何をもって「民意」が示されるのか〜橋下氏辞職の出直し大阪市長選が告示(備忘:大阪市民世論調査)

 地域政党大阪維新の会」を率いる橋下徹氏の大阪市長辞職に伴う出直し市長選が3月9日、告示され、橋下氏と新人3人が立候補を届け出ました。23日の投開票に向けて選挙戦が始まりましたが、大阪都構想を前面に掲げ、推進に弾みをつけたい(と思われる)橋下氏に対し、市議会に議席を持つ自民、公明、民主、共産の主要政党各党は出直し選に大義がないことを強調し、対抗の候補擁立をそろって見送りました。仮に橋下氏が当選しても市議会の構成は変わらず、大阪都構想が大きく前進する見通しがあるわけではありません。大阪市民にとって、何がどのように争われる選挙なのか、何をもって「民意が明らかになった」と言えるのか、どういう形で「民意」が示されるのか、分かりにくい選挙だと思います。
 10日付の全国紙各紙の大阪本社発行の朝刊の扱いは、朝日、毎日が1面トップでしたが、読売、産経は1面ながらもトップ扱いにはしていません。社会面では日経も含めて、各紙そろって大きな扱いです。社会面の主な見出しを以下に並べてみますが、大阪以外の地域の方にも、この選挙の雰囲気がある程度、分かるのではないかと思います。

【朝日】「大阪は大阪のままでええけど…」/「市の廃止に賛成?反対?」「より民意反映 市長?議会?」
【毎日】「橋下氏評価の市民も困惑」「『街づくりにマイナス』」/「支持する声も」
【読売】「『選挙 実感なし』」「異例の野党不在 静かな街」「有権者戸惑う声」
【産経】「舌戦号砲 沸かぬ市民」「『本当に風がふいていない』」
【日経】「『投票の価値は』市民戸惑い」/「『区割り案』一本化引き金に」


 大阪都構想とは、大阪府大阪市を再編して東京都のような特別区を持つ自治体に再編する構想です。橋下氏が率いる大阪維新の会は、この構想の実現のために大阪府下の地方議員が結集した経緯があります。橋下氏と大阪維新の会にとっては、大阪都構想が実現できるかどうかは、自らの存在意義に関わってきます。
 この出直し選挙の発端は1月31日にさかのぼります。各党の大阪市議、府議も参加して大阪都構想の制度設計を話し合う法定協議会が開かれましたが、大阪市を解体して設ける特別区の区割り案4案について、橋下氏が求めていた一つへの絞り込みを見送りました。これに対して橋下氏は2月3日、辞職して出直し選に出馬することを表明し「夏までに都構想の設計図を作らせてほしい。そのために、もう一度、民意の後押しがほしい」(産経新聞記事より引用)と述べていました。
産経新聞サイト「橋下氏、出直し市長選出馬を正式表明 敗北なら『政界から去るのみ』」2014年2月3日
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140203/waf14020322430044-n1.htm


 橋下氏の辞職表明以降、在阪の新聞各紙は大阪市民を対象にした世論調査を行いました。いずれも橋下氏の辞職と出直し選出馬に対して「評価しない」「反対」と否定的な見方が6割前後、肯定的な見方は3割前後にとどまったことが共通しています。以下に各紙の調査時期と結果を書き留めておきます。


大阪市世論調査・出直し市長選に対しての見方
▽読売・よみうりテレビ(2月4〜5日)「評価しない」61% 「評価する」31%
▽朝日・ABC(2月8〜9日)「反対」56%    「賛成」34%
▽産経(2月15〜16日)「評価しない」64・2% 「評価する」27・3%
 ※共同通信も同じ数字を元に記事を配信
▽毎日・MBS(2月22〜23日)「反対」63% 「賛成」29%


 一方で、自民など4党の候補擁立見送りに対しても世論調査では厳しい結果が出ており、例えば産経新聞の調査では「候補者を立てるべきだ」が57・4%と、「立てる必要はない」の35・3%を上回っていました。
 選挙で何が問われているのかが見えにくく、有権者によっては票の受け皿になる候補が見当たらないと考えている様子がうかがえます。結果として盛り上がりを欠くことは、既にこれらの世論調査からも明らかなように思います。大阪府知事とのダブル選挙だった前回2011年当時と比べて、選挙戦の報道も小さくなるでしょう。節目ごとに、報道ぶりを書き留めておこうと思います。


 以下は、備忘も兼ねた各紙の3月10日付朝刊の記録です。朝日、毎日、読売、産経、日経の5紙は大阪本社発行の最終版です。関西の代表的な地方紙である京都新聞神戸新聞の扱いも書き留めました。
【朝日】
本記1面トップ「出直し大阪市長選 告示」「主要4政党、擁立見送り」「4氏が立候補」4氏の経歴と顔写真
1面「異例の構図 戸惑う民意」/「都構想 法定協の壁」表・大阪都構想の経緯/とはもの「出直し市長選」
2面・時時刻刻「主要政党 避けた対決」/「高支持率に尻込み」「『橋下氏の独り相撲』狙う」/「維新内部 深まる亀裂」「大阪系以外は無関心」届け出名簿
2面・ニュースがわかる(Q&A)「話題の『大阪都構想』実現するとどうなるの」「しをなくし、行政の無駄を減らすのが狙い。課題もあるよ」
社会面トップ「大阪は大阪のままでええけど…」「市長選告示 100の声@ハルカス」/「市の廃止に賛成?反対?」「より民意反映 市長?議会?」ワッペン・「問う大阪市長出直し選」
社会面「投票率 どうなる」表・近年の大阪市長

【毎日】
本記1面トップ「大阪市長選に4氏」「辞職出直し 野党擁立せず」「23日投開票」立候補者名簿
1面・解説「都構想 遠のく合意」
2面「主要政党 意義に疑義」「大阪市長選 民意問えるか批判も」
社会面トップ「橋下氏評価の市民も困惑」「『街づくりにマイナス』」/「支持する声も」
社会面「野党は投票率注視」
社会面「合意に向け手順を」元神奈川県逗子市長の富野暉一郎・龍谷大特任教授/「双方とも危うい戦術」砂原庸介・大阪大准教授

【読売】
本記1面「大阪市長選 4氏立候補」「橋下氏と新人3人 自・民・公・共 擁立せず」立候補者名簿
2面「都構想 見えぬ『選挙後』」「維新内、辞職に疑問も」「候補見送り野党 歯切れ悪く」4氏の経歴と顔写真
2面「再選すれば法定協の反対派排除できる?」「市長に権限なし 議会の判断」(Q&A)
2面「『民意』見極め困難に」(解説)
社会面トップ「『選挙 実感なし』」「異例の野党不在 静かな街」「有権者戸惑う声」
社会面「行動に悩む 難儀な選挙」大阪市在住の作家、眉村卓さん/「当落より投票率に民意」川上和久・明治学院大教授

【産経】
本記1面準トップ「大阪市長選 4氏立候補」「各党『対橋下氏』擁立せず」立候補者の略歴
3面「橋下氏 再選しても『壁』」「大阪都 法定協どうなる」「財界『熱気は氷点下』」
社会面トップ「舌戦号砲 沸かぬ市民」「『本当に風がふいていない』」
社会面「4党静観に有権者疑問視」
第2社会面「問われる『中身』」「識者ら『政策論争乏しい』」(岩井奉信・日大教授、田原総一朗氏、西川のりお氏)

【日経】
本記2面「各党、『橋下流』見極め」「対抗馬擁立 見送り」「大阪市長選 4氏届け出」立候補者名簿
社会面トップ「『投票の価値は』市民戸惑い」/「『区割り案』一本化引き金に」
社会面「選挙戦 識者はこう見る」「都構想の議論変質」砂原庸介・大阪大准教授/「街の将来像 語ろう」澤田充・ケイオス社長/「棄権せず意思表示を」NPO法人「YouthCreate」原田謙介代表/「子育て・教育も争点」NPO法人「ハートフレンド」徳谷章子代表理事



京都新聞
本記1面準トップ「橋下氏と3新人争い」「23日投開票 各党擁立見送り」
3面「各党、橋下氏を『黙殺』」「実は人材難 不参選に批判も」立候補者の略歴と顔写真
3面・解説「市民不在の政争」
26面(地域・総合)「『白票しか』有権者困惑」「盛り上がり欠け 希薄な反応目立つ」

神戸新聞
本記1面「出直し大阪市長選告示」「都構想軸に 前職ら4人立候補」立候補者名簿
2面「熱気なし かすむ大義」「維新内にも疑問『まともな選挙じゃない』」立候補者の顔写真/「『税金無駄遣い』与野党が批判」
第2社会面「“独り相撲”市民困惑」「候補出さぬ各党に批判も」/「公開討論提案 橋下氏が拒否 街頭で他候補に返答」


※追記 2014年3月11日14時
 タイトルに「(備忘:大阪市世論調査)」を追加しました。