マスメディアの内側にいる1人として「排外主義的な空気が国民のなかに充満し、メディアがそれを焚き付けたことも起動力となった」との指摘は忘れてはならないと思います。

 政治家や軍人だけが暴走して戦争が起きたのではない。排外主義的な空気が国民のなかに充満し、メディアがそれを焚き付けたことも起動力となった。いま、この国は、中国、台湾、韓国、北朝鮮、ロシア、米国と「全周トラブル状態」にある。中国や韓国・北朝鮮の人々に対して暴言を吐く「運動」まである。日本の政治指導者の語る言葉は、「味方にできなくてもいいから、敵にしない」の逆をいく、「味方にできる人までも敵にしてしまう」類のものである。政治家たちの甘言に、国民の冷めた眼が必要な所以である。


共同通信「橋下氏訪問に文書で『拒絶』通告 米サンフランシスコ市」(47news、2013年6月11日)
 http://www.47news.jp/CN/201306/CN2013061001002180.html

 旧日本軍の従軍慰安婦発言をめぐり、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が訪問予定だった米サンフランシスコ市が5月、「公式訪問としては扱わない。表敬訪問も受けない」と拒絶する内容の文書を大阪市に送っていたことが10日、大阪市関係者への取材で分かった。
 文書を送ったのは、訪問計画の交渉窓口となっていたサンフランシスコ市幹部。大阪市は5月22日に受け取り、翻訳を同日中に橋下氏に示したが、公表していない。

 橋下氏の発言が海外でどう受け止められているか、きわめて明快で分かりやすい報道でした。橋下氏の訪米断念の正式表明は5月28日でしたが、この文書が大阪市に届く前日の5月21日の時点では、訪米に意欲を見せていました。訪米を強行すればどんなことになるのか、自分がいかに招かざる客であるのか、この文書で橋下氏はようやく察するに至ったのではないかと思います。ふだん「国際化」や「グローバルな都市間競争」をしばしば口にしている橋下氏の国際感覚が、この程度のものであることは、大阪にとって幸せなことではないと思います。


▽澤藤統一郎さん「自民党改憲草案21条2項の『目的』の恐ろしさ」(ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」=2013年6月11日)
 http://article9.jp/wordpress/?p=546
 護憲の立場から、弁護士として憲法問題を論じているブログです。この記事では、かつて治安維持法に盛り込まれていた「目的遂行罪」と自民党改憲案の類似性について指摘しており、とても参考になりました。もっと広く知られなければならない論点だと思います。とりわけマスメディアにとっては、自らの取材報道活動に直接かかわることであり、社会的な存在意義も問われてしかるべきです。繰り返し報じていかなければならない問題だと思います。

 自民党日本国憲法改正草案の恐ろしさは、9条を改悪して外征可能な国防軍をつくろうということだけではない。国旗国歌・元号の強制によって「天皇を戴く国家となりかねない。また、「公益・公序」というマジックワードによって、あらゆる人権が制約可能となり国民の基本的人権を根こそぎ否定しかねない。このようなことは、既に多くの人に知られてきた。
 私は、自民党憲法改正草案の恐ろしさの象徴として、草案21条2項を挙げたい。なかんずく、その条文の中の「目的」という言葉の恐ろしさを語りたい。まだあまり注目されていないことであるから。

 現行の憲法21条は「表現の自由」の規定で、以下のような条文です。

第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 自民党案はこの第1項の後に、新しい第2項として「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」との一文を入れ、現行の第2項は第3項とする内容になっています。「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」や「それを目的として結社をする」と、だれがどんな基準で判断、認定するのか。その一事だけでも問題の多い案です。


東本願寺:「日本国憲法第九十六条『改正』反対決議」を参議会において全会一致で可決(2013年6月12日)
 http://www.higashihonganji.or.jp/news/important-info/2862/
 真宗大谷派東本願寺)の参議会が6月12日、憲法96条改変に反対する決議を全会一致で可決しました。前日の11日には、宗議会もやはり全会一致で同文の決議を可決しています。東本願寺のサイトによると、宗議会は僧侶議員、参議会は門徒議員で構成され、ともに真宗大谷派の最高議決機関とのことです。

 「国豊かに民安し。兵戈(ひょうが)用いることなし」と説く『仏説無量寿経』を正依の経典とする私たち真宗大谷派宗門は、宗祖親鸞聖人の開顕せられた念仏の教えと、そこに流れる御同朋・御同行の精神のもとに歩んでまいりました。しかし、私たちは、過去の戦争においてその教えを歪め、無数のかけがえのない命を戦場に送り込むという痛恨の過ちを犯してしまいました。その慙愧に立って、1995年宗会において「不戦決議」を行った私たちは、今こそ念仏者として、恒久平和を願う現日本国憲法を守らねばなりません。
 よって真宗大谷派参議会は、日本国憲法第九十六条「改正」反対をここに決議いたします。

 この決議の特徴は、宗教者が過去の自らの過ちを直視していることです。観念的に平和を唱えているのではありません。「憲法が現実に合わなくなっている」と言って改変を主張する政治家よりも、はるかに現実的でリアリズムに満ちていると思います。


北海道新聞(2013年6月16日)
 「矢臼別訓練 米軍、夜間も砲撃 高橋知事、週内にも防衛省へ」
 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/473827.html
 「矢臼別訓練再開 不安よそに砲撃200回 住民『誤射、反省しているのか』」
 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/473839.html

 沖縄駐留米海兵隊陸上自衛隊矢臼別演習場(根室管内別海町、釧路管内厚岸、浜中両町)での砲弾誤射事故後、15日午後に再開した実弾射撃訓練を同日午後9時半ごろまで続行した。演習場内の私有地にある現地監視本部で訓練を監視した海兵隊移転反対別海町連絡会によると、この日は155ミリりゅう弾砲の砲弾とみられる射撃音は計199回確認された。
 米海兵隊の実弾射撃訓練は、11日に誤射事故が発生して以来、4日ぶり。21日まで実施される予定。
 北海道防衛局によると、射撃訓練は15日午後1時18分に再開後、同4時19分でいったん中断。同7時47分にまた再開し、同9時29分で終了した。
 一方、高橋はるみ知事は15日夕、札幌市内で記者会見し、訓練再開について「遺憾だ」と不快感を表明。週明けにも知事自ら防衛省へ出向き、誤射事故の重大性などを訴える意向を明らかにした。

 垂れ込める曇り空の下、砲撃音が何度も響き渡った―。矢臼別演習場(根室管内別海町など3町)で発生した155ミリりゅう弾砲の砲弾誤射事故を受け、4日にわたって中断していた沖縄駐留米海兵隊の実弾射撃訓練が15日午後、再び始まった。夜間にまで及んだこの日の訓練。砲撃音の確認回数は200回近くに達した。住民らの間には怒りや失望感が広がる一方、消極的ながら訓練再開を容認する声も聞かれた。

 この米海兵隊の実弾射撃訓練は、沖縄から本土の自衛隊演習場に移転したものです。11日午前に155ミリ榴弾が演習場外に着弾する事故があり、12〜14日は演習が中断されていましたが、15日に再開されました。北海道新聞は15日には、道と地元自治体が、米海兵隊による一方的な訓練再開の意向表明に対する抗議文を、北海道防衛局現地対策本部に提出したと伝えています。沖縄に限らず、米軍はどこにいても米軍、自分たちの都合で動きます。私の住む大阪では、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事が、自治体首長と政党代表・幹事長の立場を都合よく使い分けながら、米軍輸送機オスプレイの訓練を大阪府八尾市の八尾空港に誘致すると表明しています。今北海道で起きていることは、大阪でも知られるべきだと思います。


しんぶん赤旗改憲報道 危うい JCJなどシンポ開く 現役記者ら討論」(2013年6月16日)
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-16/2013061614_01_1.html

 「アブナイ改憲騒動、あやうい改憲報道」と題するシンポジウムが15日、東京都内で開かれました。現役の新聞記者と憲法学者の奥平康弘東京大名誉教授(九条の会呼びかけ人、96条の会発起人)が改憲をめぐるマスメディアの現状を討論しました。
 奥平氏は基調講演で、自民や維新、みんなの党が狙う96条改憲を批判し、「憲法の性格をがらりと変える」と危険性を指摘。96条は安易な改憲を防ぐことで立憲主義を支え、国家権力をしばってきたと解説しました。
 討論で奥平氏は、改憲報道の不足を「もうちょっと書けないのかねと思う」と指摘する一方、市民は読者欄などマスメディアを使って積極的に発信していると評価しました。

 このブログでもお知らせしていた憲法メディアフォーラムの第8回シンポジウム「アブナイ”改憲騒動” あやうい改憲報道」のリポートです。