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「オバマ氏、女性遺棄事件謝罪せず 地位協定改定も否定」(琉球新報)「具体性に欠け心に響かず」(沖縄タイムス社説)

 沖縄県うるま市で4月から行方不明だった20歳の女性が遺体で見つかった事件は、容疑者の元海兵隊員で米軍属の男が19日に逮捕されてから26日で1週間です。
 前日の25日には、伊勢志摩サミットのため来日したオバマ米大統領安倍晋三首相が会談し、この事件に対しては、安倍首相が厳重抗議したと発表されたようですが、沖縄県の翁長雄志知事が求めたオバマ氏との直接会談は実現せず、また日米地位協定の改定も、会談では話し合われなかったようです。ネットで見る限りですが、琉球新報は「オバマ氏、女性遺棄事件謝罪せず」との見出しで、この会談のことを伝えています。

琉球新報オバマ氏、女性遺棄事件謝罪せず 地位協定改定も否定」
 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-286140.html

三重県で仲村良太】安倍晋三首相は25日夜、オバマ米大統領三重県志摩市で会談し、共同記者会見に臨んだ。沖縄県内で起きた米軍属による女性死体遺棄事件についてオバマ氏は被害女性に対する遺憾の意を表したが、謝罪はしなかった。「再発防止にできることは全てやる」と述べたが、具体的な対策は示さなかった。日米地位協定改定について「日本の司法制度の下で正義の追及を阻むものではない」と述べ、改定の意思がないことを示した。安倍首相は「地位協定は一つ一つの問題を改善し、結果を積み上げる」と述べ、大統領に地位協定改定は求めなかった。翁長雄志知事が求めたオバマ氏との面談にも触れなかった。

沖縄タイムス「翁長知事、日米首脳会談に失望感 『中身まったく無い』」
 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=169957

 翁長雄志知事は25日夜、日米首脳会談で日米地位協定の改定に言及がなかったことに「大変、残念だ」と述べた。両首脳の共同記者会見には「中身がまったく無い。運用改善では限界があることは明らかだ」と強い失望感を示した。沖縄県庁で記者団の質問に答えた。


 この日は日中、事件の容疑者の職場があるという米軍嘉手納基地のゲート前で緊急県民集会が開かれ、主催者発表で約4千人が集まりました。
琉球新報「4000人、基地なき島訴え 嘉手納ゲート県民集会」
 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-286139.html

 米軍属女性死体遺棄事件に抗議する「元米兵による残虐な蛮行糾弾! 犠牲者を追悼し米軍の撤退を求める緊急県民集会」(辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議主催)が25日、北谷町の米空軍嘉手納基地第1ゲート(通称・砂辺ゲート)前で開かれた。平日の日中にもかかわらず約4千人(主催者発表)が参加し、沖縄からの基地撤去などを訴えた。
 集会の冒頭、犠牲者の冥福を祈って参加者全員で黙とうをささげた。参加者は(1)米軍基地の大幅な整理縮小(2)日米地位協定の抜本的な改定(3)普天間飛行場の閉鎖・撤去(4)オスプレイ配備の撤回(5)辺野古新基地建設断念−を日米両政府へ求める抗議決議を拍手で採択した。

 事件に関連した沖縄2紙の26日付の社説は次の通りです。一部を引用します。
【5月26日】
沖縄タイムス「[日米首脳会談]具体性欠け心に響かず」
 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=169958

 会談後の共同記者会見では、翁長雄志知事が求めた日米地位協定の抜本的な見直しについては両首脳とも、具体的回答を避け、否定的な姿勢を示した。
 安倍首相とオバマ氏は今回の凶悪事件の発生について「強い憤り」(安倍首相)と「非常にショック」(オバマ氏)を受けていることを明らかにしたが、共同記者会見では最も重要な点が触れられていなかった。
 両首脳は今回の事件のことは語っているが、このような凶悪犯罪が沖縄戦の最中から現在まで繰り返し繰り返し起きている事実に対して、どれだけ深刻に感じているのか、会見からはまったく伝わってこなかった。
 米軍関係者による凶悪な性犯罪が発生するたびに、沖縄県民は日米両政府から同じような言葉を何度も聞かされてきた。具体的な政策が示されない限り、沖縄の人々の怒りや悲しみ、両政府に対する不信感が解消されることはないだろう。沖縄との溝は深まるばかりである。

琉球新報「県議選あす告示 問われる米軍基地の存在」
 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-286160.html

 沖縄の将来を占う第12回県議会議員選挙が27日告示される。
 今回の県議選は、元米海兵隊員で米軍属の女性死体遺棄事件によって米軍の存在そのものが主要な争点に浮上した。米軍普天間飛行場の返還、名護市辺野古への新基地建設の是非、日米地位協定の改定など、施政権返還から44年たっても変わらない基地問題に対する姿勢が鋭く問われる。
 今回は、13選挙区(定数48)に70人が立候補を予定している。前回より7人多い。既に各選挙区で激しい前哨戦が展開されている。立候補予定者には、有権者が政策を十分理解し、投票できるよう、明確に主張してもらいたい。
 翁長雄志知事が就任してから1年半の県政運営が問われる選挙でもある。
 翁長知事は仲井真弘多前知事による辺野古埋め立て承認を検証した結果、2015年10月に承認を取り消した。それを受け国は代執行訴訟を起こし、3月に和解が成立した。政府にとって選挙結果は、県民意識を測る材料となる。県政与党が安定多数を維持するかどうか注目が集まる。


 26日付の東京発行各紙朝刊の1面をツイートしてみました。


 各紙とも、オバマ大統領が「遺憾」の意を表明したことを見出しに取っている中で、東京新聞の「地位協定改定求めず」の見出しが目を引きます。嘉手納基地前の緊急集会を1面に入れたのも、同紙だけです。