「改憲」勢力「3分の2」確保の勢い―読売は「改憲」なし:参院選終盤情勢・在京紙の報道の記録 ※追記・読売の6月26日付社説

 7月5日から7日にかけて、東京発行の新聞6紙が参院選の終盤情勢を相次いで報じました。各紙ともおおむね、世論調査に独自の取材結果を加味して情勢を読む手法です。5日付で産経新聞、6日付朝刊で毎日、読売、日経、東京の各紙、7日付朝刊で朝日新聞の順です。毎日新聞の1面本記は共同通信の配信記事でした。


 各紙の1面トップ記事(本記)の主な見出しを書きとめておきます。
 【朝日】改憲4党 2/3に迫る/自民 単独過半数も視野/野党統一候補 接戦続く
 【毎日】改憲勢力2/3の勢い/野党共闘伸びず
 【読売】与党 改選過半数へ堅調/民進、苦戦続く/1人区 12選挙区で接戦
 【日経】改憲勢力3分の2に迫る/自民、単独過半数も視野/民進、巻き返し苦戦
 【産経】改憲勢力「3分の2」勢い/自民は単独過半数
 【東京】改憲4党 3分の2の可能性/自民、単独過半数も/投票先未定 なお4割


 6紙のうち5紙が主見出しに「改憲勢力」(毎日、日経、産経)「改憲4党」(朝日、東京)が、憲法改正の発議に必要な総議席数の3分の2を獲得しそうだ、との見通しを打ち出しています。「改憲」自体への各紙の評価はともかくとして、今回の参院選の最大の焦点は「改憲勢力」「改憲4党」が「3分の2」を確保するのかどうかにあると見ており、それはどうやら達成されそうな情勢にあるとの見方を伝えています。
 その中で際立って目立つのが、「改憲」を見出しに取っていない読売新聞です。読売は、6月24日の序盤情勢の記事でも同様に「改憲」を見出しに取っていませんでした。


【追記】2016年7月7日23時10分
 憲法改正にはまず、衆参両院の各議席の3分の2以上の賛成で発議が必要です。その後に国民投票に進みます。既に衆議院は自民・公明両党で「3分の2」を満たしており、今回の参院選で、与党のほか改憲を志向するおおさか維新の会などや無所属議員を合わせて議席の3分の2に達すれば、改憲の発議が可能になる状況が出現します。読売新聞以外の各紙が「3分の2」に注目するのはこのためです。
 読売新聞は長らく憲法改正を社論に掲げています。改憲を悲願とする安倍晋三氏が首相になってからは、いよいよその主張にも勢いが出てきたように見えていました。なのになぜ「改憲」や「3分の2」に重きを置かないのかは、参院選公示後の6月26日付の社説を読めば分かるのではないかと思います。前半部分を引用します。
※読売新聞:社説「憲法改正 超党派の合意形成を追求せよ」2016年6月26日
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20160625-OYT1T50136.html

 憲法は70年近く一度も改正されていない。改憲勢力参院の3分の2を占めれば、改正が一気に進むかのような簡単な話では、決してない。
 まずは具体的な改正項目の議論を冷静に深め、幅広い政党の合意形成を目指すことが肝要だ。
 参院選で、憲法改正が重要な論点の一つになっている。だが、今の議論は浅薄で、物足りない。
 自民、公明の与党は争点化を避けている。民進、共産など野党4党は、一方的に「改憲勢力の3分の2を阻止」と唱え、「争点隠し」などと与党を批判するだけだ。
 安倍首相は「条文をどう変えるかを決めるのは国民投票だ」と述べ、具体的な改正項目の議論は選挙になじまないとの考えを示した。
 公明党の山口代表も、「国民に選択肢を示す争点としては、まだ成熟していない」と指摘する。
 自民党公約は「各党との連携を図り、あわせて国民の合意形成に努め、憲法改正を目指す」と素っ気なく、公明党は言及がない。
 これだけ注目されている以上、自民党は、なぜ改正すべきか、きちんと説明するのが筋だろう。

 書き出しで「改憲勢力参院の3分の2を占めれば、改正が一気に進むかのような簡単な話では、決してない」と言い切っているように、仮に参院改憲勢力が「3分の2」に到達したところで、改憲が政治スケジュールに乗るわけではないし、改憲に必要なのは民進党を含めて「幅広い政党の合意形成」だというのが読売新聞の考えのようです。この参院選で「3分の2」で騒ぐことに意味はない、ということでしょう。これはこれで冷静な分析と主張のように感じます。
 一方で興味深いのは、その読売が自民党に対し「これだけ注目されている以上、自民党は、なぜ改正すべきか、きちんと説明するのが筋だろう」と、選挙戦の論戦の中で主張を明確にするよう求めている点です。
 安倍首相が選挙戦で改憲に触れないことに対しては、「争点隠し」との批判があります。その立場から危惧されるのは、改憲勢力が「3分の2」を獲得したとたんに、あたかも白紙委任を受けたかのように安倍首相が改憲手続きに乗り出す恐れはないのか、という点です。そうした立場からは、安倍首相は参院選の論戦で9条を始め憲法改正について隠すことなく語れ、ということになります。わたしの個人的な考えも同様です。
結局のところ、改憲へのスタンスは違っていても、安倍首相に憲法を語るように求める点は共通していることが興味深く感じられました。
 参院選はまもなく10日の投開票を迎えます。開票結果の報道でもおそらく読売新聞は「改憲」「3分の2」で大きく見出しを組んでくるようなことはないように思います。