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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

改造も「1億総活躍」「新3本の矢」も高い評価ではないのに安倍内閣支持率は46−39%に上昇〜TPP交渉は高評価、安保法は依然厳しい評価

 10月7日に安倍晋三首相が内閣改造を行ったことを受けて、マスメディア各社が行った世論調査の結果が報じられています。毎日新聞、読売新聞、日経新聞テレビ東京共同通信の4件の調査結果を、備忘を兼ねて書きとめておきます。実施期間はいずれも10月7〜8日です。
 内閣支持率は以下の通りです。前回の調査はいずれも安全保障関連法が成立した直後で、支持率はおおむね下落していました。今回はいずれも上昇に転じており、しかも毎日新聞を除いては、支持が不支持を上回っています。支持率の水準も46−39%と、調査によっては50%をうかがうところにきています。

内閣支持率
毎日新聞 支持39%(4P増)不支持43%(7P減)「関心がない」15%(3P増)
読売新聞 支持46%(5P増)不支持45%(6P減)
日経新聞 支持44%(4P増)不支持42%(5P減)
共同通信 支持44・8%(6・9P増)不支持41・2%(9P減)
※「安倍晋三内閣の支持率の推移 ※2015年6月以降」
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20151009/1444480168


 そのほかの結果については、共通する項目ごとにまとめてみました。その詳細は後掲しますが、特徴的だと思うことをいくつか書きとめておきます。

  • 内閣改造の評価は、読売新聞は「評価する」が「評価しない」を大幅に上回ったが、ほかの3件の調査では「評価しない」が「評価する」を上回っている。
  • 環太平洋連携協定(TPP)交渉が大筋合意に至ったことに対しては、各調査とも「評価する」が「評価しない」を大幅に上回った。
  • 安倍晋三氏が新たに掲げた少子高齢化対策の「1億総活躍」の評価は高くない一方で、経済政策の「新3本の矢」(「強い経済」「子育て支援」「社会保障」)は調査によって(設問の尋ね方によって)評価が分かれている。
  • 安保法制は成立、公布後も依然として「評価しない」が「評価する」を上回っており、また今も政権の説明が十分ではないと考えている人が圧倒。

 以上を基に考えると、支持率の回復は内閣改造が理由とは考えにくく、また政策面でも「新3本の矢」は評価は分かれ、「1億総活躍」はどちらかと言えば不評です。各調査とも「評価する」が比較的高い水準でそろったのは環太平洋連携協定(TPP)交渉の大筋合意ですが、それが支持率回復に結びついたとみるべきか、よく分かりません。
 一方、今回は安倍首相や内閣を支持する理由もみてみました。日経新聞の調査にこうした項目があるのかどうか、紙面からは分かりませんが、毎日新聞、読売新聞、共同通信の3件の調査結果から書き出すと以下の通りです。

▼内閣、首相を支持する理由(上位三つ)
毎日新聞 「指導力に期待できる」32%「政治のあり方が変わりそうだから」23%「政策に期待できる」21%
読売新聞 「これまでの内閣よりよい」38%「政策に期待できる」19%「首相に指導力がある」15%
共同通信 「ほかに適当な人がいない」28・1%「首相を信頼する」19・1%「経済政策に期待できる」16・0%


 読売新聞の調査では「これまでの内閣よりよい」が4割近く、共同通信の調査でも「ほかに適当な人がいない」が3割近くを占めていることからみて、安倍晋三氏のほかに首相のなり手が見当たらない状況も、支持率を考える要因として考慮すべきではないかと感じます。


 以下に、4件の世論調査の結果の項目を書きとめておきます。

内閣改造に対して
読売新聞 ※蔵相、外相、官房長官ら主要閣僚の留任を「評価する」50%「評価しない」34%
毎日新聞 「評価する」39%「評価しない」47%
日経新聞 「評価する」26%「評価しない」31%
共同通信 「評価する」35・4%「評価しない」40・1%


▼環太平洋連携協定(TPP)交渉大筋合意に対して
読売新聞 「評価する」59%「評価しない」28%
毎日新聞 「評価する」50%「評価しない」36%
日経新聞 「評価する」49%「評価しない」26%
共同通信 「よかった」14・7%「どちらかといえばよかった」43・3%「どちらかといえばよくなかった」22・8%「よくなかった」9・4%→「よかった」58・0%「よくなかった」32・2%


▼「1億総活躍」の取り組みに対して
読売新聞 「評価する」31%「評価しない」48%
毎日新聞 ※加藤勝信担当相の人事を「評価する」22%「評価しない」49%
共同通信 「期待する」16・0%「どちらかといえば期待する」28・8%「どちらかといえば期待しない」23・3%「期待しない」24・8%→「期待する」44・8%「期待しない」48・1%


▼「新三本の矢」に対して
毎日新聞 「期待する」50%「期待しない」45%
日経新聞 「評価する」53%「評価しない」30%
共同通信 「(景気が)よくなると思う」26・5%「よくなると思わない」64・9%
安倍内閣の経済政策を
読売新聞 「評価する」43%「評価しない」46%


▼これまでの「三本の矢」に対して
毎日新聞 「評価する」30%「評価しない」57%


▼安全保障関連法の成立、制定に対して
読売新聞 「評価する」36%「評価しない」54%
毎日新聞 「評価する」31%「評価しない」57%


▼安全保障関連法について安倍政権、政府・与党は国民に十分に説明していると思うか
読売新聞 「十分に説明している」13%「そうは思わない」82%
共同通信 「十分に説明していると思う」17・6%「十分に説明しているとは思わない」78・6%


▼野党が選挙協力をすべきだと思うか
読売新聞 「選挙協力する方がよい」41%「そうは思わない」43%
毎日新聞 ※共産党を含む野党が「選挙協力をすべきだ」38%「選挙協力をする必要はない」44%


▼来夏の参院選の投票で安保関連法を判断材料にするか
毎日新聞 「判断材料にする」57%「判断材料にしない」32%


集団的自衛権の行使に
日経新聞 「賛成」27%「反対」57%


▼2017年4月の消費税率10%への引き上げに
日経新聞 「賛成」34%「反対」57%


▼消費税引き上げと同時に軽減税率を導入すべきだと思うか
読売新聞 「導入すべきだ」67%「そうは思わない」26%


原発再稼働を
日経新聞 「進めるべきだ」29%「進めるべきでない」56%


▼「おおさか維新の会」に対して
読売新聞 「期待する」34%「期待しない」56%
毎日新聞 「期待する」38%「期待しない」52%


石破茂氏に
毎日新聞 「期待する」39%「期待しない」48%