在京紙で報道されない沖縄の記者排除の政府答弁書

 沖縄県の米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設を巡り、工事作業に抗議する市民らを取材していた沖縄タイムス琉球新報の記者が、警察の機動隊によって市民らと共に現場から強制的に排除され、取材ができなかった事態が起こりました。このことを巡って、仲里利信衆院議員(沖縄4区選出、無所属)が「報道の自由を侵害する極めて悪質な行為」などとして日本政府の見解をただす質問主意書を提出したのに対し、政府は10月11日、問題はなかったとする答弁書閣議決定しました。
 以下は、答弁書閣議決定を伝える琉球新報の記事です。

琉球新報報道の自由侵害否定 記者排除で政府答弁書『警備方針・内容で判断』」=2016年10月12日
 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-374023.html

 【東京】政府は11日、米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設を巡り、8月に取材中の本紙記者ら2人を機動隊が強制排除したことに関し「報道の自由は十分に尊重されている」などとして、問題はなかったとする答弁書閣議決定した。仲里利信衆院議員(無所属)の質問主意書に答えた。
 仲里氏は質問主意書で、8月20日に本紙記者らが排除されたことについて「民主主義の根幹を支える報道の自由を侵害する極めて悪質な行為であり、また基本的人権を無視する行為として断じて許すことができない」と問題視。記者の「排除」を判断したのは沖縄県警なのか、報道後の対応の変化などについて質問した。
 記者への警備対応は「沖縄県警が沖縄県警における米軍基地移設工事等に伴う警備の方針や内容を判断している」と説明。報道の自由を侵害するとの指摘には「当たらない」と否定した。現場での取材に対しては「報道の自由は十分に尊重されている」とした。


※写真・琉球新報の12日付第2社会面

 琉球新報は12日付の社説でも取り上げ、「報道の自由、国民の知る権利の侵害を容認する閣議決定であり、強く抗議し、撤回を求める」「報道記者の強制排除は報道への弾圧にほかならない。それは正しい情報に基づき判断する民主主義をも損なう。不当な政府答弁書は容認できない」と、日本政府を厳しく批判しています。
琉球新報:社説「記者排除を正当化 報道の弾圧容認できない」=2016年10月12日
 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-373762.html

 民主主義社会では「報道の自由」は最大限、尊重されるべきです。私たちの社会で何が起きているかが報道によって広く知られることで、私たちは考え、議論し、判断することができるからです。その判断を元に、主権者として投票権を行使することになります。報道機関に自由な取材と自由な報道が保障されていなければ、民主主義は危うくなります。沖縄タイムス琉球新報の記者が排除されたことは、報道の自由の侵害であり、仮に百歩譲って、現場の機動隊員らに何らかの錯誤(例えば記者とは思わなかった)があったとしても、結果として両紙の記者が取材できなかったことに変わりはなく、問題はなかったで済ませていい話ではありません。
 報道の自由、国民の知る権利の侵害を容認したと批判されても仕方がない日本政府のこの姿勢は、排除の対象になった記者2人が、沖縄への基地の過剰集中を巡って日本政府に批判的な論調を掲載する沖縄タイムス琉球新報に所属していることと、果たして無縁でしょうか。

 もう一つ、軽視できないと思うのは、この答弁書閣議決定について、東京発行の新聞各紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の紙面には、11日当日の夕刊、翌12日付の朝刊とも記事が見当たらなかったことです。
 これまでも再三、このブログで書いてきていることですが、沖縄への基地の集中は、沖縄という一地域の問題ではなく、日本国の安全保障政策の問題です。そして、幾多の選挙で沖縄の民意は明らかになっているにもかかわらず、現実の政治はそのようには進みません。そのような状況は沖縄以外にないのだとすれば、沖縄に対する差別としか言いようがなく、結果的にであれ、その差別を許しているのは日本国の主権者である日本国民ということになります。沖縄がこのままの状況に置かれ続けていいのかを考えるためには、沖縄で何が起きているかが広く沖縄以外の日本社会(日本本土)で知られる必要があると私は考えています。今回の日本政府の答弁書も、元になっている沖縄での記者の拘束排除も含めて、やはり日本本土で広く知られて然るべき問題だと思います。まして、マスメディアにとっては、直接的に自らの「報道の自由」にもかかわることです。
 少し調べた範囲では、共同通信はこの答弁書閣議決定を記事化し、毎日新聞がwebでは共同稿を使用したり、産経新聞もwebでは短い記事を掲載したりはしていますが、東京発行の新聞紙面で記事が見当たらないことは残念です。