戦争を許容する発想は「表現の自由」「知る権利」を制限する

 24日の日曜日、全国保険医団体連合会(全国保団連)の機関紙誌交流会にお招きをいただき、日帰りで上京しました。全国保団連とは、開業医や勤務医の方々でつくる各地の保険医協会・保険医会が加盟する全国組織です。
全国保険医団体連合会 http://hodanren.doc-net.or.jp/
 各地の保険医協会などの機関誌や広報誌の担当の方が年に一度集まる交流会では、毎年講師を呼んでの記念講演を行っているとのことです。日ごろから、わたしのこのブログやSNSでの情報発信をご覧いただいていた方が講師の選定を担当されたようで、声を掛けていただきました。東京・新宿で行われた交流会には、全国から医師や歯科医師、各地の協会の事務局の方々ら約50人が参加。昼食をはさんで約2時間半、講演と質疑・意見交換をさせていただきました。
 講演のテーマはあらかじめ「改憲と軍事大国化の中のジャーナリズム」と設定されていましたが、やはり現在の状況では、参加された皆さんの関心も特定秘密保護法案にあり、わたしもこの法案とマスメディア、中でも新聞のジャーナリズムとのありようを中心にお話ししました。
 よく知られるようになってきましたが、この法案の最大の問題点は「何が秘密か、ということ自体も秘密」という点にあります。マスメディアの取材・報道との関連では、マスメディアが直接、捜査や取り締まりの対象になりかねないほか、公機関の内部からの情報提供や告発も期待できなくなります。そうなると、報道は公機関の公式発表で埋め尽くされ、しかもその内容を独自に検証することもできません。公機関による情報コントロールは思いのままです。軍事や治安(対テロ)をめぐる分野で特に顕著になるでしょう。
 講演ではまず、そうしたわたしの問題意識をお話しした上で、表現の自由と戦争・軍事をめぐって、将来のことではなく、現に過去に起きたことについて3つの具体例を挙げて説明しました。


 ▼一つは第2次大戦中の「大本営発表報道」です。資料として用意したのは、1945年3月10日の東京大空襲に触れたこのブログの過去記事です。
※「3・10から3・11へ、「大本営発表」の教訓」2012年3月10日
http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20120310/1331367081
大本営発表」は特定秘密保護法案への批判的な論議の中でも引き合いに出されることが多いと思いますが、当時の記事を紹介しながら、戦争と表現の自由は相いれなかったことを説明しました。

 ▼2つ目は、イラク戦争後の自衛隊イラク派遣の際に、防衛庁(当時)とマスメディア側が取り決めた
取材ルールのことです。マスメディア側が検閲を事実上容認したと言われても否定しづらい事例として挙げました。やはり資料はこのブログの過去記事です。
※「クウェート派遣空自隊員の事故が明るみに〜メディアの『検閲容認』を忘れない」2012年9月8日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20120908/1347078476
 ちなみに、当時の文書は今も防衛省のホームページから以下の手順でダウンロードが可能です。
防衛省自衛隊トップ http://www.mod.go.jp/index.html
→「防衛省の取組」→「国際平和協力活動への取組」の中の「各活動及び取組」→「各種特別措置法に基づく活動の実績」の中の「イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置」→「お知らせ」→「イラク現地取材の枠組み、申し合わせ等」

 ▼3つ目は、読売新聞の情報源だった自衛官が懲戒免職になった2008年の事例です。マスメディアの取材を違法行為として直接問題にするのではなく、情報を提供した公機関の内部の通報者をとがめ、厳しいペナルティを課した先例です。特定秘密保護法案の発想を先取りしたかのような事例が既に起きていることを説明しました。資料は以下の過去記事です。
※「軍事が無原則に「表現の自由」「知る権利」に優先する危険〜読売新聞情報源の懲戒免職の意味」2008年10月5日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20081005/1261275338

 これらの実例を踏まえて、わたしの持論として強調したかったのは、戦争を許容する発想は必ずと言っていいほど「表現の自由」「知る権利」を制限する発想を伴うこと、言い方を変えると、戦争を許さないことと「表現の自由」は表裏一体であるということです。
 講演はわたし自身の時間配分がまずく、最後は時間切れになってしまいましたが、次のスケジュールの時間を変更して、昼食をはさんで午後に質疑と意見交換をさせていただきました。わたし自身、新たな学びがたくさんあり、とても充実した時間でした。貴重な体験の場を与えていただいたことに、あらためてお礼申し上げます。ありがとうございました。