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自公と維新が修正合意「改憲への一里塚」〜秘密保護法案、20日付の新聞各紙

 特定秘密保護法案は20日、衆院で与党自民、公明両党と日本維新の会の修正協議が続き、同日夜には合意となりました。既にみんなの党との修正協議が終わっており、4党の圧倒多数の賛成で、成立の見通しとなったと伝えられています。

※「秘密法案、自公と維新が修正合意 指定60年例外限定、成立見通し」(47news=共同通信、2013年11月20日)
http://www.47news.jp/CN/201311/CN2013112001002393.html

 自民、公明両党は20日夜、特定秘密保護法案をめぐり日本維新の会と修正合意した。漏えいが禁じられる「特定秘密」の指定期間が主要論点だった。与党は最長60年の原則を超えて期間延長できる例外7項目について「人的情報源に関する情報」などと当初案から絞り込む案を示し、日本維新が受け入れた。与党は26日に衆院を通過させる構え。みんなの党に続く修正合意により、今国会で成立する見通しとなった。

 みんなの党日本維新の会との協議を経た修正案によっても、「何が秘密か、それ自体が秘密」というこの法案の最大の問題点は何も変わりがありません。国会審議では疑問点は何一つ解消していない、表現の自由が侵されることへの不安はそのまま残っている、と言うべきでしょう。
 今回も大阪で目にした20日付の朝刊各紙(朝日、毎日、読売、産経、日経、京都、神戸)の主な記事と見出しを記録しておきます。自公と維新の修正協議が進んでいることを、産経新聞を除く各紙とも1面で伝えています。社説などで明確に法案に反対を表明している朝日、毎日、京都、神戸は、この日も関連原稿を数多く掲載しました。朝日、毎日両紙は社説で与野党の修正協議を厳しく批判。日経も編集委員が署名記事で修正協議に疑問を投げかけています。
 京都、神戸両紙が掲載している共同通信配信の長文のリポート(京都新聞の「表層深層」)は、修正案で合意した自公、みんなの党日本維新の会の4党の結集について、閣僚の一人が「改憲への一里塚」と説明していることを紹介。「官邸はこの枠組みを大事にしたかった」との自民党幹部の言葉も引用しています。「官邸」とはつまり安倍晋三首相自身のことです。「改憲の一里塚」という言葉は、この法案の持つ意味合いを簡潔に言い表していると思います。それは戦争することができる国への入り口です。
 国会の動きをみながら、一方では法案に対する反対の行動も広がりを見せています。神戸新聞は地元、兵庫県内の市民団体の座り込みなどの反対運動を第2社会面で写真付きで大きく紹介しています。仮に法案が衆院を通過しても、仮に問題の多いままで今国会で成立したとしても、それで終わりにしてはならないと思います。
 21日は全国各地で市民団体などによる反対行動が予定されています。そうした行動は、現に今ある「表現の自由」の行使にほかなりません。労働組合での活動を通じてわたしが学び取ったことの一つは、権利は権利として正しく行使しなければ輝かない、ということでした。権利とは、ほかのだれかが守ってくれるものではなくて、自分自身が行使することで守っていくものだ、ということです。現に「表現の自由」の権利を行使して、法案に反対の声を上げている人たち、これから上げようとしている人たちがいます。そうした人たちの権利の行使を、マスメディアは社会に広く伝えていくべきでしょう。


▼11月20日付朝刊各紙の主な記事と見出し
※全国紙5紙は大阪本社発行最終版

【朝日】
1面肩「第三者機関の独立性 不明」「秘密保護法 与党、維新に修正案」
※1面トップは「日展審査員、応募前に指導」「洋画・工芸 自派の入選多数」
2面「修正内容 枝葉だけ」/維新「足元見られ歩み寄り」/民主「遅い対案 主導権握れず」/みんな「合意 内外から批判」
2面「『首相は第三者』」「石破氏『可能だ』森担当相、言及避ける」
4面「橋下氏 おまかせ姿勢」「『大阪に専念』陰る影響力」「秘密法案修正協議を容認/政界再編も静観」
4面「説明責任が不十分」「懲役10年重くない」「参考人が意見」国会論戦19日
4面「修正協議に見る危うさ」担当記者はこう見た
社会面トップ「秘密文書 許可なく入手」「陸自機関、外交公電も」「訓令に抵触か」
社会面・解説「厳罰化後も破られる規則」
社会面「地方議員ら100人 法案反対の声明


【毎日】
1面トップ「秘密保護法案 衆院通過へ」「維新と修正大詰め 26日で調整」「恣意的運用 懸念残る」
3面・クローズアップ「根幹変えず修正演出」「検証機関 詳細後回し」「秘密保護法案 衆院通過へ」/「公開の『例外』に固執」/「民主『骨格に問題ある』」
5面「『賛成ありき』の協議」「みんな 2回でスピード合意」/「参考人質疑で意見分かれる 衆院特別委」
社会面「『何が秘密か』も秘密」「『問題解消されぬ』」「廃案求め女性ら訴え」
社会面「懐疑的な見方広まる」(マスメディア各社の世論調査まとめ)
第2社会面「権力の『隠蔽』を危惧」「市民運動に不安」
第2社会面「官僚に力 米は望まぬ」ニューヨーク・タイムズ東京支局長マーティン・ファクラーさん(47):ワッペン・特定秘密保護法案に言いたい/「長崎の被爆者団体『戦前に戻るのか』 首相あてに声明文」


【読売】
1面トップ「秘密保護 最長60年案」「暗号など例外 自公、維新に提示」
2面「自公みんな 思惑一致」「民主 対決姿勢で孤立」
2面「『多くの政党と成立させたい』菅官房長官


【産経】
3面「秘密保護60年超7項目」「きょう維新と再協議 第三者機関で譲歩」
3面「与党、みんなに歩み寄り修正合意も 首相関与は非現実的」


【日経】
1面「特定秘密『最長60年』」「与党提示 7項目は開示対象外 維新は拒否」
3面「『知る権利』制限 なお懸念」「与党、根幹は譲らず」「秘密保護法案、野党と修正協議」
3面「半端な修正、疑問点多く」大石格・編集委員


【京都】
1面トップ「与党、秘密最長60年提示」「きょう維新と再協議」「監視機関 検討一致」
3面・表層深層「み・維 安倍政権を補完」「保守化傾向鮮明に」「『改憲へ一里塚』の声」
3面「法案の根幹変わらず」「修正案の問題点」
5面「政府 説明責任徹底を」「罰則規定に理解も」参考人質疑/「修正合意のみんなを批判 民主、社民」
5面・論戦のポイント


【神戸】
1面トップ「与党、指定期間60年提示」「維新拒否 きょう再協議」「監視機関検討は合意」
2面「保守野党 政権を補完」「維新『反対ありきでない』」「みんな『改革の考えは近い』」
2面「『みんなの党』県関係議員」「井坂氏危惧『悪者扱いされる』」「畠中氏評価『修正案のませた』」/「民主・羽田氏が修正合意を批判」
4面「参考人『説明責任徹底を』」「特別委質疑 罰則規定に理解も」
4面「小幅修正 根幹は変わらず」「与党 歩み寄り姿勢アピール」「監視 機関の性格付け焦点」「期間 例外拡大解釈の恐れ」
5面「『共謀罪』規定 協議置き去り」「情報の入手 話し合っただけで処罰?」「識者警鐘『秘密の範囲、無限に拡大』」
5面・参考人発言要旨/論戦のポイント
第2社会面「兵庫でも廃案アピール」「市民団体が座り込み開始」
第2社会面「超党派議員が反対声明」/雑誌編集者らも都内で抗議会見


▼社説
朝日新聞「特定秘密法案 この修正はまやかしだ」
    「特定秘密法案 外交の闇を広げる恐れ」
毎日新聞「秘密保護法案を問う 与党・みんな合意 まるで修正に値しない」