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防衛相の資質問われる「自衛隊としてお願い」発言

 稲田朋美防衛相が6月27日夜、東京都議選自民党候補の集会で応援演説に立ち「防衛省自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と発言しました。自衛隊員の政治的行為の制限を定めた自衛隊法を持ち出すまでもなく、自衛隊防衛省自民党の候補支援のために政治利用したに等しい発言だと、わたしは受け止めています。 

※47news=共同通信「稲田氏『自衛隊としてお願い』都議選で、野党『私物化』批判」

 https://this.kiji.is/252404163074901495 

 稲田朋美防衛相は27日、東京都板橋区で開かれた都議選の集会で「防衛省自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と訴えた。自衛隊を政治利用するもので、行政の中立性を逸脱したと受け取られる可能性がある。野党は「行政の完全な私物化だ」と批判。稲田氏は同日深夜、「誤解を招きかねず、撤回したい」と述べた。

(中略)

 自衛隊法は、隊員の政治的行為を制限している。稲田氏の発言は、防衛省自衛隊が組織を挙げて候補者を支援すると主張したようなもので、法に抵触する恐れもある。 

  報道によると、稲田氏は27日夜のうちに発言を撤回したようですが「誤解を招きかねない」というのが理由のようであり、発言の意図に問題はなかったと考えているようにも感じられます。だとすれば、現職の防衛相が選挙応援で「防衛省自衛隊として」と口にすることの意味を理解しているとは言い難く、防衛相としての資質が問われても仕方がないように思います。

 稲田氏には南スーダンPKO派遣部隊の「日報」問題を巡って、省内を掌握できていないとの批判があり、森友学園問題でも、学園の代理人弁護士として訴訟に出廷したことはないと国会で言明した直後に、出廷したことを示す裁判所の記録が存在することを報じられ、謝罪したこともありました。今回の「自衛隊としてお願い」発言に対しては、野党は辞職を求めており、28日以降の展開に注目したいと思います。

 

 「自衛隊としてお願い」発言は東京発行の新聞各紙も28日付朝刊で報じました。1面に置いたのは朝日新聞毎日新聞東京新聞。読売新聞と産経新聞は2面に記事1本。日経新聞は4面ですが、見出しは読売、産経より大きめです。しばらく前から、安倍晋三政権に対する各紙のスタンスが2極化し、それが紙面に反映される傾向が強まっているように感じています。今回も安倍政権や政策に批判的な朝日、毎日、東京と政権支持の読売、産経、中間的な日経と、比較的はっきりと紙面の扱いが分かれたように思います。 

朝日新聞
・1面左肩・準トップ「都議選候補応援『自衛隊としてお願い』 稲田防衛相が発言、撤回」顔写真 ※見出し4段
・4面「野党『稲田氏は辞任を』/自衛隊の政治利用と批判」

毎日新聞
・1面左・3番手「都議選応援『自衛隊としてお願い』 稲田氏発言 後に撤回」顔写真 ※見出し4段
・5面「与党 都議選を危惧/稲田氏発言 野党『完全にアウト』」/稲田防衛相 集会での発言(要旨)

東京新聞
・1面トップ「稲田防衛相 都議選応援 『自衛隊としてお願い』 発言撤回 辞任は否定」写真・集会で演説する稲田防衛相 ※見出し4段/「『こればかりはまずい』政府高官」/「特定候補の支持を自衛隊法令禁じる」※「行政の中立性」用語説明
・2面「稲田氏発言に批判続々 『全自衛官が自民支持と誤解されるのでは』 都議選 応援演説」/都議選候補集会演説要旨/国会内での発言要旨/表・稲田防衛相が物議を醸した発言

▼読売新聞
・2面「都議選『自衛隊としてお願い』 稲田防衛相 自民候補集会で 発言撤回」顔写真 ※見出し3段

産経新聞
・2面「『自衛隊としてお願い』 稲田氏撤回、野党は辞任要求 都議選演説」顔写真 ※見出し3段

日経新聞
・4面「『防衛省・自エア遺体としてもお願いしたい』 都議選応援で稲田氏 行政の中立性で物議」写真・集会で演説する稲田防衛相 ※見出し4段/「行政の中立性」用語説明/「発言を撤回 辞任は否定 稲田氏」/「『即刻辞任を』民進代表」

 【写真】稲田氏の発言を6月28日付朝刊1面で伝えた朝日、毎日、東京の3紙

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