「反対」「批判・疑問」が圧倒〜秘密保護法案審議入り前後の新聞社説

 批判が多い特定秘密保護法案が11月7日、衆院で審議入りしました。関西の新聞各紙がどのような扱いで報じたかは、このブログで既に報告したとおりです。この法案が10月25日に安倍晋三内閣で閣議決定された際には、全国の新聞各紙が社説でどんな風に取り上げたか、ネットで調べた範囲のことをこのブログに書きました。とても多くの方に読んでいただいたようでしたので、今回も衆院での審議入り前後に掲載された新聞各紙の社説を分かる範囲で調べてみました。前回と同じように、対象は各紙のサイトです。社説をサイトに掲載していない新聞や、有料会員でなければサイトを閲覧できない新聞もあり、網羅的な調査ではありません。ただ、大まかな傾向は前回と変わらず、ブロック紙・地方紙は法案に明確に反対、ないしは批判的な論調が圧倒していると言っていいと思います。以下に特徴的なことやわたしの感想を簡単に書き留めておきます。
※参考過去記事
 「『反対』を表明している新聞は情報が多い〜特定秘密保護法案審議入りを伝える関西各紙の比較」2013年11月9日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20131109/1384003606

  • 全国紙では明確に反対を表明している朝日新聞毎日新聞の2紙が複数回、関連の社説を掲載し、特に毎日新聞は論点ごとに詳述してシリーズ化しています。特筆ものと言ってよいと思います。ブロック紙、地方紙も反対や批判的な論調の社説掲載は、10月に続いて複数回目の新聞が多いようです。やはり、法案に反対、批判的な新聞ほど、関連の情報量が多くなります。
  • 読売新聞は11月8日付で掲載した社説で、国民の間に懸念があることを強調して「重要なのは、一定期間を過ぎれば、原則公開し、後世の歴史的検証を受けるという視点である」と指摘していますが、秘密保護の法整備の必要性にも紙幅を割いており、基本的な立場としては政権に理解を示しているように読めました。対案や修正案を社論として紙面で発表する同紙の「提言報道」が今回はないのか、気になるところです。
  • 産経新聞は既に基本的なスタンスとして秘密保護法案の成立を求めることを明らかにしています。今回は審議入りに直接触れた社説(同紙のタイトルは「主張」)は見当たりませんでしたが、11月8日付に「NSC法案通過 超党派にこそ意義がある」を掲載。日本版「国家安全保障会議(NSC)」を設ける法案が7日に衆院を通過したことを好意的に評価し、「衆院で審議入りした特定秘密保護法案は、米国などから重要な機密情報の提供を受ける大前提ともいえる。同時に知る権利、報道の自由にも配慮している。充実した情報があってこそ、NSCは機能すると強調しておきたい」と言及しています。
  • 安倍晋三首相はNSC新設に秘密保護法制が不可欠としており、2つの法案はもともと密接不可分です。このため新聞各紙の中には、特定秘密保護法案で社説を書くのではなく、NSC法案に対する論評の中で秘密保護法案の問題点に触れた社説を掲載したところもあります。もちろん、NSC法案、特定秘密保護法案と連続で批判的に取り上げた新聞もあります。
  • 琉球新報は8日付の社説「NSC法案可決 国民を危険にさらすのか」の中で「安倍晋三首相はNSC法案、特定秘密保護法案、集団的自衛権憲法解釈変更にこだわる。行き着く先は『戦争のできる国』への変質であり、国民を再び戦争の危険にさらすことにほかならない」と指摘しています。マスメディアにとって取材・報道の自由は死活的に重要な問題ですが、もう一段、大きな視野で「では自由な表現活動が担保されることがなぜ必要なのか」との自問を忘れてはいけないと、あらためて思いました。沖縄の新聞にはいつも学ぶことが多々あります。

 以下に今回目に留まった各紙の社説の見出しを、備忘を兼ねて書き留めておきます。NSC法案の社説は、特定秘密保護法案に言及した部分を引用しました。繰り返しになりますが、ネットでざっくりと調べた結果ですので、すべての新聞の社説を網羅しているわけではありません。また、法案への賛否などの分類は、わたし個人の判断によるものです。

【全国紙】
朝日新聞=明確に反対
11月8日「特定秘密保護法案―市民の自由をむしばむ」
11月6日「秘密保護法案―社会を萎縮させる気か」
毎日新聞=明確に反対
11月10日「秘密保護法案を問う テロ・スパイ捜査」
11月8日「秘密保護法案を問う・審議入り 重ねて廃案を求める」
11月7日「秘密保護法案を問う…国政調査権
11月6日「秘密保護法案を問う 国の情報公開」
11月5日「秘密保護法案を問う 国民の知る権利」
▼読売新聞=必要性には理解を示し課題を指摘
11月8日「秘密保護法案 後世の検証が可能な仕組みに」


ブロック紙・地方紙】
▼明確に反対を表明、ないしは反対に近い表現で強く批判=14紙
北海道新聞11月6日「秘密保護法案 早くも欠陥を露呈した」
東奥日報11月8日「法案素通りさせぬ議論を/秘密保護審議入り」
信濃毎日新聞11月8日「秘密保護法 国会審議入り 国民の疑念受け止めよ」
中日新聞東京新聞11月8日「特定秘密保護法案 議員の良識で廃案へ」
岐阜新聞11月8日「特定秘密審議入り 法案素通りは許されない」
京都新聞11月9日「秘密保護法案  将来に禍根残す、廃案にせよ」
神戸新聞11月10日「秘密法案審議/知る権利を軽視するのか」
山陰中央新報11月8日「特定秘密審議入り/法案を素通りさせるな」
愛媛新聞11月10日「秘密保護法案審議入り あらためて取り下げを求める」
徳島新聞11月9日「秘密保護法案審議 危険性を暗い過去に学べ」
高知新聞11月9日「【特定秘密保護法案】あらためて強く反対する」
西日本新聞11月8日「秘密保護法案 矢継ぎ早の展開を危ぶむ」
沖縄タイムス11月9日「[秘密保護法案と沖縄]危険な悪法 廃案にせよ」
琉球新報11月9日「秘密法審議入り 不公正を隠蔽する悪法だ」

▼疑問点を指摘し慎重な取り扱いを要請=6紙
岩手日報11月8日「NSCと『秘密法』 なぜセットで急ぐのか」
山陽新聞11月2日「秘密保護法案 指定基準の危うさ見えた」
中国新聞11月6日「NSC審議 秘密保護法と切り離せ」
宮崎日日新聞11月10日「特定秘密保護法案 情報統制の不安拭い切れず」
熊本日日新聞11月9日「秘密保護法案 根幹にかかわる疑問がある」
南日本新聞11月9日「[秘密法審議入り] 国民の疑念を払拭せよ」


※NSC法案の衆院通過を受けた社説
【法案通過を積極評価】
産経新聞11月8日「NSC法案通過 超党派にこそ意義がある」
衆院で審議入りした特定秘密保護法案は、米国などから重要な機密情報の提供を受ける大前提ともいえる。同時に知る権利、報道の自由にも配慮している。充実した情報があってこそ、NSCは機能すると強調しておきたい。」
北國新聞11月10日「NSC法案成立へ 欠かせぬ情報能力の強化」※秘密保護法案への言及なし


特定秘密保護法案に言及して批判的に論評】=12紙
北海道新聞11月8日「NSC法案 危険直視し徹底審議を」
「同法案とセットの特定秘密保護法案もきのう、衆院で審議入りした。
 両法案は、首相が掲げる『積極的平和主義』に基づく安保政策を進める『車の両輪』で、一体のものだ。
 成立を許せば、自衛隊の海外での武力行使など憲法の平和主義を逸脱した方針が首相ら少人数で秘密裏に決められてしまう恐れが強い。
 そうした認識を欠き、『省庁縦割りの弊害打破』を理由にわずか21時間の審議でNSC法案に賛成した野党の対応は納得できない。参院では法案の危険性を直視し、徹底的に審議すべきだ。」

▼デーリー東北11月8日「NSC法案衆院通過 教訓を忘れてはならない」
「しかし、国民の『知る権利』や報道の自由基本的人権を侵害する懸念が拭えない特定秘密保護法案とセットで成立させる安倍政権の方針が変わらない限り、賛成できない。
 両法案が成立すれば、NSCで扱う情報の多くが特定秘密に指定され、半永久的に非公開となる可能性が高く、国家国民の命運に関わる政策決定過程の検証ができなくなるからだ。付帯決議で『NSC議事録作成について検討し、必要な措置を講じる』とされたが、法的拘束力はなく、実効性は期待できない。
 大量破壊兵器をめぐる誤った情報に基づきイラク戦争に突入した米政府を支持し、自衛隊を派遣した苦い教訓を忘れてはならない。」
信濃毎日新聞11月8日「NSC参院へ こんな組織は要るのか」
「重要な政策の決定過程を国民や国会が検証できるのか―。
 こんな基本的なことも分からないまま、日本版『国家安全保障会議(NSC)』を設ける法案が衆院を通過した。疑問点を詰めることなく、成立させるのは認められない。
(中略)
 政府が、特定秘密保護法案とともに成立させようとしていることも見過ごせない。各国と情報交換する上で秘密厳守は大前提との理由だ。両法案が成立した場合、議事録が作られたとしても、特定秘密を含むとして半永久的に公表されないことも考えられる。」

新潟日報11月7日「日本版NSC 何をするための司令塔か」
「しかし、軍事的な情報管理と情報統制という性格が色濃い法案には問題点が多い。
 安倍晋三首相は『わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、首相官邸の司令塔機能を強化するため必要不可欠だ』と衆院本会議で設置の意義を強調した。
 首相が設置した安全保障に関する有識者懇談会は、憲法解釈を見直して、海外を含む集団的自衛権行使を全面的に容認する報告書を年内にまとめる方針だ。
 NSCは、日米同盟を強化し、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル問題など、東アジアの安全保障環境の変化に対応しようというのが大きな狙いといえよう。
 さらに問題なのは、国民の知る権利や報道の自由を侵害しかねない特定秘密保護法案とセットとして位置付けられていることだ。」

京都新聞11月2日「日本版NSC法  『秘密』の司令塔になる」
国家安全保障会議(日本版NSC)の設置法案が、月内に成立する公算が大きくなってきた。組織の概要が明らかになったばかりであり、拙速だ。NSCは、問題だらけの特定秘密保護法案と一体的に運用され、『外交・安全保障の司令塔』どころか、政府の秘密機関として肥大化する恐れがある。到底容認できない。」

山陽新聞11月8日「日本版NSC 検証する仕組みが必要だ」
「政府はNSC法案とセットで特定秘密保護法案の成立を目指している。両法案がこのまま成立すれば、NSCで取り扱う多くの情報を特定秘密に指定し、半永久的に国民に隠し続けることも可能になる。国民の知る権利は大きく損なわれよう。
 日本は公文書の作成・保存・公開のルールづくりが遅れ、閣議の議事録さえないというお粗末さだ。政府は閣議の議事録は作成する方向で検討している。外交・安全保障政策の司令塔となる新組織においても議事録作成は当然であり、法案に明記すべきだ。」

徳島新聞11月8日「NSC法案通過 秘密保護法とは切り離せ」
「懸念されるのが、この法案を政府が特定秘密保護法案の成立とセットにしていることである。秘密保護法がなければ米国などと機密情報をやりとりできず、世界の情報ネットワークから取り残されるというのだ。
 果たしてそうだろうか。法制化しても秘密が守られる保障はないし、現在の法律でも情報管理はできるはずだ。国民の知る権利を侵す恐れがある特定秘密保護法案と、日本版NSC設置法案は切り離して考えるべきである。」

高知新聞11月6日「【日本版NSC】検証の仕組みが不可欠だ」
「気掛かりは政府が同時に成立を目指す特定秘密保護法案との兼ね合いだ。NSCの持つ情報の多くが『特定秘密』となりかねず、国民がその活動内容を半永久的に検証できない恐れがある。
 NSCが担う外交や安保は国の行方に直接関わる政策である。その決定過程の十分な説明が求められるのは言うまでもない。国民がその妥当性を検証できる仕組みはきちんと担保されなければならない。」

西日本新聞11月2日「NSC法案 ブラックボックスの懸念」
「ただ気になるのは、安倍晋三政権がこのNSCを特定秘密保護法案とセットで導入しようとしていることだ。
 政府はNSCを受け皿に、米国などから秘密情報を得て、政策判断の参考にする方針だ。外国から秘密をもらうためには、国内でその秘密が漏れないような法律が必要−という論理である。安倍首相も国会で『NSCをより効果的に運用するためには、秘密保全に関する法制度が整備されていることが重要』と、特定秘密保護法案の早期成立を求めた。
 しかし同法案は、何が特定秘密に指定されたか外部から分からず、政府が不都合な情報を特定秘密にして隠す懸念が拭えない。『知る権利』の担保も不十分だ。極めて問題の多い法案である。
 NSCで政策決定するための判断材料として、外国からの情報が用いられることを理由に、NSCでの議論そのものが一切公表されない可能性もある。
 NSC法案と特定秘密保護法案が結び付けば、政策決定の過程が全く分からない『ブラックボックス』をつくることになりはしないか。NSCに利点があるにしても、特定秘密保護法案と一体化して導入するのであれば弊害の方が大きい。
 NSCの設置を目指すのであれば、まず特定秘密保護法案と切り離した上で、NSCでの政策決定の検証を可能にする制度を付け加えるべきだ。」

▼熊本日日11月8日「日本版NSC 政策決定過程検証できない」
「政府はNSCの年内発足を目指しているが、政策決定過程について検証するための手段は十分に担保されていない。NSC法案と『表裏一体』とされる特定秘密保護法案も同日の衆院本会議で審議入りしたが、国民の『知る権利』を侵害する懸念は払拭されるどころか、強まる一方だ。10月末の世論調査でも秘密保護法案への反対は半数を超えている。両法案とも禍根を残さないため、いったん立ち止まり、さらに議論を尽くすべきではないか。」

南日本新聞11月9日「[日本版NSC] 検証なしでもいいのか」
「ただ、そうした配慮は首相の言動からうかがえない。『NSCの機能を発揮させるためにどうしても必要だ』と主張した特定秘密保護法案が、衆院で審議入りした。国民の『知る権利』や報道の自由を侵害する恐れが強い法案だ。
 首相は集団的自衛権の議論をNSCで始める考えも明らかにしている。国民を置き去りにした議論は認められない。」

琉球新報11月8日「NSC法案可決 国民を危険にさらすのか」
「日本版『国家安全保障会議(NSC)』創設関連法案が衆院本会議で賛成多数で可決された。わずか21時間の委員会審議で可決したことに民主主義の危機を感じる。
 安倍晋三首相はNSC法案、特定秘密保護法案、集団的自衛権憲法解釈変更にこだわる。行き着く先は『戦争のできる国』への変質であり、国民を再び戦争の危険にさらすことにほかならない。」