仮説:安倍政権「支持」が減っているというより「積極不支持」が増えている ※追記・NNN調査も「支持」「不支持」逆転

 6月下旬以降、マスメディア各社の世論調査結果が相次いで報じられました。安倍晋三内閣の支持率がそろって低下しています。また国会で審議中の安全保障関連法案に対して、大勢は反対が賛成を上回っています。
 調査結果のうち、内閣支持率を並べてみます。カッコ内はそれぞれ5月に実施した前回調査との比較です。

共同通信 6月20、21日実施
 支持47・4%(2・5ポイント減)不支持 43・0%(5・0ポイント増)
朝日新聞 6月20、21日実施
 支持39%(6ポイント減)    不支持 37%(5ポイント増)
産経新聞・FNN 6月27、28日実施
 支持46・1%(7・6ポイント減)不支持 42・4%(7・9ポイント増)
▼読売新聞 7月3〜5日実施
 支持49%(4ポイント減)    不支持 40%(4ポイント増)
毎日新聞 7月4、5日実施
 支持42%(3ポイント減)    不支持 43%(7ポイント増)

 いずれの調査も前回との比較で支持率が落ち、不支持が増えました。中でも朝日新聞の調査で「支持」が40%を切ったことと、毎日新聞の調査で支持と不支持が逆転したことが目を引きます。第2次、第3次安倍内閣で、朝日の支持率40%割れは昨年11月以来、2回目とのこと。毎日の支持と不支持の逆転は初めてで、支持率42%はこれまでで最低とのことです。しかし下落幅が最大でも7・6ポイントでは、「急落」とまでは呼べないように思います。
 前回と前々回との比較では、朝日新聞産経新聞・FNNは前回の支持率は前々回よりも上がっていましたが、共同通信、読売新聞、毎日新聞は前回、今回と2回連続で支持率が落ちています。支持率低下の傾向が続いている、と言っても、さほど無理はないように思います。
 個人的に注目していたのは、6月25日に開かれた自民党の若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」で「異論封じ」「報道圧力」の発言が相次いだ問題が、内閣支持率に影響したのかどうかです。勉強会以前の朝日新聞の調査でも支持率は6ポイント減少していました。ちょうど勉強会の問題が報道され始めたころにかかる産経新聞・FNNの調査では減少幅は7・6ポイント。その1週間後の読売新聞、毎日新聞の調査では4〜3ポイントの減少です。勉強会の「異論封じの」問題がなくても、支持率は落ちていただろうと思いますし、結局のところ、「異論封じ」「報道圧力」の問題が内閣支持率にどのように作用したのか、しなかったのかはよく分かりません。
 全体としては、支持率を落としてはいるものの、それでも49〜39%の支持率は、まだ十分に高い水準を保っているように思えます。印象としてはむしろ、「不支持」の増加の方が、各社の調査ごとの差が少ないように感じます。おおむね、「不支持」の増加幅は「支持」の減少幅と同等か、それを上回っています。「不支持」を前回と前々回の比較で見てみると、産経新聞・FNNは前回、前々回より1・4ポイント減っていましたが、ほかはみな、前々回より増えていました。傾向として続いているのは、「支持」の減少よりも「不支持」の増加なのかもしれません。安倍政権の岩盤の支持層に変化はないものの、これまでも「支持」と「不支持」を行き来していた層や、政治にそもそも関心がなかった層の中から、積極的に「不支持」に転じる人たちが出る傾向が続いている―。わたし個人としては、そんな仮説を立ててみようかと考えています。

 次に、安全保障関連法案に対する賛否です。質問の文章も一緒に引用、紹介します。回答を一定の方向に導こうとする露骨な誘導と考えざるを得ないような調査もあります。

共同通信
政府は集団的自衛権行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法案を今国会に提出し、審議されています。あなたは、この法案に賛成ですか、反対ですか
反対 58・7% 賛成 27・8%

朝日新聞
今の国会に提出された安全保障関連法案についてうかがいます。集団的自衛権を使えるようにしたり、自衛隊の海外活動を広げたりする安全保障関連法案に、賛成ですか。反対ですか。
賛成 29% 反対 53%

産経新聞・FNN
日本の安全と平和を維持するために、安保関連法案の成立は必要だと思うか
必要だ 49・0% 必要ない 43・8%

▼読売新聞
現在、国会で審議されている、集団的自衛権の限定的な行使を含む、安全保障関連法案についてお聞きします。
安全保障法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか。
賛成 36% 反対 50%

毎日新聞
政府・与党は、集団的自衛権の行使など、自衛隊の海外での活動を広げる安全保障関連法案を今国会に提出しています。あなたはこの法案に賛成ですか、反対ですか。
賛成 28% 反対 61%

 安保法案をめぐっては、今週中の衆院採決が取り沙汰されていますが、世論調査で読売新聞のように「日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです」と、露骨に政権を代弁するかのような説明をしても「反対」が50%に上り、「賛成」は36%にとどまっています。安保関連法案の成立が「必要だ」が「必要ない」を上回った産経新聞・FNNの調査でも、「必要だ」は49・0%で半分に達せず、「必要ない」は43・8%に上ります。
 それにしても、安保関連法案に対して、民意は厳しい見方をしているのに、その厳しさほどには内閣支持率には影響が見られない傾向に、今回も変わりはありません。この点について、集団的自衛権の行使とか自衛隊の活動の広がりが取り沙汰され、自衛隊員が戦闘に巻き込まれ殺し殺されかねないリスクが高まるとは言っても、直接、自分の身に何か変化が起こるわけではない、と考える人が多いからではないか、とする分析にこの週末、触れました。安保法制には反対だけれども、首相を替えなければならないほどの問題ではないと考えている人が多い、というわけです。なるほど、そういう面はあるのかもしれないと思いました。


【追記】2015年7月12日22時50分
 日本テレビ系列のNNNが7月10〜12日に実施した世論調査で、内閣支持率は「支持」39・7%(前回比1・4ポイント減)に対し「不支持」41・0%(同1・7ポイント増)と、支持、不支持が初めて逆転しました。
 http://www.ntv.co.jp/yoron/201507/soku-index.html
 リンク先には調査の設問と回答が掲載されています。安保法案についての設問は、集団的自衛権の行使と後方支援活動を分けて尋ねており、回答は集団的自衛権行使は反対が多く、後方支援は賛成が多くなっています。その上で「あなたは、この法案を、いまの国会で成立させることでよいと思いますか、思いませんか?」と質問。回答は「思う」24・2%、「思わない」58・7%、「わからない、答えない」17・2%となっています。