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「民進党」終焉、急速に支持集める「希望の党」~「小池劇場」に終わらない報道に留意必要 ※追記・第3極の共産・社民

 安倍晋三首相が、臨時国会の冒頭、衆議院を解散すると表明していた9月28日になりました。10月10日公示、22日投開票で衆院選が実施されます。

 ここにきて、小池百合子・東京都知事が立ち上げた新党「希望の党」を軸に、事実上の野党再編が急激に動いているようです。28日付の東京発行新聞各紙の朝刊は一斉に、民進党の前原誠司代表が①民進党の立候補予定者の中で希望者は「希望の党」から出馬②民進党は公認候補を立てない③自らは無所属で出馬―などの意向を固めたと報じました。報道を総合すると、離党者が相次ぐ中で、「安倍政治」を終わらせるためには手段を問わない、と前原氏が決断したということのようです。各紙とも「解党」「分裂」、希望の党への「合流」などの見出しを掲げて報じました。かつては「民主党」として政権も担った野党第1党は終焉を迎えつつあります。 

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  朝日新聞と毎日新聞は、26、27両日に実施した世論調査結果も掲載しました。現時点での衆院選比例代表の投票先は以下の通り(単位は%)。「希望の党」が急速に支持を集めていることがうかがえます。25日に小池氏が記者会見して代表に就くことを宣言した効果が早くも表れているのでしょう。

▼朝日新聞

 自民党32、希望の党13、民進党8、公明党6、共産党5、日本維新の会3

▼毎日新聞

 自民党29、希望の党18、民進党8、公明党5、共産党5、日本維新の会3

 朝日新聞の調査では、「支持政党なし」の無党派層に限ってみれば、希望の党17%、自民党13%とのことです。

 仮にの試算ですが、自公の与党と、希望の党、民進党、共産党の3党とで比較すると、朝日新聞の調査結果では38対26となお差がありますが、毎日新聞の調査結果では34対31と拮抗しています。

 今後の展開にもよりますが、安倍政権に替わる政権を選ぶ「政権選択選挙」になる可能性が急速に出てきたようです。本当にそうなるかどうかの最大の焦点は、小池百合子氏が衆院選に出馬するか否かでしょう。都知事職の任期を全うしないこととなりますが、民意が政権交代を強く求め、ほかに野党に人物を見いだせないという状況になれば、安倍首相による衆院解散・総選挙よりもよほど大義はあるとの評価は得られるように思います。

 安倍首相対小池氏の対決構図で「政権選択選挙」になるということを見越してのことでしょうか。28日付の毎日新聞朝刊が、社会面で「小池氏 理念は?/『原発』『改憲』発言揺れ」との見出しで、小池氏の政界遍歴の年表を付けた全6段の記事を掲載しているのが目を引きました。有権者の判断材料として、政治家の信条や過去の言動を提供することは、マスメディアの基本的な役割の一つです。

 小池百合子氏について言えば、最近では関東大震災時の朝鮮人虐殺について、「歴史家のひもとくところ」としか語らず、虐殺が歴史的事実であることを明言して認めることを避けたことも報じられています。そうしたことを改めて報じることにも意義があります。マスメディアは、ただ「小池劇場」の盛り上げに加担するだけで終わることのないよう、特段の留意が必要です。

 

【追記】2017年9月29日8時50分

 衆議院は9月28日正午すぎ、解散されました。東京発行の新聞各紙の夕刊1面は以下のようでした。産経新聞は東京本社では夕刊発行はありません。

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 共産党は希望の党との連携、選挙協力を拒否と伝えられています。社民党と連携して、希望の党が候補を擁立する選挙区には候補を立てるとのことです。「自公VS希望ほか野党」の構図だけではなく、第3極としての共産・社民の位置付けが重要ではないかと思います。