ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

1面掲載の朝日、毎日、東京、社会面の読売、産経、日経〜反安保、国会周辺集会の報じ方 ※追記・警察集計の表記について補足

 参院で審議中の安全保障関連法案に反対する過去最大規模の集会が30日、国会周辺で開かれ、主催者発表によると約12万人が参加しました。全国各地でも同じように集会が開かれ、その数は200〜300カ所と報じられています。
※47news=共同通信「国会前、最大規模の集会 市民ら安保法案に反対」
 http://www.47news.jp/CN/201508/CN2015083001001340.html

 安全保障関連法案に反対する市民団体が30日、国会近くで集会を開いた。同法案に関する抗議行動では最大規模で、主催者は約12万人が参加したと発表。雨の中、参加者は国会議事堂を取り囲み、車道にもあふれた。一斉行動も呼び掛け、主催者によると全国200カ所以上でデモや集会を実施。反対の民意の広がりを強くアピールし、安倍政権に廃案を求めた。

 このニュースに対する新聞各紙の扱いは、法案に対する賛否の論調の違いによって分かれるだろうと予測していましたが、「やはり」という結果でした。東京発行各紙の31日付朝刊の中で本記を1面に掲載したのは朝日新聞毎日新聞東京新聞の3紙で、東京新聞は1面トップ。3紙とも国会議事堂前の航空写真を大きく載せています。当然ながらこの3紙は社会面にも関連記事をふんだんに載せています。
 読売新聞、産経新聞はともに第2社会面、日経新聞は社会面でした。日経、産経は小さいながらも国会前の航空写真を掲載しています。読売が前日29日にこの日、東京・新宿で行われた法案賛成派の集会も報じていること、産経が大学生らの団体「シールズ」を取り上げたサイド記事を合わせて掲載していることが目を引きました。
 国会前の集会の参加人数については、東京新聞を除く5紙は主催者発表の約12万人とともに、警察調べの数字も引用していますが、朝日の「警察関係者によると、国会周辺だけで参加者は約3万3千人」との表記がいちばんていねいだと感じました。集会参加者がSNSで発信している内容を見ても、国会周辺から少し離れた霞ケ関から日比谷公園にかけても、法案に抗議の意思表示をする人たちが少なからずおり、「集会参加者」に数えても違和感はないように思います。
 以下に備忘を兼ねて、各紙の本記の主な見出し、参加者数の表記などを書きとめておきます。

朝日新聞
本記1面左肩「安保法案反対 最大デモ」「国会周辺に集結 全国各地でも抗議」国会前の航空写真
参加者:「主催者発表によると、参加者は12万人」「警察関係者によると、国会周辺だけで参加者は約3万3千人」
総合面、社会面に関連記事 ※1面トップは「住宅耐震82% 鈍い伸び」

毎日新聞
本記1面左肩「安保法案 反対の波」「全国300カ所で集会・デモ」国会前の航空写真
参加者:「参加者は警察当局によると3万人、主催者発表では12万人」
社会面、第2社会面に関連記事 ※1面トップは「訪日客向け『民泊』拡大」

東京新聞
本記1面トップ「届かぬ民意 危機感結集」「8・30 安保法案反対、全国200カ所以上」国会前の航空写真
参加者:「十二万人(主催者発表)が参加」
総合面、社会面、第2社会面、最終面に関連記事

▼読売新聞
本記第2社会面・見出し横組み2段相当「安保法案『反対』『賛成』デモ」「土日の国会周辺や新宿」国会前の地上撮影写真
参加者:「参加者は主催者発表で12万人。警察関係者は約3万3000人としている」(反対派)「主催者発表で約500人」(賛成派)
※1面トップは「群大術後死 新たに12例」

日経新聞
本記社会面・見出し1段「安保法案反対 大規模なデモ」「国会周辺埋め尽くす」国会前の航空写真
参加者:「主催した市民団体『戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会』は、参加者数を約12万人と発表。警視庁は参加者数の発表をしていないが、警察関係者は3万人余りとしている」
※1面トップは「スズキ、VWと提携解消」

産経新聞
本記社会面・見出し4段「国会前 反安保法案の大規模集会」「警察『3万人』主催者『12万人』」「周辺、雨中騒然」/「学生団体『シールズ』とは」「洗練イメージで存在感/一部野党が賛同」国会前の航空写真
参加者:「警察関係者によると、約3万人が集まったとみられる。主催者側は約12万人が参加したと発表した」
政治面に関連記事
※1面トップは「スズキ、VWと提携へ」
【写真説明】朝日、毎日、東京の1面


※追記・警察集計の表記について補足=2015年8月31日22時30分
 コメント欄に以下のご指摘をいただきました。Lさま、ありがとうございます。

>国会周辺から少し離れた霞ケ関から日比谷公園にかけても、法案に抗議の意思表示をする人たちが少なからずおり、「集会参加者」に数えても違和感はないように思います。

こんにちは。主催者は、日比谷公園霞ヶ関〜国会周辺を抗議行動の場所として設定、各所に街宣車やステージを出してスピーチやコールをやっています。
 ですから、これらの地域に集まった抗議者全員を参加者としてカウントするのが正しいです。

 わたしが、新聞各紙の集会参加者の表記を読み比べて感じたのは、警察集計の範囲の曖昧さでした。ひと口に「約3万人」とか「約3万3千人」と言っても、国会議事堂の周囲のことなのか、日比谷公園周辺までを含めてなのか、記事を読んでもよく分かりません。どこまでの範囲を指しているのかによって、受ける印象も違ってくると思います。その中で朝日の「国会周辺だけで参加者は約3万3千人」との表記はていねいだと感じました。さらに言えば、国会周辺だけに限らず、霞ケ関日比谷公園周辺までの人たちを参加者に含めても、警察としても違和感はないだろうに、そうした集計はどうなっているのか、各紙とも警察に取材しないのか、ということも考えました。そういうことを書きたかったのですが、そうは読み取り難い文章でした。反省材料としたいと思います。