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「謝罪の宿命背負わせてはならない」に共感63%〜戦後70年談話の朝日新聞世論調査 ※追記・内閣支持率は再逆転しているのか

 安倍晋三首相が8月14日に発表した戦後70年談話についての世論調査結果がさらに2件報じられました。朝日新聞が22、23両日に実施した調査では、談話を「評価する」40%、「評価しない」31%でした。「その他・答えない」も29%あり、朝日は記事で「判断がつかない人も多かったようだ」としています。
 ※朝日新聞デジタル「安倍談話、『評価』40% 朝日新聞世論調査」2015年8月25日
  http://www.asahi.com/articles/ASH8S53H7H8SUZPS003.html
 関連する設問では、談話が「戦争には何ら関わりのない世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と主張していることを挙げて、共感するかどうかを尋ねたところ「共感する」63%、「共感しない」21%と大きな差が付きました。以前の記事でも書いたように、わたしはこの談話の中でもっとも安倍氏の本心が表れているのはこの部分だろうと感じています。つまり「談話を出す以上は戦後50年の村山元首相談話を否定できないし、村山談話を継承すると表明することで『おわび』の気持ちを持ち続けていることも表明する。しかし、謝罪という行為は自分はしたくないし、今後はするべきではない」―ということです。共感がこれほど多数に上り、「共感しない」とこれほどにも差がつくとは、ちょっと意外な気もします。ただ、「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とは、「もはや謝罪に区切りをつける、終わりにする」という解釈のほかに「宿命を背負わせないように自分たちの世代で解決に努める」と言っているように受け取れなくもありません。そう受け取っての「共感する」と答えた人も少なくないのではないかと推察します。
 内閣支持率は、「支持」38%で前回比1ポイント増、「不支持」は41%で前回比5ポイント減でした。

 
 もう1件はANN系列がやはり22、23両日実施した調査です。戦後70年談話を評価するか尋ねたところ、「評価する」36%、「評価しない」33%、「分からない・答えない」31%でした。
 ※「2015年8月15日」
  http://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/201508/index.html
 内閣支持率は「支持」42・4%で前回比6・3ポイント増、「不支持」37・4% (前回比9・6ポイント減)、「わからない、答えない」20・2% (前回比3・3ポイント増)でした。支持の回復、不支持の減少が顕著だと言えるように思います。


 参院で審議中の安全保障関連法案に対しては、両調査とも以下のように依然として反対が賛成を大幅に上回り、今国会で成立させるべきかどうかも、否定的な回答が多数です。
 ▽安保関連法案への賛否
  朝日新聞調査 賛成30% 反対51%
  ANN調査 賛成22% 反対55%
 ▽朝日新聞調査:今国会で成立させる必要があると思うか
  必要がある20% 必要はない65%
 ▽ANN調査:国会審議への考えは
  いまの国会で成立させることでよい11% いまの国会にこだわらず時間をかけて審議するべきだ64% 廃案にするべきだ22% わからない、答えない3%


 これまでの他社の調査結果とともにまとめておきます。
【戦後70年談話】
共同通信 「評価する」44・2%「評価しない」37・0%
▼読売新聞 「評価する」48%「評価しない」34%
産経新聞・FNN 「評価する」57・3%「評価しない」31・1%
朝日新聞 「評価する」40%「評価しない」31%「その他・答えない」29%
▼ANN 「評価する」36%「評価しない」33%「分からない・答えない」31%


内閣支持率
共同通信 6月20、21日実施 支持47・4%(2・5ポイント減) 不支持 43・0%(5・0ポイント増)
朝日新聞 6月20、21日実施 支持39%(6ポイント減) 不支持 37%(5ポイント増)
産経新聞・FNN 6月27、28日実施 支持46・1%(7・6ポイント減) 不支持 42・4%(7・9ポイント増)
▼読売新聞 7月3〜5日実施 支持49%(4ポイント減) 不支持 40%(4ポイント増)
毎日新聞 7月4、5日実施 支持42%(3ポイント減) 不支持 43%(7ポイント増)
▼NNN 7月10〜12日実施 支持39・7%(1・4ポイント減) 不支持 41・0%(1・7ポイント増)
▼NHK 7月10〜12日実施 支持41%(7ポイント減) 不支持 43%(9ポイント増)
朝日新聞 7月11、12日実施 支持39%(変わらず) 不支持 42%(5ポイント増)
共同通信 7月17、18日実施 支持37・7%(9・7ポイント減)不支持51・6%(8・6ポイント増)
毎日新聞 7月17、18日実施 支持35%(7ポイント減)不支持51%(8ポイント増)
朝日新聞 7月18、19日実施 支持37%(2ポイント減)不支持46%(4ポイント増)
▼読売新聞 7月24〜26日実施 支持43%(6ポイント減)不支持49%(10ポイント増)
日経新聞 7月24〜26日実施 支持38%(9ポイント減)不支持50%(10ポイント増)
▼NNN 8月7〜9日実施 支持37・8%(1・9ポイント減)不支持46・7%(5・7ポイント増)
▼NHK 8月7〜9日実施 支持37%(4ポイント減) 不支持46%(3ポイント増)
毎日新聞 8月8、9日実施 支持32%(3ポイント減)不支持49%(2ポイント減)
共同通信 8月14、15日実施 支持43・2%(5・5ポイント増)不支持46・4%(5・2ポイント減)
▼読売新聞 8月15、16日実施 支持45%(2ポイント増)不支持45%(4ポイント減)
産経新聞・FNN 8月15、16日実施 支持43・1%(3・8ポイント増)不支持45・0%(7・6ポイント減)
朝日新聞 8月22、23日実施 支持38%(1ポイント増)不支持41%(5ポイント減)
▼ANN 8月22、23日実施 支持42・4%(6・3ポイント増)不支持37・4% (9・6ポイント減)「わからない、答えない」20・2% (3・3ポイント増)


【追記】2015年8月27日7時55分
 ANNの調査では、内閣支持率が「支持」が「不支持」を上回りました。再逆転です。しかし、戦後70年談話の評価は、「評価する」「評価しない」「分からない」がおおむね拮抗しています。戦後70年談話が評価されて、支持率の回復に結び付いたとの分析は控えたいと思います。内閣支持率の再逆転が定着するのか、後続の調査結果を待ちたいと思います。