米軍基地を巡る「三重苦」~ヘリ炎上、沖縄2紙の社説

 

 10月11日に沖縄本島北部の東村で不時着したヘリが炎上した事故では、沖縄の地方紙の沖縄タイムス、琉球新報 とも、初報段階から社説で取り上げ、同型機の飛行停止と北部訓練場などのヘリパッドの使用禁止、海兵隊の撤退、日米地位協定の改定などを訴えています。中でも印象に残るのは、沖縄への米軍基地の集中を巡って「三重苦」を指摘し、これを衆院選の争点にせよ、と訴えた14日付の沖縄タイムスの社説です。「三重苦」とは以下の通りです。 

 第1に、小さな島に軍事基地が集中し、住民の生活の場と米軍の軍事訓練の場が隣り合わせになっていること。
 第2に、地上兵力の海兵隊が主力部隊として駐留していること。
 第3に、地位協定によって基地管理権を排他的に行使するなど、さまざまな特権が与えられていること、である。 

  各日の2紙の社説について、備忘を兼ねて、以下に一部を引用して書きとめておきます。

 

【10月12日付】
▼沖縄タイムス「[米軍ヘリ炎上大破]政府は飛行停止求めよ」
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/155119

 沖縄はいつまで米軍ヘリ墜落の不安を抱えながら生活しなければならないのか。同型機の飛行停止を強く求める。
 米軍北部訓練場の約半分の返還に伴い、東村高江集落を取り囲むように六つのヘリパッド(着陸帯)が完成し、米軍に提供されている。
 炎上したのがオスプレイでなく、場所がヘリパッドでないからといって無関係というわけにはいかない。むしろどこでも墜落する危険性があることを示すものだ。
 政府は事あるごとに負担軽減を強調するが、実際に起きているのはその逆である。
 オスプレイが配備されてから5年。高江区では、米軍機による60デシベル以上の騒音回数が過去5年間で12倍超に激増。夜間の騒音も16倍超に跳ね上がっている。加えて今回の炎上大破事故である。どこが負担軽減なのか。
 飛行訓練が激化するばかりの高江集落周辺の六つのヘリパッド、宜野座村城原のキャンプ・ハンセン内のヘリパッドの使用禁止を強く求める。

▼琉球新報「高江米軍ヘリ炎上 海兵隊の撤退求める」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-592175.html 

 事故を起こしたヘリと同型機は、2004年に宜野湾市の沖縄国際大学に墜落している。昨年12月に名護市安部で発生した垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの墜落から1年もたたない。
 事故原因が究明されるまでの事故機と同型機の飛行中止を求める。同時に海兵隊機が使用する名護市辺野古の新基地建設断念と米軍北部訓練場に整備された六つのヘリパッドの使用禁止、県民の命と財産に脅威となり続ける在沖米海兵隊の撤退を強く求める。
 (中略)
 憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記している。同13条は環境権(幸福追求権)を定め、前文は生命や健康が危険にさらされない平和的生存権を認めている。
 しかし、これらの権利が、沖縄では施政権返還後も著しく侵害され続けている。
 児童を含む17人が死亡した1959年6月の沖縄本島中部の石川市(現うるま市)宮森小学校ジェット機墜落事故をはじめ、68年にはベトナムに出撃するB52戦略爆撃機が嘉手納基地で離陸に失敗して墜落した。
 沖縄県の統計によると、72年の沖縄返還以降も米軍機の墜落事故は48件(16年末)に上る。単純計算で年に1件のペースで米軍機が墜落する都道府県が全国のどこにあるだろうか。
 今回の衆院選は辺野古新基地過重負担が主要な争点になる。有権者はしっかり判断してほしい。 

 

【10月13日付】
▼沖縄タイムス「[米軍機炎上]捜査拒否 地位協定改定しかない」
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/155588 

 米軍普天間飛行場所属のCH53大型ヘリが東村高江で炎上、大破した事故。県警は、航空危険行為処罰法違反容疑を視野に捜査の着手を検討しているが、実現のめどはたっておらず、事実上拒否が続いている。
 機体の一部に放射性物質が使われている可能性があることなどから、県は11日夜から環境調査をするため、現場への立ち入りを求めているが、米軍からの返答はない。
 現場は、日本の捜査や調査の権限が及ばない米軍基地内ではない。住民が生活する民間地である。日本の主権が全うされて当然の場所である。
 当然のことが当然になされない。その原因は、米軍のさまざまな特権を認める日米地位協定にある。
 (中略)
 日本側が原因究明に関われなければ、事故の真相は解明されず、米側に事故の具体的な再発防止策を求めることもできない。だから、日本は米軍が安全と言えば容認するという、主権国家にあるまじき対応に終始することになる。
 捜査権を含め、地位協定の現状変更に政府は及び腰の姿勢を示し続けてきた。環境補足協定をとってみても、立ち入り調査の受け入れを判断するのは米側であり、運用実態は後退しているのが現状だ。
 県は、これまでの経緯を踏まえ、米軍基地の外での事件・事故で、日本側が捜索、差し押さえ、検証する権利を地位協定に書き込むことなどを求める協定見直し案を提起している。ガイドラインの見直しや、補足協定などの弥縫(びほう)策では、厳しい現状は変わらない。やはり地位協定を改定するしかない。 

 

【10月14日付】
▼沖縄タイムス「[衆院選 基地問題]「三重苦」を争点にせよ」
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/156077 

 問題の背景にあるのは、米軍基地を巡る「三重苦」の存在である。この現実に正面から向き合わない限り、安全対策はその場しのぎの対策にとどまらざるを得ないだろう。「三重苦」の問題を衆院選の争点にすべきだ。
 「三重苦」とは何か。
 第1に、小さな島に軍事基地が集中し、住民の生活の場と米軍の軍事訓練の場が隣り合わせになっていること。
 第2に、地上兵力の海兵隊が主力部隊として駐留していること。
 第3に、地位協定によって基地管理権を排他的に行使するなど、さまざまな特権が与えられていること、である。

 米カリフォルニア州にあるキャンプ・ペンドルトン海兵隊基地と比べても、日本本土の大規模な自衛隊演習場と比べても、沖縄の海兵隊基地は狭い。
 沖縄に駐留する海兵隊は、特殊作戦機能を備えた部隊である。実戦を想定した激しい訓練を、住宅地の近くで日常的に実施している。復帰後も事件事故が絶えないのは、今なお「三重苦」が沖縄を覆っているからだ。
 嘉手納基地も普天間飛行場も、住民の安全を確保し騒音被害を軽減するための、必要にして十分な緩衝地帯が確保されていない。
 この三つの現実が複雑に絡みあっているのが「三重苦」の正体である。 

▼琉球新報「米軍の日本軽視 対米追従が招いた結果だ」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-593357.html 

 在日米軍は普天間飛行場に所属する同型機の運用を96時間(4日間)停止すると発表した。一方、沖縄防衛局は「小野寺五典防衛相とシュローティ副司令官が面談した際は『96時間』という話は出ていなかった」としていた。
 だが、小野寺氏はその翌日、「実は昨日の会談の中でも当初4日間を考えているという発言がシュローティ副司令官からあった」とし、期限を定めずに飛行停止するよう求め、同意を得られたと主張した。防衛局と小野寺氏の説明で齟齬(そご)が生じたのである。通常ではあり得ない。緊張感の欠如も甚だしい。
 いずれにせよ、米軍は日本政府から運用停止期間について同意を得る考えなどなかったのではないか。小野寺氏に方針を伝えただけで、小野寺氏の要請は無視した可能性さえ疑われる。
 自民党の岸田文雄政調会長は、ニコルソン在沖米四軍調整官とエレンライク総領事を呼んで抗議しようと米側と調整したが、拒否された。岸田氏は「米側の不誠実な態度は大変残念」と述べた。だが、県民は日米双方から不誠実な扱いを受け続けている。そのことを心に刻み、その状況を改善できるかが問われていることを知るべきだ。
 小野寺、岸田の両氏は、在日米軍が日本政府や政権与党さえ、軽く見ている要因を知るべきだ。日本側の醜いまでの対米追従姿勢が招いた結果である。
 その姿勢を大きく転換しない限り、日本は米国から属国のように軽視され続ける。その被害を最も受けるのは沖縄県民である。早急に是正することは政府の責務だ。 

 

【10月15日】
▼琉球新報「事故機に放射性物質 米軍は現地調査を認めよ」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-593793.html 

 東村高江で炎上したCH53E大型輸送ヘリコプターについて、在沖米海兵隊がインジケーター(指示器)の一つに放射性物質が使われていることを認めた。さらに現地では放射性物質を既に取り除いたと説明し「健康を害すのに十分な量ではない」と回答している。つまり事故現場に放射性物質が存在していたことになり、放射能汚染の可能性が出てきた。由々しき事態だ。
 海兵隊によると、放射性物質は指示器の複数の部品で使用されていた。2004年に宜野湾市の沖縄国際大学で墜落したCH53Dヘリの機体でも、回転翼安全装置などで放射性物質のストロンチウム90が検出された。
 沖国大の墜落事故の際、宜野湾市消防本部の消防隊員が消火活動したが、米軍からヘリに放射性物質を搭載している事実を知らされていなかった。このため米軍の消防隊員は消火活動直後に放射能検査を受けていたが、宜野湾市消防の隊員は受けていない。生命の安全に関する情報を提供しない極めて不誠実な対応だった。
 そして今回の炎上事故でも、初期消火に当たった国頭消防本部の消防隊員に、放射性物質の有無の情報を提供していなかった。海兵隊が放射性物質の存在を認めたのは、琉球新報の質問に対する回答だ。自ら情報提供したものではない。不誠実な対応は13年たっても変わらない。
 県と沖縄防衛局は放射性物質が飛散した可能性があるとして、事故機に接する土壌採取を米軍に要望している。しかし事故機から半径約100メートルに敷かれた米軍による内周規制線内への立ち入りは認められていない。
 このため県と防衛局は内周規制線の外で土壌を採取している。放射能汚染の可能性を引き起こしたのは米軍だ。その当事者が現地調査を拒んでいる。こんなことが許されるのか。いくら米軍が「健康を害すのに十分な量ではない」と説明しても、額面通りに信用することなどできない。 

 

 事故発生の翌日、10月12日付の琉球新報が手元に届きました。写真は1面と社会面です。 

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