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信濃毎日新聞「今できること 声を上げ行動に移そう」〜秘密保護法案の批判、連日社説に ※追記 佐賀新聞、読売新聞

 特定秘密保護法案に対する新聞各紙の社説の続きです。前回の記事の後、11月17日付以降、23日付までの社説を各紙のネット上のサイトで調べてみました。ネットでは社説を公開していない新聞もあり、これまでと同じくすべての新聞を網羅した調査ではありませんが、それでも毎日必ずどこかの新聞に法案と国会での審理を厳しい論調で批判する社説が掲載されています。特にみんなの党日本維新の会の両野党が〝修正協議〟と称しながら、まるで自公の補完勢力のように法案の根幹の問題点を何も変えられなかったことに対しては「まるで擦り寄り競争だ」(22日付・毎日新聞)などと、多くの社説が厳しい言葉で批判しています。
 以下に特徴的なことと少しばかりの感想を書き留めておきます。

  • 全国紙では法案の反対の立場から朝日新聞毎日新聞が複数回の社説を掲載。日経新聞も22日に「この修正案には賛成できない」として、11月16日に続いて2度目となる「反対」表明を掲載しました。
  • 読売新聞は17日に「将来の『原則公開』軸に修正を」を掲載。賛否は明言せずに与野党の修正協議の課題を指摘する形式を取りつつ、早期の可決成立への待望がにじんでいるように私には読めました。読売新聞がこの法案を社説で取り上げたのは、法案が10月25日に閣議決定された前後から数えると、10月24日、11月8日に続いて3回目で、これは「少ないな」という印象を持っています。
  • 産経新聞ブロック紙、地方紙を含めてもほとんど唯一、法案の成立を求める立場を明確にしています。与党とみんなの党日本維新の会の修正協議が合意に至ったことを受けて22日に「法案が今国会で成立する見通しとなったことを評価したい」との社説(紙面では「主張」)を掲載しました。この法案についての社説は10月22日以来、1カ月ぶりです。ただやはり、手放しでは評価できないようで「政府は今後の審議でより丁寧に説明を尽くし、国民の疑問に答える必要がある」「政府の情報は本来、国民の財産である」「必要性がなくなれば、60年でも30年でもなく指定を解除することが可能であり、情報は公開されなければならない」「政府はこのことを、はっきりと国民に約束してほしい」と注文を付けています。
  • ブロック紙、地方紙はほぼすべてが反対と批判です。中日新聞東京新聞は18日から5回続きで各論ごとに詳細な批判を展開しました。10月以来、複数回取り上げる地方紙も増えてきました。
  • 社説とは異なりますが、産経新聞とフジニュースネットワークが11月16〜17日に行った世論調査では、政府にとって都合の悪い情報が隠蔽されると思うとの回答が85.1%もありました。「今国会で成立させるべきだ」と答えたのは12.8%にとどまり、「慎重に審議すべきだ」が82.5%に上りました。
  • 信濃毎日新聞は23日に社説「今できること 声を上げ行動に移そう」を掲載し、「自民党は圧勝した。けれど、有権者はすべての政策について良しとしたわけではない」「政治が自らの思いとかけ離れて動こうとしている時、『それは違う』と伝えることが、有権者としての責任ではないだろうか」と呼び掛け、衆院議員への意見表明などを提案しています。憤り、嘆くだけではなく、行動を呼び掛ける社説は強く印象に残ります。

 特定秘密保護法案は日本版「国家安全保障会議(NSC)」の設置法案とセットになっています。その先に浮かび上がってくるのは集団的自衛権の行使容認であり、憲法9条の改変だと私は理解しています。最終的に日本が自衛隊に変わって常備軍を持ち、「自衛のため」と称して戦争を排除しない国家になるために必要な仕組みの一つがNSCであり、秘密保護法制でしょう。昨年の衆院選、ことしの参院選と、安倍晋三総裁の自民党(と連立を組む公明党)は大勝し、安倍政権の支持も高いレベルで推移しています。しかし秘密保護法案に対する世論の警戒感は強く、マスメディア各社の世論調査では反対が賛成を上回っています。安倍首相と自公の巨大与党は決して白紙委任を得たのではない、ということを自覚すべきでしょう。
 週明け以降は、今国会中の成立を目指して自公の巨大与党に「補完野党」がくっついた「超巨大与党」がどんな動きを打ち出してくるかが焦点になりそうです。それに対して「反対」の世論も高まってくるでしょう。メディアがそれをどう報じるかも、引き続き注視していこうと思います。


▽新聞各紙の社説・11月17〜23日
※ネット上の各紙サイトでチェックしたため網羅的な調査にはなっていません


◇全国紙
【反対】
朝日新聞
23日「秘密保護法案 これで採決などできぬ」
22日「秘密保護法案 『翼賛野党』の情けなさ」
20日「特定秘密保護法案 外交の闇を広げる恐れ」
   「特定秘密保護法案 この修正はまやかしだ」
毎日新聞
22日「秘密保護法案 まるで擦り寄り競争だ」
20日「秘密保護法案を問う 与党・みんな合意 まるで修正に値しない」
19日「秘密保護法案を問う 修正協議 安易な合意は禍根残す」
18日「秘密保護法案を問う 刑事裁判 『秘密』のまま処罰とは」
日経新聞
22日「秘密保護法のこの修正は評価に値しない」

 法案は2週間前に審議入りしたばかりである。肝心の国会の場では、法案を担当する森雅子少子化相の不明確な答弁ばかりが目立ち、議論は深まっていない。一方、水面下で与党による野党の切り崩しが行われてきた。
 国民の基本的人権にかかわる法律だから議論を通してよりよい形にしようというのではなく、とにかく「成立ありき」としか見えないやり方に不信感を抱く。
 しかもこの修正がなされても、国の秘密が恣意的に指定され「知る権利」が侵害されかねない法案の構造的な問題がなくなるわけではない。この修正案には賛成できない。さらなる見直しが必要だ。


【課題指摘】
▼読売新聞
17日「秘密保護法案 将来の『原則公開』軸に修正を」

安全保障戦略の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の機能を充実させる上で、欠かせない法整備だ。
 国民から疑念を抱かれぬよう、与野党は議論を尽くし、合意点を探ってもらいたい。
 自民、公明両党は、機密情報を漏らした公務員らの罰則を強化する特定秘密保護法案について、日本維新の会みんなの党とそれぞれ修正協議に入った。与党時代に同様の法制を検討した民主党も、修正協議に参加すべきだろう。
 日本を巡る安全保障環境が厳しさを増し、情報漏えいのリスクも高まっている。外国と重要情報を交換し、共有するには、機密漏えいを防止する仕組みが必要だ。
 修正協議は、そうした基本的な認識を踏まえてのものだ。この動きを注視したい。


【成立求める】
産経新聞
22日「秘密保護法案 最後まで丁寧に議論せよ」

自民、公明、維新、みんなの与野党4党が「特定秘密保護法案」の修正で合意した。
 国の安全保障にかかわる機密の漏洩(ろうえい)を防ぐ法整備は、日本の主権や国民の生命財産を守る上で必要だ。法案が今国会で成立する見通しとなったことを評価したい。
 与党が採決を急がず、みんな、維新や民主との修正協議に応じ、法案成立へ幅広い賛同を得ようとしているのは妥当だ。
 知る権利や報道の自由が損なわれないかといった懸念も根強い。政府は今後の審議でより丁寧に説明を尽くし、国民の疑問に答える必要がある。
(中略)
 4党で共同提出する修正案は、特定秘密の指定期間について、暗号など7項目を除き、最長60年を原則とすることになった。
 これをもって、すべての特定秘密の指定期間を60年としてはいけない。30年を超えて指定を延長する場合、内閣の承認が必要になる条項も修正案に残されている。
 政府の情報は本来、国民の財産である。安全保障上、やむを得ない項目のみ秘密指定が許されるのだ。必要性がなくなれば、60年でも30年でもなく指定を解除することが可能であり、情報は公開されなければならない。
 政府はこのことを、はっきりと国民に約束してほしい。


ブロック紙、地方紙 ※見出しのみ紹介
中日新聞東京新聞
22日「特定秘密保護法案<5> 新しい権力が誕生する」
21日「特定秘密保護法案<4> 捜査が暴走し始める」
20日「特定秘密保護法案<3> 崖っぷちの『知る権利』」
19日「特定秘密保護法案<2> 情報は国民のものだ」
18日「特定秘密保護法案<1> 自由に壁が築かれる」

【23日(土)】
東奥日報「本質変わらず拭えぬ懸念/秘密保護法案修正」
信濃毎日新聞「今できること 声を上げ行動に移そう」
新潟日報「特定秘密法修正 採決の強行は許されない」
山陽新聞「秘密法案の修正 懸念の解消には程遠い」
琉球新報「秘密法と野党 悪法を補完してどうなる」
【22日(金)】
北海道新聞「廃案にするしか道はない 特定秘密保護法案」
岩手日報「秘密法案修正 危険性は何も変わらず」
信濃毎日新聞「秘密保護法 野党の対応 将来に責任持てるのか」
神戸新聞「秘密法案の修正/本質は少しも変わらない」
西日本新聞「秘密保護法案 修正の体をなしていない」
熊本日日新聞特定秘密保護法案 修正とは名ばかりの合意だ」
【21日(木)】
京都新聞「秘密保護法案  小手先修正の限界明白」
【20日(水)】
高知新聞「【秘密保護法案】修正しても本質は不変だ」
琉球新報「秘密法修正協議 民主主義を壊す妥協だ」
【19日(火)】
岐阜新聞「秘密保護法案 第三者機関の設置が前提」
中国新聞「秘密保護法案審議 なぜそんなに急ぐのか」
山陰中央新報「秘密保護法案/第三者機関設置は譲れない」
徳島新聞「秘密法案協議 修正しても危険過ぎる」
【18日(月)】
京都新聞「秘密法修正協議  安易な妥協許されない」
熊本日日新聞特定秘密保護法案 審議で懸念さらに強まった」
沖縄タイムス「[秘密保護法案審議]迷走答弁が示す危うさ」
【17日(日)】
岩手日報「<秘密法案> 適性評価制度 違憲の疑い見逃すのか」
福井新聞「国家機密と知る権利 国民主権守る仕組みつくれ」
山陽新聞「秘密保護法案 切り込み不足の国会審議」


※以下は上記のブロック紙、地方紙の社説のうち、ここ数日分の一部の引用です。
【23日(土)】
東奥日報「本質変わらず拭えぬ懸念/秘密保護法案修正」

 修正案は政府・与党の小幅な譲歩と、日本維新、みんなの党の安易な妥協による産物との印象が拭えない。「成立ありき」の駆け込み修正で、禍根を残してはならない。
 確かに安全保障や外交など秘密扱いが必要な情報はある。だが、秘密指定は最小限にとどめ、基本的に一定期間を経たら検証できる情報公開を確実にする必要がある。国が持つ情報は国民の共有財産だからだ。
 情報統制強化により国民主権や民主主義をないがしろにしかねない法案には賛成できない。重ねて廃案にするよう求める。

信濃毎日新聞「今できること 声を上げ行動に移そう」

 このところ知人と交わす会話やメールで、特定秘密保護法案がしばしば話題にのぼる。
 「衆参とも与党が多数を占めているから成立してしまうだろう」「選挙で勝たせた有権者にも責任がある」―。法案が週明けにも衆院を通過する見通しの中で「自分たちに何ができるのか」という、ため息に似た声が多い。
 昨年の総選挙と今夏の参院選自民党は圧勝した。けれど、有権者はすべての政策について良しとしたわけではない。
 政治が自らの思いとかけ離れて動こうとしている時、「それは違う」と伝えることが、有権者としての責任ではないだろうか。
(中略)
自分たちにできること―。衆院採決までを考えるのなら、県選出の衆院議員に直接、意見を伝えてはどうか。どの議員もブログやツイッターフェイスブックを利用していて、サイトを通じて送ることができる。
 県議や市町村議に働きかけてみよう。埴科郡坂城町議会は9月定例会で「特定秘密保護法の制定に反対する意見書」を可決、閣僚や衆参両院の議長に送っている。
 12月定例議会の時期と重なる。国会の審議日程にかかわらず、廃案や法の廃止といった意思表示を求める方法もある。
(中略)
政治の手綱を握るのはあくまで有権者だ。知る権利が脅かされるばかりか、私たちの暮らしに支障を来す恐れのある法案など必要ない。そうした思いを一人一人が声に出し、行動に表すことで、流れを変えたい。

新潟日報「特定秘密法修正 採決の強行は許されない」

 欠陥を抱えたままの法案をなぜ、性急に成立させようとするのか。
 特定秘密保護法案をめぐる、与党と野党の修正協議は大詰めを迎えているが、法案が抱える本質的問題の解消にはほど遠い。
 このまま成立すれば人権の侵害につながりかねない。国民の不安は大きくなるばかりだ。与党が数の力を背景に、一部野党を取り込んで採決を強行することは許されない。

山陽新聞「秘密法案の修正 懸念の解消には程遠い」

 国会で審議中の特定秘密保護法案をめぐる修正協議で、自民、公明両党と日本維新の会みんなの党が合意した。修正は小幅で、政府が恣意(しい)的に秘密の範囲を広げ、国民の「知る権利」が侵害されるなどの懸念は何も解消されていない。与党は来週の衆院通過を目指しているが、「成立ありき」で拙速に進めることは断じて許されない。
(中略)
 これまでの国会審議で、森雅子内閣府特命担当相は法成立後の修正の可能性まで言及した。これでは制度設計に問題があると自ら認めたようなものだ。自民党からも国会への情報提供のあり方を見直す考えが示されたばかりである。これほど問題点の多い法案を、短期間の審議で衆院を通過させるのは、将来に禍根を残すと言わざるを得ない。
 政府は米国などとの情報共有のために法制化が必要というが、他国に比べて日本で情報漏えいが多発しているとの論拠は乏しい。むしろ求められるのは、政府が得た情報は国民の共有財産であるとの大前提に立ち、秘密保持のルールと情報公開のあり方について国民の理解を深めることだ。安易な可決に走らず、次期国会に舞台を移してでも徹底的に議論すべきである。

琉球新報「秘密法と野党 悪法を補完してどうなる」

 憲法や民主主義の理念に抵触する数々の問題点が指摘されている重要法案の修正を、国民の目に見えない密室で合意するのは国民主権をないがしろにしている。民主政治の在り方として間違っている。
 自民、公明の両党がみんなの党日本維新の会と合意した特定秘密保護法案の修正案のことだ。与党は週明けにも法案を採決する構えだが、断じて容認できない。
 小手先の修正を繰り返しても、国民の「知る権利」とこれを支える「取材・報道の自由」など、憲法と衝突する法案の本質は何も変わっていない。廃案は免れない。

【22日(金)】
北海道新聞「廃案にするしか道はない 特定秘密保護法案」

 修正はわずかで、法案の骨格は全く変わっておらず、政府が恣意(しい)的に秘密の範囲を広げて国民の「知る権利」や報道の自由を侵害する恐れが極めて強い。
 安倍晋三政権が外交・安全保障の司令塔と位置づける日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設法案も週明けに参院本会議で採決され、与党と民主党などの賛成多数で可決、成立する見通しだ。
 秘密保護法まで成立すれば、国の命運を左右するような重要方針が国民の知らないうちにNSCで秘密裏に決められてしまう恐れがある。
 国民主権基本的人権の尊重という憲法の原則を踏みにじる秘密保護法の成立が、将来に禍根を残すのは間違いない。国民の懸念を真摯(しんし)に受け止め、速やかに廃案にすべきだ。

岩手日報「秘密法案修正 危険性は何も変わらず」

 特定秘密保護法案が来週にも衆院を通過する見通しが強まっている。修正協議により一部野党が賛成に回るからだ。圧倒的多数の与党だが、野党を取り込むことで「与党による強行突破」の図式を解消、世論の反発を和らげられるとみている。
 しかし、修正されたといっても枝葉の部分であり、根幹は何も変わっていない。「知る権利」「報道の自由」に関する問題点は、国会審議を通じて一層浮き彫りになっている。
 やはり廃案にすべきだ。機密の保全の在り方や法律の必要性は、情報公開と併せてあらためて論議すればいい。

信濃毎日新聞「秘密保護法 野党の対応 将来に責任持てるのか」

 みんなの党に続き、日本維新の会が与党と特定秘密保護法案の修正で合意した。成立の公算が大きくなったことを意味する。
 国民の「知る権利」が侵害され、市民らが不当に罰せられる危険性が拭えないのに、みんなと維新は根本的な問題点に切り込まなかった。与党に擦り寄ったようにみえる。
 国会議員も罰則の対象で活動が制約される法案だ。時の政権の問題を追及するべき立場にある野党議員が手足を縛られれば、国民の代表とは呼べなくなるだろう。両党の合意は安易な妥協と言わざるを得ず、納得できない。

神戸新聞「秘密法案の修正/本質は少しも変わらない」

 自民、公明両党は、日本維新の会みんなの党特定秘密保護法案の修正で合意した。これを受け、与党は今国会での成立を目指し、週明けに衆院を通過させる方針だ。
 何をそんなに急ぐのか。審議入りから2週間余り。論議は深まらず、森雅子内閣府特命担当相の発言にはぶれもみられた。法案への懸念は強まるばかりだ。小手先の修正では問題点は解消されない。

西日本新聞「秘密保護法案 修正の体をなしていない」

 法案成立に向け与野党が知恵を出し合い、より多くの国民に支持されるように改めることが修正協議の本来の姿だろう。
 特定秘密保護法案をめぐり、自民、公明の与党はみんなの党日本維新の会と個別に修正協議をしたが、かえって多くの国民は懸念や不安を募らせたのではないか。
 何が秘密か分からないまま、政府の恣意(しい)的判断で情報統制が進みかねない法案だ。野党2党が修正合意したとはいえ、危険性の本質は何ら変わらない。
 与党は4党で修正案を共同提案して26日にも衆院を通過させる構えというが、法案の骨格は維持したまま、「与野党合意」を取り繕う政治的な演出は「修正」とはいえない。

熊本日日新聞特定秘密保護法案 修正とは名ばかりの合意だ」

 特定秘密保護法案について自民、公明の与党は、日本維新の会みんなの党と修正合意したのを受け、26日にも衆院を通過させる方針だ。国民の「知る権利」を揺るがす重要法案の修正を、審議入りからわずか約2週間でまとめるというのはあまりにも性急だ。
 公開による衆院特別委員会の議論ではなく、密室での協議で決着を図るやり方も国民の理解を遠ざけている。法案の中身も、議論の進め方も乱暴と言わざるを得ず、与党は拙速な採決を慎むべきだ。

【21日(木)】
京都新聞「秘密保護法案  小手先修正の限界明白」

 根幹部分に何ら手を加えないまま、特定秘密保護法案について、与党の自民、公明両党と日本維新の会みんなの党との修正協議が続いている。ようやく対案をまとめた民主党との協議も始まった。
 国民の「知る権利」を制約し、情報統制を強める法案の本質に関する議論を置き去りにしたまま、小手先の合意形成を急ぐことは許されない。世論の警戒や反発が強いことを知りながら、国会で巨大与党が保守化傾向を強める野党を包み込む姿は異様でもある。
 このまま安易な修正で妥協するなら、野党とは呼べず、与党の補完勢力と言われても仕方ない。審議を急ぐべきではなく、あらためて廃案を求めたい。


※追記 2013年11月24日21時15分
 佐賀新聞も22日付の紙面に社説を掲載している旨、フェイスブックでお付き合いのある方からご連絡をいただきました。ありがとうございました。一部を引用しておきます。

【22日(金)】
佐賀新聞特定秘密保護法案 駆け足審議は禍根を残す」

 特定秘密保護法案の与野党協議が大詰めを迎えている。秘密の範囲や指定期間、妥当性のチェックなどを主な論点に激論が交わされている。各界から懸念の声が上がっている中、与党と一部の野党の間で決めてしまうのは疑問だ。
(中略)
 最も大切なのは、秘密の妥当性を監査する仕組みづくりだろう。与党と日本維新との修正合意では、指定のあり方を監視する独立機関の設置を検討することになった。しかし、付則に盛り込まれるだけで実現性は疑わしい。
 与野党協議では、みんなの党の妥協を急ぐ姿勢が際立った。与党はみんなの党の考え方に沿った変更を打ち出し、ほかの党との駆け引きを有利に運ぼうとした。衆院採決をあまり急がなかったのは評価されるものの、この法案の重大性から当然だろう。
(中略)
 共同通信が10月末に実施した全国電世論調査では、慎重審議を求める意見が82・7%に達した。政府のパブリックコメントには約9万件という大量の意見が寄せられ、77%が反対だった。
 このような法案を駆け足で審議するのは問題だ。政府・与党には一部の野党だけでなく、広範な合意を目指す姿勢を求めたい。懸念や問題をなくすため、国民的論議を積み上げるべきだ。


※追記 2013年11月26日3時
 読売新聞が23日付で社説を掲載しているのを見落としていました。ただ、同紙のこの問題での社説掲載が少ないとのわたしの印象は変わりません。
 ▼読売新聞23日「秘密保護法案 与野党の修正案は評価できる」 ※課題指摘

 自民、公明両党が、安全保障の機密情報を漏らした国家公務員らの罰則を強化する特定秘密保護法案について、日本維新の会みんなの党とそれぞれ法案の修正で一致した。
 安全保障戦略の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)が機能するために欠かせない法制である。与党が数で押し切るのではなく、野党と協議を重ね、合意したことは評価したい。
 維新の会やみんなの党も、政権を担えば、秘密の指定や解除に携わる。安全保障に関する分野で、与野党が協力し合って制度を構築することの意義は大きい。
(中略)
 民主党の対案は、秘密の範囲をより限定し、指定期間は原則30年、罰則を懲役5年以下などと規定している。国会への秘密提供については、国会法の改正で対応するとした。検討に値しよう。
 与野党間で、さらに議論を深める努力をすべきである。