「地位協定見直し」「基地の整理縮小」目立つ地方紙・ブロック紙―沖縄の女性遺体遺棄事件の本土紙社説

 沖縄県うるま市で行方不明になっていた20歳の女性が遺体で発見され、元海兵隊員で米軍属の32歳の男が逮捕された事件について、本土(沖縄県外)の新聞各紙も21日以降、社説で取り上げています。米兵や米軍基地関係者による犯罪が繰り返されていること、そのたびに米軍が綱紀粛正を約束してきたものの、効果が疑問視されることを踏まえながら、再発防止を訴える点は各紙とも変わりありません。しかし、沖縄の住民世論の間に強い基地の整理縮小に対しては、論調に違いがあります。地方紙、ブロック紙では、米軍の綱紀粛正を中心にしたこれまでの再発防止策は限界であり、犯罪抑止策として日米地位協定を見直すことや、さらには抜本的な対策として、基地の県外移転を含めて整理縮小を進めることが必要と訴えるものが目立っています。

 全国紙5紙はいずれも21日付で関連の社説を掲載。見出しは以下の通りです。
 ▼朝日新聞「米兵逮捕 基地を減らすしかない」
 ▼毎日新聞「沖縄米軍属逮捕 県民の怒りに向き合え」
 ▼読売新聞「沖縄米軍属逮捕 再発防止へ厳正対応が必要だ」
 ▼日経新聞「米軍絡みの犯罪防止に全力を」
 ▼産経新聞「元米兵の凶行 怒りを悲劇根絶につなげ」
 朝日は見出しにもある通り、沖縄の基地の整理・縮小を前面に出しています。毎日は、米軍絡みの犯罪への抑止効果の観点から、日米地位協定の改定を議論するよう求めています。朝日、毎日は、もはや綱紀の粛正を図るだけでは限界があるとの認識が前提にあることが共通しているようです。
 対して読売は、あくまでも綱紀粛正の問題だととらえています。過去の対策を検証し、その結果を踏まえて効果的な綱紀粛正策を実施しなければならないとし、さらには「事件を普天間飛行場辺野古移設と絡めて政治利用してはなるまい」と主張します。「基地の整理・縮小」という用語も出てきますが、朝日とはニュアンスが異なり、日米両政府間で合意している基地再編のことを指しているように思えます。
 日経も米軍の綱紀粛正のあり方に疑問を投げかけ「米軍内に沖縄は自分たちが戦争で勝ち取った場所という意識はない、といえるだろうか。同じ島で生活する仲間という気持ちがあれば、このような蛮行ができるはずはない」と指摘しています。
 産経は「沖縄は地政学的にも国の守りの要諦であり、米軍の駐留は抑止力として欠かせない。日米同盟にはいささかの揺るぎもあってはならない」としつつ、「事件に対する感情は別の問題である」「日本の国民が、残虐な事件の犠牲者となったのだ。当然の怒りを自制する必要はない。その感情は、悲劇の根絶に向けた取り組みにぶつけたい」としています。具体策としては、やはり綱紀粛正を強める方向になるのでしょう。

 ブロック紙・地方紙ではネット上で内容を読むことができた社説が19紙ありました。ほかに見出しのみ確認できた社説が2紙あります。
 日米地位協定を見直すことや、さらには米軍普天間飛行場名護市辺野古地区への移設問題を含めて、基地の県外移転や整理縮小を進めることが必要と訴えるものが最多でした。沖縄の住民世論に近い内容と言ってもいいと思います。以下の14紙です。
 ▼北海道新聞「沖縄の悲劇再び 基地の集中こそ元凶だ」
 ▼デーリー東北「沖縄の米軍属逮捕 基地の縮小、移設進めよ」
 ▼信濃毎日新聞「元米兵逮捕 沖縄の怒り受け止めよ」
 ▼中日新聞東京新聞「元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に」
 ▼福井新聞「沖縄の米軍属逮捕 基地ある限り事件起きる」
 ▼京都新聞「沖縄米軍属逮捕  もう悲劇を繰り返すな」
 ▼神戸新聞「米軍属逮捕/過大な基地負担が背景に」
 ▼中国新聞「沖縄元米兵逮捕 『綱紀粛正』もはや限界」
 ▼愛媛新聞「沖縄の米軍属逮捕 基地負担の軽減は待ったなしだ」
 ▼徳島新聞「沖縄米軍属逮捕 過重な基地負担が問題だ」
 ▼高知新聞「【米軍属の逮捕】沖縄の悲劇防ぐ具体策を」
 ▼西日本新聞「米軍属逮捕 政府は沖縄とともに怒れ」※22日付
 ▼宮崎日日新聞「沖縄の元米兵逮捕 防止には基地縮小しかない」
 ▼熊本日日新聞「沖縄の米軍属逮捕 抜本対策は基地の縮小だ」※22日付

 以下の3紙は地位協定の見直しを求める内容でした。
 ▼新潟日報「米軍属逮捕 繰り返される沖縄の悲劇」
 ▼山陽新聞「米軍属の犯罪 沖縄で繰り返される悲劇」
 ▼佐賀新聞「沖縄女性殺害 日米地位協定の見直しを」

 以下の2紙も、再発防止の取り組みが必要と説いています。
 ▼北國新聞「沖縄の米軍属逮捕 積み上げた信頼が崩れる」
 ▼山陰中央新報「沖縄の米軍属逮捕/日米で再発防止に取り組め」
 北國新聞は「日米両政府は負担軽減のため、嘉手納基地以南の米軍施設返還や米海兵隊のグアム移転を加速させる必要があろう」と、日米両政府間で合意している基地再編案を進めることが必要と指摘しています。また「事件の背景に米軍の治外法権意識の強さや、事件を起こした兵士の処分の甘さがないか。兵士の犯罪が続く根本的な原因を考えてもらいたい」としており、方向性としては一層の綱紀粛正を求めることになるのでしょうか。

 以下の2紙は見出しのみ確認できました。
 ▼秋田魁新報「沖縄・米軍属逮捕 地元の怒り受け止めよ」
 ▼神奈川新聞「沖縄・米軍属逮捕 同盟の根幹を揺るがす」

 沖縄の基地の整理縮小のためには、代替地が必要になってきます。その問題をどうするのか、今回目にした社説の中には具体的な案を挙げたものはありませんでしたが、本土では、沖縄の米軍基地を本土に引き取ろうとの運動も始まっています。本土の新聞、マスメディアはそうした動きもいっそう報じていくべきだろうと思います。