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海自の隠蔽体質を批判した東京高裁判決が確定〜護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺訴訟

 以前の記事で取り上げた海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺訴訟は、上司らの責任や海自による文書隠しを認め、約7300万円の支払いを命令した東京高裁判決が8日午前零時をもって確定しました。海自は、文書隠しを内部告発した3等海佐を処分しない方針と伝えられています。

「たちかぜ訴訟、国敗訴確定 いじめ苦自殺で賠償命令」47news=共同通信
http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014050701002150.html

 いじめを苦に自殺した海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」乗組員の1等海士=当時(21)=の遺族が国などに損害賠償を求めた訴訟は、期限の7日までに双方が上告せず、国側敗訴の東京高裁判決が確定した。
 4月23日の高裁判決は上司らの責任や海自による文書隠しを認め、約7300万円の支払いを命令。小野寺五典防衛相は同月25日の記者会見で「しっかりと受け止める。判決は大変重い」と述べ、上告しない意向を示していた。
 海自は文書隠しを内部告発した3等海佐を処分しない方針。

 8日付の各紙朝刊の中で、読売新聞は社説で取り上げました。一部を引用します。
 「海自自殺判決 いじめ・隠蔽体質を改善せよ」
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140507-OYT1T50151.html

 海上自衛隊による「いじめ隠し」が糾弾された裁判で、被告の国が上告を断念した。防衛省は猛省し、隠蔽体質を改めなければならない。
 (中略)
 高裁は、海自がいじめの内部調査結果を遺族に隠したと断じた。自殺は予見できたとして、賠償額も1審の440万円から大幅に増やした。防衛省が争いを続けなかったのは、もはや認定事実を覆せないと判断したからだろう。
 どのような経緯で調査結果を隠蔽したのか。誰が指示したのか。防衛省は事実関係を究明し、責任者を処分する必要がある。
(中略)
 隠蔽を暴いたのは、海自側で裁判を担当していた3等海佐内部告発だった。12年になって、アンケート結果が隠されているとする陳述書を高裁に提出した。海自は一転、存在を認めた。
 防衛省が、告発のために内部文書を持ち出した行為をとらえ、3佐の処分を検討したことは、極めて問題だ。告発者への不利益処分を禁じた公益通報者保護法に抵触する可能性がある。
 告発がなかったら、真相は闇に葬られていただろう。

 この社説では特定秘密保護法には触れていませんが、読売新聞は特定秘密保護法の必要性に理解を示し容認する立場です。保護法の対象になる特定秘密に、今回のようないじめの内部調査の結果が含まれるかどうかはさておくとしても、その読売新聞も批判し改善を求めざるを得ない「隠蔽体質」が防衛省にあることは明確です。私としては、やはり特定秘密保護法をこのまま施行するのはやめるべきだと思います。