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続いてほしいとは思われていない安倍政権―総裁任期延長「必要ない」が過半数

 安倍晋三首相が8月3日に行った内閣改造を受けて、毎日新聞、読売新聞、共同通信がそれぞれ3―4日の2日間実施した電話世論調査の結果が報じられています。内閣支持率は55―47%。内閣改造前の調査と比べると、毎日3ポイント増、読売2ポイント増、共同0・1ポイント減で、大きな変動はなく、おおむね横ばいと言っていいと思います。
 通例では内閣改造は、閣僚の顔ぶれに斬新さを出して、支持率を上げて政権の求心力を高めるのが目的ですが、毎日新聞の調査では、安倍内閣に対する期待が高まったかを尋ねた質問に対し「変わらない」が59%を占め、「期待できない」が23%、「期待が高まった」は10%でした。共同通信の調査でも、内閣改造自民党役員人事を評価するか尋ねたところ、「評価する」41・3%、「評価しない」34・2%でした。横ばいの支持率と合わせて考えると、さほどの効果はなかったようです。小池百合子氏に次ぐ2人目の防衛大臣として稲田朋美氏を起用したことについても、読売、共同の調査では評価を尋ねましたが、共に「評価しない」が「評価する」を上回りました。
 興味深いのは、自民党内で安倍氏の総裁任期の延長論が出ていることを、世論の過半数は消極的にとらえていることです。毎日新聞の調査では「延長した方がよい」36%に対して、「延長する必要はない」は53%です。共同通信の調査でも「延長した方がいい」37・8%に対し「延長しない方がいい」52・5%と、ほぼ同じ結果でした。
 高い水準で安定した支持率を維持しているようでも、国民の過半数からは決して長く続いてほしいとは思われていないことが明らかになったと言えます。安倍氏に代わる首相候補が見当たらないこと、政権交代の受け皿になる野党がないことを反映した民意なのかもしれません。そういう状況ですから、高支持率を曲解して、あたかも白紙委任を受けたかのように、選挙中は口にしなかった憲法改正など、安倍氏個人の願望の色彩が強く、世論が割れているような政治課題をしゃにむに押し進めるようなことがあってはならないと思います。
 今回、自民党役員人事では、不慮の自転車事故に遭った谷垣禎一氏に代わって、党幹事長には二階俊博氏が就きました。二階氏は総裁任期の延長を容認する考えのようです。安倍氏が任期中の憲法改正という願望を果たすことも狙って、二階氏を幹事長に起用したのだとしたら、政治の私物化に等しいとの批判は免れないと思います。
 ちなみに、安倍晋三政権の支持率は、安保法制の採決時など下がったときでも30%台の半ばを維持していました。わたしは、この層を、何があっても安倍政権を支持する岩盤支持層ではないかと見てきました。この数値は、今回の任期延長支持とおおむね一致しています。仮説ですが、安倍氏の任期延長を支持しているのは、安倍氏の岩盤支持層だけで、ほかの人たちは一時的に支持することはあっても、決して安倍政治が続いてほしいとは思っていないのかもしれません。


 以下に、備忘を兼ねて、主な調査結果を書きとめておきます。
内閣支持率】※()内は前回比
 ・毎日:支持47%(3P増)、不支持34%(1P減)、関心がない16%(1P減)
 ・読売:支持55%(2P増)、不支持32%(2P減)
 ・共同:支持52・9%(0・1P減)、不支持30・9%(3・8P減)

内閣改造の評価】
 ・毎日:「期待が高まった」10%、「変わらない」59%、「期待できない」23%
 ・共同:「評価する」41・3%、「評価しない」34・2%
  ※共同の設問は自民党役員人事も対象

稲田朋美氏の防衛相起用の評価】
 ・読売:「評価する」32%、「評価しない」41%
 ・共同:「評価する」32・1%、「評価しない」43・0%

二階俊博氏の自民党幹事長起用の評価】
 ・毎日:「評価する」35%、「評価しない」41%
 ・読売:「評価する」41%、「評価しない」30%
 ・共同:「期待する」43・2%、「期待しない」40・2%
  ※毎日は設問で、自転車事故で入院している谷垣禎一氏の後任であることを説明

安倍氏自民党総裁任期延長論に対して】
 ・毎日:「延長した方がよい」36%、「延長する必要はない」53%
 ・共同:「延長した方がいい」37・8%、「延長しない方がいい」52・5%

【国会で憲法改正の議論を進めることに】
 ・毎日:「賛成」44%、「反対」40%

小池百合子東京都知事に】
 ・毎日:「期待する」64%、「期待しない」15%
 ・読売:「期待する」76%、「期待しない」19%