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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

衆院選で問われるのは憲法

 きょう10月10日は衆院選の公示日。22日に投開票を迎えます。
 9月28日の衆院解散を前に、安倍晋三首相は同25日に記者会見し、「少子高齢化」と「緊迫化する北朝鮮情勢」を「国難」と呼び、この解散を「国難突破解散」と呼びました。「国難」と呼ぶ時代がかった感覚もさることながら、それを突破できるだけの将来展望を何か示し得ているとは到底感じられませんでした。あの会見から2週間がたちましたが、やはり国難を突破できるだけの展望は何も示されていないと感じます。特に北朝鮮の核・ミサイル開発に対しては、危機意識をあおるだけです。
 驚かされたのは野党の動きです。まず首相会見と同じ9月25日、小池百合子・東京都知事が、側近議員だとか民進党を離党した議員らの緩慢な動きに業を煮やすように自らが代表になって新党「希望の党」を立ち上げました。野党第1党の前原誠司代表は、衆院選では民進党の候補は希望の党に公認を申請することを呼びかけました。「安倍政治を終わらせるために、全員で希望の党に行く」「再び政権交代が可能な2大政党制を目指す」と聞こえましたが、実際に起きたのは「希望の党」による「選別」であり、小池代表による「排除」宣言でした。この混乱の中から、枝野幸男・民進党代表代行を中心に「希望の党」に合流しない民進党候補らの「立憲民主党」が結成され、また「希望の党」の公認を返上して無所属での出馬を選ぶ原口一博元総務相のような例も出ました。
 前原氏は10月6日になって、ツイッターで連続17回のツイートを投稿し、自らの思いを説明しています。※日付・時刻の部分をクリックすれば17のツイートを読めます 

twitter.com

 これを読んで思うのは、民進党の「希望の党」への合流で前原氏が目指したのは、安倍晋三首相に代わる保守政権を実現させるために小池百合子氏と手を握ることであり、政策面では憲法改正と安全保障法制の容認であり、そのためには民進党内の純化が必要だったのだな、ということです。簡単に言えば、リベラルや左派と呼ばれる人たちが邪魔なので切った、ということだと受け止めました。しかし、見ようによっては自民党以上に右傾化した政党に純化したところで、自民党に対抗して希望の党が並び立つ「2大政党制」と呼べるのでしょうか。この前原氏の連続ツイートに寄せられた反応がことごとくと言っていいほどにネガティブな内容であることでも分かる通り、前原氏のこのやり方は有権者の支持を得ているとは思えません。「希望の党」への支持状況にもマイナスの影響が及ぶと思います。
 選挙戦は形式の上では「自民党・公明党」と「希望の党・日本維新の会」と「立憲民主党・共産党・社民党ほか」の3極構造で政権選択を掛けて争われる、というのがマスメディアのおおむね一致した見方です。しかし一方で、「希望の党」は首相候補を明示しないまま、選挙結果を見て検討するということになりました。ここにきて自民党の一部との「大連立」が現実味を帯びてきています。自民党と希望の党では2大政党制にはならず、保守の潮流の中での主導権争いに過ぎないとも感じます。選挙戦はこれに、立憲民主党・共産党・社民党や連携する無所属らの「第3極」が対抗する構図になったとわたしは受け止めています。
 憲法を巡って安倍自民党は9条改正を前面に掲げました。希望の党の小池百合子代表も、安倍首相案には反対ながら9条改正には意欲的なようです。第3極は、少なくとも安倍政権の下での憲法改正には反対です。やはり、この選挙で将来に向けて問われるのは憲法なのだろうと思います。そのことを念頭に、今回の選挙戦とマスメディアの報道を追っていきたいと考えています。むろん、5年余の「アベ政治」への審判であることはその通りです。

 

 10月9日付の読売新聞に、7、8両日に実施した世論調査の結果が掲載されました。
 内閣支持率は、前回9月28~29日の調査結果から2ポイント減の41%、不支持率は前回と同じ46%でした。
 衆院選の比例区の投票先は以下の通りです。
 自民党32%、希望の党13%、公明党5%、共産党4%、日本維新の会3%、立憲民主党7%、社民党1%、日本のこころ0%、決めていない27%
 希望の党は前回の19%から下がりました。希望の党への期待を尋ねた質問でも「期待する」36%に対し「期待しない」58%です。読売新聞は総合面のサイド記事に「希望失速 立憲民主と分散」の見出しを立てています。