集団的自衛権容認を閣議決定、在京各紙の報道の記録〜朝日「9条崩す解釈改憲」、産経「『積極的平和』へ大転換」

 政府は7月1日の臨時閣議で、いわゆる集団的自衛権の行使を容認することを決めました。5月15日に安倍晋三首相が憲法解釈を変更する方針を自ら表明して1カ月半。批判や異論が根強い中での強行と、わたしの目には映ります。
※47news=共同通信集団的自衛権の行使容認 憲法解釈変更を閣議決定」2014年7月1日
http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014070101001591.html

 政府は1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更し、自国が攻撃を受けていなくても他国への攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使を容認すると決定した。日本の存立が脅かされるなどの要件を満たせば、必要最小限度の武力行使は許されるとの内容だ。関連法が整備されれば、密接な関係がある国への攻撃を阻止する目的で、自衛隊は海外での戦争に参加可能となる。1954年の自衛隊発足以来堅持してきた専守防衛の理念を逸脱しかねない安全保障政策の大転換といえる。
 安倍晋三首相は会見で「万全の備えが日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく大きな力を持っている」と述べた。

 翌2日付の新聞各紙もこのニュースを1面から総合面、政治面、社会面にかけて大きく扱っています。東京都内発行の6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の社説では、朝日、毎日、東京がこの閣議決定に明確に反対、読売、産経は明確に支持を表明しています。日経は基本的に支持しながら、手続きの進め方が性急だったのではないかと指摘しています。マスメディアの論調は割れています。各紙がどのように報じたか、1面の本記のリード部をそれぞれ主な見出しとともに書き留めておきます。いずれも東京本社発行最終版の紙面です。

朝日新聞
1面トップ「9条崩す解釈改憲」「集団的自衛権 閣議決定」「海外で武力行使容認」「首相『新3要件、歯止め』」

 安倍内閣は1日夕の臨時閣議で、他国への攻撃に自衛隊が反撃する集団的自衛権の行使を認めるために、憲法解釈を変える閣議決定をした。歴代内閣は長年、憲法9条の解釈で集団的自衛権の行使を禁じてきた。安倍晋三首相は、その積み重ねを崩し、憲法の柱である平和主義を根本から覆す解釈改憲を行った。1日は自衛隊発足から60年。第2次世界大戦での多くの犠牲と反省の上に立ち、平和国家の歩みを続け、「専守防衛」に徹してきた日本が、直接攻撃されていなくても他国の戦争に加わることができる国に大きく転換した日となった。

毎日新聞
1面トップ「集団的自衛権 閣議決定」「9条解釈を変更」「戦後安保の大転換」

 政府は1日、臨時閣議を開き、憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認すると決めた。集団的自衛権は自国が攻撃を受けていなくても、他国同士の戦争に参加し、一方の国を防衛する権利。政府は1981年の政府答弁書の「憲法上許されない」との見解を堅持してきたが、安全保障環境の変化を理由に容認に踏み切った。自国防衛以外の目的で武力行使が可能となり、戦後日本の安保政策は大きく転換する。

▼読売新聞
1面トップ「集団的自衛権 限定容認」「安保政策を転換」「憲法解釈 新見解 閣議決定」「首相『戦闘参加はない』」

 政府は1日夕、首相官邸で臨時閣議を開き、憲法解釈上できないとされてきた集団的自衛権の行使を、限定容認する新たな政府見解を決定した。国連平和維持活動(PKO)などで自衛隊の活動分野を広げ、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処能力も高める。安倍首相は記者会見で、日本が再び戦争をする国になることはないと断言するとともに、中国の台頭など緊迫する東アジア情勢を踏まえ、抑止力の向上につながると強調した。新政府見解で、戦後日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えた。

日経新聞
1面トップ「集団的自衛権の行使容認」「憲法解釈変更を閣議決定」「戦後の安保政策転換」「首相『必要最小限で』」

 政府は1日夕の臨時閣議で、集団的自衛権を使えるようにするため、憲法解釈の変更を決定した。行使を禁じてきた立場を転換し、関連法案成立後は日本が攻撃されていなくても国民に明白な危険があるときなどは、自衛隊が他国と一緒に反撃できるようになる。「専守防衛」の基本理念のもとで自衛隊の海外活動を制限してきた戦後の安全保障政策は転換点を迎えた。

産経新聞
1面準トップ「『積極的平和』へ大転換」「集団的自衛権 閣議決定」「解釈変更 行使を容認」
※1面トップは「対北制裁一部解除へ」

 政府は1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決定した。安倍晋三首相は閣議後に記者会見し、「国民の命、平和な暮らしを守るため、切れ目のない安全保障法制の整備が必要だ。世界の平和と安定に日本はこれまで以上に貢献する」と述べ、「積極的平和主義」に基づく安全保障政策の転換であることを強調した。

東京新聞
1面トップ「戦争の歯止め あいまい」「集団的自衛権 安倍内閣が決定」「『明白な危険』自公ズレ」

 安倍内閣は一日の臨時閣議で、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を禁じてきた憲法解釈を変え、行使を認める新たな解釈を決定した。自衛権の発動を判断する新たな「武力行使の三要件」の表現は抽象的。解釈次第で海外で自衛隊が活動する範囲が拡大していく懸念があり、戦争への歯止めはあいまいだ。戦後六十九年にして、九条に象徴される平和憲法は最大の危機を迎えた。

 地方紙を中心に配信している共同通信の記事は、冒頭に引用した通りです。


 各紙の社説の見出しは以下の通り。小見出しも書き留めておきます。毎日新聞は1面に社説を掲載しました。
朝日新聞集団的自衛権の容認―この暴挙を超えて」解釈改憲そのもの/自衛隊送り出す覚悟/9条は死んでいない
毎日新聞「歯止めは国民がかける」
▼読売新聞「集団的自衛権 抑止力向上へ意義深い『容認』」「日米防衛指針に適切に反映せよ」「解釈改憲」は的外れだ/自衛隊恒久法の検討を/国民の理解を広げたい
日経新聞「助け合いで安全保障を固める道へ」衰える米国の警察力/行使基準もっと熟議を
産経新聞集団的自衛権容認 『助け合えぬ国』に決別を」「日米指針と法整備へ対応急げ」抑止力が平和の手段だ/9条改正の必要は不変
東京新聞「9条破棄に等しい暴挙 集団的自衛権容認」軍事的な役割を拡大/現実感が乏しい議論/国会は気概を見せよ


 各社の政治部長編集委員らの署名記事も載っています。
朝日新聞1面:三浦俊章編集委員「『強兵』への道 許されない」(ワッペン「日本はどこへ 集団的自衛権」1)
毎日新聞第2社会面:滝野隆浩編集委員「『軍隊』へ変容 始まる」
▼読売新聞1面:田中隆之政治部長「真に国民を守るとは」
日経新聞1面:池内新太郎政治部長「アジア安定の見取り図を」
産経新聞1面:有元隆志政治部長「21世紀の日本のかたち示す時」
東京新聞1面:山田哲夫論説主幹「戦後69年 憲法9条の危機」「闘いはこれからだ」/社会面:瀬口晴義社会部長「戦争への傾斜止めよう」


 各社ごとに論調が分かれるような政治テーマでは、社会面の報道にもその違いが反映される傾向があります。昨年秋以降の特定秘密保護法案をめぐる報道では、法案に反対の新聞は連日、社会面で各地の反対運動の動きを報じたのに対し、法案を支持、ないしは理解を示す新聞の社会面の関連記事は極めてわずかでした。その中で今回は、安倍政権の方針を支持している読売新聞が第1社会面で、首相官邸前の抗議行動を写真とともに伝えているのが目を引きました。産経新聞も第2社会面の記事で官邸前の抗議行動に触れています。
 各紙の社会面の主な記事の見出しを書き留めておきます。
朝日新聞
社会面見開き見出し「不戦 叫び続ける」「国民 守れるのか」
第1社会面「『戦争は遠い話』『びびってます』若い世代は(ドキュメント)」/「『限定的でも引きずりこまれる』元兵士らは」
第1社会面「列島 抗議のうねり」
第2社会面「『2世3世が語るしかない』」「沖縄戦で自決 大田中将の子孫」
第2社会面「最大の抑止 非戦のはず」加藤陽子東大教授(日本近現代史)/「行使判断、時の内閣任せ」小池政行日本看護大教授(国際人道法)

毎日新聞
社会面見開き見出し「自衛隊60年岐路」「戦い死ぬリアル」
第1社会面「『命令ならば行く』」
第1社会面「抗議の渦、熱く広く(官邸前)(各地で)」/「母と子の図また(首相会見)」
第1社会面「『戦争への意思表示だ』」「辺野古 移設着工に県民、憤り」
第1社会面「『安保 変化の節目』小野寺防衛相」
第2社会面「世論割る決定の先」「『軍隊』へ変容 始まる」滝野隆浩編集委員
第2社会面「7・1ドキュメント」

▼読売新聞
社会面見開き見出し「自衛隊 気引締め」「国際社会で存在感」
第1社会面「『政府責任とてつもなく重い』」(創設60年の転機/新たな訓練も/在外邦人は歓迎)
第1社会面「『デメリット もっと説明を』街の声」
第2社会面「『創る』平和実現」「安全保障広い視野で」「憲法の存在無視」(明石康・元国連事務次長、村井友秀・防衛大教授、小林節・慶応大名誉教授)

日経新聞
第1社会面「国どう守る 思い交錯」「『世界の中で責任』」「『テロ標的を懸念』」(「法の番人」/自衛隊OB/国際NGO)
第1社会面「メリット曖昧・平和もたらす・投票で是非を」「集団的自衛権 街の声」
第2社会面「『戦争あり得ぬ』」「首相会見、何度も強調」
第2社会面「『憲法ひっくり返した』」「大江健三郎さんら会見」/「『容認は違憲日弁連が声明」

産経新聞
第2社会面「『やっと自立国家に…』」「『国民を危険にさらす』」(街の声)/「識者からも賛否」(古庄幸一・元海上幕僚長、「戦争をさせない1000人委員会」大江健三郎さん)

東京新聞
社会面見開き見出し「『反対』あきらめない」「平和な暮らし守れ」
第1社会面「若者も声『今日が出発点』」「首相会見わずか24分」
第1社会面「『改憲超えた壊憲だ』」「地方議員249人連携、抗議」
第1社会面「『平和憲法ひっくり返した』」「大江さんら批判」/「戦後最悪の暴挙 ジャーナリスト会議」/「日弁連会長『違憲』抗議」
第1社会面「戦争への傾斜止めよう」瀬口晴義社会部長
第2社会面「子育て 戦争のためじゃない 豊島の母親」「ここが攻撃されるかも 怒る沖縄」/「『武力行使さらに拡大も』 法制局元長官」/「『後方待機は詭弁』 自衛隊」/「『政治家分かっていない』 空襲体験者ら」
第2社会面「日本国憲法前文」「第9条」※条文を囲みで掲載


 ブロック紙、地方紙も同じく2日付の紙面で、今回の閣議決定を大きく報じています。ネット上の各紙サイトで公開されている社説をチェックし目にする限りでのことですが、やはりこれまでの傾向と同じく、ブロック紙、地方紙は批判的な論調が圧倒しています。後刻、このブログでも紹介しようと思います。


 なお、閣議決定の直前にマスメディアが行った世論調査の結果が2件、報じられていました。6月27〜28日の毎日新聞の調査では、集団的自衛権の行使に「賛成」32%、「反対」58%でした。日経新聞テレビ東京が6月27〜29日に行った調査では、集団的自衛権を「使えるようにすべきだ」34%、「使えるようにすべきではない」50%でした。閣議決定当日の7月1日から翌2日にかけて共同通信が行った世論調査では、行使容認に「反対」54・4%、「賛成」34・6%です。
※47news=共同通信内閣支持率47%に下落 集団的自衛権反対54%」
http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014070201001999.html

 集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を受け、共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は47・8%で、前回6月から4・3ポイント下落した。不支持率は40・6%と第2次安倍政権としては初の40%台に上昇し、支持率との差は7・2ポイントにまで接近した。行使容認への反対は54・4%で半数を超え、賛成は34・6%だった。安倍晋三首相が踏み切った行使容認に国民が納得していない実態が浮かんだ。
 支持率50%割れは、特定秘密保護法成立直後の昨年12月調査以来。6月調査の不支持率は33・0%だった。

 集団的自衛権の問題に関しては、安倍首相の方針に世論の支持があると言えるような状況では到底ありません。
 閣議決定を伝える全国紙各紙の報道を読み比べ、マスメディアのありようとして思うことがあります。政治家ならば、自らの政治信条に基づいて、世論の多数の支持を得ていない政策でも実行を図ることは、そのことの是非は別として選択肢としてはありうるかもしれません。しかし存立のよりどころを社会の人々の信頼に求めるべきマスメディアは、社会の中で十分に理解が進んでいるか、支持が広がっているかを見極め、政治の手続き面を監視するのも責務だと思います。仮に政策の目的は正しいと考えたとしても、だから手続き、手法は問わないということでいいはずがありません。その意味で、日経新聞の社説が集団的自衛権の行使容認自体には理解を示しつつ、手続き面に疑義を指摘していることが印象に残ります。
 集団的自衛権が現実的に行使可能になるまでは、関連法の改変など今後さらに多くの手続きを踏まなければなりません。閣議決定で終わりではなく、その一つ一つの手続きを厳格に重ねていっても、なお民意の理解が深まらず、支持が広がらないのだとしたら、マスメディアはその民意とどう向き合うのかが問われることになるのだと思います。