「トランプショック」在京紙の紙面

 米国大統領選挙は日本時間の9日、優勢と伝えられていた民主党ヒラリー・クリントン氏を、共和党ドナルド・トランプ氏が破る結果となりました。下馬評が覆ったこと、トランプ氏が過激で差別的な発言を繰り返していること、米国第一の保護主義的な政策を表明していること等々から、日本でもマスメディアの報道には「トランプ・ショック」との表現が目に付きます。
 私の個人的な関心は、まず第一に、事前の米メディアの予測と実際の結果の乖(かい)離です。トランプ氏支持でありながら、世論調査にもそのことを明かさなかった「隠れトランプ氏支持」の存在などが報道では指摘されているようですが、そうであるなら世論調査そのものを巡る問題が生じるように思います。読売新聞が10日付朝刊3面に掲載した「世論調査 手法に限界」の記事は、1970年代には世論調査に応じる人の割合が8割近かったとされる一方で、近年は8%にまで下落していることなどを伝えています。日本の新聞各紙が実施している世論調査の回答率と比べて、驚かずにはいられません。世論調査の問題点も含めて、予測と現実の乖離について、引き続き深堀りした取材と報道を期待したいと思います。
 2点目は在日米軍と基地の今後です。トランプ氏はこれまで、日米安保条約在日米軍について、日本は安保にタダ乗りしている、もっと負担を増やさなければならない、などの趣旨の発言をしています。日本政府との協議が不調に終わった場合、在日米軍撤退ということが本当に起こりうるのかどうか。沖縄への米軍基地の過剰集中の問題と相まって、今後の経緯を注視していこうと思います。

 東京発行の新聞各紙10日付朝刊は6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)とも1面トップ。総合面から政治、国際、経済、社会の各面まで、各紙とも膨大な記事を掲載しました。少し日が経ちましたが、備忘を兼ねて、各紙の1面、総合面(2、3面)の主な記事の見出しを書きとめておきます(いずれも東京本社発行の最終版です)。

朝日新聞
・1面
トップ「米大統領にトランプ氏」「既成政治批判 支持集める」「TPP・日米安保 不透明に」「クリントン氏破る」
「内向きな超大国のリスク」山脇岳志・アメリカ総局長
東証終値919円安」
・2面
「権力へ怒り 異端の乱」「政治に疎外感 白人『破壊を』」/「拒絶…戸惑うワシントン」/※ワッペン「トランプショック」
「産業衰退『ラストベルト』へ攻勢」/「『隠れトランプ票』逆転生む」/「『変化臨む』最多 CNN出口調査
・3面
「世界秩序 どこへ」「動揺広がる外交・経済」/「中ロ警戒と期待」
「TPP発効 困難に」「アベノミクスに痛手」/「貿易の停滞 懸念」
「『日米同盟揺るがぬ』」「安倍首相 関係構築が課題」
・社説「トランプ氏の勝利 危機に立つ米国の価値観」/世界を覆う動揺/政党政治への不信/米国の役割の自覚を


毎日新聞
・1面
トップ「米大統領 トランプ氏」「過激言動 番狂わせ」「クリントン氏破る」「政治未経験『分断の傷癒す』」/「オバマ氏と会談へ」
「反既成政治 世界のうねり」会川晴之・北米総局長
「円一時急騰 東証919円安」
・2面
「日本 同盟堅持図る」「首相『絆』を強調」「補佐官14日に派遣」
「白人中間層の反乱」「変化求め『賭け』」※企画「トランプショック 異端の大統領」1
・3面
クローズアップ2016「米国 内向き強める」「オバマ外交 見直し」/「保護主義 市場が懸念」/「温暖化対策 後退も」
「トランプ氏ってどんな人?」「実はエリート ホテル買収で有名に」※質問なるほドリ
・社説「米大統領にトランプ氏 世界の漂流を懸念する」/超大国の歴史的な転換/米国の民主主義どこへ

 私の個人的な関心の一つは、なぜ事前のクリントン氏優勢の予想が外れたかです。この点に関しては、読売新聞が3面(総合面)の「スキャナー」の枠に、「世論調査 手法に限界」との興味深い記事を載せています。それによると、世論調査で用いることが多い自動音声のコンピューター通話は、携帯電話には法律上、活用できないとのこと。


▼読売新聞
・1面
トップ「米大統領 トランプ氏」「既存政治批判し逆転」「公職・軍経験なし」「クリントン氏破る」「各国 混乱を懸念」
大衆迎合で大国導けぬ」飯塚恵子・国際部長
「株急落900円安」
・2面
「日本 同盟維持確認へ」「首相、早期訪米の意向」/「TPP発効 厳しく」
「外交姿勢 世界が警戒」「露、関係改善に前向き」
「手腕は未知数」「政治の素人・不動産王・暴言」トランプ氏こんな人
・3面
スキャナー「『白人労働者』票固め」「『隠れ支持者』も動かす」/「世論調査 手法に限界」
・社説「米大統領選 トランプ氏勝利の衝撃広がる/冷静に日米同盟を再構築したい」/亀裂を修復できるか/「予測不能」に備えよ


日経新聞
・1面
トップ「米大統領 トランプ氏」「『最強の経済つくる』」「大接戦制し勝利宣言」「米国再生、異端に託す」/「『日米同盟を強固に』首相」/「米議会ねじれ解消 上下院とも共和」
「社会分断、危うい大衆迎合」小竹洋之・ワシントン支局長※「トランプショック」1
日経平均919円安 NY株、売買交錯」
・2面
「現状の拒絶 奔流に」「クリントン氏、好感度低く」「女性・若者票伸びず」「少数派の投票率も低調」
「中ロ、関係改善期待」「韓国、パイプづくり急ぐ」
・3面
「内向き政策 針路見えず」「経済・外交 高まる不確実性」「TPP発効難しく」/「日米同盟に転機」「対ロ交渉 影響も」
「大統領支える閣僚候補は…」「共和主流派とは距離/家族の意見重視の予想も」
きょうのことば「米大統領 任期4年、2期まで可能」
・社説「米社会の亀裂映すトランプ氏選出」/懸念される保護主義化/駐留負担増の検討必要


産経新聞
・1面
トップ「米大統領 トランプ氏」「大接戦 クリントン氏破る」「共和 8年ぶり政権奪取」「上下両院選も制す」
「『未知との遭遇』国際社会動揺」※企画「トランプショック」上
「トランプ大統領で、いいじゃないか」乾正人・東京本社編集局長
東証、一時1000円下げ 円急騰101円台」
・2面
保護主義に警戒感」「安倍政権 対米外交見直し」「TPP瓦解も」
「孤立指向『国際秩序を解体』」※1面「トランプショック」続き
・3面
「体制不満 異端に期待」「暴言=正直 欠点も魅力」
クリントン氏 旧弊の象徴」「華麗な経歴、実績…逆効果」
「保守の怒り、国内外で変革の波」/理念なく貧しい選挙戦/日本のあり方問われる/古森義久・ワシントン駐在客員特派員
・社説(「主張」)「トランプ氏の勝利 『自由の国』であり続けよ/新同盟関係へ日本は覚悟を」/価値観共有への努力を/経済変調に警戒怠れぬ


東京新聞
・1面
トップ「米大統領 トランプ氏」「白人労働者取り込む」「『忘れられた国民はもはやいなくなる』」
「日米関係揺るがす『自国優先』」久留信一・外報部長
・2面
核心「日米安保は予測不能」「『在日米軍撤退も』『駐留経費負担増を』」「過去の発言 政府不安視」
「中低所得白人の受け皿」「衰退した工業地帯で得票」/「予想覆した『隠れ支持者』」
「最高齢で就任、議員・首長経験なし」トランプ氏どんな人/「『トランプ氏は数字に強い人』面識ある公明・岡本氏」
・3面
「世界覆う『保護主義』」「経済 先行き見通せず」/「日本政府『誰がキーマン?』」「パイプ細く 関係構築急ぐ」
クリントン氏 敗北を宣言へ」「陣営広がる落胆」
「TPP 与党きょう採決の構え」「トランプ氏『脱退』でも」
・社説「トランプのアメリカ(上) 民衆の悲憤を聞け」/現状打破への期待/取り残された人々/夢追える社会実現を