「背を向ける有権者」「怒る無効票の山」「勝者不在 続く混迷」〜橋下氏再選を伝える在阪紙の紙面

 橋下徹氏が任期半ばで辞職して、持論の大阪都構想の推進のために仕掛けた大阪市の出直し市長選は23日、投開票が行われ、橋下氏が再選されました。NHK、大阪の民放テレビ各局とも、午後8時の投票締め切りと同時に一斉に「橋下氏が当選確実」のテロップを流す、いわゆる「ゼロ当確」(開票率0%での当選確実)でした。市議会に議席を持つ公明、自民、民主、共産の各党が候補擁立を見送った中で、橋下氏の再選それ自体はまったく揺るぎがありませんでした。しかし、事前の世論調査でも橋下氏の辞職と選挙自体に批判的な民意が示されていた通り、投票率は過去最低の23・59%に終わりました。橋下氏の得票は37万票以上に上った一方で、無効票は6万7500票、うち白票が4万5000票を占めました。こうした数字を眺めるにつけ、異例ずくめの選挙結果だと感じます。
 大阪で発行している(大阪市有権者の目に直接触れる)全国紙5紙は、24日付朝刊の1面や社会面でこの選挙結果を大きく報じました。1面トップは朝日新聞毎日新聞産経新聞の3紙。読売新聞は準トップ、日経新聞は1面の真ん中あたり。ちなみに読売の1面トップは集団的自衛権の独自ダネでした。1面の本記は各紙とも選挙結果の数字が中心で、有権者や市民の反応などは社会面で大きく紹介しています。その見出しを並べてみるだけでも、やはりこの選挙自体が市民の支持を得られなかったと各紙が判断している様子が分かります。
 社説で取り上げたのは朝日、毎日、読売、産経の4紙。その見出しは、よりストレートに橋下氏と今回の手法への批判が示されています。
 以下に、各紙の1面と社会面の主見出し、社説の見出しを並べておきます。

▼1面
【朝日】トップ「大阪市長選 橋下氏が再選」「投票率 最低の23・59%」「維新の退潮鮮明・主要政党不参加響く」
【毎日】トップ「橋下大阪市長 再選」「投票率最低 23・59%」「得票半減 白票9%」
【読売】準トップ「橋下氏再選 投票率23%」「過去最低 無効は最多6万7500票」
    ※1面トップは「集団自衛権行使 限定容認」「『日本に重要な影響の場合』」「憲法解釈 安保懇案」
【産経】トップ「橋下氏再選 冷めた民意」「投票率最低23・59%」「都構想 協議へ転換 松井氏」
【日経】「大阪市長に橋下氏再選」「投票率、最低の23・59%」

▼社会面
【朝日】「橋下流に白票の山」「背を向ける有権者」(見開き)
【毎日】「『投票所がらがら』」「『民意得たと言えぬ』」(見開き)
【読売】「怒る無効票の山」「不毛な選挙 勝者なく」(見開き)
【産経】「『任せたい』『批判の×や』」「橋下氏手法に 揺れた一票」
【日経】「勝者不在 続く混迷」「維新『都構想、信得た』」「他党 来年、統一候補も」

▼社説
【朝日】「大阪市長選 『信任』からはほど遠い」
【毎日】「橋下市長再選 市政、空転させただけだ」
【読売】「大阪市長再選 議会と調整問われる『都』構想」
【産経】「橋下氏再選 やはり『大義』はなかった」

 出直し市長選は終わりましたが、大阪府政と大阪市政は大阪都構想をめぐって混乱の度を増すのかもしれません。
 わたしが3年前に東京から大阪に移り住んできた当時、橋下氏は大阪府知事でした。高い人気に支えられ、持論の大阪都構想を実現するために結成した大阪維新の会がどんどん支持を集めていました。その年の秋、橋下氏は府知事を任期途中で辞任し、任期満了による大阪市長選と同日に府知事選をぶつける大阪ダブル選を仕掛け、圧勝しました。以後は橋下氏の絶頂期で、国政政党の日本維新の会結成にまで進みました。
 この3年間、大阪でマスメディアの仕事に携わったわたし自身にとっても、橋下氏と維新の会の動向と、そのマスメディアの報じ方は最大のウオッチ対象でした。ここまでを振り返ってみて改めて思うのは、やはり橋下氏にとって政治は「自分探し」だったのではないか、ということです。政治家になってこれをやりたい、というコアを内面に持っていて、その気持ちをバネに政治家になったというよりも、人気先行で政治家になって、さあ、政治の世界で何をやろうか、とテーマを探し、それで目についたのが統治論、つまり大阪都構想だったのではないか、ということです。わたしはこの見方を自分の仮説としてきましたが、あながち外れていないのではないかと思います。仮に、大阪都構想を実現するために橋下氏が政治家を志したのだとすれば、今回の選挙のような、他党をすべて敵に回すような手法は決して上策ではないように思います。実は橋下氏が政治家として重くとらえているのは、大阪都構想の実現よりも、自分の方針に従わない他党、他者を徹底的に攻撃することの方のように、わたしには思えてなりません。推測ですが、橋下氏のその発想の根源にあるのは「選挙で勝った者がすべて正しい」というシンプルな割り切りではないか、とも考えています。
 この仮説に立って、橋下氏の言動や政治的・行政的実績を眺めてみると、腑に落ちる点も少なくありません。法律家でありながら憲法が定める基本的人権に無理解であるような一面があり、とりわけ教職員や公務員に対しては規律の維持を大義名分に、内心にまで踏み込むような条例を作ったのも、選挙で敵に回っていた職員組合に対して、選挙で勝った絶対的な勝者として振る舞ったということではないかと、わたしはみています。一時期、脱原発を明言して関西電力に株主として強硬姿勢をみせていたのも、主義や信条としての脱原発ではなく、選挙の絶対的勝者である自分に関西電力が従わなかったことへの対抗姿勢だったのではないかと考えれば、納得できる部分があります。
 今回の出直し選で橋下氏は再選され、もちろん選挙の勝者ですが、しかし今までのように「選挙で勝った者がすべて正しい」と理屈で相手をねじ伏せるようなやり方が続けられるような、そういう選挙では到底なかったように思います。
 いずれにせよ、仮説はまだ仮説のままです。そろそろわたしは大阪を去ります。今までのような近さをもっては橋下氏の動向のウオッチはできないかもしれませんが、引き続き関心を持っていくことにしようと思います。


※以下は24日付の全国紙朝刊の記録です。いずれも大阪本社発行の最終版です。

【朝日】
1面トップ「大阪市長選 橋下氏が再選」「投票率 最低の23・59%」「維新の退潮鮮明・主要政党不参加響く」
1面「無効票 最多6万7506票」
1面「都構想 政策論争が必要」
2面・時時刻刻「民意動かず 維新危機」/「手法空回り 橋下氏姿なし」「都構想実現に黄信号」/「国政政党は『不戦敗』」/「陰る『選挙の顔』」
2面「『双方向』演説 効果は」「タウンミーティング 聴衆が質問」
社会面見開き見出し「橋下流に白票の山」「背を向ける有権者
社会面「限られた選択肢」「都構想『急ぐ必要ない』65%」「本社出口調査
社会面「『人生初の棄権』『仲間つくって』」「支えてきた公明支持層100の声」
社会面「出直し選挙 裏目に出た」選挙制度に詳しい小林良彰・慶応大教授(政治学
第2社会面「『争点分かりにくい』『お金も時間も無駄』」
第2社会面「大阪の民主主義考えて」元三重県知事の北川正恭・早稲田大大学院教授(自治行政)
社説「大阪市長選 『信任』からはほど遠い」

【毎日】
1面トップ「橋下大阪市長 再選」「投票率最低 23・59%」「得票半減 白票9%」
1面・解説「都構想 見通し立たず」
3面・クローズアップ「橋下氏一点突破ならず」/「松井氏は軟化示唆」「各党、来春統一選に照準」/「『次点』は白票 4万5098票」
3面「政令市の二重行政 解決策は」「都構想に課題 政府は法改正案」
社会面見開き見出し「『投票所がらがら』」「『民意得たと言えぬ』」
社会面「『独り相撲』争点変遷」「維新衝撃 橋下氏姿見せず」
社会面「『4人に1人投票 重い民意』」「松井幹事長会見」
社会面「最後まで伝わりにくかった」伝統河内音頭継承者の河内家菊水丸さん/「敵明確でなくジレンマ」フリープロデューサーの木村政雄さん
第2社会面「橋下さんしか/税金無駄遣い」有権者/「『低投票率は当然』野党批判」/「『時間空費した』経済界冷ややか」
社説「橋下市長再選 市政、空転させただけだ」

【読売】
1面準トップ「橋下氏再選 投票率23%」「過去最低 無効は最多6万7500票」
※1面トップは「集団自衛権行使 限定容認」「『日本に重要な影響の場合』」「憲法解釈 安保懇案」
1面・解説「対立より対話を」
2面「政治手法 理解広がらず」「橋下氏支持者 選挙『評価しない』37%」「出口調査分析」
2面「出直し選後 成果出ぬケースも」/「『時間空費した』財界から批判も」
3面・スキャナー「橋下氏の思惑 裏目」「政党の『不戦敗』響く」「都構想 停滞は必至」
3面「首相、連携戦略にも影響」「橋下氏の求心力低下」
社会面見開き見出し「怒る無効票の山」「不毛な選挙 勝者なく」
社会面「『誰に入れたらええねん』『税金は大切に』大きく『×』」
社会面「橋下陣営 バンザイせず」/「白票は4万5000票」
第2社会面「野党、不戦敗戦略を自賛」「次期市長選 4会派で候補擁立も」
第2社会面「橋下流けんかの仕方に嫌気」御厨貴・放送大教授(日本政治史)/「都構想 積極的信任得られず」昇秀樹・名城大教授(地方自治)/「野党も力不足 不信高まった」大阪市在住の作家、有栖川有栖さん
社説「大阪市長再選 議会と調整問われる『都』構想」

【産経】
1面トップ「橋下氏再選 冷めた民意」「投票率最低23・59%」「都構想 協議へ転換 松井氏」
1面・視点(解説)「『信任』でなく『戒め』」
1面「『権力への挑戦者』姿なく」ワッペン「大阪混迷 橋下市長再出発」(上)
3面「都構想 苦境変わらず」「橋下氏再選も議会対立/『今夏に設計図』不透明」
3面「白票は過去最多 4万5098票」
5面・単刀直言「橋下氏、壮絶に空振っちゃった」「集団的自衛権、徹底し首相応援」石原慎太郎日本維新の会共同代表
社会面トップ「『任せたい』『批判の×や』」「橋下氏手法に 揺れた一票」「大阪市長選アンケート」/「橋下氏支持も…3割 出直し選評価せず」
社会面「市議会『次は4会派統一候補も』」
第2社会面「維新 人身離れ緩む結束」(1面から、「大阪混迷」)
第2社会面「岡田府議、きょう離党届提出」
主張(社説)「橋下氏再選 やはり『大義』はなかった」

【日経】
1面「大阪市長に橋下氏再選」「投票率、最低の23・59%」
2面「国政への影響、限定的」「橋下氏再選 維新『東西対立』なお」/「党の意思決定見直し提起へ 維新・石原氏」
社会面トップ「勝者不在 続く混迷」「維新『都構想、信得た』」「他党 来年、統一候補も」
社会面「『脱闘争』政治の責務」堀田昇吾編集委員
社会面「投票行った?」「『はい』突破力に期待/強引な姿勢失望」「『いいえ』まず景気対策/他党説得すべき」
社会面「無投票最多、13.53%」「『選択肢ない』如実に」