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メディア総研が緊急声明「私達は、違法な政治介入を許しません」 ※追記・放送法ワンポイント解説

 メディア総合研究所が11月30日、緊急声明を発表しました。
 http://www.mediasoken.org/statement/view.php?id=56

私達は、違法な政治介入を許しません。

 私たちは違法な政治介入に強く反対します。「表現の自由」に基づく放送法の「自主自律」を各放送事業者が実践し、権力を監視し国民の「知る権利」に応える番組が多く放送されることを強く求めます。

1.放送法憲法21条「表現の自由」に基づいて定められたものです。戦前の暗黒時代の真摯な反省に基づくものです。安倍晋三・総理は、「私にも『表現の自由』がある」と繰り返し述べますが、これは歴史への冒涜です。表現の自由は少数者や社会的弱者のために培われたものであり、権力者のためではありません。

2.この「表現の自由」に基づく、放送法4条は放送局の倫理規定です。立法時、その後の政府答弁でも何度も繰り返し答弁されています。

3.その根拠は、一つの番組の中でバランスを取ることは不可能であり、放送局が番組全体で多様な意見を伝えることで判断すべきという極めて現実的なものです。一つの番組での発言を取り上げて、法律違反を求めることは「もの言えば唇寒し」という暗黒時代を招きます。

4.従って、放送法には、この条項の違反に対する直接的な罰則規定はありません。

5.にもかかわらず、高市早苗総務大臣は国会(2015年11月10日の予算委員会閉会中審査)で放送法第174条(業務の停止)をあげていますが、この条文は地上放送(条文上は特定地上基幹放送事業者)には適用されません。総務大臣が意図的に拡大解釈をしていることこそ問題です。

6.先進国の中で、政権や与党が特定の番組に関して呼びつけることはありえません。「表現の自由」を尊重することが民主主義の発展につながるとの合意があるからです。テレビ朝日、NHKを呼びつけた自民党こそ、放送法違反で総務大臣は厳重注意すべきなのです。

7.「違法な報道」との名を借りた、個人攻撃の意見広告が読売新聞と産経新聞に相次いで掲載されました。誤った根拠によって規制強化を求めることは、テレビの表現の幅を狭め、国民の「知る権利」を奪うものです。このような卑劣な手法に、放送局は屈することなく、断固「自主自律」を貫くべきだと考えます。


2015年11月30日

メディア総合研究所 運営委員会
所長/委員長:砂川浩慶・立教大学准教授 委員:赤塚オホロ・民放労連委員長、桧山珠美・コラムニスト、小田桐誠・ジャーナリスト、谷岡理香・東海大学教授、臺宏士・ライター、吉原功明治学院大学名誉教授、岩崎貞明・事務局長/「放送レポート」編集長


【追記】2015年12月1日23時15分
 上記、メディア総研のサイトに行くと、「放送法ワンポイント解説」がアップされており、とても参考になります。

放送法ワンポイント解説
(目的)⇒この実施が求められるのは国家。放送による表現の自由を確保するのは国家 第1条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
(放送番組編成の自由)⇒憲法21条に基づき「放送番組編成の自由」を規定 第3条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
(国内放送等の放送番組の編集等)⇒この規定は倫理規定。 第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
(業務の停止)⇒この規定は下線を引いたように地上放送は除外されている。
第174条 総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、3月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。