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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

沖縄への本土紙のまなざしと沖縄の新聞の報道〜備忘:本土紙の社説、琉球新報の1面紙面

 前回の記事(「『皆で心を一つにして子や孫のため、どうしても負けてはならない』〜翁長知事の覚悟は日本本土に伝わっているか」)からの続きになります。
 12月13日夜に沖縄県名護市で、米軍普天間飛行場所属の輸送機オスプレイが墜ちて大破した事故の前後から、22日に米軍北部訓練場の一部返還と、オスプレイ事故の抗議集会に至るまで、大きな出来事が立て続けに起きました。
 この間、沖縄県外(日本本土)の新聞はどのような姿勢を示してきたのか、全国紙5紙(朝日、毎日、読売、日経、産経)と地方紙・ブロック紙の社説の見出しを追ってみました。地方紙・ブロック紙はネットで社説を公開している新聞が対象ですが、新聞社によっては公開対象が一定期間内のためチェック漏れのものもあります。また、見出しのみで本文は非公開の新聞もあります。地方紙のすべてを網羅したものではありませんが、大まかな傾向はうかがえるのではないかと思います。
 辺野古沖の埋め立て承認を巡る日本政府と沖縄県の訴訟で、沖縄県の敗訴を言い渡した20日の最高裁判決については、全国紙5紙はそろって21日付で取り上げ、地方紙の社説も目立ちました。全国紙では読売が、「妥当な判断」として判決を支持した上で、沖縄県の翁長雄志知事に対して批判的な論調を出し、見出しにも反映させているのが目立ちました。
読売は同じ社説の中で、オスプレイの事故をめぐって「オスプレイは米軍の抑止力維持に欠かせず、機体が事故原因でない以上、再開はやむを得まい。ただし、米軍は再発防止策の徹底や情報公開に努めるべきだ」と飛行再開を容認しました。これに対して毎日は20日付で飛行再開を「納得できない」と批判し、容認した日本政府も批判しています。朝日も20日付で、日本政府を批判しました。
 最高裁判決に対しては、朝日は21日付で「12ページの判決全文から浮かびあがるのは、民主主義の理念と地方自治の精神をないがしろにした司法の姿だ」と、かなり厳しい表現で最高裁を批判しました。毎日は判決の是非には明確には触れていません。
 地方紙・ブロック紙は、とりわけオスプレイの事故と飛行再開、それを容認した日本政府に対しての批判が目立ちました。


 以下に、チェックできた社説の見出しを、備忘を兼ねて書きとめておきます。

▼全国紙
朝日新聞
15日:オスプレイ大破 懸念が現実になった
20日:オスプレイ再開 県民より米軍なのか
21日:辺野古訴訟 民意を封じ込める判決

毎日新聞
14日:辺野古訴訟 疑問残る最高裁の姿勢
16日:オスプレイ大破 住民を危険にさらすな
20日:オスプレイ再開 政府はなぜ認めたのか
21日:辺野古で県敗訴 政治的な解決に努力を

・読売新聞
18日:オスプレイ事故 米軍は再発防止策を徹底せよ
21日:辺野古判決確定 翁長氏は徹底抗戦続けるのか
25日:北部訓練場返還 沖縄負担減を現実的に進めよ

日経新聞
21日:円滑な日米同盟には沖縄の理解が必要だ

産経新聞
21日:「辺野古」判決 知事は和解条項の尊重を


▼地方紙・ブロック紙
【14日】
熊本日日新聞辺野古訴訟判決へ 不毛な争い避ける努力を」
南日本新聞「[沖縄県敗訴へ] 『移設』解決にならない」

【15日】
北海道新聞オスプレイ事故 やはり起きてしまった」
福井新聞オスプレイ不時着、大破 犠牲リスクさらに高まる」
神戸新聞オスプレイ大破/沖縄県民の不安が現実に」
山陽新聞オスプレイ事故 安全への不安が現実に」
徳島新聞オスプレイ不時着 これで安全と言えるのか」
高知新聞「【オスプレイ事故】国は毅然とした対応取れ」
西日本新聞オスプレイ事故 これで安全といえるのか」
佐賀新聞オスプレイ事故 徹底的な原因究明求めよ」
熊本日日新聞オスプレイ事故 懸念拭えないなら停止だ」
南日本新聞「[オスプレイ大破] 総点検まで運用停止を」

【16日】
山梨日日新聞「[オスプレイ 沖縄で事故]安全性に責任持てるのか」
北日本新聞「オスプレイ事故/安全確保と情報公開を」
京都新聞オスプレイ事故  国内配備を見直す時だ」
中国新聞オスプレイ大破 地元沖縄の懸念、現実に」
宮崎日日新聞オスプレイ事故 徹底した原因究明と説明を」

【20日】
北海道新聞オスプレイ再開 不安置き去りのままか」
・デーリー東北「オスプレイ事故 飛行再開は許されない」
・神奈川新聞「オスプレイ飛行再開 米軍追従姿勢を改めよ」
信濃毎日新聞オスプレイ再開 なぜこれで容認なのか」
中日新聞東京新聞オスプレイ 飛行再開、理解できぬ」
徳島新聞オスプレイ再飛行 沖縄の声が聞こえないか」
南日本新聞「[オスプレイ再開] 住民の不安は二の次か」

【21日】
北海道新聞「『辺野古』県敗訴 最高裁の姿勢問われる」
河北新報辺野古訴訟 沖縄県敗訴/『北風』では解決が遠のく」
東奥日報「政府は事態打開へ動け/辺野古訴訟 県敗訴確定」
岩手日報辺野古最高裁判決 法律論で解決できるか」
山梨日日新聞「[辺野古訴訟 国勝訴]米追随やめ、沖縄と向き合え」
新潟日報沖縄県敗訴確定 工事再開より話し合いだ」
中日新聞東京新聞辺野古判決 沖縄の声を聞かぬとは」
神戸新聞辺野古判決/沖縄の声は届かないのか」
中国新聞「『辺野古最高裁判決 地方の意思は度外視か」
愛媛新聞辺野古最高裁判決 国は沖縄と真摯に対話を重ねよ」
佐賀新聞「沖縄の米軍基地訴訟 県民の思い、再び無視された」
熊本日日新聞辺野古最高裁判決 沖縄の声は黙殺されるのか」

秋田魁新報オスプレイ再開 住民の安全置き去りに」
北日本新聞「オスプレイ飛行再開/国民の安全置き去りに」
京都新聞「沖縄と基地  県民の安全を誰が守る」
西日本新聞オスプレイ あきれる政府の再開容認」

【22日】
山陽新聞「沖縄の基地問題 事態打開へ対話が必要だ」
徳島新聞辺野古最高裁判決 司法の限界が見えてきた 」
高知新聞「【辺野古訴訟判決】誠実に対話し局面打開を」
西日本新聞「『辺野古』国勝訴 司法判断でも解決しない」
宮崎日日新聞辺野古沖縄敗訴 国は打開へ誠実に協議せよ」

【24日】
信濃毎日新聞「米訓練場返還 強いられる犠牲大きく」
南日本新聞「[北部訓練場返還] 沖縄と政府の溝鮮明に」


 この間に、沖縄の新聞は一連のニュースをどのように報じてきたのかの一例として、自宅で郵送で購読している琉球新報の1面紙面の見出しを拾ってみました。

・13日付 ※12日の出来事
辺野古 県敗訴へ/最高裁 弁論開かず/20日判決 国、年明け工事再開か」
「『移設阻止』貫く/知事、権限行使を強調」
「返還式典は欠席/国姿勢『容認できぬ』」
・14日付
オスプレイ墜落/津堅沖、訓練中か/乗員5人、2人けが」
「埋め立て要件を審理/辺野古訴訟 国、交際判決解釈修正も」
・15日付
オスプレイ撤収要求/知事『返還式中止を』/米軍、飛行を一時停止/米軍説明 給油中プロペラ損傷」
「『県民は感謝すべきだ』/四軍調整官、県抗議に反論」
・16日付
「知事『欠陥機 撤回を』/国、返還式の中止拒否/辺野古移設は『最優先』」
「米軍単独で規制線/現場近くの浜 日米指針を逸脱」
・17日付
オスプレイ週明け飛行/米、政府に伝達/19日にも 伊江島から普天間へ」
「防護服で機体解体/墜落『証拠』回収/海保捜査困難に」
・18日付
「『飛行再開 許さず』/オスプレイ墜落 抗議集会に900人」
「識者『海兵隊撤退を』本紙座談会」
・19日付 ※休刊
・20日付
オスプレイ飛行再開/墜落6日後、県民反発/米軍、県に直前通告」
「『米軍優先』『言語道断』」「知事、政府の姿勢批判」
・21日付
「年内に工事再開/辺野古訴訟 県敗訴/最高裁『唯一の策』は認めず」
「知事、県民集会参加へ/22日、菅氏らとの面会拒む」
・22日付
「嘉手納で重大事故/19日 クラスA、哨戒機破損/米軍、地元に『軽微』」
「久志13区長『配備撤回を』/オスプレイ墜落 辺野古、豊原も一致」
・23日付
オスプレイ撤去を/『新基地造らせぬ』/名護抗議集会 4200人、知事と決意」
「北部訓練場過半を返還/米軍施設 依然7割集中」