「辺野古移設」反対が出口調査では過半数〜沖縄・宜野湾市長選の在京紙報道の記録

 米軍普天間飛行場が立地している沖縄県宜野湾市の市長選の投開票が1月24日に行われ、安倍晋三政権が支援した現職の佐喜真淳氏が、翁長雄志知事の支援を受けた新人の志村恵一郎氏を破って再選されました。

 琉球新報宜野湾市長に佐喜真氏再選 志村氏に5857票差」2016年1月25日
 http://ryukyushimpo.jp/movie/entry-209798.html

 【宜野湾市長選取材班】任期満了に伴う宜野湾市長選は24日に投開票され、政府・与党の支援を受けた現職の佐喜真淳氏(51)=無所属・自民、公明推薦=が2万7668票を獲得し、元県幹部で翁長県政与党の支援を受けた新人の志村恵一郎氏(63)=無所属=の2万1811票に5857票の大差をつけて再選を果たした。米軍普天間飛行場の返還・移設問題が最大争点になった今回の市長選で、名護市辺野古移設を進める政府・与党が推す現職が勝利したことで今後、安倍政権は移設作業を強硬に推し進めることが予想される。
 翁長雄志知事が昨年10月、前知事の辺野古沿岸の埋め立て承認を取り消した後、県内では初の選挙となる。「直近の民意」として普天間移設問題に影響を与える可能性がある。
 勝利した自民、公明は6月の県議選で議会議席過半数奪取と、夏の参院選での現職再選に向けて勢いをつけた。翁長知事が支援した候補が敗れたことで「新基地建設反対」を掲げて革新と保守の一部が連携した「オール沖縄」体制の求心力に影響を与えそうだ。
 安倍晋三首相は24日夜、自民党幹部に「この勝利は大きい」と述べた。

 普天間飛行場名護市辺野古への移設を推し進める安倍晋三政権と、「オール沖縄」を掲げて県内移設に反対する翁長県政との「代理対決」とも呼ばれた選挙でした。沖縄県外の本土マスメディアがこの選挙結果をどのように報じたか、一例として、東京発行の新聞各紙の取り上げぶりを記録しておきます。当然のごとくと言うか、安倍晋三政権への姿勢の違い、あるいは普天間飛行場の移設問題への社論の違いを反映して、選挙結果への評価は二分されています。各紙の25日付朝刊の1面に掲載された本記と、社説(一部の新聞は26日付で掲載)の見出しを並べると以下の通りです。

朝日新聞
1面トップ本記「政権が支援 宜野湾市長再選」「普天間地元 翁長氏推す新顔破る」
社説(26日付)「宜野湾市長選 『辺野古』容認と言えぬ」
毎日新聞
1面トップ本記「宜野湾市長 自公系再選」「辺野古 政府、移設を推進」
社説「宜野湾市長選 辺野古に直結はしない」
▼読売新聞
1面トップ本記「与党支援の佐喜真氏再選」「辺野古反対派破る」「宜野湾市長選」
社説「宜野湾市長再選 『普天間固定』を避ける一歩に」
日経新聞
1面本記「宜野湾市長が再選」「与党支援 辺野古反対派破る」
社説(26日付)「国と沖縄は対話を閉ざすな」
産経新聞
1面トップ本記「政権支援の現職再選」「翁長派新人破る 辺野古移設に弾み」「宜野湾市長選」「首相『勝利大きい』」
社説(「主張」)「宜野湾市長再選 基地移設を着実に進めよ」
東京新聞
1面本記「政権支援の現職再選」「辺野古反対 新人及ばず」「宜野湾市長選」
社説「宜野湾市長選 辺野古信任とは言えぬ」


【写真】25日付の東京発行朝刊各紙の1面

 普天間飛行場辺野古移設強行に反対の論調の朝日新聞毎日新聞東京新聞は社説で「『辺野古』容認と言えぬ」「辺野古に直結はしない」「辺野古信任とは言えぬ」と掲げ、市長選では普天間飛行場の固定化阻止を求める民意が示されたが、だからと言って辺野古への移設を容認したとは言えない、との主張でそろいました。その理由の一つは、現職の佐喜真氏が「普天間の固定化阻止」は明確に打ち出したものの、その具体策については触れていなかったことです。「辺野古隠し」との指摘もあります。対して読売新聞、産経新聞は、辺野古移設に明確に反対を唱えていた候補が敗北したことで、辺野古への移設作業に弾みがつく、との見解です。安倍政権と翁長県政の「代理対決」との見方からすれば、選挙結果は安倍政権側の勝利であり「米軍普天間飛行場の危険性の早期除去という移設問題の『原点』について、多くの市民が再認識した結果ではないか」(読売新聞社説)との分析も、それなりの根拠を備えているように思います。
 ただ、仮に普天間飛行場の危険性の早期除去が移設問題の「原点」だと市民が再認識したとして、またさらに進んで、移設先は辺野古がもっとも現実的だと少なくない市民が考えたとして、そのことと、それが市民が望んでいることかどうかとは別の問題ではないかと思います。
 この選挙ではマスメディアが投票所の出口調査を実施しています。投票を済ませた有権者に、どの候補に投票したかを尋ね、当落判定に役立てるのが主な目的ですが、同時にいくつかの質問を行って、投票行動の分析も行っています。その中で、新聞各紙とも普天間飛行場辺野古に移設することへの賛否も尋ねています。結果は、朝日:賛成34%・反対57%、毎日:賛成33%・反対56%、読売:「反対」「どちらかと言えば反対」が計55%と、そろって反対が過半数を超えました。結果は「反対多数」で一致していると言っていいと思います。
 地元紙の琉球新報は、毎日新聞共同通信と合同で出口調査を実施しました。その詳しい分析結果を25日付朝刊に掲載しています。それによると、普天間飛行場辺野古移設への賛否は、上記の毎日新聞と同じ賛成33%、反対56%。また、辺野古移設を推進する政府の姿勢について「支持しない」と答えた人が54・9%で「支持する」の33・8%を上回りました。女性は56・9%が「支持しない」で、すべての年代でまんべんなく5割以上が「支持しない」とし、特に50代、60代が多かったとのことです。投票に当たって最も重視した政策では普天間移設問題と回答した人が最も多く55・0%。そのうち辺野古移設に反対の人が67・2%、賛成は29・5%でした。
 これらのデータを虚心に見るにつけ、仮に、普天間の危険性除去の現実的な選択肢が辺野古移設に限られると考える人たちが佐喜真氏の再選を実現させたとしても、それは本土が基地を引き取ろうとしないがために、人々がやむにやまれずに考え至った末のことではないかと感じます。そのことこそ、本土に住む日本国の主権者である人々にもっと知られなければならないことではないかと思います。

【写真】出口調査の分析結果を伝える琉球新報の25日付紙面


 沖縄タイムス琉球新報の25日付の社説は以下の通りです。それぞれ一部を引用します。
沖縄タイムス「[佐喜真氏再選]辺野古外しが奏功した」
 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=151177

 宜野湾市長選は24日投開票され、現職の佐喜真淳氏(51)=自民、公明推薦=が元県幹部で翁長雄志知事や県政与党の支援を受けた新人の志村恵一郎氏(63)に5800票余りの大差をつけ、再選を果たした。
 予想を超える差がついたのはなぜか。市長選は米軍普天間飛行場の返還問題が最大の争点だったが、佐喜真氏は普天間の移設先である「辺野古」の是非には一切言及しなかった。普天間の「固定化を許さない」と主張し、返還合意から20年たっても返還が実現していないことに対する市民のいらだちを代弁した。
 志村氏が「辺野古新基地建設反対」を前面に打ち出したことから、争点は最後までかみ合わず、地元の要望に即した公約を掲げた佐喜真氏に票が流れた。辺野古移設の是非の争点化を巧妙に回避したことが奏功したといえそうだ。
(中略)
 佐喜真氏の再選で政府、与党は沖縄の直近の民意は辺野古新基地を容認した、と宣伝するかもしれないが、佐喜真氏の再選で辺野古移設が支持を得たとまでは言えない。
 佐喜真氏を推薦した公明党県本部幹部が「民意が辺野古容認であるとは受け止めてほしくない」「結果を辺野古の賛否に直結させるべきではない」と選挙前のインタビューで語っている通りである。
 選挙が終わった途端に、佐喜真氏が辺野古移設を容認するような発言をすれば、有権者を軽んじたことになり、政治不信を高める。公約の着実な実行を期待したい。

琉球新報「佐喜真氏再選 新基地容認ではない 国に『5年以内』閉鎖責任」
 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-209783.html

 宜野湾市長選で佐喜真淳氏が再選を果たした。佐喜真氏の1期4年の実績を市民が評価し、今後の市政運営に期待した結果である。
 ただし佐喜真氏再選で沖縄の民意が米軍普天間飛行場名護市辺野古移設容認に変わったわけではない。佐喜真氏は選挙戦で辺野古移設の賛否を明言せず、市民が容認したことにはならないからだ。
 重視すべきは、佐喜真氏が公約した普天間飛行場の5年以内運用停止を、市民が国に突き付けたことだ。佐喜真氏を支援した安倍政権には5年以内の期限である2019年2月までに運用停止を実現する責任がある。
 (中略)
 佐喜真氏は「普天間飛行場の固定化は許さない」と訴えて当選した。選挙結果が示すことは、普天間飛行場によって市民が危険にさらされている状況を、1996年の返還合意後20年も放置する国に対する市民の強い怒りである。
 佐喜真氏には5年以内運用停止を実現する責任がある。だが、たなざらしにされる可能性は否定できない。
 中谷元・防衛相は昨年、5年以内運用停止の定義を「飛行機が飛ばないこと」と明言した。菅義偉官房長官が(1)空中給油機能(2)緊急時着陸機能(3)オスプレイの運用機能−の3要件停止だとの見解を示すと、防衛相は「幻想を与えるようなことは言うべきでない」と前言を撤回した。
 市民が求める運用停止は、飛行機などが飛ばないことである。佐喜真氏も「一日も早い閉鎖、返還を求める」と訴えた。安倍政権が支援したのは佐喜真氏の政策と合致したからだろう。ならば、その実現に全力を尽くすのが筋である。裏切りは許されない。


 以下は東京発行各紙の25日付朝刊(東京本社発行の最終版)の主な関係記事の見出しです。
朝日新聞
1面トップ本記「政権が支援 宜野湾市長再選」「普天間地元 翁長氏推す新顔破る」
1面・視点「辺野古 論議交わらぬまま」松川敦志・那覇支局長
2面・時時刻刻「移設追い風 政権は安堵」/「首相、参院選向け『大きな勝利』」/「翁長氏『民意』旗印 戦略に誤算」
第2社会面「『このままでは普天間が固定』」「『どうせ辺野古なら跡地利用』」/現職へ投票の有権者
第2社会面「辺野古移設反対派24%が現職に投票 出口調査」※「普天間飛行場辺野古への移設に賛成が34%、反対が57%」

毎日新聞
1面トップ本記「宜野湾市長 自公系再選」「辺野古 政府、移設を推進」
1面「与党に安堵感」/「普天間移設問題」※用語解説
3面・クローズアップ「政府と県 混迷さらに」/「首相『勝利大きい』」/「知事 痛い初黒星」
3面「普天間飛行場どんな所?」「米海兵隊の拠点」「住宅密集地『最も危険』」/「移設反対56% 出口調査」※「米軍普天間飛行場名護市辺野古への移設に『反対』との回答は56%で、『賛成』の33%を上回った」
社会面トップ「市民、苦渋の判断」「『辺野古望むわけでは』」/「佐喜真さん『返還に向け課題解決』/「志村さん『県内移設 団結して阻止』」

▼読売新聞
1面トップ本記「与党支援の佐喜真氏再選」「辺野古反対派破る」「宜野湾市長選」
2面「米、『辺野古移設』は堅持」「日本側と共同歩調」
3面・スキャナー「国、普天間の進展期待」/「知事は抵抗 なお道険し」/「移設業者  着々と」
3面「『移設反対に』55%」「本社で出口調査」※「普天間飛行場辺野古移設について、〜回答者全体では、『反対』と『どちらかといえば反対』」が、合せて55%に上った」

日経新聞
1面本記「宜野湾市長が再選」「与党支援 辺野古反対派破る」
2面「辺野古工事 本格化へ」「宜野湾市長再選 首相『大きな勝利』」
社会面トップ「『基地なくしてほしいが…』」「宜野湾市民 複雑な思いで一票」
社会面「翁長知事 言葉少な」「県外移設派候補が落選」

産経新聞
1面トップ本記「政権支援の現職再選」「翁長派新人破る 辺野古移設に弾み」「宜野湾市長選」「首相『勝利大きい』」
1面「『代理対決』知事に風吹かず」
3面「『負けられない』菅氏動く」「政府・与党 現職とのパイプ強調、挙党態勢実る」/「参院選 野党共闘へ暗雲」「共産連携勢力の敗退相次ぐ」/「米、日本政府を支持」「『地方選に影響されない』」

東京新聞
1面本記「政権支援の現職再選」「辺野古反対 新人及ばず」「宜野湾市長選」
2面「新基地を『非争点化』」「宜野湾市長に現職・佐喜真氏」「焦点は参院選に」/「翁長知事『反対姿勢を堅持』」/「米、反対論を懸念 基地早期返還論も」
2面「与党『移設 弾みついた』」「野党『市民の支持得ず』」
2面「56%『辺野古反対』」「『政府支持せず』過半数」※共同通信
社会面トップ「沖縄 ずっと苦渋の判断」「琉球放送元アナウンサー 川平さん 宜野湾市長選見つめる」「『軍隊がいる所が最も危険』」
社会面「普天間辺野古か『どっちか選べなんて酷だ』」「疑問抱えながら宜野湾市民投票」