よく見て、よく聞いて、よく話す

 新しい年になりました。本年もよろしくお願いいたします。
 昨年は英国の国民投票でEU離脱が多数を占め、米国の大統領選挙では自国第一を掲げる共和党のトランプ氏が勝利しました。米大統領選では、民主主義の本家のはずでありながら、民主党候補のクリントン氏との間で非難と中傷の応酬が続き、米国社会の対立と分断は覆い隠しようがなかったように思います。世界のどこを見ても、融和と協調は退潮しつつあるようにも見えます。
 日本では自民党公明党の巨大与党が続き、しかも自民党内では安倍晋三氏の「一強」が続く中で、最近では自衛隊PKO部隊への駆け付け警護任務の付与や、いわゆるカジノ解禁法など、世論の支持を得ているとは言い難い政策を、与党が強引に決めてしまう政治状況が続いています。ことを決めた後で、国民の理解が得られるようにていねいに説明を続ける、と言っていたこともありましたが、その約束は守られているでしょうか。
 沖縄の基地集中を巡っては、選挙で示した沖縄の民意は一顧だにされないと言っても過言ではないほどに、安倍晋三政権は対米協調の基地政策を推し進め、司法によってもその流れは変わりませんでした。かねて危険性の指摘がやまない米軍輸送機オスプレイがとうとう落ちても、日本政府は米軍の代弁者のようでしかなく、翁長雄志知事は、日本政府は沖縄県民を日本国民と見ていない、と公然と批判しました。沖縄の人たちの自己決定権は認められないのでしょうか。
 わたしたちの社会が、さらには世界が、分断や対立を克服して融和と協調を保つのに、ジャーナリズムは大きな責任を負っています。何が起きているのかをしっかりと見て、民意に耳を傾け、そして臆することなく語り伝えていく、その役割はますます大きくなっているのだと感じます。マスメディアの中に身を置く一人として、これまでにも増して、そのことを強く意識しながら日々を過ごしたいと思います。


 栃木県・日光東照宮には有名な「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿の彫刻があります。その反対の「よく見て、よく聞いて、よく話す」という三猿がいることを知りました。埼玉県秩父市秩父神社本殿に刻まれた彫刻です。元気に過ごす「お元気三猿」と呼ばれています。昨年参拝し、根付のお守りをいただいてきました。私としては、「見ざる、聞かざる、言わざる」への戒めとして、常に身の回りに置くようにしています。

 ※秩父神社トップ http://www.chichibu-jinja.or.jp/

 マスメディアのジャーナリズムに限ったことでもないのですが、それを仕事にしている者なら、とりわけ「言わざる」は自らも、またそれを他者に求めることもあってはなりません。「よく話す」は、議論を深めることにも通じます。他者の発言を封じて独断的に事を進めるよりも、意見の食い違いがあっても、皆が意見を出し合って議論の末に一致点を見出す方が、結果は間違いなくいいものになります。