民意から浮かび上がる「安倍改憲のジレンマ」

 先日の週末に実施された世論調査の結果がいくつか報じられています。目に止まった主な内容を備忘を兼ねて書きとめておきます。
 安倍晋三内閣の支持率は53・1~44%。過去のどの時点の調査結果と比較するかによって差異はありますが、上昇・安定傾向にあると言ってよいと思います。では安倍首相への評価や期待が高いのかと言えばそうでもないようで、来年秋に予定される自民党総裁選で安倍首相が3選されるのがよいかどうかを尋ねた調査では、いずれも否定的な回答が過半数でした。自民党政権への支持は必ずしも安倍首相への支持ではない、という傾向が続いています。民意は「安定の中での変化」を志向しているようにも思えます。
 憲法改正を巡っては、国会の発議は急ぐべきかどうかを尋ねた毎日新聞の調査では「急ぐ必要はない」が66%に上り、「急ぐべきだ」の24%を大きく上回りました。議論を促進すべきだと思うかどうかを尋ねた産経新聞・FNNの調査では、促進すべきと思うが59・0%です。議論はいいが、発議は急ぐ必要がないとの民意が浮き彫りになっているように思います。

 興味深く読んだのは産経新聞の「自衛隊明記 賛成59%/朝日・共同は逆転 なぜ?」の記事です。憲法9条1項、2項の条文はそのままに、自衛隊の存在を明記するとの安倍首相と自民党の改正案について、産経新聞・FNNの調査では賛成が59%を占めたのに対し、朝日新聞や共同通信が以前に実施した調査では反対が賛成を上回っていました。
 記事によると、産経新聞・FNN調査の質問は「憲法9条の条文を維持した上で、自衛隊の存在を明記することに賛成か」と聞いていました。一方、朝日新聞や共同通信は「安倍政権のもとで」「安倍首相は」という表現を加えた上で、9条改正への賛否を聞いていました。産経新聞の取材に埼玉大社会調査研究センター長の松本正生教授(政治意識論)は「自衛隊を憲法に位置づけるのは理解できるから、その賛否を問う文脈では賛成が多くなる。ところが、質問で『安倍首相のもとで』と前置きされると、『近いうちに改憲の国民投票に持ち込むのか』と感じ、回答者の受け止め方、つまり文脈が変わってしまう。改憲よりも経済再生などを優先すべきだと考え、結果的に反対が多くなるのではないか」との見方を示しています。議論は結構だが発議は急ぐべきではない、との民意とも符合しているように思えます。

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 私なりの仮設ですが、結局のところ、自民党政権である安倍晋三内閣の支持率と安倍晋三氏個人への期待に落差、乖離がある一因は、安倍氏が憲法改正、中でも9条改正を宿願としていることにあるように思えます。民意は性急な9条改正を望んでいないので、安倍氏が9条改正を主張すればするほど安倍氏への期待は低下する、別の人に政権を担ってほしいとの要請が強まる、しかし安倍氏が自民党総裁3選を果たして実現したいのは9条改正―。これはジレンマです。仮に「安倍改憲のジレンマ」と呼びます。このジレンマが続くのか、今後、どのような民意が示されるのか、注視していこうと思います。

 以下は、マスメディア各社の世論調査の主な項目の質問文と結果です。

▼内閣支持率 ※カッコ内は前回比、Pはポイント
・朝日新聞 11~12日実施 支持44%(2P増) 不支持39%(変わらず)※前回10月23~24日
・毎日新聞 11~12日実施 支持46%(10P増) 不支持36%(6P減)※前回9月26~27日
・産経新聞・FNN 11~12日 支持47・7%(5・2P増) 不支持42・4%(3・9P減)※産経新聞・前回10月14~15日
・NHK 10~12日実施 支持46%(7P増) 不支持35%(7P減)※前回10月7~9日
・TBS 11~12日実施 支持53・1%(4・4P増) 不支持45・8%(3・4P減)※前回10月14~15日

▼安倍晋三首相の続投について
・毎日新聞:「安倍晋三首相は自民党総裁として現在2期目で、任期は来年9月までです。安倍首相が3期目も引き続き自民党総裁を務めた方がよいと思いますか。」
 総裁を続けた方がよい 35%
 代わった方がよい 53%
・産経新聞・FNN:「来年(2018年)秋に予定される自民党総裁選挙で、あなたは、安倍首相が再選されるのが望ましいと思いますか、それとも安倍首相以外の人が選ばれるのが望ましいですか。」
 安倍首相の再選が望ましい 41・5%
 安倍首相以外の人の選出が望ましい 51・9%
・TBS:「安倍総理は自民党総裁としては現在2期目で、任期は来年9月までです。あなたは、安倍総理が3期目も自民党総裁を続投することに賛成ですか、反対ですか?」
 賛成 36%
 反対 54%

▼憲法改正
・毎日新聞
 「憲法9条の1項と2項はそのままにして、自衛隊の存在を明記する改正案に賛成ですか。反対ですか」
 賛成 33% 反対 29%
 「衆院選の結果、憲法改正に前向きな勢力が衆院の3分の2を超える議席を維持しました。国会が改憲案の発議を急ぐべきだと思いますか。」
 急ぐべきだ 24% 急ぐ必要はない 66%
・産経新聞・FNN:「憲法に関する次のそれぞれの質問について、あなたのお考えをお知らせください。」
 「国会は、憲法改正に関する議論を促進すべきだと思いますか、思いませんか。」
 思う 61・0% 思わない 32・6%
 「あなたは、憲法9条の条文を維持したうえで、自衛隊の存在を明記することに賛成ですか、反対ですか。」
 賛成 59・0% 反対 29・1%