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「沖縄県民の痛みを感じない政府の姿勢を知ってほしい」〜翁長知事の3月27日コメント

 沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題に絡み3月30日、大きな動きがありました。
※47news=共同通信「農相、沖縄県指示の効力停止 辺野古、防衛局は作業続行」2015年3月30日
http://www.47news.jp/CN/201503/CN2015033001001259.html

 林芳正農相は30日、米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、翁長雄志知事が沖縄防衛局に出した辺野古沿岸部での作業停止指示の効力を一時的に停止すると発表した。防衛局は辺野古沿岸部埋め立てに向け、海底ボーリング調査などの作業を続行できることになり、県は対抗策を模索している。
 防衛局は24日、指示の取り消しを求め、行政不服審査法に基づき関係法を所管する農相に審査請求し、審査結果(裁決)が出るまで指示の効力を止める執行停止を申し立てた。県側は27日、申し立てを退けるよう求める意見書を農相に提出していた。

 もともと、国(防衛省)が求めたことを国(農水相)が判断するという構造です。仮に農水相沖縄県側の主張を認めて、防衛省側の執行停止の申し立てを退けるとすれば、同じ内閣の中で防衛相と農水相の「閣内不一致」となります。当初から結論は分かっていたも同然です。
 前後してしまいましたが、ここでは防衛省が執行停止を申し立てたことに対して、沖縄県が3月27日に農水相に意見書を提出した際に、翁長知事が発表したコメントを紹介します。琉球新報のサイトに全文が掲載されています。

 ▼琉球新報辺野古 県反論 翁長知事コメント全文」2015年3月28日
  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241044-storytopic-271.html

 相当の長文ですが、以下の部分は日本本土に住む日本国の主権者である国民に、一人でも多く読んでほしいと思います。

 (9)戦後70年を経た今もなお、国土面積の約0・6%しかない本県に約74%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがなく、その米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因であることは明確である。
 日本の安全保障が大事である。それは私も等しく共有する思いでありますが、負担を沖縄県民だけが背負うのではなく、日本国民全体で考えるべきである。
 その様な歴史をたどって来たからこそ、沖縄の県民は先の県知事選において、36万票という民意となり、移設による負担の継続ではなく、米軍基地負担を否定する道を選んだのである。
 普天間飛行場を抱える宜野湾市民の意思も、約3千票の差をもってこれが支持されていることも忘れないでいただきたい。
 それにもかかわらず、政府の一方的論理によって、辺野古移設を「唯一の解決策」であると決めつけて、普天間飛行場の負担の大きさを執行停止の理由として述べることは、悲しいことでありますが、沖縄県民の痛みを感じない、感じようとしない政府の姿勢があることを国民の皆さまに知っていただきたい。
 (10)国の言い分はあまりに抽象的な主張であり反論の必要に欠けるが、基地の移設について日本の国内法に基づいた正当な許可手続きを経て実施させることが、なぜ、日米関係の悪化につながるのか私には理解できない。
 また、日米関係が悪化するから、日本国内法に基づく必要な許可を得ないままに作業を続行させて良いというのであれば、それは主権を持つ一つの独立国家の行動ではないと断じざるを得ないであろう。

 なお、沖縄の地元紙の沖縄タイムス琉球新報とも、31日付の社説で激しく政府を批判しています。
 ▼沖縄タイムス「[農相「無効」決定]透明性も適格性も疑問」
  http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=109513&f=t
 ▼琉球新報「農相効力停止決定 まるで中世の専制国家 民意無視する政府の野蛮」
  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241173-storytopic-11.html

 以下は琉球新報の社説の書き出し部分です。

 いったい今はいつの時代なのか。歴然と民意を踏みにじり恬(てん)として恥じぬ政府の姿は、中世の専制国家もかくや、と思わせる。
 まして民主主義の国とは到底思えない。もっと根源的にいえば、この政府が人権意識をかけらでも持っているか疑わしい。
 言うまでもなく林芳正農相が翁長雄志知事の発した作業停止指示の効力停止を決めたからだ。これで民主国家を称するとは度し難い。理は沖縄側にある。県は堂々と国際社会に訴えればいい。民主制に程遠いこの国の実相を知れば、国際社会は耳を疑うだろう。