新基地容認の和解案「構造的差別を放置」(琉球新報社説)〜異例の展開、辺野古移設「代執行訴訟」

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場を同県名護市辺野古に移設する計画をめぐり、移設を強行する日本政府・安倍晋三政権と、県内移設に反対する翁長雄志知事の沖縄県が法廷で全面的に争う異例の事態になっています。その訴訟の一つの、前知事の退任間際に出された辺野古の埋め立て承認を翁長知事が取り消したことをめぐり、埋め立てを進めたい国が沖縄県を提訴したいわゆる「代執行訴訟」で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が1月29日、国と沖縄県の双方に和解を勧告しました。和解案の内容は非公表とされていましたが、2月2日にマスメディアが「関係者が取材に明らかにした」(共同通信)などとして、一斉に報道しました。ここでは、詳しく報じた琉球新報の記事を引用、紹介します。

琉球新報「新基地に30年期限 辺野古代執行訴訟の和解案判明」=2016年2月3日
 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-215037.html

 名護市辺野古の埋め立て承認を翁長雄志知事が取り消したことの適法性をめぐり、国が県を訴えた代執行訴訟に関し、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が県と国双方に提示した和解案の内容が2日、分かった。同支部は、県が承認取り消しを撤回した上で、国は新基地を30年以内に返還するか、軍民共用にするかを米側と交渉する「根本的な解決案」と、国が代執行訴訟を取り下げて工事を中止した上で、県と協議し、なお折り合いが付かなければ、より強制力の弱い違法確認訴訟で法的正当性を争う「暫定的な解決案」の2案を示した。和解の提案に応じられない場合は、判決期日は4月13日とすることを裁判所が原告の国と被告の県に提示していたことも分かった。
 裁判所が和解の選択肢として、都道府県に米軍基地建設を容認するよう提案するのは初めてとみられる。
 30年期限案については、「辺野古に新基地は造らせない」とする翁長知事の公約に反することから、県が受け入れる可能性は低い。国も、米軍基地に使用期限を付けた提案は受け入れない公算が大きい。

 もともと異例の訴訟として注目されていましたが、事前にマスメディアが報じていた手続きの流れの予測でも、裁判所が和解勧告を行うことは想定されていませんでした。少なくともそういう報道は見当たりませんでした。異例の訴訟が異例の展開を見せていると言っていいと思います。また、司法が行政に和解を勧告、つまり話し合いで決着させるよう勧告し、具体案を示したということは、三権分立の中で、米軍基地をめぐる行政と司法の関係の問題としても注目に値すると思います。米軍機の騒音訴訟で司法が判断を放棄して久しいことと対比すると、この訴訟では司法は当事者であろうとしているようにも思えます。


 この二つの和解案をどう考えればいいのか。沖縄タイムス琉球新報が、そろって4日付の社説で取り上げており、参考になります。
沖縄タイムス「社説[和解案判明]代執行に無理があった」=2016年2月4日
 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=152555

琉球新報「<社説>辺野古和解勧告 問題の本質を見極めよ」=2016年2月4日
 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-215658.html

 両紙とも、辺野古に新基地を建設することを前提にした「根本的な解決案」に対しては「民意を無視して新基地が押し付けられることになる。基地の偏在は微動だにしない。貴重な環境も破壊される。民主主義と地方自治の否定、構造的差別という根源的な問題は放置されるのだ。論外である」(琉球新報)、「『30年』の根拠は何なのか。返還や軍民共用を国が米国と交渉するという。とてものめる案ではない 」(沖縄タイムス)などと批判しています。一方、「暫定的な解決案」に対しては、日本政府が一挙に代執行訴訟を提起したことに裁判所が疑問を持っていることの表れではないかとみています。
 いずれにせよ、今後の展開を注視したいと思います。


※追記:2016年2月5日0時50分
 「『根本解決』和解案は『構造的差別を放置』(琉球新報社説)〜異例の展開、辺野古移設『代執行訴訟』」から改題しました。